NTTコミュニケーションズは、ドコモグループの法人ビジネスイベント「docomo business Forum'23」を2023年10月12~13日にかけて開催。「ようこそ、DXのテーマパークへ」をコンセプトに、さまざまなDXソリューションの展示、および「ビジネスコラボレーション」「従業員エクスペリエンス」「企業プラットフォーム」をテーマにした講演が展開された。本稿では、10/13に開催された特別講演「デジタルイノベーションが切り開く、地域社会の未来」についてレポートする。

  • フリーアナウンサー/大阪芸術大学放送学科教授の馬場 典子氏と、NTTコミュニケーションズ株式会社 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の芦川 隆範氏が登壇

講演ではフリーアナウンサー/大阪芸術大学放送学科教授の馬場 典子氏と、NTTコミュニケーションズ株式会社 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の芦川 隆範氏が登壇。地域社会の活性化に関わるドコモビジネスのビジョンと、具体的な地域産業活性化の事例について対談形式で話が展開された。

地域社会が持つポテンシャルとドコモビジネスが提供する先進技術を掛け合わせて地域活性化を推進

馬場氏:今回は「デジタルイノベーションが切り開く、地域社会の未来」をテーマに、NTTコミュニケーションズの芦川 隆範さんにお話しを伺っていきたいと思います。芦川さんは普段どのような業務を担われているのでしょうか。

芦川氏:ソリューション&マーケティング本部では、地域に根付いた事業を展開する全国の中小企業や地方自治体が抱える課題を、デジタルの力、すなわちICTやDXで解決する取り組みを支援させていただいています。対面でお客さま対応を行う支社・支店の営業担当者、代理店やパートナー企業の方々などのフィールドセールスと、コンタクトセンターやICTを用いた非対面チャネルの両軸で地域活性化に向けたビジネスを展開しています。

馬場氏:ドコモビジネスというと、デジタル、通信というイメージを持たれる方も多いと思いますが、対面でのコミュニケーションにも力を入れて地域社会に貢献されているのですね。

芦川氏:地域社会においても人口減少や労働力不足が課題となっています。その一方で、それぞれの地域には長い時間をかけて培ってきた伝統文化やアイデンティティがあり、それらが地元産業の底力となっています。そうした「地域社会が持つ力」と、ドコモビジネスが提供する最先端のICTを掛け合わせることで、地域社会の持続的な成長を支援できると考えています。

馬場氏:ありがとうございます。デジタルイノベーションを通じて、“個性あふれる豊かな地域”にするためには何が必要となるのでしょうか。ここからはドコモビジネスのビジョンや具体的な取り組みの事例から、地域活性化のアプローチを掘り下げていきたいと思います。

  • フリーアナウンサー 大阪芸術大学放送学科教授 馬場 典子 氏

    フリーアナウンサー
    大阪芸術大学放送学科教授
    馬場 典子 氏

地域密着型の体制を構築し、地元愛あふれるスタッフが地域社会の課題解決を全力でサポート

馬場氏:まずはドコモビジネスならではの地域社会へのアプローチについてお聞かせください。

芦川氏:私は現職に就く前にドコモの東北支社長として、3年間にわたり地方創生に取り組んできました。そこで実感したのは、「日本を元気にするには、地域社会が産業を含めて活力を持つ必要がある」ということです。これを踏まえ、ドコモビジネスでは「安心と幸せに満ちた、活力ある『Smart Comfortable地域社会』を創造する」というミッションを掲げて活動を続けています。“Smart”というのは、デジタル化が進んだ、より暮らしやすい最先端な未来のまちづくりのこと。もう1つの“Comfortable”は「心地よい」という意味で、デジタル技術を一方的に押しつけるのではなく、日常生活の中に心地よい形で自然に溶け込ませていくというアプローチを指しています。

馬場氏:地域に寄り添いながら取り組みを進めることが大切ということでしょうか。

芦川氏:そのとおりです。Smart Comfortable地域社会の実現に向けては、2つのアプローチで取り組んでいます。1つは地域の持つアイデンティティやオリジナリティを、時代に合わせてより価値の高いものへと進化させていくというアプローチです。地元のみなさまの隣に寄り添い、地域の価値を高めて全国へと広めていくためのお手伝いをするというイメージになります。

もう1つは、最先端のICTでビジネスを展開しているNTTコミュニケーションズの知見を最大限に活かし、地域の方自身も気づいていないポテンシャル、すなわち地域独自の技術やコンテンツを引き出すというアプローチです。

  • NTTコミュニケーションズ株式会社 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長 芦川 隆範 氏

    NTTコミュニケーションズ株式会社
    常務執行役員
    ソリューション&マーケティング本部長
    芦川 隆範 氏

馬場氏:たしかに課題もポテンシャルも地域によってさまざまです。地域ならではのポテンシャルというものは、毎日そこで過ごしている地域の方は気づきにくいかもしれませんね。日ごろからお客さまそれぞれの課題に寄り添い、解決を図ってきたドコモビジネスだからこそ、地域社会が抱える課題にも寄り添えるのではないでしょうか。地域課題の解決という観点における、ドコモビジネスの強みについて芦川さんのお考えをお聞かせください。

芦川氏:ドコモビジネスには2つの強みがあると考えています。1つは総合ICT企業として、コミュニケーションに関するソリューションを中心に、モバイルからクラウドサービスまで提供できること。さらにドコモグループの連携によるデータビジネス、データ連携基盤も強みと捉えています。自治体も含めた地域産業のビジネスモデルもB2B2Xが主流になってきています。我々はミドルBやエンドユーザーに対してもアプローチできるソリューションを持っており、一気通貫で支援することが可能です。

もう1つの強みは、地域密着型の体制を構築していることです。ドコモビジネスでは全国5,000人以上の社員に加え、ドコモショップなど法人代理店のスタッフが全国で活動しており、そこには地域で生まれ育ち、地域を愛している人たちがいます。お客様と地域への愛と、地元を元気にしたいという強い思いがあり、それが地域課題を解決するための力になると考えています。

馬場氏:全国に広がるネットワークと、それぞれの地域に密着した一人ひとりの社員の力の両輪で地域社会の活性化に貢献しているわけですね。それでは、ここからはドコモビジネスの強みを活かした地域課題解決の具体的な取り組みについて、いくつかの事例を紹介していただきたいと思います。

地域の一次産業とドコモビジネスのコラボレーションが、業務効率化と新たな価値の創造を後押し

芦川氏:まずは自治体とのコラボレーションによる事例として、高知県安芸地区で取り組んでいる「ゆず生産スマート化実証」を紹介したいと思います。

馬場氏:高知県のゆずといえば有名ですね。どのような課題を抱えておられたのでしょうか。

芦川氏:高知県はゆずの生産量が日本一で、なかでも安芸地区はその品質の高さから「日本一のゆずの里」と呼ばれていますが、高い評価を得ている一方で、高齢化や人手不足が深刻化し、急傾斜地における高負荷作業の軽減や新規就農者確保・育成が課題となっていました。そこで地元の社員が1カ月にわたって現地の作業に従事してすべてのプロセスを確認。課題を肌で実感したうえで、最新のデジタル技術を用いて課題解決に取り組みました。

馬場氏:地域密着型の体制を活かして、何が課題なのかを肌で感じるところから始められたのですね。

芦川氏:そのとおりです。作業に従事している方と優先順位などを議論したうえで、我々が取り組んだのは全国初となる遠隔監視技術搭載のモバイルムーバーを用いた農薬散布作業の効率化、およびスマートグラスを活用した新規就農者への遠隔指導でした。モバイルムーバーは5Gの高速・大容量通信と正確な位置情報を活用したリアルタイム制御を実現し、農薬散布にかかる作業時間を82%削減することに成功。スマートグラスを使った遠隔指導では、ベテラン作業者1人が3箇所の指導を同時に行うことが可能となり、指導にかかる時間を57%削減することができています。ここでのポイントはデジタルによる時間と場所の超越です。

馬場氏:地域社会の一次産業における課題をデジタル技術で解決した事例というわけですね。さまざまな地域が注目すると思います。それでは、次の事例を紹介していただければと思います。

  • 事例1 ゆず生産スマート化実証

芦川氏:こちらも一次産業での取り組みとなりますが、沖縄県の民間企業とのコラボレーションにより「陸上のスマート養殖」に成功した事例を紹介します。世界的なタンパク源の需要増加があり、昨今では陸上養殖への注目が高まっています。しかし海上養殖と比べてコストがかかるのが課題となっており、さらにエネルギーの有効活用による安定生産や疾病防除、育種も含めた新魚種の開発においても問題が山積みでした。

そこで独自の養殖技術を持つパートナーの知見と、NTTグループのAI/ICTを組み合わせたビジネスモデルを構築。“誰でもどこでもできる陸上養殖”の実現に向けて取り組んでいます。お客さまやパートナーとの協業で開発した陸上養殖システムにより、水産業のさらなる活性化を支援するほか、水産資源の保全、地域産業の創出、SDGsの達成などに貢献できると考えています。

  • 事例2 誰にでもできる陸上養殖の実現

馬場氏:ビジネス領域を広げるだけでなく、世界的な課題となっている食糧問題や環境問題の解決に資する価値を創造しているのですね。ここまで一次産業とデジタルの相性がよいというのは“目からうろこ”でした。ただ地域社会においては一次産業だけでなく、医療に関する課題もあると思います。高齢化やヘルスケアの領域においても取り組まれているのでしょうか。

芦川氏:私個人も、東北支社長を務めていたときにコロナ禍となり、医療機関のみなさまが本当に大変な思いをされていたことを肌で感じてきました。地域社会の医療を支える医師や看護師は、住民のために貢献すべく、日々尽力されています。そこで私たちは医療のワークスタイル変革として、奈良県で地域医療のDXに取り組みました。

医療現場のDXにおいては、間接的な医療行為をいかに効率化できるかが重要です。そこで携帯型のビーコンを用いて医療従事者の行動を“見える化”し、電子カルテの記録やカンファレンスなどの議事録作成、すなわち間接的な医療行為が負担になっていることを確認。電子カルテの音声入力や議事録作成支援ツールの導入、および移動動線の可視化など効率的に動くための対策を施し、患者に対する直接的な医療行為に注力できるような働き方改革を進めています。

馬場氏:医療従事者の方はもちろん、患者さまにとっても待ち時間が減ったり、お医者さまに相談できる時間が増えたりといったメリットが生まれそうですね。

芦川氏:そうですね。今回は医療DXとして紹介しましたが、このようなワークスタイル変革の在り方は、民間企業にも充分活用いただけるものと考えています。

  • 事例3 地域医療のワークスタイル変革

成長し続ける地域社会の実現を目指してドコモビジネスの取り組みは続く

馬場氏:そのほか、紹介したい事例はございませんか。

芦川氏:最後に街全体のDXについての取り組みとなる、「地方自治体向けプラットフォーム」について紹介したいと思います。これからのまちづくりに欠かせない“データ連携”を実現した事例です。地域で暮らす住民の方々が必要なときに必要な情報を得て、それを通じて行政や民間企業、住民同士がつながり、スマートな地域社会を行政・住民一体となって創り上げていく、その土台となるデータ連携基盤の構築プロジェクトになります。

馬場氏:具体的にはどのようなことができるのでしょうか。

芦川氏:地域社会では、モバイルデバイスを介して行政サービス、民間サービスを受けられますが、そこには生活に関わるさまざまなデータが存在します。それらのデータを連携させることで、ニーズに合った質の高いサービスを提供できるようになります。具体的にはスマホの自治体アプリを活用して地域住民のみなさまにサービスをお届けしていきます。

馬場氏:たしかに昨今では、いろいろなサービスがスマホに集約されていますね。ドコモグループが提供するソリューションとしては防災サービスやヘルスケア、交通、自治体アプリなどがありますよね。

芦川氏:ポイントはデータの掛け合わせとサービスの連動です。たとえば防災分野では、雨量データだけでなく、河川の水量や過去の災害情報などを含め異なる事業者が保有するデータを掛け合わせることで、精度の高い災害予測が実現できます。

また行動データの連動によるサービス品質の向上という面では、住民が病院の診断予約を行った際、タクシーが自動的に配車できるようなことも可能です。1つの行動に合わせてさまざまなサービスを連動させることで、一連の行動が完結するまでをトータルで支援することが可能になります。

こうした住民向けのサービスはもちろん、住民の方が外に出かけた際のサポートや、外から地域に入ってきてくれた方へのサービスを充実させていくことが、地域社会の活性化という意味では非常に重要と考えています。

馬場氏:まさに冒頭でおっしゃっていた「安心と幸せに満ちた、活力ある『Smart Comfortable地域社会』を創造する」というスローガンにつながるわけですね。さで、ここまでいくつかの事例を紹介していただきましたが、地域社会の活性化に取り組むうえでは、どのような観点を持つことが必要なのでしょうか。

芦川氏:各事例でも紹介したように、自治体や地元の企業、学校などとの地域密着のコラボレーションが、サステナブルな社会、サステナブルな暮らし、地域の産業発展につながると信じています。地域の良さを引き出すためにはICT環境の整備などを通じて、自治体や民間企業で働く職員・従業員の満足度を高めること、働きやすさや生きがいを提供していくことが大切です。

  • 事例4 自治体アプリ&プラットフォームを活用した地域課題解決

馬場氏:最後に、今後ドコモビジネスが目指す地域社会の姿について、あらためてお伺いできればと思います。

芦川氏:「デジタル」を一方的に押し付けるのではなく、使いやすく心地よいと感じもらえるような地域社会の実現に貢献したいと考えています。持続可能なだけでなく、成長し続ける地域産業の実現に向けて、ドコモビジネスは今後も地域密着型で支援していきます。

  • 講演の様子

本講演のアーカイブ配信の視聴はこちら

[PR]提供:NTTコミュニケーションズ