イオンネクスト株式会社(以下、イオンネクスト)は、AIとロボティクスを活用した最先端の自動倉庫システムを実現することによって、これまでにない買い物体験ができるオンラインマーケット事業の準備を進めており、マスターデータ管理システムとしてStibo Systems MDMを導入している。イオンネクストではStibo Systems MDMをどのように活用し、ビジネスの価値を生み出しているのか。同社の IT部長 駒場 光徳氏にその舞台裏を聞いた。

イオングループの新たなデジタル戦略

“オンラインマーケット”としての新ブランド「Green Beans(グリーンビーンズ)」のサービス開始に向けて、着々と準備を進めるイオンネクスト。約5万品目もの食品・日用雑貨・医薬品から商品を購入し、早朝7時から夜23時までの幅広い配送時間を指定できる。AIによる自動提案や一週間分のまとめ買いなど「買い物を変える。毎日を変える。」をコンセプトに、これまでにない買い物体験を提供予定だ。イオングループは2019年、最新のデジタル技術を駆使したネットスーパー事業を立ち上げるために、英国Ocado Solutionsと提携。イオンネクストを設立した。

新たなイオンのデジタル戦略について、イオンネクスト IT部長 駒場 光徳氏は次のように語る。

駒場 光徳氏

イオンネクスト株式会社 IT部長 駒場 光徳氏

「イオングループは早期からECを始めていました。もともとは”店舗に来ることができないお客さま”に対してサービスを展開し、実店舗から商品を出荷するのが主流でした。しかし、従来の"店舗出荷モデル"ではどうしても工数・コストがかさんでしまい、なかなか事業を拡大することができませんでした。日本の食品通販市場は4兆円と、巨大な市場です。その中で競争優位に立つべく、Ocadoグループと戦略的パートナーシップを結び、世界最先端の"倉庫出荷モデル"構築へと大きく舵を切ったのです」(駒場氏)

自動倉庫の運営に欠かせないデータは?

イオンネクストが千葉市緑区に建設した誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)の延べ床面積は約5.2万㎡に及ぶ。店舗とは比べものにならない生産性を実現するために、ピッキングロボットの稼働テストが日々おこなわれている。

  • 誉田CFCロボットの稼働の様子

    誉田CFCロボットの稼働の様子

  • 誉田CFCピッキングステーションの様子

    誉田CFCピッキングステーションの様子

ベルトコンベアや搬送ロボットが連携し、入庫(棚入れ)や、出庫(ピッキング)作業が自動的におこなわれる設備を「自動倉庫」と呼ぶ。イオンネクストが目指す最先端の自動倉庫が機能を発揮するには、「商品マスター」のデータ精度が極めて重要だ。商品のサイズ・重さはどれくらいか。上に乗せてはいけない商品はどれか。隣り合わせてはいけない商品はどれか。考えて判断できる人間と違い、ピッキングロボットはあらかじめデータが用意されていなければ、状況を処理することができない。

物流面においても同様だ。トラックの荷台にどのような順番で積めば、配送時に取り出しやすく、効率よく運ぶことができるのか。算出するには、商品マスターに「梱包時の情報」まで含める必要がある。

海外では、商品情報の標準化は昔から重要視されてきた。なぜなら、もともと商品の納品率が低かった海外では、商品マスターを整備すれば、発注者と受注者が明確にコミュニケーションできるようになり、納品率を高められるという直接的なメリットがあったからだ。しかし日本では、伝票運用で取引が成立し、非常に高い納品率だったため、商品マスターを整備するという意識が醸成されなかった。日本人は真面目・勤勉であるがゆえに、業界としてマスターデータを整備する必要性がそもそもなかったのだ。

「20年ほど前、経産省主導で商品マスターデータ同期化プロジェクトが立ち上がり、私も参加したのですが、残念ながら芳しい結果にはなりませんでした。しかし、デジタル技術が進歩する中で、商品マスターの重要性はますます高まっています。Ocadoからは、『ネットスーパー事業の根幹は商品マスターにある』と言われました。それは、この2,3年で、私自身痛感したことです」(駒場氏)

Stibo Systems MDMで商品マスターを整備

商品マスターのデータを統一整備し、品質や鮮度、信頼性を維持しながら管理することをMDM(Master Data Management)と呼ぶ。駒場氏はMDMのソリューションを重要視し、以前から比較検討してきたが、イオンネクストの立ち上げに当たって採用したのは、Stibo Systems MDMだった。Stibo SystemsはMDM専業のベンダーとして45年を超える実績を持ち、世界中の先進企業に選ばれている。

「Stibo Systems MDMは、シンプルかつ使いやすいソリューションでした。そして何より、自動倉庫を実現するためには複数のAPIを走らせる込み入った処理が必要ですが、パートナー企業であるOcado SolutionsはStibo Systems MDMを使ってそれを実現しています。すでに実績があり、パートナーネットワークから実際の使い方を聞けるというメリットもあったことから、Stibo Systems MDMを採用するに至りました」(駒場氏)

Stibo Systems MDMはSaaSで提供されているため、ツールの導入自体は容易だった。時間がかかったのは商品マスターのデータ整備だ。イオンネクストは2021年末、マスターデータのメンテナンスチームを発足させ、取引先に「情報を登録してください」と働きかけるところからプロジェクトをスタートさせた。

保管が常温か冷蔵かといった判断も、たとえばバナナであれば熟している度合いによって、チョコレートであれば季節によって変わる。一品ずつ、定義すべき項目を考え、データの正しさを担保していく作業が必要だった。論理的な検証とイギリスの自動倉庫でのテストを経て、現在、1万品目以上の入庫処理が始まっている。段ボールがコンベアによって運ばれ、「この商品は段ボールの上蓋を切り取ってください」などと表示される。スタッフが作業をした後、ロボットが棚入れをしていく。こうしたすべての作業の大元となっているのが、Stibo Systems MDMに登録された商品マスターだ。

実際に商品が動く様子は格別だったと、駒場氏は感慨を漏らす。

「データ整備は非常に大変な作業でしたが、Stibo Systemsのプロフェッショナルサービスチームによるサポートを受けながら進めることができました。おかげで20年越しに、ビジネスの根幹となる、"正しい商品マスター"を構築することができました」(駒場氏)

デジタルシフトと人間の力を融合させたサービス展開

Stibo Systems MDMが管理する商品マスターに基づき、イオンネクストは自動倉庫や、自社配送サービスの開始に向けた準備を進めている。配送効率が向上すれば、環境負荷を低減することができ、イオングループが推進するESG経営にもつながる。

駒場氏は、マスターデータ管理のさらなる展開を次のように語る。

「まずは商品マスターに取り組みましたが、次はサプライチェーンの根幹となる”取引先マスター”の整備に着手したいと思っています。そして当然”顧客マスター”も必要となるでしょう。グループ内や協力会社からもMDMについて相談を受ける機会が増えました」(駒場氏)

また、倉庫作業を超効率化する一方で、顧客接点にはさらに力を入れる。商品を配送するのはすべて接客と品質管理の教育を受けた自社の専任スタッフ(デリバリークルー)であり、顧客の最終的な購買判断は実物を見てからになる。Eコマースのビジネスだからこそ、人と人が接する部分に人間の力を注ぐ姿勢だ。

「イオングループ内のデジタルシフトにおけるコア事業が、イオンネクストです。ここで新たな文化を築き、日本社会に新しい風を吹かせていきたいと思います」(駒場氏)

  • 駒場 光徳氏

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