変化の激しい時代、俊敏で柔軟なビジネス展開を実現していくには、もはやクラウド活用が必須となっている。2022年12月13日から14日にかけて、Webセミナー「TECH+フォーラム クラウドインフラ Day 2022 Dec. 変革を支えるニューノーマルのITインフラとは」が開催された。
多彩なプログラムが用意される中、「いま企業に必要なクラウドデータ分析基盤とは」と題して、クリックテック・ジャパン株式会社(以下、Qlik)技術本部 シニア・ソリューション・アーキテクトの阿部 智師氏による講演が行われ、先のアクションにつながるインサイトを得るためクラウドデータ分析基盤を活用することの意義が解説された。
データ品質の向上こそがビジネスインサイトを導き出す
データドリブンという言葉が登場して久しい。ここ数年、多くの企業でデータ主導の意思決定が推進されている。そうした活動のベースとなるのがビジネスをめぐる多様なデータの分析だ。BIツールを導入している企業も多いが、阿部氏は次のように問題提起する。
「過去のデータを分析し、その結果を提供するだけに終わっていませんか? 過去の経験が優先され、データの真の姿を見逃してはいませんか? 先行き不透明な時代において、“現在は過去の延長”と考えていると支障があります。いかに鮮度の高いデータからインサイトを導き出し、アクションにつなげていくかが重要で、リアルタイムなデータ主導型の意思決定を実現せねばなりません」(阿部氏)
まずは目的に合ったデータを用意する必要があり、もちろんデータ品質が高ければ高いほど、信頼できるインサイトを導き出せる。部門やシステムによってサイロ化された“生データ”では、より正しく有効なアクションの意思決定をリアルタイムに行うのは難しい。それゆえに、“データ統合”が非常に重要な意味を持ってくる。
クラウドデータ分析基盤を有効活用するための5つのポイント
Qlik では、より鮮度の高いリアルタイムデータをインサイトに基づいた適切なタイミングでビジネスアクションにつなげていく「アクティブインテリジェンス」というビジョンを打ち出し、顧客のデータ活用とDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援している。
「データを解放し、必要なデータを発見し、データを正しく理解することで、ユーザーはデータに基づくビジネスアクションにつなげられます。こうした『アクティブインテリジェンス』を実現するにはさまざまな機能やサービスを統合する必要がありますが、そこで必要になるのがクラウドデータ分析基盤です。有効活用するためのポイントは5つあります」(阿部氏)
クラウドデータ分析基盤を有効活用するために求められるポイント
- 鮮度の高いデータを収集する ≪解放する≫
- オンプレミスデータをセキュアに活用する≪解放する≫
- 目的に合ったデータを用意し、目的に合ったデータを分析する≪見つける≫
- 洞察(インサイト)を導く≪理解する≫
- 分析をビジネスプロセスへ組み込み、データを有効活用する≪行動する≫
阿部氏は上記のポイントについて、同社が提供するエンド・ツー・エンドのクラウドデータ分析プラットフォームの機能を交えて一つひとつ紹介していった。
まず1つ目の「鮮度の高いデータ収集」については、過去データの分析から脱却し、オンプレミスやクラウド環境に多数存在するリアルタイムデータをデータソースに負荷をかけずに取得する必要があるという。「Qlik Cloud® データ統合」の機能でこれらを実現できるうえに、データ分析基盤「Qlik Sense®」では、データソースからのデータ取得と加工、分析のためのデータモデル生成、インサイト生成まで一気通貫で行える。これにより、IT部門やデータサイエンティストに頼らずとも、ビジネスユーザー自身で必要なデータを取得し、分析を行う“データの民主化”を実現できる。
2つ目の「オンプレミスデータのセキュアな活用」ついては、クラウド上へのオンプレミスデータのセキュアなアップロードを「Qlik Data Gateway」という機能で実現している。クラウドデータ分析基盤でオンプレミスデータを安全に活用できると強調した。
3つ目の「目的に合ったデータを用意し、目的に合ったデータを分析する」では、データソースから取得したデータが目的に合ったものかどうかを理解することが必要だ。そのため用意されたのがカタログ機能で、データがある場所やデータの傾向、統計情報を把握して、正しいデータに基づく正しい分析が実現できると語った。
4つ目の「洞察(インサイト)獲得」に関しては、「Qlik Sense®」の拡張機能でデータの関連付けや適切な推奨チャート生成、連想される洞察の導き出しを自動で行えると解説した。
「より多くの洞察を簡単に得られ、効率の高い分析が可能になります。また機械学習についても高度なスキルを持ったデータサイエンティストだけでなく、一般のビジネスユーザーも利用できるようになりました。『Qlik AutoML』により、機械学習モデルの生成、予測分析の実行、そして意思決定の計画まで、すべてをコード不要の直感的なユーザーエクスペリエンスで実現しています」(阿部氏)
そして最後の「分析をビジネスプロセスへ組み込み、データを有効活用する」については、「Qlik Application Automation」という機能でアプリケーションやデータの連携を柔軟に実現できるという。阿部氏は分析をビジネスプロセスに組み込むことの重要性を指摘する。
「業務システムや業務プロセスとデータ分析基盤が分離してしまうと、データに基づいた適切なアクションにつなげるのが難しくなります。全ユーザーが、意識せずとも分析結果に基づいたアクションを自らの業務内で行えるようになれば、効果は大きく高まります」(阿部氏)
直感的なユーザーエクスペリエンスで高度な分析が可能なQlik製品群
阿部氏は続いてデモンストレーションを行い、Qlik Sense ®の “データ統合”と“分析”の 2つの機能のうち、主にデータ統合について解説を加えた。
デモでは「オンプレミスデータをクラウド上にアップロードする」と「オンプレミスデータをSnowflakeにアップロードする」という2つのプロジェクトを作成。GUI操作で手軽に作れるそれぞれのデータパイプラインを示し、パイプラインに載せるとデータがアップロードされていく様子を提示した。
また、アクティブインテリジェンスを実現するために必要なアラート機能も紹介された。アラートを設定した状態でオンプレミスデータを更新すると、そのデータがSaaSに格納され、アラートが通知されるとともに、アプリ画面上のチャートもリフレッシュされる。また、アラートはモバイルにも通知される仕組みだ。これにより、どこにいてもイベントドリブンでアラートが通知され、すぐにアプリを確認しアクションにつなげることができる。
続いて、Qlik Application Automationのデモも実施された。同機能ではアプリケーション間のスムーズな連携を実現し、Snowflake、Salesforceをはじめとしたビジネスで使われる多くのアプリケーションとの連携が可能になっている。デモでは作成したレポートをPDFに取り込み、Slackにメッセージを出し、最終的にBoxにファイルを格納するといった、一連のレポート配信フローを自動化する様子を紹介した。
Qlik AutoMLのデモでは、実際に金融機関のローン解約率に関するデータを使い、機械学習のトレーニングを実施する。Qlik AutoMLが自動的に判断して最適なアルゴリズムを選択する様子が示された。この機能を活用すれば、アルゴリズムの理解がなくとも最適なアルゴリズムの選択ができるようになる。さらには、そのデータを活用して予測を実行することも可能で、出力された予測はQlik Sense®に取り込まれる。
北米トップクラスの空港をはじめとした、多くの企業がアクティブインテリジェンスを実現
実際に分析データパイプラインを採用している企業は多くいるという。バンクーバー国際空港(カナダ)では、組織全体でQlikのデータ統合とデータ分析アプリケーションを利用し、複数のデータセットをシームレスに活用している。ハブ空港として乗客と手荷物のフライト間の移動時間(最小接続時間)は重要な指標であるが、主だったパフォーマンスを適切に追跡し、データから得られたインサイト用いて最小接続時間を大幅短縮させている。
機械学習の事例としては、次の3つの事例が紹介された。
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キードライバー分析
ソフトウェア販売にQlik AutoMLのモデルを適用し、潜在的に売上に影響を与えるデータを判断。売上の予測精度を向上させ、理想的な購買者をモデル化した。 -
予測分析
医療機関において、交通機関や天候などの障害といったキャンセル要因をもった患者を特定し、スタッフの積極的な働きかけを可能にした。患者による予約の無断キャンセルを25%削減。 -
意思決定プランニング
教育機関のマーケティングにおいて、費用や採用時間のROI向上を目的にWhat Ifシナリオを実施。
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阿部氏は本セッションを通して、クラウドデータ分析基盤を有効活用するためのポイントを紹介し、先のアクションにつながるデータ分析がビジネスにもたらすメリットを紐解いてきた。Qlikのクラウドデータ分析プラットフォームを活用することで、リアルタイムなデータ主導型の意思決定を実現し、俊敏で柔軟なビジネス展開の足がかりにしてほしい。
[PR]提供:クリックテック・ジャパン