「カーライフ」「産業ビジネス」「電力・ユーティリティ」「ホームライフ」の4部門を軸に、多様なビジネスを展開している伊藤忠エネクス株式会社。ECサイトを活用した卸売に取り組む同社は、サイトをSalesforce B2B Commerceで刷新、さっそく売上増といった効果を上げている。さらに同社では、Salesforce B2B Commerceを導入したことで全社的なデジタル活用に踏み込んだという。アナログ×デジタル双方の活用、販売店向け営業DXのアプローチという面においても、学ぶべき部分が多い本事例を紹介しよう。
B2B事業の拡大を見据え、システム再構築に着手
“人と人とのつながり”を重視するエネルギー商社として、全国の販売店やグループ会社とともに事業に取り組む同社では、デジタル技術の活用も重要なミッションと捉えている。全国で1,600を超える系列のガソリンスタンドなどに燃料を卸し、近年では車関連の事業を幅広く展開しているカーライフ部門では、デジタル活用の一環として販売店・グループ会社向けのECサイトを2019年に構築。構築当初のECサイトは最低限の機能を備えたパッケージ製品を使用していた。運用を続けていく中でECサイトの重要性を認識し、販売店やグループ会社とのパートナービジネスをさらに推進するためには、商品の拡充や適切な提案が迅速に行えること、各パートナーとリアルタイムで情報共有を行える機能が必要だと実感。B2B事業拡大のためのシステムの再構築を着手した。本プロジェクトの責任者である、伊藤忠エネクス株式会社 カーライフ部門 リテール供給部長 久藤 資士 氏は、ECサイト刷新に至った経緯をこう語る。
「当初のECサイトは、卸先の販売店やグループ会社向けに構築したため、輸入タイヤの販売を中心としたオーダーシステム的な要素が強いものでした。少しずつ売上を伸ばしていく中でECサイトが対応する事業領域の広さに可能性を感じ、そこから一歩進めた本格的なECサイトの構築を検討しました。単に商品を販売する仕組みというだけでなく、商品の仕入から物流までをトータルで担えることを目標に掲げてECサイトの再構築プロジェクトを始動しました。系列販売店向けのECサイト再構築を皮切りに、最終的にはグループ内外を問わず幅広い層に価値を提供するECサイトを目指しています」(久藤氏)
こうして2021年の7月に始動したB2B向けECサイトのリニューアルプロジェクトでは、既存サイトが抱えていた課題の解消を起点に、ビジネス的な要望に対して柔軟に対応できるシステムの構築を模索。複数ベンダーの提案を比較検討した結果、テラスカイが提案したSalesforce B2B Commerce(以下 B2B Commerce)の採用を決定した。本プロジェクトで中心的な役割を担った伊藤忠エネクス カーライフ部門 リテール供給部 リテールマーケティング課の高橋 立寛 氏は、B2B Commerceを採用した理由を次のように話す。
「パッケージとして提供するものや、アジャイル型で変化に対応しやすいものなど、複数ベンダーから提案をうけ、検討を進めました。久藤が話したとおり、本プロジェクトではB2B事業の再構築を見据えており、スタート段階で具体的な施策に落とし込むところまでは想定していませんでした。このため、拡張性の高いサービスであるB2B Commerceを使ってシンプルなECサイトからスモールスタートするというテラスカイの提案が、我々の考える方向性とマッチすると判断しました。また採用を決めたもう1つの要因は、全社的な顧客管理システムとしてSalesforceを導入していたことです。B2B Commerceを用いてECサイトを構築することで、Salesforceの機能を最大限活用できるのではと考えました」(高橋氏)
B2B向けECサイトをスピーディに構築
このような経緯でスタートし、2022年1月にB2B Commerceの採用を決定。同年5月~6月にかけて要件定義を進め、7月からシステム開発が開始された。リテール供給部 リテールマーケティング課には、システム開発の経験が豊富なメンバーが参画しておらず、さらにSalesforceに関する知見も少なかったと高橋氏。「テラスカイには必要な知識や概念の部分から教えてもらい、我々の“やりたいこと”に対してアドバイスをいただきながら開発を進めていきました。プロジェクト管理の仕方など、勉強になる部分が多く、『Eコマースの仕組みはこう作られていくのか』と知見を深めることができました」と振り返る。
「リニューアル前のECサイトでは、ベンダーに要望を出して対応してもらうだけでしたが、テラスカイがパートナーになったことで要望に対するリスクなど、建設的なアドバイスをいただけたのが非常に効果的でした。こちらがやりたいことと、システムで実現できることについて随時確認しながら、最適な落としどころを判断し、システムを作り込むことができました」(高橋氏)
Salesforceのシステムと連動し、B2B向けのECサイトをスピーディに構築できるB2B Commerceと、その機能を熟知したテラスカイのサポートにより、ECサイトのリニューアルはスムーズに進行。3カ月余りで構築を完了し、2022年11月に正式リリースされ稼働を開始した。
最適な商品提案が迅速に行えるようになり、売上と利益に向上効果
「以前からビジネスを拡大していくうえでやりたいことのイメージは持っておりましたが、システムが足かせとなり、実現できていないケースもいくつかありました。たとえば、データ分析と顧客や販売店の潜在ニーズに応じた商品提案です。これまで人的リソースをかけて手作業で抽出していたデータは、簡単にレポートとして出力でき、全国のパートナーと共有できるようになりました。データを活用して分析まで行い、ビジネス推進の意思決定が迅速に行えるようになりました。購入履歴をはじめとした情報をSalesforceの情報に紐づかせて、地域や販売店それぞれに合わせた商品提案を行えるようになりました」(高橋氏)
実際、リニューアル直後からその効果が現れたという。「売上は前年比1.5倍で推移しています」と高橋氏は運用後3カ月で既に手応えを感じているという。
社内ユーザー、販売店、顧客等、全てのステ-クホルダ-にとってプラスの効果
Salesforceの管理を中心に本プロジェクトに携わっている伊藤忠エネクス カーライフ部門 リテール供給部 リテールマーケティング課の市丸 博章 氏は「全国の販売店が、伊藤忠エネクスのECサイトをどの程度活用しているのかといったデータがSalesforceに集約されるようになり、社内で『Salesforceを見る』という意識が促進されました。全国に散らばる社員やパートナーと常に最新の情報を共有できるようになったのは大きいと感じています」と語る。
同じくリテール供給部 リテールマーケティング課の永島 嵩哲 氏は、メーカーとの情報共有方法が便利になったことを利点にあげる。
「これまではECサイトで販売する商品のメーカーとのやりとりは、FAXや電話で行う必要が多々あり、商品管理に手間がかかりました。今ではメーカーとweb上でやりとりできるポータルサイトを作成したことで、商品の販売情報や状況がお互いにスムーズに共有できるようになりました」(永島氏)
ECサイトを活用している販売店と、その担当となる支社のメンバーからは、以前のシステムで顕在化していた「キャンセル処理がシステム上でできない」「送料や在庫の管理がスムーズにできない」といった課題が解消されたと高い評価を得ているという。これまで手作業で行っていたキャンセルや予約注文もシステム上で簡単に行えるようになり、レスポンスが遅いといったクレームは激減した。
顧客、販売パートナー、社内の営業担当者など、ECサイトに関わるステークホルダー全体の利便性向上につながったと、それぞれの立場から頷く。
B2B事業におけるECサイトの価値向上をフックに、アナログ×デジタルの両輪でビジネスを推進する
久藤氏は、商材、すなわち仕入業者を増やすと同時に関係性を深め、最終的には伊藤忠エネクスグループ外にも販売網を広げていきたいと、今後の展望を口にする。
「伊藤忠エネクスには幅広いビジネスパートナーがおり、我々の持っている価値とビジネスパートナーが持っている価値を掛け合わせることで最大の効果が得られると考えています。これはB2B向けのECサイトにおいても同じで、競合する企業ともデジタル化、DXという観点では協働していくイメージで、業界全体の課題解決を図っていければと思っています」(久藤氏)
久藤氏が語る目標を実現するため、B2B向けECサイトのプロジェクトも次のステップへと踏み出している。「同じ目線で協働できるビジネスパートナーとつながりを持つための仕掛けは考えており、今後はB2B2Cを意識した販促の機能も追加していく予定です」と語る高橋氏。現在は倉庫との連携をはじめとした物流システムの改善を進めており、その実現に向けてテラスカイのさらなる支援を期待している。
さらに久藤氏は、本プロジェクトをカーライフ部門のECサイト構築という目的を超えた、伊藤忠エネクスグループにおけるDX推進のきっかけにしたいと将来的なビジョンを語る。
「伊藤忠エネクスは、人を大事にし、人と向き合いながらビジネスを展開しており、ある意味で、“アナログ”な部分を重視している会社といえます。このため、DX、デジタル化についても、部単位、課単位で個別に取り組んでいるような状況でした。今回のプロジェクトを通じて、支店やグループ会社のメンバーも含めて『デジタル化は今後必ず必要になる』という意識を共有できたことは、全社的なデジタル活用に踏み出すための第一歩になったと感じています。これに具体的な数字(成果)が付いてくれば、DXのモチベーションがより高まっていくでしょう。もちろん、アナログ的な人のつながりを重視した当社のイズムをなくすのではなく、デジタル・アナログの両輪でビジネスを推進していければと考えています」(久藤氏)
今回のプロジェクトは、顧客情報と連携したB2B向けECサイトの構築という面だけでなく、商社におけるDXのアプローチという面においても、学ぶべき部分が多い事例といえる。伊藤忠エネクスとテラスカイによるSalesforceとB2B Commerceを活用した取り組みには、今後も注視していく必要があるだろう。
[PR]提供:テラスカイ