DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれて久しい。ただ、デジタルによる変革を順調に進めている企業もあるものの、その一方ではDXがなかなか進められない、着手はしても成果が生まれない、あるいはそもそも着手できないと悩んでいる企業も少なくない状況だ。経済産業省がDXの必要性を打ち出して早4年半、いわゆる“2025年の崖”も間近に迫る中、DX推進を強力にドライブするには何をなせばいいのか。NTTデータグループの情報システム会社としてさまざまな企業のDX推進を支援するNTTデータビジネスシステムズのメンバーに、DXに臨むうえでのポイントを聞いた。
DX=ツール導入ではない。推進を支える体制づくりのヒント
DXというキーワード自体はすでに多くの企業で認知され、早急に取り組まなければこれからの時代に勝ち残れないという危機感もある程度醸成されている。しかし、「DX」の定義やDXの名のもとに取り組むべき施策のレベル感は企業によりまちまちのようだ。 コンサルティング部でマネジメントを担うシニアコンサルタントの下間大輔氏は、デジタルツールを導入した業務改善に注目しすぎる企業が多いと現在の傾向を語る。
「IoTやセンサー、チャットボット・可視化ソリューションなどを使った自動化の話をよく聞きますが、単にツールを導入するだけではDXの成果は出てきません。また、そもそもDXをリードしていく人材はもちろん、取り組みを実際に進めていく人材が社内に不足している現状もあります」(下間氏)
DXの最終的に目指すところは、業務が改善して楽になったという、いわゆる“効率化”ではなく、企業やビジネス自体のトランスフォーメーション、すなわち“変革”であると下間氏。つまり、特定のオペレーションをツールによって改善するだけでは、もっと大きな変革にはなかなかたどり着けないと指摘する。
DX推進の基点という意味では、経営トップの姿勢とその発信が重要だ。この点について下間氏は「トップからDX推進の大号令が出ている企業は多いと思います。ただ、その声が現場の社員にきちんと届き、かつ腹落ちしたうえで取り組んでいるかというと、残念ながらそこまで至っていない企業も多いと考えています」との見方を示す。社員だけではどうしても経営目線でDXに取り組むのは難しく、DX=ツール導入となりやすい。このため、DX推進に向け経営層や事業責任者レベルから頻繁に方針を発信しつつ、社員同士でもしっかり話し合い、トップダウンとボトムアップの双方向をつなぐ骨太のラインを築き上げることが重要だと強調した。
「DX認定」の意味はスタートラインに立てたということ
それでは、具体的にどのような考え方でDXに取り組んでいけばいいのだろうか。一つの手段として、経済産業省の「DX認定制度」を活用する方法があると下間氏が紹介する。DX認定制度とは、DXを体系的に推進していくための指針である「デジタルガバナンス・コード」に対応して取り組む企業を国が認定するものだ。
国ではDXの進み具合を4段階に分けている。最も下に位置するのが、DXを進める準備がまだできていない企業。その上が、DXの準備ができている企業、つまり“DX-Ready”の企業だ。さらに上には将来性が期待される企業、そして最上位にDXで優れた実績をすでに上げている企業がランクされる。近年注目度が高まっている「DX銘柄」は、この上位2つの”DX-Excellent”および”DX-Emerging”段階から選ばれる。DX認定企業になるということは、“DX-Ready企業”であると国からお墨付きを得ることだ。
認定されればDX投資促進税制による優遇措置も受けられることから、認定を目指す企業が増えている。ただ、同制度ではDX認定を取得すること自体が最大のメリットではないと、同じくコンサルティング部のチーフコンサルタント、藤田みさえ氏は強調する。
デジタル化を企業のトランスフォーム(変革)に繋げるためには社内や社外のステークホルダーに対する仕組みを整備することです。その際の指南書となるのがデジタルガバナンス・コード。経営者が同コードを理解し、活用して仕組みをつくり上げることは、DXを加速する近道への一歩となります。ですからDX認定取得はあくまで手段であり、取得に向けた取り組みが同コードに則した仕組みづくりにつながることこそ、そもそもの最大のメリットです」(藤田氏)
加えて、同コードに則った取り組みを進めていることで、投資家をはじめとするステークホルダーやサプライチェーンにも姿勢をアピールできる。その結果として企業のブランドイメージ向上につながること、またデジタル人材確保に良い効果があることも見逃せないメリットだと藤田氏は指摘する。
DX実現の重要な手段となるデータ活用の取り組み方
DX認定制度においては、DX推進指標として定められた項目が審査対象となる。指標にはビジョンの共有や経営トップのコミットメント、マインドセット、推進体制、人材といった経営視点のものに加え、DX実現の基盤となるITシステムに求められるものとして「データ活用」も重視されている。
「DXをうまく進めている企業は、やはりデータを積極的に活用しています。自社で蓄積したデータはもちろん外部のデータも掛け合わせ、新事業創出や新たな価値提供などに役立てています」と藤田氏。そのデータ活用の現状について、ITソリューション企画営業部の今福英貴氏が解説する。
「多くの企業がデータ活用の重要性に気づき、すでに取り組んでいる状況ではあります。ところが、DXの成果をきちんと出している企業は2、3割にとどまり、多くは壁に直面しています」その“壁”として今福氏が挙げたのは、「データ活用といわれても、そもそもどうすればいいのかわからない」「データが社内に分散し、すぐには活用できない」「効果を実感できない」「分析基盤の整備やデータの準備に時間がとられすぎる」「人材が不足し、育成や採用をどう進めればいいか悩んでいる」の5点だ。
こうした壁に対して、データを活用していくうえで意識しておきたいポイントを今福氏は3点提示した。「1つ目が、まず目的を明確にすること。2つ目は、データ活用を行うための仕組みの整備。3つ目が人材の確保です」
同部グループマネージャーの村山晴俊氏が次のように補足する。
「NTTデータでは、デジタル変革により成功した状態を『デジタルサクセス®️』と定義しています。そのスタート地点としては、データ活用によって何ができるかではなく、まずは目的を明確にし、その目的に向けてデータをどう使うのか、つまりデータ活用も手段であるという考え方が大切です。まずは小さく始め、評価と改善のサイクルを回してデータ活用を習慣づけ、拡大していく。このアプローチにより、データドリブンの企業風土が醸成されていきます」
*「デジタルサクセス®️」は株式会社NTTデータの登録商標です。
手段からではなく、まずは目的から入ること。その目的に照らしてデータ活用の基盤を整え、組織に浸透させていくことが重要だ。さらに、データ活用・分析には人的リソースが必須となる。しかしながら、基盤の整備や専門知識を持ったIT人材確保には限界もある。この3つのポイントを、必要に応じてパートナーと一緒に進めていくこともDX推進には効果的だと村山氏は提案する。
上流から下流まで寄り添う姿勢でデータ活用を支援
NTTデータグループでは、多くの企業のデータ活用をサポートしている。具体的な事例の一つを今福氏が紹介する。
「ある製造販売会社のマーケティング部門から顧客動向を分析したいとの要望がありました。マーケティング領域の分析からスモールスタートで始め、いくつかのテーマを小さく試行しながら、効果を見込めるテーマについては拡大していきました。拡大に際しては単に基盤を導入するだけでなく、構想策定から実際に成果を出す運用までを伴走しながらサポートし、高い評価をいただけました」
多くの社員がデータ活用できるようにしたいという要望も出され、その点についてもツール導入から浸透まで一緒になって進めることで成果を上げたという。データ活用支援は現在も伴走しながら継続しているとのことだ。
同社としては、ここまで出てきたようにスモールスタートから支援を拡大し、パートナーシップを醸成していくパターンに加え、上流の全体構想のコンサルティングから関わるパターンもある。「データ活用の目的=Whyを考える段階から参画し、何をすべきか=Whatを詰めたうえで、基盤となるツール=Howの順で検討を重ねていきます」と下間氏が説明する。
こちらの事例としては、商業施設の運営をはじめ多角的事業を進める企業での取り組みが代表的だ。「その企業では事業部ごとにデータを溜め、いわゆるサイロ化された世界で分析を行っていました。当社がコンサルティングから入り、各事業部個別に管理されているデータを横串で活用する基盤を用意して、事業部横断で分析していく形をつくり上げました」(藤田氏)
DX認定取得は目的ではなく、あくまでDXの入り口に立った証しにすぎないという話を紹介したが、下間氏は「当社としてはDX認定取得の支援もしていますが、取得がゴールではなく、それを機にDXを加速させ、変革を実現したいと考えるお客様と一緒に成長していきたいと願っています」と改めて強調した。
そのうえで、サポートに関しては「お客様の推進状況をお伺いしてからご提案をしています。DX全体の計画からご支援するケースもあれば、DXの各種施策のうち特定領域に絞って伴走させて頂くケースもあります。また冒頭申し上げたように人材が不足しているお客様においてはご支援する濃度を高めるなど、お客様のニーズに応じてサポート内容を変えています。DX推進やデータ活用に悩んでいる、取り組みを続けているが止まってしまった、あるいはそもそも何から始めればいいのかわからないなど、どのようなケースでも、まずは気軽にご相談ください」と下間氏は語った。
最後に村山氏は「繰り返しになりますが、データ活用はやはり目的が大事。そのためにも何を目指し、どんな成果を得たいのかを明確に描いてデータ活用を始めることで、私たちが考える『デジタルサクセス®』の実現に繋がると考えています」と、DXに悩む企業に向けてメッセージを送ってくれた。
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