データ活用はもはや不可欠な時代を迎えている。では、なぜいま企業・組織にはデータ活用が必須なのか。マイナビニュース TECH+ではさまざまな業種業界の企業に勤める人たちを対象にデータ活用をテーマとしたアンケートを実施した。本記事ではその結果をふまえて、日鉄ソリューションズの担当者にデータ活用の現在と未来についての所感をうかがい、個人情報保護の機運が高まる中で今後のデータ活用に大きな役割を果たすと考えられる匿名加工技術にフォーカスを当てた。
【インタビューにご協力いただいた皆さん】(左から)
日鉄ソリューションズ株式会社 ITサービス&エンジニアリング事業本部 ソリューション企画推進部 データセキュリティマネジメントグループ エキスパート 蓮井涼祐氏・チームリーダー 大関晃一氏
事業企画グループ グループリーダー福元英観氏・チームリーダー 市川薫氏
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【アンケート実施概要】
- 回答方法:インターネットによるアンケート
- 対象:マイナビニュース会員読者
<職種:事務・企画・経営関連(マーケティング・経理・企画・経営他)、IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他)、販売・サービス関連(小売・フード・旅行・ホテル・エステ他)> - 回答者数:982名
- 実施期間:2023年2月8日(水)~ 2023年2月15日(水)
アンケートから紐解くデータ活用の現状
DXの掛け声とともに、すでに多くの企業がデータ活用に取り組んでいる。マイナビニュース TECH+が実施したデータ活用についてのアンケートによると、勤務先でデータ活用をしているかとの問いに対して「はい」と答えたのは65%と3分の2にのぼった。多くの企業のデータ活用を支援してきた日鉄ソリューションズの事業企画グループの福元英観氏は次のように語る。
「当社の取引先からもここ数年でどう活用していけばいいのかとの相談が増えていますね。活用方法は企業によってさまざまだと思いますが、いずれにしても数年前と比べてデータ活用をしている企業は増えてきた実感があります」(福元氏)
同アンケートではデータ活用の課題、またデータ活用をしていない理由も聞いている。その答えとしては「質・量ともにデータが不足している」との回答が34%と最も多かった。
さまざまな業務のデジタル化が進み、企業は多くのデータを保有しているように思えるが、これに対し同部 データセキュリティマネジメントグループの蓮井涼祐氏は、どの会社にも業務で利用しているデータ自体はあるものの、分析等に活用できる状態になっていないケースが多々あり、それが“データ不足”という答えに表れているのではないかと指摘する。
同じくデータセキュリティマネジメントグループの大関晃一氏は、顧客の社内データの整理から支援するケースも多いという。 「各部署に散らばるデータの整理と部署間の横断的な利用により、“データ不足”の課題解決に繋がります。そのうえで社内規程等の整備を行ってようやく、データ活用のスタートラインに立つ準備ができるというイメージです」(大関氏)
そのほか「社内のデータを整理できていない」「人手不足」「スキルの課題」「効果が感じられない」などもそれぞれ一定数見られたが、その一方で「課題がない」と答えたのはわずか1%にとどまった。つまり、データ活用をしている企業もしていない企業も、背景には何らかの課題が横たわっているわけだ。またこのことから、多くの企業がデータを活用しようとしているということが読み取れ、データ活用の流れは強まっているといえる。
高度なデータ分析を可能にするパーソナルデータ活用を実現するには……?
データの量・質に課題をかかえる企業が多い中で、昨今では高度な分析を可能にする有用なデータとして、パーソナルデータが注目を集めている。パーソナルデータとは、個人情報を含む広範囲かつ詳細な情報を指し、たとえばサービスの利用情報や位置情報、医療情報などが挙げられる。先のアンケートの続きを見ると、「パーソナルデータを活用したいと思いますか」との問いに対して「活用したいが、取り扱いに懸念を感じる」という回答が最も多く、「活用したい」とあわせると過半数を占める結果となった。
蓮井氏はこの結果について次のように理解を示す。
「パーソナルデータはやはり、取り扱いを間違えるとレピュテーションリスクをはじめ、さまざまなトラブルにつながります。そう考えれば、取り扱いに懸念を感じるのは当然の感覚でしょう」(蓮井氏)
個人情報に関しては流出・漏洩事件は言わずもがな、大量のデータを保有する企業がそのデータを外販するというニュースが流れると、多くの一般人から否定的反応が出たケースが実際に何度も起きている。それゆえ蓮井氏が言うように、パーソナルデータの取り扱いに慎重になるのは自然な反応といえるだろう。
では、“特定の個人を識別できないパーソナルデータ”であればどうだろうか。個人情報保護法では「匿名加工情報」という概念が提起されている。これはまさしく特定の個人が識別できないような加工を施され、かつ加工前に復元できないようになっている情報のことだ。そして、こうした手法で加工を施す技術を「匿名加工技術」という。
「たとえば名前などを英数字の文字列に置き換える手法や、住所から番地の詳細を省き“○○市”のようにして大まかに丸める手法などさまざまで、それらを総称して匿名加工技術と呼んでいます。個人情報保護法のガイドラインには一例として10個程度の匿名加工の手法が記載されています。これらの手法を組み合わせて適切に加工し、匿名加工情報に加工することで、パーソナルデータ活用のリスクが低減され、また目的外利用や第三者提供についても規制が緩和されます」と蓮井氏は解説する。
続いて「匿名加工技術を知っていますか」と聞いたところ、「はい」と答えた人は25%にとどまった。さらに匿名加工技術について簡単な説明を付けたうえで「匿名加工されたデータ(外部提供も含む)を活用してみたいと思いますか」と問うと、「はい」が42%と多数を占め、匿名加工技術を知らなかった人も “活用してみたい”と回答した人も一定数いた。大関氏はこの結果を次のように考察する。
「この結果から匿名加工技術がまだそれほど認知されていないということが読み取れます。一方で、匿名加工技術を知らなかった人も含め、『活用してみたい』の回答が一番多いことから、幅広く認知されれば匿名加工技術でデータ活用していきたいと考える人も増えていくのではないでしょうか」(大関氏)
本設問では、外部から提供された匿名加工データの活用をふまえているが、蓮井氏によると現時点では実際にデータを外部提供するというケースはあまり聞かないため、これが「いいえ」と「どちらとも言えない」を合わせると50%を超える要因となっていると考察する。福元氏も外部提供に関してはまだまだこれからという状況だと話す。
「データ活用がある程度進み、活用の幅をさらに広げていく段階で初めてデータの外部提供という選択肢が増えます。そのときに初めて、個人情報を守る手段として、匿名加工技術についても検討を始めるのではないでしょうか」(福元氏)
匿名加工技術実装のトータルサービスに注目
福元氏や蓮井氏が言うように、パーソナルデータを多くの企業が外部に提供するデータ流通時代の到来はこれからの話だ。とはいえそれは遠い未来ではなく、すでに一部で始まっている。政府もデータ流通に関しては積極的姿勢を見せ、匿名加工技術の周知を図っている。
とはいえ、匿名加工技術はあくまでもデータ活用の手段であり、日鉄ソリューションズではデータ活用のコンサルティングから支援するケースが多いという。データ活用を進めるにはまず何より目的を明確にすることが重要だと福元氏は言う。
「たとえば自社内やグループ企業間で個人を特定できないデータを活用したい、あるいはそのデータを外部に提供したいというケースであれば、匿名加工ソリューション『NSDDD\エヌエスディースリー 』を提供し、データ活用を支援します」(福元氏)
国・自治体と民間企業が保有するデータを合わせて流通させることで、分析や新事業を創出していこうという動きのなかで、2016年施行の官民データ活用推進基本法が施行された。同社はこれを受けて、匿名加工技術の実装にいち早く取り組み、社会公共ソリューションの部門が知見ある同社研究所と共に NSDDDの開発に着手。さらにその技術知見を活用して医療分野の次世代医療基盤法における匿名加工事業者認定も取得。「国から匿名加工に関する能力と技術を認められているところが大きな強みになっています」と福元氏は強調する。
横断的なデータ活用においては、安全性と有用性という相反する要素の両立が重要だ。安全でありながら便利に活用できるよう、両者のバランスを取るのは難しい。NSDDDでは個人情報保護法ガイドライン記載の匿名加工手法に同社独自の手法も加え、データ加工の目的に応じて手法を選択し、組み合わせていくことでこのバランスを実現している。
加えて、SIerにはめずらしく研究所組織を有し、匿名加工技術のそのものの源泉として、以前からデータセキュリティ技術の研究を深めてきたことも、他社ソリューションとの差別化要素になっているといえる。また、先ほども触れたように、NSDDDの提供のみではなく、データ活用の実践に先立ってコンサルティングからサポートしているのも特徴だ。
「データを匿名加工して利活用する一連の流れにおいて、匿名加工の理解、ニーズに対する提案、実現に向けた取り組みアイデアまでコンサルティングを行っています。さらに、匿名加工手法を使って安全性と有用性を担保していくための設計支援、利活用の形に則したデータ整備のサポート、データ利活用の上で必要になるSI、社内でデータ活用を進めていくための仕組みやプロセス構築の支援まで提供しています」(蓮井氏)
官と民のデータをつなぐデータ流通時代
NSDDDの導入はさまざまな企業で進められている。ある製薬企業では、社内のデータを匿名加工することで、部署をまたいだ研究データ活用を実現し、新薬開発に役立てているという。NSDDDにより、個人情報漏洩リスクを防ぎながら企業全体でデータを活用しているわけだ。そのほか、官公庁が各病院から収集した医療データを新薬研究で活用するといった外部提供の事例もある。市川薫氏はデータ流通の今後の発展をサポートできるだろうと見通しを示す。
「NSDDDはデータを匿名加工する機能だけでなく、データを提供する人と使う人の2者をつなぐユーザインターフェースも持っています。NSDDDを活用すれば、まず社内でのデータ利活用、さらにはその先で外部提供のプラットフォームとしても期待できると考えています」(市川氏)
これからNSDDDの活用が広がることによって多種多様な業界で匿名加工情報が流通し、横断的なデータ流通時代へと近づいていく。その時代に、日鉄ソリューションズは社会に対してどのような価値を提供していきたいと考えているのか。福元氏は次のように展望を語った。
「当事業部が最も重視している分野は公共です。いま国では官民データ活用推進基本法を整備し、官と民のデータをつなぎ合わせて活用していくことで国力を高めようとしています。そのため各省庁と自治体、民間企業のデータをつなげる計画を進めていますが、NSDDDはまさにその社会インフラとして貢献できると考えています」(福元氏)
技術力もさることながら、日鉄ソリューションズの最大の強みは“人”によるソリューションの提供だ。今回実施したアンケートでもわかるように、データ活用に課題を抱える企業は実に多い。そうしたなかで同社はさまざまなケースに応じて伴走型で企業のデータ活用をトータルで支援していく。自社サービスの品質向上など、たしかな効果が感じられるデータ活用のベースとして、NSDDDが横断的なデータ流通の実現に貢献することは間違いないだろう。
本稿ではデータ活用の課題から、パーソナルデータ活用と匿名加工技術が求められる背景を紐解き、日鉄ソリューションズが描くデータ流通時代について紹介してきた。後編では実際に匿名加工データがどのように利活用されるのか、電力・金融・自動車などさまざまな業界のユースケースを紹介する。
NS Solutions、NS(ロゴ)、NSDDD\エヌエスディースリーは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。
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