リモートワークやハイブリッドワークの普及によって、Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドサービスを用いたオンラインコラボレーションの重要性が高まってきている。一方で、プライバシーやデータ管理、コスト面などの制約により、そうしたサービスを利用できない企業・組織があるのも事実だ。そこで、セキュアかつ低コストである代替ソリューションとして注目されるのが、ラトビアのAscensio System SIAが開発するオープンソースのオフィススイート「ONLYOFFICE」だ。なかでも今回は、オンラインドキュメントエディター「ONLYOFFICE Docs」のメリットについて紐解いていきたい。
制約のある環境でも自社の状況に合わせて導入できる
新型コロナウイルスのパンデミックやクラウド技術の発展に伴い、リモートワークやハイブリッドワークが普及し、クラウドベースのツールを活用したオンライン上での共同作業が一般的になりつつある。特に、グローバルかつ働く場所を問わないこれからのビジネス環境においては、リアルタイムでのコラボレーションをサポートするツールであることが重要となる。
一方で、EUの一般データ保護規則(GDPR)に代表されるように、プライバシー権や情報セキュリティに関わる規制強化の動きが強まるなか、高度なセキュリティとプライバシー保護の機能を提供するツールが求められている。フランス、ドイツ、オランダ、デンマークの行政機関・大学などでは、GDPR対応の観点からクラウドサービスの利用が禁止された事例もある。日本企業においても、プライバシー保護やデータ管理などの観点から、業務データや資料を自社サーバーで保存・運用しなければならないケースは多い。
こうした流れからニーズが高まっているのが、ONLYOFFICE Docsである。ONLYOFFICE Docsは、オンラインでの作業に必要な機能を備えたリーズナブルなオープンソースのドキュメントエディターだ。テキスト文書、表計算、スライド、フォームの作成・共同編集、PDFの表示・作成が可能であり、デスクトップ版とクラウド版が提供されている。Windows、macOS、Linux、iOS、AndroidといったOS、および各デバイスで利用可能なため、どこからでもドキュメントにアクセスすることができる。また、セルフホスティングが可能となっており、すべてのデータを自社サーバーで保存・運用することができる。エンドツーエンド暗号化、パスワード、JWT、電子透かし保護など、多彩なセキュリティオプションも備えている。
ONLYOFFICE Docsのいちばんの強みは、オープンソースであることだ。いつでもソースコード やデータの扱い方を確認できるため、セキュリティやデータ管理に関する制約のある環境への導入も進めやすい。また、APIまたはWOPI経由で他のクラウドサービスとの統合も可能になるなど、柔軟性の高さも特長となる。もちろん、コストメリットも大きい。オフラインで編集できるデスクトップアプリや、iOS/Android向けのモバイルアプリであれば、完全無料で利用することができる。
使い勝手のよいインターフェイスで業務を効率化! Office形式ファイルとの互換性の高さもポイント
ユーザーにとっては、わかりやすく使いやすいインターフェイスがONLYOFFICE Docsの重要なポイントとなる。1つのアプリで文書やスプレッドシート、スライドの作成・編集を完結でき、docx、xlsx、pptxといったMicrosoft Office形式のファイルとの互換性も高い。共同編集モードやバージョン履歴、コメント機能など、コラボレーションに必要な機能も備わっているほか、Zoom、ChatGPT、DeepLなど業務効率化につながるツールとの連携プラグインも豊富だ。
ONLYOFFICE Docsで注目すべき機能の1つに、フォームクリエイターがある。これは、手持ちのdocxドキュメントや、無料のライブラリからダウンロードできるフォームテンプレートを用いて、契約書や請求書、申込書、アンケートなど取引や業務に必要となる各種書類をフォーム形式で作成し、デジタルでの共有・記入を可能にするものだ。フォームを受け取った相手は、オンライン上のフォーム、またはPDFとして出力されたファイルに記入することで手書きや印刷の手間なく必要な情報をやり取りすることができる。手作業が多く残りがちな社内外のドキュメント作成・記入フローの効率化に向けてぜひ利用したい機能だ。なお、大学や非営利団体による利用は割引が適用されるという。
既存システムとの統合の容易さからONLYOFFICE Docsを選択。共同作業をスムーズに
中国・南京大学の学内向けにコンピューティングサービスITツールを提供するe-Science Centerでも、ONLYOFFICE Docsは活用されている。
同センターが学生や教員向けに提供しているデータ管理・収集・共有ツール「Collaborative Forms」は、教師が学生の課題をオンラインで採点するなど、教育過程におけるデータを活用できるものだ。このツールにオンラインドキュメントの閲覧・編集機能を実装するため、同センターはONLYOFFICE Docsの導入を決定した。決め手は、統合プロセスの容易さだったという。Collaborative FormsおよびONLYOFFICE Docsの設定をいくつか変更し、フォントを追加するのみで、Collaborative Formsへの機能追加を実現した。
ONLYOFFICE Docsでは、研究機関や教育機関にとって重要な数式の作成・編集もサポートしている。また、Linuxコンテナを介して1つの仮想マシンに展開することができ、メンテナンスやトラブルシューティングが容易になる点もポイントだったという。
ONLYOFFICE Docsの導入以前、教員側では提出された宿題の各ファイルを一旦ローカルにダウンロードして採点した後アップロードし直すという作業が発生していたが、ONLYOFFICE Docsが統合されてからは、すべての課題をオンライン上で閲覧・採点できるようになり、教師と学生の共同作業の効率化を実現しているという。
開発者向けの特別バージョンも提供。公式パートナーを拡大中
ONLYOFFICE Docsでは、開発者向けの特別バージョンも提供されており、セルフホスティングサービスやSaaSアプリなどのユーザーに対し、ドキュメントエディターを自社ブランドで提供することが可能となる。ここまで紹介してきたようにONLYOFFICE Docsは柔軟なソフトウェアであり、さまざまな機能を取捨選択することができる。そのため、自社サービスのユーザーのニーズに適した機能を実装していくことが可能だ。
日本の鉄飛テクノロジーが提供するファイルサーバー全文検索・文書共有システム「Fileblog」では、ONLYOFFICE Docsを活用することで、同サービス内においてテキスト文書およびスプレッドシート、スライドなどのファイルをダウンロードせずWebブラウザで直接編集できるようになっている。VPNやVDIを利用する方式と比べて通信負荷が少なく、多人数がアクセスできる、動作が軽快といったメリットがある。
また、AndroidベースのモバイルOS「/e/OS」の貢献者であるMurenaは、/e/OSと完全に統合できるパーソナルクラウド「Murena Cloud」で、ONLYOFFICE Docsを採用。Googleのサービスに依存しないツールとして安全な編集とコラボレーションを可能にしている。
海外ではこのほかにも多くの導入事例がある。今後、Ascensio System SIAとしては、日本においてもさらなる公式パートナーの拡大に力を入れていく考えだ。
アップデートでより使いやすく。日本語での情報も日々充実
2023年1月31日には、最新バージョンとなるONLYOFFICE Docs v7.3がリリース。テキスト文書のパスワード保護、ファイル内の特定の操作に対する権限設定など、セキュリティに関する機能が追加されたほか、インターフェイスのアップデートによってユーザビリティも向上している。さらに、現在はPDFエディタの開発も進行中だ。
Ascensio Systemによると、欧州、米国、シンガポールなどでの多くの導入実績をもとに、今後は日本でもONLYOFFICE Docsの展開に注力していくという。公式サイトやnote、はてなブログなど、日本語による情報も豊富に揃っているので、ぜひ本稿とあわせてご覧いただきたい。
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[PR]提供:Ascensio System SIA