Denodo Technologiesは2023年 7月6日(木)、東京ステーションホテルにて技術カンファレンス「Denodo DataFest 2023 アジャイルデータ管理とアナリティクス」を開催した。世界各国で行われているDenodo DataFestだが、日本での開催は初となる。本稿では、注目のセッションについてダイジェストでレポートする。

Denodoの論理ファースト・アプローチ

オープニング・キーノートには、Denodo最高経営責任者 アンヘル・ヴィーニャ氏が登壇。「論理ファースト・アプローチ~アジャイルデータ管理とアナリティクスへ~」と題して講演した。

2022年にDenodoが実施した調査では、対象企業の約6割がビジネスに十分にデータを活用しきれていないと回答したという。ヴィーニャ氏は、この要因の1つとして、データ量やデータ基盤の種類、データ利用者の数が増加することによってデータが複雑化していることを挙げる。そして、「従来、データインフラはモノリシックでありETLで構築していけばよかったが、現在では、データが複雑化し、ETLベースのソリューションでは対応が難しくなってきた。データテクノロジーの進化に伴ってアーキテクチャを変えていかなければならない」と指摘する。

  • Denodo Platformのイメージ

Denodoとしては、複数の場所あるいはシステムにデータが分散している状況であることを前提として、論理的なアプローチを提案している。これは、データの場所や物理システムから切り離され一元化されたセマンティックモデルを利用し、データにアクセスするという考え方である。これを実現するベースとなるのは、Denodoの強みであるデータ仮想化というテクノロジーだ。

「データベース、DWH、クラウドなど場所を選ばず、また構造化データ、非構造化データといったデータ形式も選ばず分散データを統合できます。ユニバーサルセマンティックモデルおよびAI/MLを使って関連データを管理しているため、データガバナンスも実現しています。さらに、一元的なセマンティックレイヤーを介してどんなツールへもデータを配信可能です。このため、ユーザーは、BI・データサイエンスツール、データカタログ、APIなどを使用してデータを利用でき、データの民主化を実現できます」(ヴィーニャ氏)

データ活用で実現する「最大多様の最大幸福」

「データを使うことで、サステナビリティとWell-Beingを調和させながら未来を目指していくことが重要です」と語るのは、慶応大学医学部教授 宮田裕章氏だ。宮田氏は基調講演で、データ活用で実現する新しい未来像について解説した。

デジタル庁の設立をはじめ、コロナ禍を経てデジタル化が進んだ側面もあるが、マイナンバーカードへの信頼が低下していたり、高齢者や子どものIT活用が進まなかったりなど、日本はデジタル化に関していまだ多くの課題を抱えている。さらに、昨今話題の生成系AIの発展により、教育や仕事のあり方を改めて見直す時期にも来ているといえる。こうした状況を受けて宮田氏は「AIの発展より、知識を持っていることではなく、さまざまな人とつながりながら課題提示できる力、問いを立てる力が求められるようになってきている。デジタルを前提としたうえで、これから人間はどこにフォーカスしていくべきか考え、医療や教育をはじめあらゆる産業を構築していかなければいけない」と指摘する。

ここで重要となるのが、宮田氏の「最大多数の最大幸福から、最大多様の最大幸福へ」という考え方だ。 デジタル化が進んだことにより、従来の大量消費的な価値観が変化した。現在ではインターネットでダイレクトに人と人とがつながることで、ニッチなコンテンツもビジネス化できるようになっている。宮田氏は「世界と直接つながることで価値を創出できます。平均化するのではなく、世界の多様な価値観とつながって新たな価値を作り出していくことが重要です」とする。GAFAに代表されるテックジャイアントを追うのではなく、いかに新しい価値をつくるかという発想が重要だという。

宮田氏自身も、行政と連携して子どもの貧困虐待問題の解消に挑むなど、データ活用の取り組みを進めている。宮田氏は「デジタル化により、1人1人のデータを見ながら対策を考えていくことが可能となっています。つまり、多様性に配慮しながら幸福を追求できるようになってきている」と、データを用いた最大多様の最大幸福といった価値観について語った。

Denodoが貢献する「One NEC Dataプラットフォーム」の実現

カスタマー・キーノートでは、日本電気(NEC) コーポレートIT・デジタル部門経営システム統括部ディレクター 秋田和之氏が、同社のデータ基盤に関する取り組み「One NEC Data プラットフォーム」について紹介した。

今から2-3年前、同社では年間30億件のトランザクション、58億件のマスタ、20万件の商談件数と日々膨大なデータが生み出されていた。またコロナ禍を契機としたテレワークの普及により、チャットやメールの件数は350万件を超えていた。

「当社ではこれらをデータポテンシャルと呼び、価値になるものと信じていました」と秋田氏。しかし、当時はさまざまなデータがサイロ化されてしまっており、データを使いたいときに使えない、データの信頼性がわからないといった問題からデータを十分に活用しきれていなかったという。また「データソースからデータを引き出し、データレイクに入れてDWHに渡し、ユーザーのBIツールに届けるまでに2-3か月のリードタイムが掛かることも多く、時代のニーズに答えられていませんでした」とも振り返る。

そこで同社では、必要なときに必要なデータが使える「データが民主化された状態」を目指すべき姿として設定した。これに向け、従来のデータ基盤を残して拡張する方針でスピーディーに対応できるソリューションとして採用されたのが、Denodoだ。

  • One NEC Dataプラットフォーム イメージ

現在、One NEC Dataプラットフォームでは、Denodoを組み合わせることで、データ活用のコストとリードタイムを7割以上削減できているという。また、450億件・1.5TB(圧縮後)のデータ基盤をもとに、1700近くのDenodoのデータカタログを作成しており、経営ダッシュボードやレポート作成など、データドリブン経営への活用事例も出てきているところだ。

通信キャリアビジネスにおけるデータ仮想化のメリットとは

KDDI 技術統括本部 次世代自動化開発本部 オペレーション基盤開発部 マネージャー 田中亮大氏は、カスタマー・キーノートとして通信キャリアビジネスにおけるデータ仮想化の取り組みを紹介した。

同社の監視・回線プロビジョニング部門では、通信回線の契約から、サービス提供、監視までさまざまなシステムやデータを扱っている。ただし、従来はサイロ化されたデータソースをもとに、複雑な業務やデータ、個別に最適化されたシステムを利用している状況。たとえば、法人顧客から開通の調整や運用状況に関する問い合わせを受けた際には、複数のシステムを横断してデータを検索・参照して電話やメールで回答する必要があり、多くの時間と工数を要していたという。

  • KDDIへのDenodo導入イメージ

そこで、同社はこうした業務の効率化、およびAPI経由で社外へデータ提供できる状態にすることを目指した。田中氏は「コストや期間を考えると、システムへのインパクトを最小にしつつ効率化できる方法として、データ収集と結合が効率的かつ柔軟にできるDenodo を採用した」と、Denodo導入の背景を説明する。現在は、Denodoを活用しデータ収集・結合することで目的別にAPIを生成し、顧客へのAPI提供を始めているという。

Denodo9では大規模言語モデルの連携も予定

Denodo シニア・プリセールス・エンジニア 貞森雄介氏、Denodo パートナービジネス戦略部長 赤羽善浩氏は、現在開発中のDenodo Platform 9について紹介した。

同バージョンにおいて特に注目されているのが、データカタログと大規模言語モデルとの統合だ。チャット形式で質問文を入力すると、自動でSQLクエリと説明を生成して実行する機能の開発が進んでいる。プレビュー版のリリース後、Denodo Platform 9で正式に実装される予定となっている。

関連リンク

Denodo ホームページ

[PR]提供:Denodo Technologies