さまざまな業界でサブスクリプションビジネスが台頭している。サブスクリプションモデルは、企業にとって安定的な収益が期待できるなど多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も抱えている。その1つとして、売り切り型のビジネスモデルと比べ料金体系が複雑になることで、契約や請求などの販売管理業務にかかる手間やコストがかさんでしまうという点が挙げられる。そのためビジネスが拡大すればするほど、業務量が増え担当者の負担が増えていく。
こうした課題を解決するのが、サブスクリプション管理システム「ソアスク」である。ソアスクは、Salesforceプラットフォーム上で稼働するアプリケーションで、BtoBのサブスクリプションビジネスで必要とされる販売管理業務プロセスをクラウドで一元管理し、自動化や見える化を実現する。Salesforce上に登録された取引先の管理情報等と連携し、見積、契約、請求などの作成が可能となっている。また、Salesforce上に蓄積されるデータをもとに、実績の傾向に対して分析をおこなうことで、経営の意志決定にも役立つ。
法人向けにサブスクリプション型のサービスを複数展開するKDDI まとめてオフィスは、テラスカイのサポートのもと、2021年5月にソアスクを導入。かつては別々に管理していたという3つのサービスについて、販売管理業務プロセスを標準化し、データを一元管理できる体制を整えた。ソアスク導入プロジェクトを担当したKDDI まとめてオフィス 経営管理本部 経営企画部 情報システムグループ 宮本大輔氏、篠田憲弘氏、重信惇也氏に、ソアスク導入の経緯や導入時に苦労した点、展望などを伺った。
事業の持続的な成長に向け、ITガバナンスの強化が急務に
KDDI まとめてオフィスは、親会社であるKDDIの通信サービスのほか、クラウドやIoTなどの最新テクノロジー、複合機やPCといったオフィス機器の導入、福利厚生支援など、よりよいIT環境・オフィス環境を実現するためのさまざまなソリューションを提供している。特に近年では、コロナ禍に伴うテレワークの普及に対応するため、スマートデバイスやクラウドサービスの導入・活用支援など、業務のデジタル化やコーポレートDX(デジタルトランスフォーメーション)のサポートに力を入れる。
幅広い商品やサービスをラインアップするKDDI まとめてオフィスにおいて、ビジネスを今後さらに拡大していくにあたっては、社内のシステム改革は避けては通れなかったという。情報システムグループのリーダーを務める宮本氏は、「サービスごとにシステムが乱立していたり、業務部門が主導して構築したシステムが存在していたりと、ITガバナンスに課題がありました。事業拡大に向けて持続的な成長基盤を構築していくには、まず管理体制を見直すことでガバナンスを強化し、システムを安定的に運用することにより、お客様へのサービス提供の品質を高めていくことが最優先事項と考えていました」と振り返る。
そこで、KDDI まとめてオフィスは、社内システム改革プロジェクトを始動。一段階として複合機サービス、福利厚生サービス、PCサポートという3サービスにおける販売管理業務システムの見直しから進めていくことを決めた。
開発期間・コストを考慮するとSalesforce上で動くパッケージを導入するのがベスト
システム改革の対象となった3サービスはかつて、それぞれが独自のシステムを採用するなど、サービスごとに利用料金の計算方法や契約管理の方法も統一されていなかった。そのため、顧客へ正確に料金請求するためにはかなりの手間と時間がかかっていたという。請求金額などに誤りがないか確認するためのフローは設けていたものの、請求業務の後工程になってから手戻りが発生してしまうケースもあり、システムにより契約・販売管理業務を標準化し、なるべく早い段階で販売管理データの齟齬を検知できるよう仕組み化することが理想だった。
システムの見直しにあたってはスクラッチでの開発も検討したというが、ソアスクの導入に至った理由について、篠田氏と重信氏は次のように語る。
「サブスクリプションサービスの販売管理を行うための新しいシステムを一から開発するのは、時間・コスト面から考えて現実的ではありませんでした。また、もともと社内でSalesforceプラットフォームを利用していたため、それらをより有効的に活用していきたいと思っていました。そのうえで、開発期間・コストを考慮するとSalesforce上で動くパッケージを導入するのがベストだと考えました」(篠田氏)
「ソアスクであれば、サブスクリプションサービスを管理する知見やノウハウが揃っています。また散在していたデータが一元化されれば、より効率的な業務運用方針を決めていくための道筋が立ちやすいとも期待していました」(重信氏)
テラスカイのリードのもと、ソアスクの導入プロジェクトがスタートしたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大が始まったばかりの2020年3月頃で、リモートでの作業を余儀なくされた。こうした厳しい状況下でプロジェクトを進めるにあたっても、ソアスクのメリットを感じたという宮本氏は、次のように語った。
「Salesforceの使い勝手はわかっていたので、完全に新規のプロダクトを導入するのに比べてSalesforce上で動くソアスクへの理解は早かったです。テラスカイもSalesforceの知見やノウハウを数多く持っているので、リモートでのプロジェクトもスムーズに進みました。開発の進めやすさという点でも、ソアスクを選んでよかったと感じています」
また、導入を進めるうえで苦労した点としては、情報システム部門とユーザー部門でのコミュニケーションだったという。「情報システム部門としても3サービスそれぞれが持つ事情などを詳細に把握していたわけではなく、ユーザー部門、情報システム部門双方の考えをすり合わせていくことには時間をかけました」と篠田氏は語る。ユーザー部門からはこれまでのフローをなるべく残したいという要望もあり、システムでは実現不可能なものも含めさまざまな要望が寄せられた。テラスカイはそうした課題への対応や、要件への落とし込みに大きく貢献したという。
宮本氏と篠田氏は、トラブル時のテラスカイの対応も高く評価する。
「ソアスクの一部機能で想定した性能に達しなかった部分については、開発元に掛け合ってくれるなど、当社に寄り添い、我々の思いを貫くためのサポートをしていただきました」(宮本氏)
「開発にトラブルはつきものですが、テラスカイには粘り強く最後まで対応していただきました。本来であれば直接的にテラスカイには関係ないようなことでも、親身になってアドバイスをしてくれました」(篠田氏)
課題が解決しただけでなく、ユーザー側の意識が変わるという副次的な効果も
本番移行は2021年6月に完了した。ソアスクの導入以降、データの一元管理や業務の標準化が進み、ITガバナンスの強化に繋がっている。
また、リリース後の状況について、重信氏は「対象業務がリリース後に追加となった際にも、テラスカイの保守範囲で対応してもらうことができました。レスポンスも早く、安心感がありました」と、テラスカイの支援のもと運用面の改善が進んでいることを明かす
また、当初想定していなかった副次的な効果もあったという。それは、ユーザー側の意識の変化だ。篠田氏は、「要件定義当初は、システムで業務がどのように変わるか、ユーザー側もあまりイメージできていませんでした。しかし、導入後は次第にユーザー側がシステム思考になり、『こういう機能があるとよい』『こういう作業はシステムに任せられるのでは』という声が、ユーザー自身からあがるようになりました。これは、ユーザー部門との信頼関係が構築できてきている証拠だと考えています」と話す。
プロジェクトを振り返り、ソアスク導入を検討する企業へのアドバイスを聞いたところ、宮本氏、重信氏は次のように語ってくれた。
「サブスクリプション型サービスと一言でいっても、商材、契約周期、料金体系などはさまざまです。自社サービスそれぞれの料金計算方法がどのようになっているのか、きちんと洗い出して整理しておくことが重要です。ツールは万能ではないので、標準機能でどこまでの料金計算に対応できるのかは確認しておく必要があります」(宮本氏)
「当社の場合、契約管理を行うにあたって、請求日や締日などの定義が社内でバラバラになっていました。ツールを導入する過程で統一していける側面もあるとは思いますが、たとえ異なる商材であっても、社内で統一しておくことは重要です」(重信氏)
▼複数サービスの販売管理をソアスクに統一
データ活用に向けたSalesforceの拡張を進め、経営にも活かしていきたい
KDDI まとめてオフィスのITガバナンス強化や業務フローの整備が進むなか、次なる目標は、さらなる業務の効率化だ。そのためには、販売管理システムとサービス提供システムとの連携が課題となる。宮本氏は「システム連携が不十分で、人の手による作業がまだ残っています。そうした非効率な作業からユーザーを開放していきたいと思っています。また、今後DXをさらに推進していくためには、内製化も重要なポイントです。大きな開発の場合はテラスカイに頼ることになると思いますが、項目や帳票の追加といった細かな開発は自分たちでもできるようになってきています。今後テラスカイには、ぜひ内製化の部分についても支援をしていただきたいと思っています」と期待を込める。
さらに、KDDI まとめてオフィスは、複数サービスのデータを一箇所に集約し、そのデータから得られたインサイトを経営に活かしていく展望を掲げている。Salesforceプラットフォームをベースに進めているため、案件や商談管理情報、顧客情報などと組み合わせ、売上向上に向けたデータ活用の取り組みを実施できる体制を整えていきたい考えだ。
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