「クラウドからオンプレミスへの回帰」が見られるようになってきた昨今、DXを正しく推進させるには、どのような利用方針が最適なのだろうか?2023年3月に開催された TECH+主催のセミナー「クラウド移行 Day 2023 Mar. DX推進を加速させるクラウド移行」より、「クラウド移行とオンプレ回帰の現実解」と題したソフトバンクの講演レポートをお届けする。
クラウド移行の現実問題
オンプレミスとパブリッククラウドは、それぞれ異なる長所を持っている。既存システムとの連携や機密性、迅速な復旧対応などについてはオンプレミスが優れている一方、クラウドデータベースや機械学習MLなどの豊富な機能、設備拡張の柔軟性、コストの費用化などについては、パブリッククラウドが優位に立っている。
2022年時点では、日本企業のうち7~8割の企業がオンプレミスのシステムを利用しており、パブリッククラウドの利用は6割程度。両者を併用するハイブリッドクラウドも注目されている。
「どちらかを選ぶのではなく、それぞれのメリットを最大化するハイブリッドクラウドは、私も正しい方向性だと思います。ただし、ハイブリッド利用は『両方のデメリットを負ってしまう』というリスクがあることを忘れてはなりません」(山後氏)
オンプレミスのデメリットとしては、メンテナンスの労力が挙げられる。ハードウェアやOS・アプリケーションの定期的な更新には多くの時間と手間がかかり、設備の故障やオペレーションミスによる障害にも対応しなければならない。そして、システムを長く使えば使うほど、故障の頻度は増えていく。
「メンテナンスを手放したい」という理由は、クラウド移行のきっかけの大きなきっかけだろう。しかし、パブリッククラウドにおいても、OSやアプリケーションの更新は避けては通れない。さらに、ニュースでもしばしば取り上げられるように、大規模な障害が発生してしまう。内部がブラックボックス化されているため、原因調査・再発防止を講じることは難しい。また、オンプレミスとは設計思想がまったく異なるため、既存システムの移行の際のハードルは高くなる。さらに、為替の変動や従量制課金による「予算化の困難さ」もある。こうしたデメリットと向き合わずに、クラウド移行を強要してしまうと、どうなるだろうか。
実際、パブリッククラウドへ移行したユーザーの、実に4割が、オンプレミスへ回帰する計画や実績を持っているという。
「オンプレミスとパブリッククラウドは一長一短です。現実解を見つけ出す上では、両方のメリットとなる部分を活かし、双方のデメリットを解消できるようなサービスを利用する必要があるでしょう。これに限りなく近いサービスはマネージドプライベートクラウドと呼ばれ、同様のサービスを提供できるのが今回紹介するASPIREです」(山後氏)
ソフトバンクが提供する国産マネージドプライベートクラウドサービス
「ホワイトクラウド ASPIRE」
マネージドプライベートクラウドは、既存の資産を活用しながら、その保守を委託できるサービスである。サーバーやインフラ、ファシリティなどはこれまでのシステムと同等に利用でき、OSやアプリケーションも自由に使えるが、設備拡張や老朽化の更新、故障対応などのメンテナンスはすべて任せることができる。バックアップやDR、セキュリティ対策などに関しても、パブリッククラウドのようなメリットを享受できる。
「ソフトバンクが提供するプライベートクラウドサービスASPIREは、1.国産クラウドとしての品質、2.既存システムとの親和性、3.見える費用という三つの特徴を兼ね備えています」(山後氏)
パブリッククラウドの品質が疑問視され、国産クラウドに回帰するケースは少なくない。一般的なパブリッククラウドのSLA(サービス品質保証)は99.5~99.99%だが、ASPIREは標準サービスで99.999%だ。また、政府のセキュリティ要件を満たしたサービスとしてISMAP認証を受けており、昨今問題視されているデータ主権の問題についても、国際情勢に悩まされる事はない。そして何より、障害発生時には徹底的な原因追及と対策が取られる点も評価されている。
既存の運用を変えずに、クラウド利用へ移行できる点も大きな魅力である。パブリッククラウドはインスタンスの型が決まっており、それに合わせた再設計が必要だが、ASPIREならばCPUのソケット数・コア数まで指定可能だ。既存システムをIPアドレスそのままで移行できるため、「クラウド」であることを意識せず、物理サーバーのコロケーション利用のように自由かつ柔軟な運用が可能だ。当然、これまでに培ったオンプレミスのスキルセットも発揮することができる。
そして、通信キャリアが提供しているASPIREは、インターネットやファイアウォールなどのトラフィック課金が発生せず、無償で利用できる。また、ASPIREの利用プランも月額固定で利用できるメニューが用意されている。
「オンプレミス・パブリッククラウドそれぞれのメリットを享受しながら、それぞれのデメリットを解消しているサービスがホワイトクラウド ASPIREです。ただしIaaSに特化しているため、RDSやFaaS、IoTなどの最新技術まではカバーしきれていません。新たな挑戦をする際は、『クラウドの負の面』を考慮した上で、パブリッククラウドも併用すべきでしょう」(山後氏)
クラウド利用の真の目的は、「時間創出」にある
講演の後半では、山後氏によってASPIREの導入事例が紹介された。
導入事例1.航空系情報システム
●課題:
・機密性が非常に高いデータを扱うため、インターネット接続ができない環境下で構築する必要があった。
●ASPIREによる解決:
・クローズドな環境下でクラウドの柔軟なシステムを利用できるようになった。高い可用性も確保された。
導入事例2.製造業のシステム
●課題:
・クラウド化に伴う社内システムや運用の再設計の時間確保が難しい。
・ファイルサーバーのデータが膨大であり、ネットワーク経由のデータ移行は欠損リスクがあった。
・移行後はファイルサーバーからダウンロードする際のトラフィックコストを懸念していた。
●ASPIREによる解決:
・データをHDDにエクスポートし、ハンドキャリーでASPIRE環境に持ち込み、インポートすることによって、確実性の高い移行を実現した。
・トラフィック課金は発生しないため、コスト変動リスクを回避できた。
導入事例3.メガバンクの情報システム
●課題:
・事業を継続するため、クラウド化した後も従来の情報システムを継続して利用しなければならなかった。
・従来利用していた、クラウドが利用できないシステムとのデータベース連携が必要であった。また、連携の際のタイムラグも作業に影響を及ぼす可能性があった。
●ASPIREによる解決:
・ASPIREのデータセンター内に該当システムを設置し、直結する構成を採用。これにより、遅延の懸念は解消された。
・地震・津波などの災害によって業務に利用するシステムが利用不可になった場合、それを復旧・修復するためのシステムとなるDR(ディザスタリカバリー)構成を東西のサイトに置き、BCP対策も実現できた。
導入事例4.訪問介護のシステム
●課題:
・DaaSとして一部Azureを使っていたが、AD認証やASUSから更新プログラムの配信があった際、大量のトラフィックコストが発生する。
●ASPIREによる解決:
・WSUSをASPIRE上で構築したことで、各拠点に対する更新プログラム適用のための通信が
トラフィック課金なしで行えるようになった。
最後に、山後氏はクラウド利用の目的を改めて総括した。
「クラウドは目的ではなく手段です。では、その目的とは何でしょうか?『システム運用管理を楽にするため』と答える方もいるでしょう。しかし真の目的は、生産性の高い業務や新しいチャレンジに取り組むこと、ひいては『時間創出』のためと言えます。クラウド化の検討や移行作業に時間がかかっていては本末転倒です。オンプレミスをそのままクラウド化し、そこからさらに計画的にパブリッククラウドの利用を進める。我々は、こうした『最短ルート』による、真の時間創出のお手伝いをして参ります」(山後氏)
クラウド移行に課題を感じている、オンプレミスへの回帰を検討・計画している企業担当者は、ソフトバンクが提供するマネージドプライベートクラウドサービス「ホワイトクラウド ASPIRE」について、詳細を確認されてはいかがだろうか。
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