エレクトロニクスを軸に事業を展開する技術商社、高千穂交易株式会社は1952年に設立され、「創造」という企業理念のもと、先進技術を用いた商品を日本市場に提供し続けてきた。同社で無線通信関連商材のFAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)を務める北嶋 正人氏は、セルラーIoTモジュールのトップベンダーであるQuectel Wireless Solutions(以下Quectel)の通信モジュールを中心とした通信関連商材の完成品・半導体の技術サポートと仕入れ先との窓口としての業務を担当している。本稿では、Quectel の通信モジュールとIIJのSIMを組み合わせたソリューションを提案する同社の取り組みについて、北嶋氏に話を伺った。
製品の小型化・信頼性向上を実現するSoftSIMも提供、IIJのモバイル通信サービスに注目
―高千穂交易がIIJと協業し、同社のSIMを取り扱ったソリューションを展開する理由とメリットについてお聞かせください。
北嶋氏:弊社のお客さまは主に機器の開発・設計を行うメーカーになるのですが、昨今では単にハードウェアの開発・販売を行うだけでなく、サービスも含めたソリューション・ビジネスモデルを展開する傾向が見られます。そこで弊社としても、通信モジュールやアンテナだけでなく、SIMの提供も含めたワンストップソリューションの提案を行っています。
株式会社インターネットイニシアティブ(以下IIJ)が提供するモバイル事業のサービスは、私たちが取り扱っているQuectel製のセルラー通信モジュールと親和性が高く、さらに競合のMVNOモバイル事業との差別化が図れる特徴を備えていたこともあって協業を開始しています。IIJの持つ強みとしては、フルMVNOのサービスで独自にSIMカードを提供できることが挙げられます。これまでお客さまは、SIMカードが提供された時点から発生する基本料金を“当然の経費”と考えていましたが、出荷期間や在庫期間も課金されるなど無駄なコストが発生していました。IIJのフルMVNOサービスならば課金開始時期を柔軟にコントロールできるため、隠れたコスト削減につながります。
また、お客さまがセルラー通信モジュールを選定する際、IIJのSIMならばキャリア認証が不要なため、JATE/TELEC取得済みのQuectelの製品群すべてを候補にすることができ、新製品であってもすぐに市場で使うことが可能になります。セルラー通信モジュールの選定に制約がなくなり、お客さまに多くの選択肢を提案できることは大きなメリットです。さらに個人向け・法人向けの双方でモバイルサービスを展開しているIIJでは、個人向けのサービス「上り」、すなわちアップロードの通信帯域を活用する、上り優先のオプションを法人向けに提供しています。これは監視カメラなど、アップロードの容量が大きいアプリケーションに好適といえます。
そして、最も重要な強みとなるのはSIMの提供形態として、カード・チップだけでなく「SoftSIM」を選択できることにあります。物理的なハードウェアが不要で、通信用プロファイルを通信モジュール内のセキュアな領域にある仮想マシンに書き込み、提供するSoftSIMがもたらすメリットは多岐にわたります。
―IIJが提供するSoftSIMのメリットについて詳しくお聞かせください。
北嶋氏:大きく3つのメリットがあります。1つ目は部品点数削減による最終製品の小型化です。SoftSIMを採用するとSIMカード、スロットのスペースを削減でき、Quectel製の「BG77」という小型モジュールと組み合わせるとそのメリットを最大限に活かすことができます。
2つ目は製品の信頼性向上です。SIMカードは振動や熱に弱く、SIMカードなしで利用できるSoftSIMに優位性があり、車載や屋外で使用される機器・製品に対して最適なソリューションになります。もちろんチップSIMでもSIMカードに比べて信頼性は高くなりますが、最小発注数量やチップの供給リードタイムを考慮すると、SoftSIMに利があると考えています。
弊社がSoftSIMの付加価値と捉えている3つ目のポイントは「商流の確保」です。昨今の製造業では、開発は日本、製造は海外で行うケースが数多くみられます。このため、海外の工場が部材を調達する際に現地の商社から購入してしまい、弊社が技術商社として技術サポートさせて頂いても注文いただけないことが少なくありません。SoftSIMならば、弊社からIIJに製品を納入してファームウェアの書き換えを実施してからお客さまに納入しているため、必ずIIJから購入いただく形になり、弊社にとって機会損失を抑制するというメリットが生じます。
このように、IIJとの協業は、弊社とお客さまの双方に多くのメリットをもたらすため、積極的に提案を行っています。
Quectelのセルラー通信モジュール+IIJのSIMを組み合わせて、製品の品質向上と通信コストの削減を実現
―高千穂交易が取り扱っているQuectelのセルラー通信モジュールの特徴についてお聞かせください。
北嶋氏:Qualcommのチップセットを使用した製品を中心に5G・4G・LPWA(低消費電力で長距離のデータ通信を実現する無線通信技術)の通信モジュールを展開しており、最近では低消費電力のSony Semiconductor製のチップを採用したLPWA製品も日本向けにリリースしております。異なるカテゴリ、もしくはチップセットの製品でも基板レイアウトをそのままに置き換えられるレイアウト互換の通信モジュールを取り揃えており、変更に掛かるコストを抑えることができます。
通信モジュール製品と組み合わせるアンテナについても、さまざまなタイプをラインナップしており、JATE/TELECを取得したアンテナも用意されています。また、通信モジュールとしてはセルラー用製品のほか、Wi-Fi/BTモジュールやGNSS(全世界測位システム)モジュールもラインアップしているのもポイント。メモリ容量を削減し、小型化した新製品もリリースされており、幅広い選択肢から最適な製品を選べることが大きなメリットといえます。
―IIJのSIMとQuectelのセルラー通信モジュールを組み合わせて、お客さまに提案した事例についていくつか紹介いただませんでしょうか。
北嶋氏:小型ウェアアラブルデバイスにIIJのSoftSIMを採用した事例では、SIMスロットが不要な分、小型化が図れ、そのスペースをバッテリー容量増加に用いて製品の稼働時間を延ばすことに成功しています。さらに車載系のIoT機器に導入して振動によるSIMカードの接触不良をゼロにした事例や、街頭に設置した監視カメラに採用してメンテナンスコストを抑制、さらに上り優先の回線オプションを利用して通信コストを低減しという事例なども、SoftSIMの効果的な活用方法といえます。
また最近の事例としては、エレクトロニクスの開発・製造を行っている、いなばテクノ・エボリューション株式会社様に小型セルラー通信モジュールのBG77とIIJのSoftSIMの組み合わせで提案しています。省スペースなセルラー系のLPWAモジュールを探していた同社にIIJを紹介し、SoftSIMのメリットの説明、通信料金やローミングについてさまざまな提案を行った結果、最終的に採用していただくことになりました。
―IIJのSIMを導入したお客さまからの反応はいかがでしょうか?
北嶋氏:評価時にはSIMのレンタルが可能なため、検討がしやすいという評価をいただいています。料金についても、お客さまのデータ通信量を開示いただくことで細かな設定で最適化は図れるため、要望に応えることができています。IIJには通信接続できるまでSoftSIMの技術サポートをいただいており、通信品質を含め現在までお客さまからのクレームはありません。今後もIIJには高品質なサポートを期待しています。
IIJが提供するフルMVNOのモバイル通信サービスが、企業のIoTビジネスを加速させる
IIJが提供するフルMVNOのモバイル通信サービスは契約形態やネットワークの自由度が高く、導入企業がSIMの開通・課金開始のタイミングを自由に設定可能。中断・再開の切り替えも容易に行えるほか、契約したデータ通信量を複数のSIMでシェアできるパケットシェアプランも用意されており、通信コストの最適化が図れる。マルチFF(フォームファクター)SIMカードやチップSIMに加え、通信モジュール内にSIM機能を実装するSoftSIMに対応することで、さまざまな機器への組み込みを容易にし、IoT(モノのインターネット)の実現を指点してくれる。
IoTを用いてモノづくりのビジネスを拡大したいと考えているのならば、グローバル標準のセルラー通信モジュールとIIJのモバイル通信サービス(SIM)の組み合わせは見逃せない選択肢となるはずだ。
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