ネットワークの重要性が再確認されたコロナ禍を経て、”つながること”への期待は高まる一方だ。デジタル・インフラストラクチャ・カンパニーであるColtテクノロジーサービスは顧客のネットワーク改革を支援すべく、SD-WANなどのサービスを拡充している。

これと同時に進めているのが、営業体制の確立だ。同社が成長市場と位置付けるアジアの営業担当バイス・プレジデントに就任した大江克哉氏は、市場のチャンスをどう見ているのだろうか。

  • Coltテクノロジーサービス マネージング・ディレクター アジア営業担当 バイス・プレジデント 大江克哉氏

AIやクラウドなどのトレンドを下支えするのは「帯域幅」

大江氏はアイ・ビー・エム、EMCジャパン、ベリタステクノロジーなど、さまざまなIT企業で幹部を歴任してきたキャリアを持つ。では、なぜ通信業界に飛び込んだのだろうか? その理由を「帯域幅」と大江氏は述べる。

「クラウド、AIなどがIT分野で伸びると言われていますが、そうなると、そこをつなぐ帯域幅が圧倒的に不足していきます。逆に言うと、帯域幅を扱う通信が今後、最も伸びる領域と感じました」と大江氏。帯域幅は、コロナ前は35%程度、コロナが収束しつつある現在も30%程度の成長率で伸びているという。

通信業界は、規制が厳しくグローバル展開が難しい。その中にあって、Coltテクノロジーサービスは2014年に買収したKVHを通じて、日本で自社ファイバーを敷いている。大江氏は誘いを受けた時、ローカルのカバレージを持ちながら、SD-WANなどの戦略を展開していこうとするColtの戦略にも惹かれたという。

このような面に加え、Coltテクノロジーサービスにとってアジア、中でも日本は成長市場。そこで、今回新たに営業を率いる役職を設けたという点も大きな魅力となった。大江氏は、営業&マーケティング&カスタマーを担当するエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるAndrew Edison氏の直属となる。「前任がいないので、自分の手腕を試すことができます。キャリアとして、グローバルチームの中でやってみたいという思いもありました」と、同氏は続ける。

  • Coltテクノロジーサービスのアジアの営業体制

カバレージを広げつつ、SD-WANなど上位レイヤーへ

1992年に設立されたColtテクノロジーサービスは、2014年のKVH事業統合により欧州/アジア全域に拡大、世界23カ国の都市で光ファイバーネットワークを所有する。2022年には、米Lumen Technologiesより同社のEMEA事業を買収する意図があることを発表した。

日本では、東京・名古屋・大阪といった主要都市に自社網を持ち、目下、西日本地区の拡大を進めているところだ。「Coltのファイバーで接続できるデータセンターは100以上、直収ビルは2400以上」と大江氏。日本を含むアジア・太平洋地区の顧客数は2700を上回る。

Coltテクノロジーサービスのミッションは、「いつでも・どこでも・どのようにでも」。“いつでも”では、カバレージを広げる戦略として、自社網を広げつつ提携も進める。これが水平方向とすれば、“どこでも”では、光ファイバーなどの物理回線の提供に加え、SD-WANなどレイヤーを上げていく垂直方向のアプローチを取る。

「閉域網からインターネットにブレイクアウトする動きが活発になっています。その上にSDN(Software Defined Networking:ソフトウェア定義ネットワーク)、セキュリティ対策としてSASE(Secure Access Service Edge)などが載っていきます」(大江氏)

様々な接続サービスを提供した上で、顧客の要望に応じたアクセス技術などのオプションを揃え、ポータルなど使いやすさも提供することで、“どのようにでも”を実現する。

  • Coltテクノロジーサービスのミッション「いつでも、どこでも、どのようにでも」

こうしたColtのビジョンは、ネットワーク帯域のトレンドに呼応したものだ。

英国本社を例にとると、新型コロナウイルスが登場する直前の2020年2月と2022年2月、オフィス内のユーザー数は720人から110人に減ったにもかかわらず、トラフィックは120Mbpsから152Mbpsと、26%増えた。その背景には、ファイル共有がクラウドに移り、基幹系システムがオンプレミスからSaaSに移り、そしてオンライン会議の急増がある。

「ピーク時に合わせたネットワークを設計することが重要になっています」と大江氏。オンラインで全社ミーティングをやる水曜日はオンライン会議へのトラフィックを優先させるといった対策が鍵を握ると語っていた。