テレワークの導入、クラウドサービスの利用——コロナ禍の影響によってワークスタイルは半ば強制的に変化し、昨今ではオフィス出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが主流になった。多様な働き方は浸透しつつあるが、生産年齢人口が減少し、人手不足に悩まされる日本において、「生産性を高める働き方の実現」は今後も優先度の高い経営課題として取り組む必要がある。
これまで多くの企業のDXを支えてきたNTTデータでは、デジタルとファシリティの両面で「未来の働き方」を追求しているという。AIやメタバースなどテクノロジーの発展が目覚ましいなかで、オフィスのあり方、そして働き方は今後どのように変わっていくのだろうか。本記事では、同社のファシリティマネジメント事業部 上田康一氏、デジタルビジネスソリューション事業部 遠藤由則氏に話を聞いた。
浮き彫りになるハイブリッドワークの課題
2010年代後半から働き方改革が政府主導で進められるなか、テレワークを実施する企業が少しずつ増えていたが、当時の実態としては一部の従業員が利用するケースがほとんどであった。しかし、2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが広がったことで、テレワークの導入は急速に進んだ。デバイスの手配やネットワーク環境構築、セキュリティ対策などを急ピッチで整備が進められ、一回目の緊急事態宣言下ではほとんどのオフィスワーカーに在宅勤務が強いられた。それから約3年が経過してテレワークが浸透し、現在ではハイブリッドワークが主流になりつつあるが、オフィス空間のあり方や社内のコミュニケーションの取り方について、あらためて考えるべき時期にきているといえる。
リアルなオフィスの存在意義は、大きく変わり始めている。上田氏は「コロナ禍以前は生産性向上に重きをおくソロワーク中心の作業に適したオフィス環境でした。しかし、テレワークが浸透した現在においては、ソロワークは集中作業に適した自宅などで行うことも多くなり、従業員は人と会う為にオフィスへ出社しています。リアルオフィスはコミュニケーションがとりやすい環境へ見直す必要があります」と指摘する。
一方で、出社型の働き方で当たり前に得られていた対面のメリットも無視できない。遠藤氏は「1on1ミーティングやアイディア出し、込み入った相談など、物理的に対面したほうが有効なシーンは多くあります。また、オンラインの場合は用事があるときにだけ会話することがほとんどで、偶発的なコミュニケーションやほかの部下の様子を確認できる機会は少なくなります」と話す。組織内の縦と横のつながりや新たな出会いの創出という点では、リアルに分がある。
こうした対面ならではメリットを求めて、リアルなオフィスに出社するケースは多い。しかし、ハイブリッドワークの普及が進むと、すべての従業員が出社する状態を頻繁につくることが難しくなる。「出社、在宅、サテライトオフィスなど、それぞれが別々の場所で働くなかで、誰がどこにいるのか把握しづらいこともあるでしょう。また、組織単位で長期的に顔を合わせない状況が続くと、チームワークがとりにくくなります」と遠藤氏は指摘する。対面のメリットを最大限に享受できるオフィス環境を構築しつつ、チームワークが発揮できるハイブリッドワーク環境を設計していくことが求められている。
ハイブリッドワークの課題は、コミュニケーションだけではない。テレワーク環境の整備が急速に進められたために、セキュリティ対策や制度設計に課題が残る企業は多い。実際に、テレワークを狙ったサイバー攻撃は増加している。また、テレワークに対応した評価制度や手当などの整備が追いついていない企業も散見される。ハイブリッドワークの土台となる環境整備についても考えていかなければならない。
リアルとリモートの環境をアップデートし、自由で快適なワークスタイルを実現
このようなハイブリッドワークの課題解決に向け、NTTデータではデジタルおよびファシリティの観点から「未来の働き方」を構想している。
デジタルビジネスソリューション事業部では、働き方改革とセキュリティ対策の両立を支援するサービスとして2011年より「BizXaaS Office®(以下、BXO)」シリーズを展開する。柔軟なワークスペースを提供する仮想デスクトップ、昨今のさまざまなセキュリティリスクに対応するゼロトラストネットワーク、Slack、Zoom、boxといったコミュニケーションサービスを中⼼に、ハイブリッドワークの環境構築に必要な要素を取り揃えている。
一方、ファシリティマネジメント事業部では、働く場所を自由に選べるワークスタイルを実現する環境づくりをハード面からオフィスソリューション「「ICT Work Site®」でサポートしている。メインオフィスではScrap & Buildを最小限化するスタンダードオフィスの提供から始まり、現在は変化したワークスタイルに対応すべくコミュニケーションに特化したエリアの拡大、Web会議を快適に実施できる個人ブースや会議室の整備などとともに、出先からのタッチダウンや自宅での作業に支障がある場合に利用するサテライトオフィスなどトレンドに応じたオフィス改革実現できるワークプレイスを提案しているという。
また、オフィスを自宅やサテライトオフィスでは実現できない「リアルの交流の場」として捉え、オフィス利用状況が可視化できる仕組みづくりにも取り組んでいる。たとえば最近では、向かいに座った人が誰なのかわからず、オフィスでも話しかけづらいというシーンも増えてきた。マスクをしていて顔がわかりにくかったり、そもそも長引くリモートワークで顔を知らない同僚も増えてきている。また先述した通り、誰がオフィスにいるのかわからないのでアポイントをとらないとコミュニケーションがとりにくい。そうした課題を解決するために、誰がどこにいるのか、オフィスマップ上にリアルタイムでオフィスワーカーを表現するプレゼンスシステムを構築。これによりリアルにいるオフィスワーカーは人物の特定が容易になり、コミュニケーションが円滑になる。リモートワーカーもバーチャル空間を通じ気軽にコミュニケーションをとることができる。
こうしたプレゼンスシステムは、ユーザーがビーコンを所持したり、QRコードなどを読み取ったりするものが一般的だが、本ソリューションではカメラで撮影した映像から人物を特定するシステムの実証実験を進めているところだ。これにより、デバイス紛失のリスクや読み取り忘れなどを防げるほか、ゲストなど事前登録されていない人物も把握できる。
「プレゼンスシステムを、席の予約システムやセキュリティゲート、予定表などと連携できれば、話し合いたい人同士をつないだり、打ち合わせの自動設定や就業管理を行ったりといった広がりも期待できます。このようなデジタルテクノロジーをファシリティとセットで提供することで新しいワークスタイル実現を支援することを考えています」(上田氏)
Work Re:Invention:デジタルとリアルが融合した新たな働き方を定義する
ハイブリッドワークが常態化し、オフィス空間の使い方が変わっていく状況をふまえ、NTTデータでは全社一体となって「Work Re:Invention」というスローガンを掲げている。働き方を従来の延長線上にあるものとして捉えるのではなく、再定義しようとする試みだ。遠藤氏は「従来の働き方や既存システムがあるからこそ変わりきれない部分もあります。ソフトとハードを組み合わせ、そこにデジタルがどう入り込んでくるのか総合的に考え、働き方のあるべき世界観を提言していきたいと考えています」と意気込む。
BXOでは、新しい働き方の世界観を実現する要素として、XR(Cross Reality)、Personal Assistant、Well-beingという3つのカテゴリを定め、新サービス「BXO Hybrid Workspace for Employee Experience」を4月1日より提供を開始。
「たとえば、メタバース上で作業スペースを最大化して今までにない業務効率化の実現や、一人ひとりに単純作業を任せられる電子秘書がついて、クリエイティブな仕事に専念できるようになるなどの働き方も考えられます。SFの世界のように感じられるかもしれませんが、そんな未来がすぐそこまで来ていると思います」と遠藤氏は展望を語り、人とテクノロジーがバランスよく交差する未来の働き方を目指すという。
リアルなオフィス環境に対する取り組みもより発展させていく。オフィス利用状況の可視化はもちろん、そこにいる人物のバイタルなども計測できれば、働く人々の健康状態も手軽に把握できるようになる。さらにこうした仕組みはデスクワーカーだけでなく、工場や店舗などの現場で働くフロントラインワーカーまでもカバーできるようにしていくことが重要だ。
新たな働き方を定義していくにあたり、リアルとデジタルの要素を柔軟かつ適切な形で融合していけることが、NTTデータの強みである。BXOの新サービス、およびカメラを利用したプレゼンスシステムは、2023年5月に東京ビッグサイトで開催される「第11回 働き方改革 EXPO[春]」で体験することができる。まずは一度体験し、新たな世界観に触れてみてはいかがだろうか。未来の働き方について、ともに考える機会としてほしい。
「第11回 働き方改革 EXPO[春]」入場チケット申込みサイト
関連リンク
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ICT Work Site®
NTTデータはICT-WSを通じて、お客様の新しい働き方を実現するオフィスを提供します。 -
BizXaaS Office®
BizXaaS Office(BXO)は、「働き方改革とセキュリティ対策の両立」を支援するオファリングとして、お客様にとって、働き方の最適解を実現する「デジタルワークスペース」の提供を目指します。
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