ERPの歴史と現在地
企業の業務プロセスを一元管理し、企業経営をサポートするシステムとして、多くの組織で活用されているERP(Enterprise Resources Planning)。このシステムは、「統合型(オールインワン)」と「分散型(ベスト・オブ・ブリード)」の2つのアプローチで進化を続け、それぞれの時代で価値を示してきた。
1990年代以降、日本の大手企業が進めてきたのは、生産・販売・購買・在庫・会計・人事管理など、異なる業務プロセスを統合管理できるオールインワンERPの、クライアント・サーバ型システムによる導入である。
2010年代に入ると、クラウド技術の発展とともに、中堅中小企業においても、会計や在庫管理、物流などで、個々のSaaSサービスを組み合わせた利用が始まった。その背景にあるのは、APIエコノミーの進展だ。APIエコノミーとは、異なるサービスやアプリケーションがAPIを通じて連携し、新しい価値を生み出す動きを指す。
しかし、部門ごとに導入された「部分最適」の集合体は、複雑さという大きな問題を引き起こしてしまう。システムとしての一貫性やセキュリティはどのように担保すべきなのだろうか? そして私たちは、いったい1日に何度「ログイン」しなければならないのだろうか? 今、期待されているのは、クラウドサービスの利便性はそのままに「全体最適」を可能にする、オールインワン型のクラウドERPである。今回は、株式会社テラスカイ(以下、テラスカイ)が2023年9月にリリースしたmitoco 会計および、同社が掲げるmitoco ERP構想をもとに、次世代に求められるERPの在り方について、解き明かしていきたい。
mitoco ERP構想
クラウド専業のシステムインテグレーターとして2006年に創業したテラスカイは、国内トップクラスのSalesforceコンサルティングパートナーであり、クラウド型グループウェアの"mitoco"を提供している。Salesforceのプラットフォーム上に構築されたmitocoは、顧客管理機能と連携しつつ、社内コミュニケーションやカレンダー、承認ワークフローなどを利用することができる次世代のコミュニケーションプラットフォームだ。2016年のリリース以降、テラスカイはmitocoをオールインワン型ERPとして拡張するための取り組みを続けてきた。
まず、"mitoco Work"との連携によって、勤怠管理や経費精算にまで手が届くようになった。さらに、Salesforce上で在庫、販売、購買管理を実現する国内唯一のソリューション、富士通の”GLOVIA OM”の国内独占販売権もテラスカイが取得。そして、クラウド・オンプレミス間のデータをノーコードでセキュアに連携するデータ連携基盤"mitoco X"によって、既存システムとの迅速な統合も実現する。こうした「mitoco ERP構想」について、テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長の山田誠氏は次のように語る。
「すべての業務、たとえば商談が発生してから、在庫確認・見積書の発行、受注、電子契約、入金消込までを、同一のクラウドサービスの中で完結させることを目指してきました。顧客管理からグループウェア、販売・会計・人事まで一気通貫しているアプリは他には無いのではないでしょうか。『顧客中心主義』の実現に欠かせない基盤になると考えています」
これからのERPに必要なこと
mitoco ERP構想が提供する三大要素として、山田氏は「圧倒的に洗練されたUI/UX」「業務自動化」「AI」を挙げる。特に専心しているのが、システムの使い心地だ。
「テラスカイはもともと、マウス操作でSalesforceの画面を自由自在にカスタマイズできる"SkyVisualEditor"を提供するなど、『自社にとって心地よい画面』の実現を支援してきました。mitoco ERP構想においては、最後発のERPであるからこそ、あらゆるデバイスでの利用に受け入れられる、圧倒的に洗練されたUI/UXをこだわり抜いて開発し続けています」(山田氏)
「業務自動化」においては、mitoco Xによってシステム間の壁をなくし、さらに、ルーティン業務を自動化する仕組みを内在化していくコンセプトだ。ERP が単なる数値管理のためだけでなく、ビジネス・プロセス・オートメーションを実現するためのインフラと進化していく。さらに実業務で応用できる「AI」についても、いち早くテラスカイは着手してきた。会話型AIエンジンを搭載したチャットボットが、業務に関するあらゆる質問に答えてくれるばかりでなく、「レポート作成」など、アシスタント業務も担えるようになった。 こうしたmitoco ERP構想に基づき、2023年9月にリリースされたのが、mitoco 会計である。
mitoco 会計
mitoco 会計として最初にリリースされたのは、財務・管理会計(GL)である。仕訳入力・伝票検索・総勘定元帳・BS/PL/CF、そして管理会計の予算管理、配賦などの機能を有する。もちろんmitoco 会計も、これまでのmitocoのノウハウを活用したワークフロー機能やチャットボットである「mitoco アシスタント」を連携して使用することができる。 また、AI技術による高精度な文字認識技術"AI OCR"が搭載されており、紙の領収書や請求書の支払先名や適格請求書事業者番号、金額、取引日を入力し直さなくとも、あっという間にテキスト化してくれる。mitoco Workが導入されていれば、経費申請との自動連携も可能だ。
mitoco 会計のチャットボットは"AI CFO(最高財務責任者)"としての役割も担える。経営者や経営企画部門が知りたいのは、ツールの使い方ではなく、財務に関わるデータだ。mitoco 会計においては自らダッシュボードをたどらずとも、mitoco アシスタントに「大阪支店の5月のPLを出力して」「部門別の売上推移表を出力して」とひと言頼めば、PDFのレポートを表示してくれる。経理部門に負担をかけることなく、24時間365日、いつでも気になるデータを見ることができる。
次世代の業務プラットフォームへ
mitoco アシスタントのようなガイダンス機能は、テラスカイが注力している仕組みの一つだ。山田氏は、ERPの導入を革新していきたいと言う。
「ERPの導入は大プロジェクトとして捉えられていますが、高額な初期費用は本当に適正なのでしょうか? 現場のオペレーション指導にまで高度な専門性が必要なのでしょうか? 私たちは『デジタルアダプション』の考えに基づき、もっとシンプルで迅速な導入をサポートしていきます」(山田氏)
デジタルアダプションとは、テクノロジーを使いこなすための環境を提供することだ。mitoco 会計にはガイダンス機能やツールチップが搭載されており、マスタの初期設定や不慣れな操作は、「ガイダンスに沿って設定していく」ことで解決できる。マニュアルを見なくてもその機能について教えてくれる。このガイダンス機能によって、ERP導入の負荷を大幅に低減することが可能だ。
mitoco会計は今後も続々と拡張されていく。2024年2月には債務管理(AP)が、2024年中には債権管理(AR)がリリースされる予定だ。さらに、固定資産管理や人事・給与管理にまでmitocoの領域は広がっていく。
最後に、山田氏は次のような思いを語った。
「私が1998年に初めてERP業界に携わってもう25年が経ちますが、本音を言ってしまうと『結局は、人間頼みのシステムから脱却できていないな……』と感じています。コンピュータの歴史で、オフコン、C/S、Web、クラウドなど様々なERPを導入しても、例えば5人いた経理部門は5人のままで、相変わらずシステムを人間が操作している。mitocoを使っていただくお客様には、もっと自動化による生産性向上を実感してもらいたい。mitoco 会計ではアシスタントに話しかけるだけで財務諸表を自動表示するなど、自動化を進めています。ルーティン業務の自動化で、人は意思決定や判断、確認に専念できる。そんな次世代のERPをこれから提供したいです」(山田氏)
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