多くの企業でシステムやアプリケーションをクラウド環境に移行する流れが強まっている。その中で、オンプレミス環境にあるネットワーク機器の管理・運用についてもさまざまな課題が浮上してきた。今回は数々のネットワーク機器及び管理ソリューションをリリースするシスコシステムズ(以下、シスコ)と、ディストリビュータの立場からシスコ製品を提供するネットワンパートナーズ(以下、NOP)の担当者が、ブラックボックス化しがちなネットワークの統合管理・監視をテーマに対談した。
シスコの脇中亮氏は、ネットワークのクラウド型管理ソリューション「Cisco Meraki(以下、Meraki)」の事業部門で日本のSEマネージャーを担当する立場だ。NOPの本田尚平氏は、Merakiをはじめシスコのさまざまなネットワーク製品のセールスエンジニアリング担当として活動している。
ネットワークのブラックボックス化と人手不足の解決に向けて
本田氏:従来のSyslogやSNMPのみをベースとしたネットワーク管理には限界が指摘されるほか、クラウドを組織内で使いこなし成果につなげていく“クラウドアダプション”の観点からも課題が出ているようですね。
脇中氏:課題は大きく2つあると考えます。1つ目は、ITが急速に進化し続ける中で、ネットワーク管理に関しては進化が遅れていること。たとえばアプリケーションはSaaSを利用する企業が多くなり、仮想化、コンテナ化などさまざまな技術も進化してきました。ところがネットワークに関しては、管理の仕方が実はそれほど変わっていません。
ネットワークは大昔からブラックボックスと言われてきました。これはつまり、ネットワークの中で何が行われているかわからないということです。ですから何か問題が起きたとき、真っ先に「ネットワークが原因では」と疑われることになります。ネットワークとアプリケーションやデータを連携させたいというニーズはどの企業にもありますが、ブラックボックスゆえになかなか実現できない状況が続いています。
本田氏:私も同感です。管理方法が変わらない一方で、ネットワーク自体は進化し、複雑化しているので、トラブル発生時の問題箇所の切り分けはますます難しくなっています。だからこそ、ネットワークを統合的に管理し、監視することで、問題の切り分けに役立てたいというニーズも高まっています。
脇中氏:課題の2点目が人材不足です。IT担当者がカバーすべき業務範囲が増えた一方で、ネットワークのプロフェッショナルは減少傾向にある印象です。ネットワーク関連の資格を取得するには勉強すべきことが多いですが、昨今はIT担当者の業務が以前に比べて格段に忙しくなっているので、勉強時間の確保が難しくなっていることも原因かもしれません。
本田氏:統合監視を行うにも、担当者にはある程度のネットワーク知識が求められます。企業でネットワークに詳しい人材の確保が難しくなっている中、高度な専門知識がなくても誰もが簡単に統合監視できるソリューションへのニーズは、確かに増してきたと感じますね。
Catalyst製品をMerakiのダッシュボードでモニタリング
脇中氏:シスコにはCatalystというネットワーク製品のブランドがあります。同ブランドは細やかな調整が利く分、使いこなすのがやや難しく、エキスパートレベルになるのにもそれなりに時間が必要となります。それに対してMerakiブランドのスイッチなどの製品は、快適にインフラを使えるようにという目的は同じながらアプローチが真逆で、調整しなければならない設定項目を極力少なくし、クラウドでの管理や統合監視を簡単に行えるようにしています。当社は2022年6月に、CatalystとMerakiを統合していくとの発表を行いました。この発表には2つのポイントがあります。1つが、今お使いのCatalystスイッチに手を入れることなく、そのままMerakiのダッシュボードからモニタリングできるようにするというもので、すでにご提供が可能となっています。
もう1つはハードウェアの共通化で、現在ご提供の準備を進めているものになります。従来、CatalystとMerakiのハードウェアは全くの別物として存在しており、一度導入すると5年から10年ほど使うことになるため、お客様が「間違った判断をしてしまうと買い直しになってしまう」ということで迷うケースがありました。それが今後は従来のハードウェアを使ったまま、その管理の部分を、豊富な専門知識を活用してより高度な設定が可能なCisco DNA Center(以下、DNA Center)、あるいはそういった知識がなくてもとにかくシンプルに管理できるMerakiの双方で提供できるようになります。
本田氏:シスコの統合管理ソリューションとしては、Cisco Prime Infrastructure(以下、PI)が代表的でした。PIを導入したお客様からは「とても便利」という声をいただく一方、一定のネットワーク知識を持った管理者でないと問題箇所の切り分けに時間がかかってしまうという声もあります。今回の統合で、PIの利用に課題を感じているお客様には、PIの次世代製品であるDNA Centerと、シンプルな管理を実現するMerakiという2つの選択肢を提案しやすくなりました。
脇中氏:ネットワーク機器は基本的に1台1台が独立して動作するため、1000台のデバイスを有する企業は1000カ所を個別に調整しなければなりません。そこにMerakiやDNA Centerといった統合管理ソリューションがあれば、トラブルが起きた際も原因がブラックボックス化せず、課題の解決に役立ちます。特にMerakiによるCatalystモニタリングの場合は、わかりやすいインターフェースで誰もが簡単に、かつ追加費用なしに管理できるのが大きなメリットです。
本田氏:ネットワーク管理に統合管理ソリューションが有用であるとしても、追加コストが必要だと現実的な導入障壁は高くなってしまいます。一方でCatalystスイッチはご購入時に必ず、最低3年間のDNAライセンスをご購入いただいており、そのライセンスがあれば、MerakiでCatalystスイッチの統合監視を気軽に試すことができます。新たな追加コストをかけることなく、クラウド上のMerakiの画面にネットワークの物理的構成がわかりやすく図示され、これまでのようにExcelを使って1台1台管理する必要もなくなるので、ネットワークの可視化がこんなに手軽に実現できるのかと実感いただけるでしょう。
脇中氏:Catalystスイッチ配下に接続されている端末を全てリストで可視化できますし、ネットワーク全体でアプリケーションの使用状況が見えるので、仕事に関係のないアプリケーションで使われているトラフィックも簡単に把握できます。
幅広い業種・規模の企業で活用できる統合監視ソリューション
本田氏:MerakiのCatalystモニタリングは、業種や規模にかかわらず、さまざまな企業にとって利用しやすいものと考えます。たとえば、本社にCatalystスイッチ、各拠点にMerakiスイッチを入れている小売系企業なら、Merakiのダッシュボード画面で全てを一覧表示して管理できます。また、柔軟な設定が求められる部分でCatalystスイッチ、それほど複雑な機能を必要としない部分でMerakiスイッチを利用しているエンタープライズ系企業も、同じくMerakiの画面上で一括管理できます。Merakiスイッチを導入していない企業はもちろん、既にMerakiが入っている企業、MerakiとCatalystをハイブリッドで利用している企業も含め、幅広いお客様に提案できる商材ですね。Merakiで管理することで、脇中さんはどういった価値を提供できると考えていますか?
脇中氏:まずはネットワーク管理のモダナイズ、つまり時代にあったネットワーク管理の実現を期待できます。たとえば機器の異常を判断する際のしきい値は、かつて人が静的に設定していましたが、今はAI/機械学習の技術により動的な設定が可能になっています。また、ネットワークの異常通知もこれまでのようにランプなどの物理的手段に頼らず、ビジネスチャットも利用できるので、管理者がその場にいなくても対応が可能になります。そのほか、認証システムとの連携で望ましくないアプリケーションを使っているユーザーを強制ログアウトさせるなど、セキュリティ面でも効果を期待できるでしょう。
本田氏:統合監視のみで終わらせるのではなく、まずはMerakiのダッシュボードで統合監視を試し、利便性を感じたら、他のクラウドシステムとの連携で自動化などを考えていけばいいと思います。
シスコとパートナー企業の協業が生み出す付加価値に注目
脇中氏:シスコにとって、とりわけ日本市場においてはパートナー企業の力がきわめて重要です。当社は米国がベースの会社なので、NOPのようなディストリビュータが日本のカルチャーや仕事の仕方、商習慣に合わせた形でローカライズを施してくれることで、ビジネスに大きなメリットを期待できるからです。
一方で、当社からMerakiを取り扱うパートナーに提供できるメリットもあると考えています。Merakiは現時点で8割程度の操作をAPI連携で行うようにしているため、定型作業を自動化するシステムなども開発しやすくなっています。パートナー各社が強みを持つ領域で、有効な付加価値を自在に作っていただけるわけです。
本田氏:NOPとしては、シスコ専門の部隊を設け、最新情報のキャッチアップとそれに伴う検証、そこで得られたナレッジの蓄積とパートナー様への展開をスムーズに行える仕組みを築いています。シスコとは古くから関係が深く、最新情報もいち早く提供いただけるので、当社からパートナー様にもその関係性をもとに多彩なご提案が可能です。
脇中氏:パートナー企業の中でもNOPは、ディストリビュータの立場から現場の販売店にサポートやノウハウを提供し、インテグレーションなど独自のテクニカルな付加価値も加えてくれるありがたい存在です。NOPとの協業によって、これからも特別な相乗効果を生み出し続けられると期待しています。
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