オンラインとオフラインが融合したOMO時代が到来し、より信頼性の高い顧客体験を演出することが求められている。今後ビジネスを成長させていくためには、蓄積された顧客データを眺めながらただ一喜一憂するのではなく、テクノロジーによってデータを有効化しリアルタイムに活用することが重要だ。5月18日に開催されたWebセミナー「TECH+ Business Conference 2023 ミライへ紡ぐ変革 データ活用Week」にて、ティーリアム ジャパン カントリーマネージャー 酒井秀樹氏は、データをリアルタイムで活用する際に直面する課題と解決策について解説した。

旧来のデータ蓄積型CDPが抱える課題とは

酒井氏は冒頭で、架空のペルソナ「マツモトジュン」を用いて、現状のOMOショッピング体験の課題について説明した。

マツモトジュンさんは、ジーンズを買おうとブランドのオンラインサイトに訪問し商品をカートへ入れたが、やはり実物を見てからにしようとそのまま離脱。その後、たまたま通りかかった実店舗で試着してサイズ感を確認した後、会員証アプリを表示して10%ディスカウントで購入に至る。しかし、サイト内のカートにはそのまま商品が残っているため、その後もすでに購入した商品のディスカウントメール(しかも実店舗での10%割引よりも更なる値引き率)が送られたり、広告が表示されたりするため、ブランドに対する印象が悪くなってしまった。

ティーリアム ジャパン カントリーマネージャー 酒井秀樹 氏

ティーリアム ジャパン カントリーマネージャー 酒井秀樹 氏

酒井氏はこうしたカスタマージャーニーの例に対し「マツモトジュンさんは良い顧客体験を得ることはできませんでした。シンプルなOMOのシナリオですが、こうした課題に対応することは難しく、多くの企業が悩んでいるポイントでしょう。」としたうえで、顧客体験向上の課題について「ブランド側のデータと組織がサイロ化しており、各々の組織で収集可能な顧客データに対する解像度を上げられていない場合が多いです。一人のお客様とのやりとりを点で捉えており、線や面で捉えることができていません。お客様側は、そのブランドとは線や面でつながっています。マツモトジュンさんも、たまたま実店舗の前を通りかかり、商品を購入しました。しかし、オンラインショップのカートに残している商品の同じブランドを、1つのブランドだと認識しているわけです。」と、カスタマージャーニー上のタッチポイントを支えるシステムと組織に問題があったと指摘する。

  • カスタマージャーニーとシステム

    カスタマージャーニーとシステム

この課題を解決する方法として、カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)の導入が考えられる。CDPを活用して組織内で分散するデータをクラウド上のデータベースに統合し、顧客理解を深める360度データを蓄積し、データ分析部門が各部門でそれぞれデータ解析できるような体制を整備する。その後、目的別のデータを作って各種マーケティングツールへ提供するといったステップでデータを活用していく流れとなる。

  • 旧来のデータ蓄積型CDPアプローチ

    旧来のデータ蓄積型CDPアプローチ

しかし旧来のデータ蓄積型CDPでは、過去データをバッチ処理で提供するため、顧客の行動を検知してからマーケティングツールへ提供するまでに時間がかかってしまう。過去の情報を考慮したうえで、“今この瞬間”の顧客行動を把握したアクションをとることが難しいというわけだ。前述のマツモトジュンさんが実店舗に入店したのも、大切な1つの「瞬間」である。

“その瞬間”の行動データを活用する新しいアプローチ

続いて酒井氏は、『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』(日経BP、藤井保文著、2022年)を紹介した。「OMO時代にはUXが圧倒的に重要となり、2つの環境変化が起きています。1つは、行動データによる顧客理解の解像度向上です。2つめは一連の行動フローの支援です。結果として、これまでの勝ちパターンが通用しなくなり新しいビジネスモデルを生み出す必要があるでしょう」と同著のポイントについて解説する。そのうえで、自身の実感について次のようにコメントした。

「私もお客さまと接するなかで、こうした現象が現実に起きており、その対策が必要だと感じています。行動データによる顧客理解の解像度向上のためには、お客様の”今”を捉える必要があります。つまり、過去も理解しつつ、顧客とつながった”その瞬間”の行動を捉え、解像度を上げることが重要です。そのうえで、タイミングよくお客様に心地よい方法で、つまりオムニチャネルでコミュニケーションをすることが求められるでしょう」(酒井氏)

そのためには新しいアプローチと仕組みが重要となる。酒井氏によると、新しい顧客データ基盤に求められる要件は下記の4つだという。

  1. 過去データ×その瞬間の行動データを組み合わせて使用できる
  2. その瞬間の行動データを起点にリアルタイムでアクションが取れる
  3. グローバル規模でデータセキュリティとプライバシー保護法に対応
  4. 既存のツールをそのまま利用することが可能。投資を無駄にしないでベスト・オブ・ブリードアプローチが取れる

ティーリアムが提供する、顧客体験とコンバージョン改善に特化した新たなCDPアプローチ

ティーリアムは、行動データを用いて顧客体験とコンバージョン改善を目指すことに特化した新たなCDPアプローチを提供している。一番の特徴はバッチ処理がなく、動画のストリーミングのようにデータが流れるイメージでリアルタイム処理できることだ。顧客の行動を起点とし、データ収集から施策ツールでのアクションまでを1秒以下で処理可能となっている。具体的には次のような流れで処理が進む。

  1. あらかじめ顧客の過去データを統合
  2. 顧客のこの瞬間の行動データをセキュアな形でキャプチャし標準化、有効化
  3. 過去データと行動データから顧客ごとのプロファィルとセグメントをリアルタイムで更新
  4. セグメントにもとづき、MAやパーソナライズツールなど施策ツールにデータを供給し、施策ツール側のトリガーを引いてアクションを起こす
  • ティーリアムの新しいCDPアプローチ

    ティーリアムの新しいCDPアプローチ

酒井氏は、再度冒頭のカスタマージャーニーを用いて、ティーリアムCDPの活用イメージを次のように説明した。

ブランドのオンラインサイトでは、ファーストパーティクッキーを利用。ユーザーが訪問したタイミングから、「流入元:検索、ロケーション:東京、デバイス:PC、訪問回数:1、ステータス:匿名」といった形でプロファイルに含まれる各種属性情報がリアルタイムで更新されていく。訪問した際にユーザーがクッキーを受け入れると、オプトイン情報もプロファイルとして更新されるため、同意管理も万全に対応できている状態だ。

その後、気に入ったジーンズを何度も閲覧すると、「興味対象:デニム」と更新される。そして、購入しようとログインしたタイミングでメールアドレスをキーにして過去データと紐付けられることで、前回ログイン日時、ステータス、利用店舗、自社EC購入歴、会員ステータスといった情報が更新され、顧客の解像度をさらに高めることができる。今回はVIP会員であることが判明したので、会員向けの3%ディスカウントコードを発行した。

マツモトジュンさんはデニムをカートへ追加したが、購入せずにそのまま離脱。「顧客行動:カート放棄、セグメント:カート落ち」と更新される。同時に施策ツールに対して、リアルタイムでリマインドメール、リターゲティング広告、リマインドSMSメッセージというアクションが指示される。近隣店舗への来店をメールで推奨したり、前日の理論在庫を表示したりすることも可能だ。

マツモトジュンさんは店頭で試着し、会員アプリを表示し10%ディスカウント権を行使。サイトで閲覧していた際に発行されたVIP会員の3%ディスカウントコードとあわせることができたので、その場で購入を決意。その際、リアルタイムにPOSデータと連携することで、ユーザープロファイルの顧客行動は「購入」に変わり、セグメントも「購入済み」となった。セグメンドが変更されたあとは即時に広告出稿を停止、購入サンクスメールが送信される。カートに商品は残っているものの、ディスカウントメールや広告が届くことは以降一切なかった。

「ティーリアムは顧客の過去を理解し、今を捉え、解像度を上げたうえで、タイミングよくお客様に心地よい方法でコミュニケーションを自動で実現できます。今のOMO時代にマッチしたデータ活用が得意なCDPといえるでしょう。ベンダーニュートラルなデータ活用のハブとなっており、さまざまな施策ツールをコントロールできます」(酒井氏)

ティーリアムではCDPのスターターキットも用意している。ぜひ実際に試してみて、そのリアルタイム性を確認してはいかがだろうか。

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