市民の命を守る存在である、病院。その停電はあってはならないものだ。しかし厳しい自然災害が頻発する昨今、その影響を被り停電が起きる可能性はゼロとはいえない。とりわけ医療現場においても業務の様々な部分でデジタル化が進んでおり、停電によってITシステムが一時的であれ使えなくなることは、非常に重大なリスクと化している。日進月歩でデジタル技術が進化し、利便性が向上している一方、そのリスクは日に日に大きなものになってゆくだろう。医療機関でもしもすべてのサービスが提供できなくなったら――。患者に大きな迷惑をかけるであろうことは、想像に難くない。あってはならないものの、あり得ないとは言い切れないこのリスクを前に、医療機関はどのような対策を行えばいいのか。本記事では、万が一の停電時にも重要な業務を問題なく継続できるようにしてくれるUPS(無停電電源装置)のソリューションにフォーカスする。

デジタル化が進む医療機関で、停電時に起こり得るリスク

病院では電子カルテの普及が進んでいる。紙のカルテと異なり、会計、処方のオーダー、臨床検査といった様々な診療情報を一元的に管理できるため、患者の診察・治療等に関する情報検索や共有、データを基にした分析などを手軽にかつスピーディーに行えるのが最大のメリットだ。そのほか会計や薬剤処方も含めて業務が大きく効率化し、手作業によるミスの削減にも寄与する。

この電子カルテに代表されるように、いま医療の現場でも電子化・デジタル化の動きが加速している。Web予約に始まり、コロナ禍を機に注目されたオンラインでの問診・診療や服薬指導、また医療に関するクラウドシステムの活用もスタートしている状況だ。

加えて、マイナンバーカードの健康保険証利用が進展するとマイナポータルの活用も進む。そこに医療情報を集約する必要があるためデジタル化は不可欠といえるだろう。近年は医療DXの観点から全国医療情報プラットフォームの構築に向けた動きが始まり、利用者の保健医療情報を提供するPHR事業者を活用することも考えられる。さらに、生命に直結するところでは遠隔医療が今後普及し、地方の病院でも大都市と同等の技術レベルを提供できるようになることも予想されている。医療機関におけるこうしたデジタル化は、前述のように人手不足に悩む現場の業務効率化や人に起因するミス削減の一つのキーとなるほか、患者のデータを分析することでより良い医療の実現に活用することも可能とする。

ただ、その一方でITシステムは電気がなければ動かないものであり、どんなときにも電気の供給を絶やさない対策が必須となる面もある。デジタルを活用する部分が増えれば増えるほど、停電などによって電気が途絶えてしまうと業務の遂行が阻害され、ITシステムを使えなくなったり、外部のクラウドシステムにつなぐネットワークが停止して利用できなくなったりと、最悪の場合“何もできなくなる”可能性が生じるわけだ。また、病院内のサーバーにデータを保存している場合は、停電が原因でデータを喪失したり、復旧までに長い時間がかかったりするリスクもある。遠隔医療の施術中であれば、それこそ手術自体にリスクが生じるだろう。

  • (図)医療機関における停電のリスク

停電から非常用発電機が起動するまでの空白を埋めるUPS

冒頭でも触れたように、いまその停電のリスクを高める自然災害が頻発し、激甚化の傾向を見せている。台風による暴風雨や線状降水帯がもたらす同じ地域での長時間の豪雨はもちろん、大気の状態が不安定になることでゲリラ豪雨、落雷、竜巻などの被害も顕著になっている。加えて、日本はそもそも地震大国であり、重要インフラをストップさせる大地震がいつどこで発生しても驚けないのが実情だ。

停電の多くは、こうした自然災害がもたらす土砂崩れや倒木などにより電線が断線することで発生する。2019年の台風15号で千葉県の送電鉄塔が2基倒壊したのは記憶に新しいが、こうした事態が起きると電気の供給は当然ストップしてしまう。停電からの復旧も数時間以内に再開するとは限らず、地震で大きな被害を受けたような場合は数日から1週間近くに及ぶことも想定される。こうした自然災害に起因する停電は国内で毎年発生しており、全国のどこであっても他人事ではいられないはずだ。

医療機関の多くも、電力会社からの送電が止まった自体に備えて非常用自家発電設備を用意していることだろう。停電が起きたら、電気の供給元をそちらに切り替えて業務を続ければいい、というのは見方としては正しい。ただし、非常用自家発電設備が停電後すぐに各設備に給電できるわけでないことには注意したい。電力会社からの送電が停止した後、非常用自家発電設備から各設備に給電できるまでには、実は数分の空白があるのだ。

その数分の空白に何らかの形で電源を確保しなければ、バッテリーを内蔵していない機器はシステムがダウンしてしまうだろう。デジタル化で導入したITシステムが使えなくなり、ネットワークが停止することにより、外部クラウドに保存されているデータも、あるいは遠隔医療もアクセスできなくなる。つまり、止めてはいけない医療に支障が出る可能性があるということだ。さらに、一度シャットダウンされたシステムは、再起動や再設定に時間がかかるケースも少なくない。災害時の貴重な人的リソースをシステム復旧に充てねばならないということにもなりうるだろう。

そこで注目したい機器がUPSである。UPSとは、停電が起きたとき、非常用自家発電設備から各設備に給電できるまでの間に電気を安定供給する装置だ。つまりUPSを導入することで、不意の停電に対しても電源を途切れず確保し、医療に関わる作業を継続することが可能になる。 病院ではこれまでも医療機器などに対してのバックアップ電源は用意していただろうが、受付をはじめ電子化された事務作業を行っているところでは、停電対策が見落とされている可能性が高い。いざ停電が起きて電源を確保できない状態になれば、急遽紙の書類で代替するか、あるいはサービスをしばらく停止せざるを得ない。

大規模な病院ではUPSも含めて停電対策をしっかり行っているところも多いが、中・小規模の医療機関は人手不足やコストなど様々なハードルから、UPSでカバーしている設備が限定されている。医療機関の大小問わずデジタル化が進んでいく今、ぜひUPSの見直し・導入に向けた検討を開始し、不測の事態に備えることをおすすめしたい。

いざというとき働いてもらうために欠かせないUPS運用保守の極意

  • (図)三菱電機のUPS導入のメリット

医療機関がUPSを導入するにあたっては、留意したいポイントがいくつかある。最大のポイントは、UPSは「導入して終わり」ではなく、導入後の運用保守がきわめて重要になるということだ。

UPSはいざというときに瞬時に他の設備・機器へ電気を供給するため、バッテリーを搭載している。バッテリーは寿命があるため、日頃から性能をチェックしてメンテナンスしておくことが必要だが、それを怠ると実際の停電となったとき、肝心のUPSがバッテリーの劣化で給電できないというケースも起き得る。中・小規模の医療機関であれば一人の職員が畑の異なる複数の業務を担当するのはよく見られる光景だが、UPSは運用保守にも一定の専門知識が求められるため、理想的なメンテナンスはなかなか難しい。とはいえ、そのためだけにUPSに精通した人材を雇うのは無理な相談だろう。

そこで、UPSの選定にあたっては、運用保守サービスまできっちり提供してもらえることをまずは最優先でチェックしたい。もちろんUPSの製品としての高い性能と安定長期稼働の信頼性も重要な要件である。加えて、これもやはりある程度の知識がないと必要なUPS容量や導入すべき数などを判断できないので、ニーズに対し柔軟に相談に乗ってくれるメーカーであることも重視したい要素だ。

その点、三菱電機のUPSはプロフェッショナルが運用保守サポートを提供するほか、全国各地にサービス拠点を展開しており、トラブルが起きても迅速に対応してくれるのがなんとも心強い。さらにオプションの遠隔監視サービスを使うことで、24時間の遠隔監視も受けることができる。万が一の故障や不具合があった場合に、UPSが自らアラートを発信するものだ。遠隔監視サービスを利用すれば、UPSの状態をサービス拠点側でも把握できるため、職員がその不具合の状況等を説明する必要もなく、かつサービス員が何度も現場確認をする必要がなくなるため、迅速な設備復旧が期待できる。つまり、最小限のリソースでUPSを維持できるうえ、いざというときに故障で使えないという最悪の事態も避けられる。安心感はさらに高まるはずだ。

いうまでもなく製品の性能と信頼性は高く、製品ラインナップも小容量から大容量まで豊富に用意。あらゆるニーズに対応が可能だ。それゆえ選定にも悩んでしまいそうだが、もちろん導入時のサポートも手厚い。設計時には使用用途や設備の規模に応じて最適なモデルを提案してくれるうえ、納入時の立ち上げ支援も受けることができる。必ずしも病院内に電気の知識を持った職員がいなくても、安心してUPSを導入することができるのだ。

さらに長寿命部品を採用しておりランニングコストを下げられる点も強調したい。製造拠点の多くが国内にあり、部品もほぼすべて国内から取り寄せることができるという点も、国内メーカーならではの心強さといえるだろう。

社会におけるさまざまな困りごとの解決に向けて貢献することを目指している三菱電機。60年という長きにわたってUPSソリューションを提供し続け、今もトップクラスのシェアを誇る三菱電機だからこそ、それぞれの医療機関の課題解決につながる柔軟な提案をしてくれることだろう。

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