兵庫県三木市は、健康を増進する「みっきぃ☆健康アプリ」を2022年10月より市民に提供している。このアプリはNTTデータ関西が開発した健康サポートアプリ「アスリブ」をベースとしており、健康活動にポイントを付与することで、電子マネーやギフト券を配布し、マイナンバーカードの普及や、キャッシュレス決済の利用促進を目的として運用されている。
「みっきぃ☆健康アプリ」開発の経緯と効果について、三木市とNTTデータ関西の担当者に話を聞いた。
マイナンバーカード普及と健康増進、2つの課題を解決する健康アプリ
「デジタル推進課は、令和4年4月から設置され、行政事務のデジタル化を推し進めています。今後進んでいく生産年齢人口の減少に対応するためには、今から現在の業務を見直し、デジタル化による業務の効率化を進めることが重要な課題となっています。そのためには、マイナンバーカードによる本人確認やキャッシュレスによる料金の支払いが必要となります。」(大西氏)
三木市 デジタル推進課の大西武宏氏は、このように経緯について話を進める。マイナンバーカードは、コロナ禍以前から利用できるシーンが少ないことが大きな問題だった。そこで生まれたのが、健康増進を目的として利用を促進し、普及を図ろうというアイデアだ。この発想は、医療保険課の課題解決とも合致した。
「医療保険課は、もともと2019年から健康ポイント事業を行っていました。特定健診の受診率が低いことが三木市の課題となっていましたので、インセンティブを与えることで、受診を促進したかったのです。」と語るのは同市 医療保険課の山城千明氏。
「しかし、この健康ポイント事業は紙を使っていたため、残念ながらあまり盛り上がりませんでした。デジタル化したいと考えていたところ、健康増進アプリのアイデアがデジタル推進課から出たんです」(山城氏)
三木市は、このアイデアの実現を目指して2022年4月にプロポーザルを実施。3事業者の公募を受け、7月にNTTデータ関西の健康サポートアプリ「アスリブ」が選出されることになる。最大の決め手は、「健康管理」と「マイナンバーカードによる本人確認・電子マネー等の交換」がひとつのアプリで完結することだったという。
「他社の本人確認サービスを活用した提案では、本人確認と健康管理は別々のアプリになってしまいます。NTTデータは自社の本人確認サービス『BizPICO』(※)を採用しており、マイナンバーカードの認証をワンストップで可能にしていました」(大西氏)
※「BizPICO」は、マイナンバーカード、IC運転免許証、IC在留カードを利用して、本人確認と証跡情報保管を実現するサービスです
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/bizpico/
「市民に長く使ってもらえるアプリ」であるために
採択から3か月後の2022年10月、「みっきぃ☆健康アプリ」として稼働を開始した。
開発にあたり、NTTデータ関西が重視したのは事業設計とポイント設計だ。マイナンバーカードの利活用と普及、キャッシュレス化という健康増進以外の目的もあることから、ワンアプリでの完結に最後までこだわった。
そして、汎用性の高さも三木市に評価された。プロポーザル以前からアスリブというアプリは完成していた。目的が異なる自治体ごとにさまざまな提案が行えるよう、もともと汎用的に開発されているわけだ。取得する情報やUIも、幅広い層に利用されることを前提に作られており、わかりやすい。また、マイナンバーカードがなくとも、ポイントを貯めるアプリとしてまず利用を開始できる柔軟性もある。
「三木市だけでしか使えないアプリでは、今後の展開に制限があり、新しい機能の追加などが難しくなりますが、アスリブは全国にサービスが広げていくという目標を持たれていました。また、ポイント交換できる景品が、全国で使える決済サービスやギフト券に対応しているところも魅力のひとつです。三木市では、新規登録と初期段階でのポイント付与を増やし、アプリの利用と継続を促す仕組み作りを行っています。」(大西氏)
「周辺の市町村でも導入いただければ、相乗効果を生み出せると思います。経済的な面はもちろんですが、例えば隣町を訪問するイベントなどを企画すれば、お互いの町の知らないところを知る機会にもなり、交流が活発になるのではないでしょうか」(山城氏)
とはいえ、導入当初はさまざまな問題も発生した。そのひとつがNFCに対応していないスマートフォンだ。だがここで参加者を選別してしまっては普及など期待できない。そこでNTTデータ関西は急遽、認証用の端末を用意。スマートフォンとマイナンバーカードを持参するとログイン状態で認証できるという仕組みを作った。
「NTTデータ関西さんには柔軟なご対応をいただきました。それでも、電話とメール以外はできないという想像以上にスマホの使い方を知らない方は多いです。ですから、数人のグループで使用方法を聞きたいという要望があったら私たちが説明に出向いています。今後は、民間だけでなく行政のデジタル化はますます進むでしょう。ここでアプリを使ってスマホの使い方を丁寧に教えることが将来の糧になると思っています」(山城氏)
現在、アスリブはさまざまな自治体から「三木市様の事例を真似たい」という声が多く寄せられており、全国各地で利用が広がっている。「全国どの自治体も、三木市のように固有の課題やニーズを抱えています。そこに柔軟に応えられるのもアスリブの強みです。さまざまな自治体のご支援を通じて蓄積したノウハウや新たな機能を、三木市をはじめ全国の自治体に還元していくことで、さらにサービスを拡充していきたいですね」と尾本氏は今後の意気込みを語る。
最大の強みはゲーム感覚で使えること
三木市の人口はおよそ7万8,000人。アプリ登録者数は当初半年で2,500人を目標としていたが、現在約4,500人が登録しており、上々の滑り出しだ。ユーザーの中心は50~60代であり、自分の健康状態や毎日の運動状況が見られると好評だという。
「普段の体温・血圧などの測定結果がグラフになるため、『分かりやすい』『楽しい』『励みになる』という声をいただいています。また、ご夫婦や友人同士の話題としても活用いただいており、想定以上の効果を上げているように感じます」(深谷氏)
「グループでランキングを付けて楽しんでいらっしゃる人たちもいるんですよ。これまで万歩計でやっていたことが、目に見えて、景品ももらえる楽しみになりました。お年寄りが家の外に出るきっかけ作りや、コミュニケーションの促進にもなりそうです」(寺井氏)
NTTデータ関西は、今後も直接の使い方サポートやコールセンター、窓口のサポート、マニュアル作成などの支援を続ける予定だ。「自治体さまに導入することがゴールではなく、利用者の悩みを解決しなければなりません。実際にアプリを使うのは市民のみなさまだからです。我々の目的も最終的には市民の健康増進だからこそ、同じ目標に向けてまっすぐ取り組めるのだと思います。「生まれてから看取られるまで、生涯の健康を見守るアプリ』としてアスリブを発展させていきたいですね」とNTTデータ関西の尾本は述べる。
三木市では、健康増進だけに留まらない、さまざまな活用も考えられている。将来的に行政事務の連携、医療費や処方箋の閲覧などの機能も持たせた“三木市アプリ”という形へ発展させたいという思いがあるという。
「まずは普及を促進しつつ、水道光熱費の支払いのように申請業務をデジタルで完結させたいと思っています。またマイナポータルとの連携を強め、マイナンバーカードの利活用が進む中で親和性を高めたいですね。そのためにデジタルディバイド(情報格差)対策を進めるとともに、マイナンバーカードの使い方を浸透させていきたいと考えています」(寺井氏)
「みっきぃ☆健康アプリ」は、これまで楽しいものではなかった健康のための取り組みや市役所の通知を、ゲーム感覚で楽しめるものに変えた。実際、アプリができてからは「続けて欲しい」「やめないで欲しい」という声が増えたという。三木市の取り組みはいま、全国の自治体から注目されている。
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