「DXに必要なことは、変化に強いしなやかな組織・人を作ること」——サイボウズ マーケティング本部 エンタープライズプロモーション部 kintoneプロダクトマーケティングマネージャー 池田陽介氏はこう語る。DXを進めるためITツールを導入したものの、その成果が出ずに悩んでいる企業は多い。10月19日に開催されたオンラインセミナー「TECH+セミナー ローコード/ノーコード開発 Day Oct. 自走で差がつくビジネス戦略」で、池田氏はノーコードツールを活用するための組織の作り方や、DX人材育成におけるノーコードツールの活用方法について、ノーコードアプリ開発ツール「kintone」の利用事例をもとに紹介した。

ノーコード・ローコードツールで世の中の変化に対応する

経済産業省が公表する「DXレポート」によると、DXの本質は、世の中の変化に応じてデジタル技術の活用により組織やビジネスモデルなどを変革していくこととされている。DXはデジタル・トランスフォーメーションの略称であることはもはやいうまでもなく、デジタルは手段であり、トランスフォーメーションこそが目的となりうる。池田氏は「デジタルに関しては多くのツールが提供されており、そこに目が向きがちになるが、氷山の一角でしかありません。DXを実現するためには、業務、組織・プロセス、人、企業文化・風土を変革していくことが大事です」と話す。

DXは経営戦略に紐づくものといえる。昨今の経営戦略においては、VUCA、両利きの経営、ティール組織といったキーワードが並ぶが、いずれも世の中の変化への対応力が共通点となる。そして、池田氏によると変化に対応するために必要なシステムこそが、ノーコード・ローコードツールだという。 「従来は、自社の業務ニーズにシステムを合わせるため、ウォーターフォールでスクラッチ開発をしていたが、世の中の変化が激しい状況では、現場のニーズは日々変わります。システムが完成するころには当初必要だったはずの機能が不要になったり、やりたいことが実現できなくなったりしてしまうリスクが生じているのです。ノーコード・ローコードツールは汎用的なパッケージ製品とスクラッチ開発のちょうど中間に位置する、両者のいいとこ取りができるツールといえるでしょう」(池田氏)

現場で使うシステムを現場で作れるkintone

ノーコードツールと一口にいっても、Webサイトやモバイルアプリの作成、データ連携などさまざまな種類がある。なかでも、サイボウズが提供するkintoneは、業務システムを簡単に作ることができるノーコードアプリ開発ツールだ。池田氏は「従来、開発にはプログラミングが必要でしたが、kintoneではITの専門知識がなくてもドラッグ&ドロップとキーボード操作だけでシステムを作れます」と説明する。以下は、kintoneによって開発できるシステムの一例である。

  • 活用できる業務の範囲例

    活用できる業務の範囲例

全社的に広く使うものから、各部門で業務改善をするようなニッチなアプリケーションを作ることも可能だ。300社以上のkintoneパートナーが提供するプラグインによる拡張、社内システムとのデータ連携などが可能な仕組みもあり、現場で使うシステムを現場で作るという世界観を実現できる。

専門知識がなくてもデジタルのメリットを活かせる組織体制

DXの達成において重要となるのが人材育成だ。エンジニアやプログラマといった高度なITの専門知識・スキルを持つ人材を潤沢に採用できれば問題はないが、残念ながら多くの日本企業はそういう状況にはない。しかし、ノーコードツールに代表されるようなITツールであれば、ITの専門知識がなくともデジタルのメリットを活かすことができる。「業務に詳しい人にデジタルスキルを習得してもらい、現場の知見とデジタルの要素を掛け合わせて、社員全員がDX人材になるという意識を持つことが重要です」(池田氏)。 実際にkintoneを導入している企業では、世代や職種、役職を超えて活躍するDX人材が増えている。たとえば、国内大手電子機器メーカー 京セラの事例では、アプリを作って改善を進める役割を現場の業務部門が担い、DX担当部門はそれを支援・教育するという役割分担でkintoneを運用している。定期的な講習会の実施などにより、現在は約200名の社員が自らアプリを開発できるような体制を構築しているという。

変化に対応できるDX人材の考え方

変化への対応という観点からDX人材を活用するうえで、kintoneではDX人材を「D人財(システムを整備する人)」「X人財(ルールを整備する人)」「X人財(教育する人)」「X人財(業務を改善する人)」という4つの役割に分けて適切なコンテンツやアドバイスを提供している。特に、「トランスフォーメーション」の領域を担うX人材は意識から抜けがちなので注意が必要だ。以下では、4つの役割ごとにそれぞれの育成方法について見ていきたい。

  • kintone活用を広げる4つの役割

    kintone活用を広げる4つの役割

1. D人財

D人財は、情報システム部門が担当するケースが多いという。自身でITツールを選定したり勉強できる人が多いため、kintoneでは、動画やセミナー、ハンズオンセミナー、事例集などのコンテンツを提供している。また、情報システム部門やDX推進部門向けのセミナーを月1回開催。D人財向けにkintoneオンライン相談窓口も用意している。

2. X人財(ルールを整備する人)

ルールの整備は誰もができることではない。kintoneでは、そのノウハウを凝縮して資料化した「ガバナンスガイドライン」を無料公開している。同ガイドラインでは、ノーコードツールを活用できる組織体制作りのコツや拡大フェーズにおけるガバナンスの検討ポイント、利用戦略策定のコツなどがまとめられている。池田氏は「ガバナンスのルール自体も一度決めて終わりではなく、自社の風土や制度、フェーズに合わせて柔軟に変えていくのが大きなポイント」としたうえで、適切な運用ルールづくりを実現できているジヤトコの事例を紹介した。

3. X人財(教育する人)

ITコンサルティング企業である神戸デジタル・ラボでは、当時入社2年目の文系出身社員が、kintone導入プロジェクトを担当。全社導入にあたっての合意形成や体制づくりに細かなケアを行った。 「システム導入段階から各部署のキーマンを集めてワークショップを行い意思決定したり、業務システムをリリースする前にモニターを募集して一緒に開発を進めたりなど、関係者の意見が反映された業務システムを構築しました。これにより現場では、使う、より良くするという意識が芽生える。社内勉強会なども行っており、導入時や導入後の巻き込み、ケアの仕組みをうまく整えてDXを実現した事例です」(池田氏) kintoneでは、各社のノウハウを集約したDX人財育成ガイドラインを提供している。自社のフェーズに合わせたチームや組織の組み方、人材像のポイントがまとめられている。

4. X人財(業務を改善する人)

創業100年の和装染物店である京屋染物店では、4代目社長がkintoneを活用した業務改善に取り組んだ。従来は各工程がブラックボックス化していたが、kintoneにより工程を見える化して管理可能な状態にし、社内ポータルで情報を共有。これにより、過去最高の業績を達成したという。池田氏は「この事例のように自ら業務改善できる人もいればそうでない人もいます」としたうえで、業務改善の流れやコツ、ノウハウを掲載したオウンドメディア「kintone SIGNPOST」を参考になるコンテンツとして紹介した。

継続してDX推進に取り組む伴走サービスも提供

こうした活動は一度始めて終わりというわけではなく、継続して取り組んでいく必要がある。kintoneでは、そこに対して伴走サービスも有償で用意している。DXが思うように進まないと感じている企業はぜひ、kintoneを活用して変化に強いしなやかな組織・人づくりに挑戦してみてほしい。

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