スマートフォンで動画撮影・編集が簡単に行えるようになり、ソーシャルメディアや動画サイトに作品を投稿する人が増えている。しかし、個人情報保護が厳格化される中、投稿・配信した動画にたまたま写り込んだ人からプライバシーの侵害で訴えられるリスクがあることも念頭に置かなければならない。株式会社サテライトオフィスでは、人の顔や車のナンバープレートなど、動画中の個人情報を簡単にマスキングするサービスとして、「Mosaicer(モザイカー)」の提供を2022年10月より開始した。

人物・顔・ナンバープレートのマスキングを自動処理

Mosaicerはユーザーが指定した動画の中から、AIが人(顔あるいは全身)や車両、そのナンバープレートといった個人情報に該当するものを識別し、そこにマスキング処理を施してくれるサービスだ。利用方法は簡単で、会員登録後、Mosaicerサイトで規程の料金を支払い、処理を施したい動画をアップロードして完成を待つだけだ。UHD (3840×2160)で撮影された2分程度の動画なら、約5分でマスキング加工されたものをダウンロードできる。料金は60分のコンテンツ加工で10,000円からとリーズナブルに設定されているため、企業だけでなく個人ユーザーでも気軽に利用できるだろう。

利用が簡単なことに加え、マスキングすべきものを検知する精度の高さも、Mosaicerの大きな特長だ。一般的な映像加工ソフトでは、ぼかしたい対象をひとつずつ選んでマスクをトラッキング(追従)させる操作が必要だが、Mosaicerは「顔」や「ナンバープレート」などの項目と、ぼかしの強度を選択すれば、後はAIが自動でマスキング対象を検知して処理を行ってくれるため、作業の効率化が図れる。

  • Mosaicerの操作画面

クラウドサービスであるため、高価な専用ハードウェアを用意する必要がないという点もユーザーには有り難い。マスキング処理に編集用マシンのリソースを使わずに済むため、快適に動画制作を進めることができるはずだ。 なお、外部のクラウドに自社の映像をアップしたくない場合、オンプレミス環境向けのプランも用意されているので、そちらを選ぶこともできる。

販売元のサテライトオフィスでは、動画サイトに投稿する個人ユーザー、番組制作会社、放送局はもちろん、ドライブレコーダーの映像を扱うメーカーや保険会社でも活用の機会があると考えている。ドライブレコーダーで記録された映像に、事故とは関係のない通行人や車両のナンバーが写っていると、それは保護すべき個人情報となり、映像自体の扱いが非常に難しくなるからだ。こうした映像も、Mosaicerで目的とは関係のないものをマスキングすることで、裁判資料などに利用できるようになる。

開発元WKITの高い技術力と豊富な実績

Mosaicerの開発元は、韓国に本社を置くWooKyoung(ウギョン) Information Technology(以下、WKIT)だ。2008年設立の同社は、映像情報セキュリティ技術を強みとしており、その技術・ソリューションは、韓国政府、警察、消防、学校、病院など、幅広い分野で採用されている。特に昨今は、スマートシティを運営する自治体や企業への技術提供が増えているという。

  • WooKyoung Information Technologyが提供するAI分析を活用した技術

スマートシティでは、街なかに設置された何台もの防犯カメラ映像を、コントロールセンターで集中監視するケースが多いが、WKITではここにAIによる映像分析技術を提供している。WKITのソリューションは行方不明者、容疑者を探すため監視カメラ映像を分析して探そうとする対象と同様な人物か似ている人が移動した経路を把握することができる。それぞれの映像が記録された時刻とカメラの位置から、その人物がどのようなルートを辿り、何をしていたか、短時間のうちに少ないオペレーターでチェックできるため、セキュリティの高度化、運用の効率化が実現する。

同様のことは、自動車においても行える。ナンバープレートはもちろん、車種や色から探したい車両が写る映像をピックアップし、追跡が可能だ。また道路を走る車両の台数をカウントしたり、違法駐車の有無を見極めたりできるため、渋滞状況の把握やその回避策の立案に役立てられる。こうしたスマートシティ向けのソリューションは、現在、韓国で50ほどの自治体に採用されているほか、タイやベトナムなど東南アジアで進められているスマートシティ・プロジェクトでも導入が検討されているという。

WKITの技術力を示す例は他にもある。空港で利用されているソリューション「エアクラフト・グランド・ハンドリング」は、空港に設置したカメラ映像から、到着した機体周辺で何が行われているか ――乗降用のタラップ車、貨物運搬用車両がいつ来て、いつ去ったか、機体にどのような点検・補給がなされたかなど―― を認識しタイムラインに記録、適切な処置が施されたどうかの確認に利用されている。安全な航行支援だけでなく、業務プロセスの改善にも役立つソリューションだ。

また2018年、アジアでアフリカ豚熱が発生した際には、韓国政府機関からの依頼で、野生動物の動向を探るソリューションの開発にも携わっている。監視カメラの映像から、どのような野生動物が、どこにどのくらい棲息しているかを把握するためのもので、感染の拡大防止策に役立てられた。豚とイノシシなど、監視カメラ映像からは見分けのつきにくい動物は、頭部・胴部・尾の特徴を細かくデータ化することで、認識の精度を高めることに成功したという。

  • エアクラフト・グランド・ハンドリング画面

  • 野生動物の動向を探るソリューション開発にも携わるWKIT

法に抵触しないために、時間と手間を削減するために

このようにWKITは、多岐にわたる分野で映像分析の実績を築いてきた。同社が開発したMosaicerの精度が高いことは容易に想像つくだろう。服や壁の模様まで「顔」と認識して、不自然なマスキングがかかってしまったり、余計に処理時間がかかったりすることもないだろう。

映像を生業としているプロも、動画サイトへの投稿を楽しんでいるアマチュアも、個人情報保護法に抵触しないために、また映像加工の労力と時間を削減するために、一度Mosaicerを試してみてはいかがだろうか。無償トライアルは、サテライトオフィスのサイトで申し込むことができる。また本稿内ではWKITのソリューションをいくつか紹介したが、それらに関心をお持ちの方は、日本でWKITの窓口となっているサテライトオフィスにお問い合わせいただきたい。

監修:原口 豊(はらぐち・ゆたか)

大手証券会社システム部に在籍後、1998年、サテライトオフィス(旧ベイテックシステムズ)を設立。2008年、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、サービスの提供を開始。Google Workspace(旧称:G Suite)の導入やアドオンの提供で、これまで実績6万社以上。「サテライトオフィス」ブランドでクラウドサービスの普及に尽力している。

サテライトオフィス

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