Google Cloud の最上位パートナー認定を受け、クラウド技術に強みを持つG-genと、経営コンサルティングやM&Aアドバイス、再生支援などで独自の価値を社会に示すフロンティア・マネジメント。畑の異なるこの両社が手を組み、デジタル技術を活用する企業をそれぞれの得意分野から強力に支援している。フロンティア・マネジメントのシニア・アドバイザー 経営改革推進部 デジタル改革推進室室長の佐久間祐綱氏と、G-gen 執行役員CTO クラウドソリューション部部長の杉村勇馬氏に、両社の協業で提供できる価値について語り合ってもらった。
レガシーを脱却してクラウドに移行する意義
杉村氏:佐久間さんはデジタルを活用した経営コンサルティングを手掛け、全国の大手・中堅企業の変革を推進しています。昨今の顧客の課題としてはどのようなことを感じていますか。
佐久間氏:私たちが経営コンサルとして顧客からご相談をいただく際、ITにおいてはレガシーシステムが新規事業創出を含め、業務変革の足かせになっているケースはやはり多いです。経営者目線で変革のあるべき姿を考えたとき、インパクトの大きさはもちろんのこと、実行の難易度を見極めることも必要です。その目線で見ると、この時代にレガシーシステムをそのまま残していたら難易度はどうしても上がります。レガシーを刷新するならクラウド化はいま大きな流れですし、レガシーを残したまま新しいシステムを構築する場合もクラウドなら小さく始めて大きく広げていけるので、有力な選択肢になるでしょう。
杉村氏:IT現場の観点で考えると、企業の情報システム部門がレガシーシステムの運用管理に忙殺される現状があります。クラウド化すると運用管理の工数は大きく下がるので、情シスの浮いたリソースで新しいシステムを作ったり、ビジネスの差別化につながるIT業務に力を割いたりできるようになります。レガシーシステムからの脱却により、そういった人材の効率活用を考える経営者は多いのではないでしょうか。
佐久間氏:本当にその通りです。企業がデジタルを使った業務変革を進めていくにあたって、悩まされるのはやはり、既存業務に忙殺されてしまい対応できる人材が不足していることです。ですから運用を効率化し、可能な部分は外部にアウトソースしていくことも非常に重要な打ち手だと思いますね。
杉村氏:その点、以前に佐久間さんがお話されていましたが、クラウドならスモールスタートできます。「ひとまずやってみよう」と気軽に試すことができ、拡張や見直しも機動的に行えます。
佐久間氏:オンプレミスでサーバーを持ち、システムを動かしているとなかなかそうはいきません。例えば新規事業立ち上げの際、最初の半年は5社の顧客を獲得し、その後一気に100社に広げることになっても、クラウドなら柔軟かつ短時間で対応できます。このメリットは経営の目線からもやはり大きいですね。
クラウド導入に向けて着目したいポイント
杉村氏:G-genはGoogle Cloud 専業インテグレーターなので、基本的にはクラウドの活用を提案するところから入るわけですが、経営コンサルティングを依頼する企業は「クラウド」と聞いてどんな反応をするのでしょうか。
佐久間氏:当社は経営的な視点で、技術的要素も含めて提案できるのが強みです。ただ最初からクラウドありきではなく、あくまでデジタルによる変革を進めるうえでの選択肢の一つとして提示します。そのため顧客とのコミュニケーションでは、クラウドで得られるメリットや生み出せる価値をお伝えすることが多くなってきます。例えば先ほど話題に出た機動力と柔軟性はもちろん、初期投資が少ない、運用・メンテナンスに人手がかからない、世の中にある最新技術やノウハウを標準のものとして取り込める……などはクラウドを使う良さですので、それらを伝えて新しい取り組みに臨む際のハードルを低くするようにしています。
杉村氏:技術者視点で言うと、クラウドをうまく扱う会社には良いエンジニアが集まりやすいという利点もあります。現在はエンジニアの採用が難しい状況ですが、クラウドで最新技術に触れられると採用要項に書いてあれば、それだけでも応募が増えるでしょう。自社に優れたIT技術者を集めたいなら、クラウド導入は魅力になると思います。
佐久間氏:そうですね。さらには、クラウドだけでなくデジタルの活用全般がそうですが、新しいやり方を取り入れていくと社内の文化やコミュニケーションの活性化につながり、若手とベテランがお互いに教え合い支え合う効果も出てくるでしょう。
杉村氏:クラウドの導入というと、5、6年ほど前はリフト&シフトと言われ、オンプレミスにあるシステムをクラウドにそのまま移行する動きが中心でした。最近のトレンドはもう一段階上がり、サーバーレスやコンテナ化などアーキテクチャをモダナイズしていく動きが進んでいます。数年前は先進的取り組みをする企業や小規模なスタートアップしかそういった技術を使っていなかったのですが、いまは大企業でも内製で利用するところが増えています。クラウド専業の当社でも驚くような取り組みを進める企業がかなり増えてきた印象ですね。
佐久間氏:ただ、クラウドを活用して新規事業立ち上げや業務変革を進めるといっても、どこから手を着ければいいのかわからない企業は多い。そこはやはりG-genのようなノウハウのある会社に依頼することでうまくいきます。また、クラウド運用で情シスが手一杯になってしまったら本末転倒ですから、可能な部分はアウトソースし、エンジニアは新機能の開発など本来の業務に集中できる環境をつくることも大切ですね。
両社の協業で顧客が享受できるメリット
杉村氏:経営や業務の深い知見を有するフロンティア・マネジメントと、ITインフラにノウハウを持つG-genが協業することで、両社の強みを掛け合わせられます。その中で、具体的なシステムに落とし込んでいくところではG-genが付加価値を提供できます。
佐久間氏:経営に関して顧客とコミュニケーションしているとき、G-genが伴走支援してくれることで、技術的目線からの判断を盛り込めるのが大きいですよね。経営やシステムの企画の話と構築・実装の話が切り離されてしまうと、無駄が発生したり、工程の手戻りが起きたりするのはよくある話。両社が企画段階から一緒に取り組めば、実現可能な形をかなり効率的に、かつ短期間でつくることができると感じます。
杉村氏:実際に両社が協業した事例はすでにいくつかありますが、中でも象徴的なのは、全国規模の大手小売店の業務改革にあたりクラウド活用のデータ分析を共同提案したプロジェクトですね。
佐久間氏:そうですね。
杉村氏:きっかけはG-genでした。その顧客は以前からデータ活用の高度化を考えていたのですが、具体的に動き出せていませんでした。いよいよタイミングが訪れ、Google Cloud のBigQuery を使いたいという要望で話が始まったのですが、G-genは技術寄りの会社ですから、経営や業務にデータをどう活用していくのか考える部分は外部の力を借りたいと考えたのです。そこでフロンティア・マネジメントにお声がけし、プロジェクトを共同提案する形になりました。
佐久間氏:データ分析の戦略は以前からあったようですが、数年間全く動いていませんでしたね。顧客だけではうまく進められないところ、当社とG-genでどうすればいいかを考え、短い時間軸で成果が出ることをやっていきましょうとプロジェクトの進め方を変えたところが大きな成功要因です。当社が貢献できたポイントは大きく2つで、1つはプロジェクトの進め方のグランドデザインを描くところ、そしてもう1つは、実際に進めるにあたって情シスだけでなく他の部門も巻き込み、会社として最大の価値を出せる建て付けを考えていくところです。
杉村氏:ITの視点だけでは見えないところを、佐久間さんにたくさん教えてもらいました。
佐久間氏:情シス部門は予算の確保が大変で、社内の反対にもあっていたので、例えばマーケティング部門ならこういうデータ分析をすれば業務が便利になるとか、これまでできなかったマーケティング施策を打てるようになるとか、具体的な方向を見せてプロジェクトの価値を示せたことがポイントでした。経営や業務の目線で顧客と密にコミュニケーションを取り、技術的な部分はG-genに伴走してもらいながら、経営のコンサルティングと技術的なITコンサルティングの両輪をうまく回せたと考えています。
杉村氏:ターゲットを絞り、ここから始めましょうと具体的に示せると、やはり動き出しますね。予算も限られていながらスモールスタートできたのは、まさにクラウドの威力が存分に発揮された部分でした。
相乗効果で今後の新たな価値創出に期待
佐久間氏:両社の協業を支えているのが、G-genで働くみなさんの文化や姿勢です。「自分の領域はここまで」と区切って対応する人はいないので、チームとしても融合して動くことができます。
杉村氏:技術者に必要なのは技術のことだけではなく、顧客の業務も知らなければなりません。だから当社では「ここまでしかやりません」ではなく、知識を積極的に取り込んでほしいと社員にはよく言っています。ハードルが高いと感じる人もいるでしょうが、いろいろできるようになれば楽しいので、みんながモチベーション高く仕事に取り組んでいます。
佐久間氏:実は当社も似たところがあって、顧客の経営や業績への貢献のためには「コンサルタントは何でもできるべき」という考えがあります。いわば総合格闘技ですね。今後も両社の強みを組み合わせて共同提案し、経営の変革にあたってシステム面を実装まで確実にやり切ることで、相乗効果を新しい価値につなげられると期待しています。
杉村氏:顧客がクラウドのメリットをしっかり理解したうえで検討し、クラウドがいいという結論に達したなら、私たちが全力で支援していきます。
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