クラウドのメリットを活かすには、既存システムをリフトするだけでなく、PaaSを活用したクラウドネイティブな環境にシフトすることが重要だ。Google Cloudのマネージド サービス プロバイダであるクラウドエースが、オフラインイベント「オンプレ・IaaS 脱却! PaaS / DBaaS を使ったモダンインフラと現実的な移行方法について」を2023年4月18日に都内で開催した。クラウドエース高島 涼 氏、Aiven Japan 合同会社三谷 知廣 氏 が登壇し、Google Cloudを例にPaaS活用のポイントを解説した。
環境構築作業やメンテナンスなど、システム運用の"うれしくない"ことを解消するには
昨今ではSaaSをはじめとするクラウドサービスの活用が当たり前になった。そんななかオンプレミスで稼働している既存システムをクラウドに移行する動きも活発化している。しかし単にクラウドにシステムをリフトしただけでは、クラウド本来のメリットは享受できない。むしろシステム運用の負担が増えたり、運用コストの増加を招いたりすることが多い。こうした課題を解消するうえで重要になってくるのが、PaaSなどを活用してクラウドリフトしたシステムをクラウドネイティブなかたちにシフトしていくことだ。
セミナーではまず、クラウドエースの高島 涼氏が「オンプレ・IaaS 脱却! PaaS / DBaaS を使ったモダンインフラ」と題して、システム運用の"うれしくないこと"と、その解決策としてのフルマネージドインフラのメリットを解説した。
「システム運用の"うれしくない"ことでエンジニアが疲弊してしまい、サービスに悪影響が出ることもあります。具体的には複数環境の構築作業や、複雑なデプロイ構成の管理、セキュリティパッチ当てによる夜間メンテの発生、スパイクによる緊急対応、データベース最適化などが挙げられます。また、そもそもエンジニアが不足していることも大きな課題です」(高島氏)
たとえば、よくあるシステム運用作業の例として、PM1人、モバイル2人、サーバー2人、インフラ2人というチーム構成で、メンテナンス、スパイクによる緊急対応、スケールアップ、スケールイン、ロールバックなどを行うとする。この場合、作業が重なると、単月で 160時間 の運用コストが発生する可能性があり、スケールアウト/スケールインなどの作業が後回しになることも多いという。
「クラウド環境において、サーバーやデータベースなどのスケールアウト/スケールインを容易にすることは未来への投資になります。それができないことでクラウドのメリットが生かせなくなります」(高島氏)
フルマネージドインフラパッケージを利用することで、運用コストの7割減も可能
そこでクラウドエースが提唱するのが、フルマネージドで提供されるクラウドインフラの活用だ。クラウドエースは、Google Cloudの最上位認定パートナーとして、 Google Cloud導入支援や、専門SIベンダーとして開発支援などを総合的に支援するサービスを展開している。
フルマネージドで提供されるクラウドインフラとは、クラウド事業者が提供するさまざまなマネージドサービスと、クラウドエースが提供する導入・開発・運用支援サービスを組み合わせたものだ。
「当社は『Google Cloudフルマネージドインフラ』サービスを提供しています。このサービスのコンセプトは、No Opsにあります。これは、No “Uncomfortable” Ops、つまり、システム運用の"うれしくない"ことをなくそうという意味です。エンジニアにとってうれしくない、負荷集中時の性能低下や、システム運用保守におけるコスト高などをなくすことで、効率的で付加価値を生みやすいインフラ運用を実現していくのです」(高島氏)
具体的には、コンテナイメージのデプロイや自動スケールを実施できるGoogle Cloudのマネージドサービス「Cloud Run」と、制限のないスケールが可能で99.9999%の可用性を備えたGoogle Cloudのデータベース(DB)サービス「Cloud Spanner」を組み合わせて、コストパフォーマンスに優れたインフラ基盤を設計していく。
「WebサーバーやDBサーバーで構成されたシステムで、サーバーのスケールが不安定だったり、DBへのセキュリティパッチ当てやシャーディングなどのメンテナンスに課題がある場合、Cloud RunやCloud Spannerを活用することで、オートスケールの実現やメンテナンスの効率化、ダウンタイムの削減が可能です」(高島氏)
クラウドエースのフルマネージドインフラパッケージを利用することで、運用コストの7割減も可能だという。
「Google Cloudフルマネージドインフラ with Aiven」でクラウドの運用課題を解消
Google Cloudフルマネージドインフラは、トレーニングやインフラ構築で構成されている。トレーニングでは、Cloud RunとCloud Spannerについて、勘所や注意点を含めたハイレベルトレーニングを実施。インフラ構築においては、本番環境の構成に合わせた構成管理ツール(Infrastructure as Code: IaCを実現のツール)の「Terraform」コードや、高度で軽量なフレームワーク「Go言語」と「Echoフレームワーク」を使用したサーバー側のベースとなるコードを提供する。
また、サポートサービスとして、Google Cloudのサポートや、Google Cloudを活用した開発の受託と伴走型支援、クラウドエンジニアの育成、パートナー製品としてマーケットプレイスへの登録の支援なども行う。
さらにフルマネージドインフラパッケージでポイントとなるのが、Aivenとの連携が可能なことだ。Aivenは「データインフラをシンプルに」をコンセプトにデータ基盤構築で必要になるさまざまなオープンソースソフトウェアについてフルマネージドサービスを提供する。
「Google Cloudが提供するDBサービスには、Cloud Spannerのほかにも、Cloud SQL、AlloyDBなどがあります。メンテナンス時間や可用性、パフォーマンスなどを考慮してこれらを選定していきますが、ここでも開発者や運用者にとって"うれしくない"ことが生まれます。それを解決してくれるのがAivenです」(高島氏)
Cloud SQLは2011年にリリースされたRDBで、MySQL、PostgreSQL、SQL Serverを選択できる。可用性は99.95%で、四半期に一度数分間のメンテナンスが発生する。AlloyDBは2022年に登場したPostgreSQL互換のマネージドRDBで、PostgreSQL14のみ選択でき、メンテナンス時間を含む可用性は99.99%だ。一方Cloud Spannerはノーメンテナンス・ノーダウンタイムが特徴だが、分散させるためのスキーマ設計が必要で、既存DBからの単純なリフトではパフォーマンス課題だ。そこで活用できるのがAivenとなる。
「データインフラをシンプルに」をコンセプトにOSSマネージドサービスを提供
Aivenは2016年にヘルシンキで起業したユニコーン企業だ。オープンソースのマネージドサービスを提供することで、オープンソースの管理・運用や、セキュリティ、マルチクラウド環境でのさまざまな課題を解消する。
たとえば、オープンソースの管理・運用では、障害時のダウンタイム、障害時の対応、頻繁に発生するメンテナンス、エンジニア対応、運用負荷の増大と開発へのリソース割り当てが課題になりやすい。また、マルチクラウド環境では、異なるクラウド間でのレプリケーション構築や障害時の冗長構成、障害時のマニュアル対応によるオペレーションミスなどが課題になりやすい。Aiven Japanの三谷 知廣氏は次のように説明する。
「クラウドベンダーのサービスのなかでオープンソースを運用する場合も、簡単な障害は自動復旧してくれますが、ディスクやAZ(アベイラビリティゾーン)の障害をマニュアルで対応していたり、ネットワークコストやストレージコストが変動するため、予算と請求に乖離が生じたりといった課題があります。そこで『Aiven for MySQL』や 『Aiven for PostgreSQL』を利用するとこうした課題を解消できます」(三谷氏)
Aiven for MySQLやAiven for PostgreSQLをGoogle Cloudで利用すると、MySQLやPostgreSQLでダウンタイムのない運用(DNSアップデートによるフェイルオーバーで実現)や99.99%のアップタイムSLA、可観測性とログの外部統合(Prometheusメトリクスの無償統合、Datadog連携)などが可能だ。
三谷氏は、リードレプリカを用いて、マルチAZ DR(ディザスタリカバリ)や、 マルチリージョンDR、マルチクラウドDRを実現する手法や料金プラン、ネットワーク構成、ユーザー事例などを解説。実際に「データインフラをシンプルに」することの効果を強調した。Aivenは国内展開でクラウドエースと戦略的パートナーシップを締結しており、導入支援やサポートでも密接に連携する体制だ。
クラウド移行が活発化するなか、運用が新たな課題になるケースも増えている。そんなとき、Google Cloudフルマネージドインフラ with Aivenは大きな助けとなるはずだ。
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