ビジネス環境や働く人々の価値観が大きく変化するなか、個人と会社が互いを選び合い、高め合う環境の構築をめざす日立ソリューションズ。2022年度からは、新卒入社3年目の社員全員を対象に「若年層ジョブマッチング制度」を開始しました。同制度は若手社員の自己成長やキャリア形成にどのような効果を発揮するのでしょうか。制度を立ち上げた人事部門の担当者と利用した若手社員、双方の立場から取り組みの意義を紐解いていきます。
ITのプロフェッショナルとして自律的に成長し、社員と会社が対等な立場になることをめざす
日立ソリューションズには、社員の自律的なキャリア形成を促す制度が複数あります。なかでも、若年層ジョブマッチング制度は非常にユニークな仕組みです。その狙いや展望について、日立ソリューションズ 人事総務本部 人財開発グループ 部長代理 槙田理恵さんに伺いました。
——本制度を立ち上げるに至った背景についてお聞かせください。
当社では人事施策のコアとして、従業員体験(EX:Employee Experience)を人事施策の各フェーズで向上させようという方針を掲げています。そして、従業員がITのプロフェッショナルとして自律的に成長していく職場環境を用意することが、EX向上に向けた重要な取り組みのひとつになると考えています。しかし、新卒時に「SE職」として採用を行うなかで、入社前では対象業界やお客様へソリューションを提供するためのプロセスを踏まえた実際の業務内容を具体的にイメージしづらく、現場を見る前に配属希望を出さなければいけないことが課題でした。仕事をしてみて「実際と想定が違った」「実務をしてみたら希望が変わった」というケースがあった場合に対処が難しかった、というのが発案の背景です。
——具体的な内容について教えていただけますか。
新卒入社3年目の社員全員に対し、社内求人への応募、または現在の部署に継続して所属することを自ら選択する権利が与えられます。権利は2年間繰り越すことが可能なので、該当者はまず制度を利用するか否かを宣言します。そして、利用希望者は、自己PRシートを作成して社内求人に応募し、面談を行います。他部署に応募して合格した場合、現部署には該当者の異動を拒否する権利はありません。
初年度は新卒入社3年目と5年目の社員178名が対象となりました(制度導入時の措置として、制度導入年度の新卒入社5年目までを本制度の対象とした)。異動を希望した社員はそのうち34名、実際に他部署への異動を実現したのは16名でした。また、同数である16名が今の部署に所属しつづけたいという意思表示をしています。
——制度にはどのような狙いがあるのでしょうか。
自らの希望で異動できるチャンスは他にも社内FA(フリーエージェント)制度や社内公募制度がありますが、いずれも若手のうちから利用するのにはハードルが高いといえます。みんなが一斉にキャリア選択できる機会の方が利用しやすいという若手社員の声を聞き、本制度を立ち上げました。
自分のキャリアについて考える機会を提供するという狙いがあります。仕事が忙しいとキャリアについて突き詰めて考える時間はなかなか得られませんが、同期全員が一律で今後のキャリアを選択しなければならない環境のなかでは、自ずと意識が向くようになると思います。
——今の部署への継続を宣言できることもユニークですよね。
新卒時の配属がうまくマッチしたケースは多いですし、継続を宣言する社員の存在はその部署のビジョンと本人のWillが合致していて、本人の希望通りの成長がし続けられる環境という証拠でもあります。ただ、「居心地がいいから」と漫然と仕事しつづける状態をつくってしまうことは避けたいと考えています。本制度により改めて自分の意志で今の部署での成長を選択することで、今の仕事に対する意気込みも変わると考えています。当社で元々何がしたかったのか、そのために必要なスキルは何なのか改めて見直し、自律的に仕事に取り組んでいくための第一歩にしていただきたいですね。
若年層ジョブマッチング制度
概要
- 対象は新卒入社3年目*¹の社員全員
- 社内求人への応募、または現所属部署の継続を選択(異動を強制するものではない)
- 制度の利用は最大2年間繰り越すことができる
- 社内求人への応募は、面談の合格により異動を決定
- 他の異動制度*²と同じく、対象者の上長は異動の拒否権を持たない
*¹ 初年度となる2022年度は、新卒入社3年目と5年目の178名を対象に実施
*² 社内FA制度、社内公募制度など
趣旨
「 EX (Employee Experience)向上 」 の観点から 、 若年層が自らの職務を選択することで自律的なキャリア形成を支援し 、 キャリア意識の醸成とその後の自律的成長を促す
——制度によって会社への理解も深まりそうです。
事業という観点では部署の垣根を越えてシームレスに連携できていますが、人財の流動性は現時点でそこまで高くありません。退職者の転職先を見ていると「その仕事ならウチにもあったのに……」と思うことがあります。本制度を利用すれば、自分の興味関心にあった業務を探してもらいやすくなりますし、文化や風土、福利厚生を変えずに別の仕事にチャレンジすることが可能となります。
——社内の反応はいかがですか。
制度を利用する権利を翌年度に繰り越せるため、制度初年度でアクションを起こす社員は1割程度だと想定していました。思っていたよりも多くの方々に使っていただけたという印象です。また、今の部署への継続を宣言した人が意外に多かったですね。異動元の部署からは「せっかく育てたのに……」と思われてしまう側面もあると思いますが、本制度の開始にあたっては、各部署とコミュニケーションを重ねることで、社内の理解を得ることができました。変化の激しい時代において人財マネジメントのあり方を見直すきっかけになったという声もいただき、前向きに捉えていただいていると感じています。
——今後のビジョンについてお聞かせください。
当社の財産は「人」です。社員がキャリアを自律的に考えることができれば、一人ひとりが輝き、仕事に反映され、より良い組織がつくられていきます。本制度をはじめ、当社には多様なキャリアを実現できる環境があります。今後も制度やその運用をブラッシュアップしていくことで、社員自らが選択したキャリアでITのプロフェッショナルとして成長し、会社と従業員双方が高め合う世界をめざしていきます。
入社後3年間で開発の魅力を知り、より経験を積める部署へ
本制度を利用し、2023年5月から部署を新たにするビジネスイノベーション事業部 ビジネス・プラットフォーム・サービス本部の新開皇紀さん。新卒入社後3年間、電子決済システムの管理・保守業務を主に担当してきました。新開さんは、どのような思いで制度を使い、他部署への異動を希望したのでしょうか。
——新しい部署での仕事内容と、本制度を利用された理由について伺えますか。
異動先の部署では、自社製品であるポイント管理システム「PointInfinity」(※)の開発を担当することになりました。決済関連ということで事業内容自体は前部署と似ていますが、保守業務がメインだった前部署に対し、新しい部署では開発を中心とした業務に携わります。
入社時の配属は概ね希望どおりだったのですが、電子決済システムの保守開発業務を行うなかで、自分で開発したシステムが世の中で動いている様子を目の当たりにしたとき、モノづくりならではの達成感や魅力を感じたんです。それを機に、より開発寄りの業務経験を積み、プロジェクトマネージャーとしてのキャリアをめざしていきたいと考えるようになりました。そんなとき、この制度が導入され、開発業務へ挑戦することを決めました。
——制度を利用した感想をお聞かせください。
社内FA制度よりも求人数が多いため、自分のやりたい仕事を見つけられるという印象です。面談を通して職場の雰囲気も知ることができますし、会社はそのままで仕事内容だけを変えられる良い仕組みだと思います。私は職種を変えずに異動しますが、同期には本制度を利用してSEから営業へ転向するケースもありました。自分のキャリア観と部署の方向性が揃っていれば、こうした大きな変更も可能です。個人的には今後のキャリアについて深く考えるきっかけになりましたし、これからの仕事がとても楽しみです。今回、自律的にキャリアを考えるきっかけができたことで、年次が上がった際の開発業務においても良い効果があると考えています。
今やあらゆる業界に欠かせないものとなったIT。そこに関わる人たちの職種もさまざまで、可能性は大きく広がっています。反面、ITに従事する一個人としては、キャリアを自律的に選ぶことが難しくなっているのも事実です。日立ソリューションズの若年層ジョブマッチング制度はそうした課題を解決し、「自分に合った仕事とは何か」を見つめる良いきっかけになる制度といえます。これを通じ、今後同社がどのような発展を遂げるのか、新開さんをはじめ、若手社員の皆さんの活躍に期待したいところです。
(※)PointInfinityは、株式会社日立ソリューションズの登録商標です。
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