近年、リモートワークの浸透などにより働き方は大きく変化した。これに合わせる形でセキュリティ対策にも変化が求められている。今回は、多様な働き方を支えるネットワーク製品を開発するシスコシステムズ(以下、シスコ)と、ディストリビューターの立場からシスコ製品をソリューションとして提供するネットワンパートナーズ(以下、NOP)の担当者が、昨今のセキュリティにおける課題や必要な考え方、対策のポイント、その対策をサポートするソリューションについて語り合った。

シスコの吉田勝彦氏は、シスコのセキュリティ事業において同社製品を販売するパートナー様をセキュリティの観点から支援する立場で、セキュリティトレンドに関する啓発も担う。NOPの大須賀孝之氏は、シスコのネットワークとセキュリティに関するソリューションを中心に、ビジネス開発やそのマーケティング活動に携わっている。

  • NOPの大須賀氏(左)とシスコの吉田氏(右)

    NOPの大須賀氏(左)とシスコの吉田氏(右)

昨今のセキュリティ課題と、注目すべきソリューションとは

大須賀氏:昨今のセキュリティの課題や傾向について、吉田さんはどのように捉えていますか?

吉田氏:3つの観点でお話しします。1つ目は、いまメディアなどを見るとサイバー攻撃の脅威がここ数年で急激に高まっているように思えるかもしれませんが、実は以前から継続して急増しています。2つ目として、攻撃から守る側のセキュリティベンダーの世界では、統廃合が加速しています。統廃合されるベンダーの多くが単一ソリューションを提供していたのが特徴で、セキュリティはポイントではなく、全体最適で向き合う姿勢をベンダーもユーザーも目指していることが見て取れます。そして3つ目は、日本においては特に顕著ですが、以前から叫ばれているIT人材不足に加えて、セキュリティ人材がさらに不足していることです。

大須賀氏:サイバー攻撃は、コロナ禍の影響で急に増えたわけではないですよね。

吉田氏:もちろんテレワークが拡大し、それを狙う攻撃が増えた部分もあることはありますが、より正しく言うなら、コロナ禍以前から年々加速していました。

大須賀氏:攻撃手法の面ではどういった傾向があるのでしょうか。

吉田氏:短期的スパンではやはりテレワークがキーワードになります。テレワークを取り巻くインフラを狙った攻撃は完成度が高く、まさに矢のように降り注いでいる状況です。とくに狙われるのはVPNですね。また、社外で働く従業員のID・パスワードを狙った攻撃も加速しています。セキュリティの重要性自体は昔も今も変わりません。ただ、ランサムウェアの被害に遭ってお金を取られた、データが漏洩したといった重大インシデントに実際に直面した企業が増えているため、その実体験から痛みを知り、二度と被害を受けないように何かしなければという思いは強くなっていると感じます。

シスコシステムズ合同会社 セキュリティ事業 セキュリティアドバイザー パートナーアカウントマネージャー 吉田勝彦氏

シスコシステムズ合同会社 セキュリティ事業 セキュリティアドバイザー パートナーアカウントマネージャー 吉田勝彦氏

大須賀氏:NOPがパートナーの販売店様から聞いているセキュリティ課題としては、コロナ禍の行動制限を受けて新しい働き方に急シフトしたものの、経営者側がとにかくビジネスを継続させる点に集中したことで、セキュリティというキーワードが大きく抜けてしまったところが多いようです。

また、企業の情シス目線で言うと、ビジネス継続のためとはいえセキュリティの手を抜くわけにはいきません。テレワークだけでなくDXも進めなければならない中、トータルなセキュリティソリューションを望む機運がかなり高まっているようです。

吉田氏:そういった現状で注目されているキーワードは、やはり「ゼロトラスト」や「SASE(Secure Access Service Edge、サシー)」でしょう。“何も信頼しない”というゼロトラストはテレワークにフィットしやすい考え方で、多層的な防御を常に講じ続けられるインフラを望むユーザーで導入が急速に進んでいます。この考え方を踏まえ、ネットワークとセキュリティを融合したセキュリティモデルとしてSASEを検討するのがおすすめです。

大須賀氏:SASEは、Eメールやファイアウォールといった入口対策と、端末のエンドポイントセキュリティ、そして情報漏洩を防ぐ出口対策の3つのファンクションに対し、時代に沿ったセキュリティ強化を実現できる理想的なソリューションですね。

シスコはセキュリティのトップクラスのベンダーでもある

大須賀氏:シスコというとどうしてもネットワーク製品のイメージが強いと思います。

吉田氏:はい。もちろんそれ自体は事実で、日本でも多くの企業・組織に採用いただいているのですが、実はセキュリティに対しても世界トップクラスの投資を行っている企業です。サイバーの多様な脅威に対抗できる製品ポートフォリオを持ち、しかも脅威に関する知見に基づき必要に応じてポートフォリオを拡充していくところに強みがあります。シスコセキュリティのユースケースとして、我々が “Cisco on Cisco”と呼んでいるのですが、シスコ自体がシスコ製品を使っていること。そもそもシスコはサイバー攻撃の標的となることも多いのですが、要は攻撃者から徹底的に狙われ、それに対抗することで知見を鍛え上げて、製品にフィードバックしています。こうした自社ユースケースに基づく堅固な製品を顧客に提案しているのも、シスコの強みと言えるでしょう。

大須賀氏:NOPから見たシスコの強みは、やはり国内で圧倒的シェアを持つネットワーク製品と相性の良いソリューションを提供し、しかもスピード感をもってスモールスタートできるところ。先ほど吉田さんが単一ソリューションベンダーの統廃合が進んでいる話をしましたが、シスコの場合はEメールだけ、ファイアウォールだけ、エンドポイントだけではなく、セキュリティをトータルに、かつネットワークと相性の良い形ですべて提供できます。そのため、非常にスピード感がありますし、コストを抑え、必要な部分からのスモールスタートもできるわけです。ワンストップで揃うので、エンドユーザーの情シスから見てもシンプルでわかりやすいですよね。しかも、業種・業界や規模を選ばず導入でき、当社としても提案が非常にしやすい。

ネットワンパートナーズ株式会社 ビジネス開発部第3チーム エキスパート 大須賀孝之氏

ネットワンパートナーズ株式会社 ビジネス開発部第3チーム エキスパート 大須賀孝之氏

吉田氏:ネットワークやセキュリティといったインフラは業種・業界を問わない共通項ですし、そのインフラに関して包括的に提案可能な製品ポートフォリオを当社は持っています。セキュリティ製品のスキルセットも業種によらず横展開できるため、当社製品を実際に広げていただくパートナーの販売店様にとっても効率が良いのではないでしょうか。

大須賀氏:NOPの強みはマルチベンダー対応です。ニュートラルな立場でさまざまなセキュリティベンダーとお付き合いし、ベスト・オブ・ブリードの考え方で各社が得意な部分をいいとこ取りして、顧客にフィットするものを提案しています。シスコ製品についてもオンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど顧客の環境やニーズ、コスト面の要望等に応じて、ベストなソリューションを提供する体制を整えています。

シスコ製品を導入して顧客のセキュリティ課題解決に貢献できた事例として、関西のある金属系企業に提供したソリューションがあります。その会社はWeb会議システムのセキュリティに懸念を持っており、テレワーク時のユーザー認証を強化したいと考えていました。従来のオンプレミスの認証システムは、ユーザーの登録管理や運用面で情シスの負担が大きくなり、その点も課題と感じていました。そこで当社はシスコのクラウド型認証システムを提案。コロナ禍で急きょ顕在化した、ハイブリッドな働く環境を安全に実現するという課題に対し、シスコと当社、そして大手SIerの3社が一体となって、導入決断から数カ月で認証システムを刷新し、顧客のビジネス継続に貢献できました。まさにスピード感を持ったスモールスタートという、シスコ製品だからこそできたプロジェクトだと考えています。

共に働くことで、パートナー様を通じ“安心”を提供する

吉田氏:当たり前の話ですが、シスコだけでは300万社を超える日本全国の企業すべてにリーチできません。実際に製品を広く展開していただく販売店様、そして販売店様にソリューションの提案やサポートを行うNOPというビジネスパートナーがいるからこそ、当社のプロダクトで顧客の経営課題を解決できる。ビジネスパートナーはかけがえのない存在です。

大須賀氏:NOPはディストリビューターの立場ですので、エンドユーザーに直接サービスを提供するSIerや販売店様などの弊社契約パートナーに向けて特別な技術支援体制をとっています。具体的にはオンライン形式のハンズオンサポートやエンジニア向け教育、案件の構築フェーズに入るまでのヒアリング、設計・構築支援といった形でサポートを積極的に行っています。これにより、パートナー様が設計・構築に不安なく取り組めるスキームを提供しています。

吉田氏:エンドユーザーそれぞれの課題感に当てはめ、パートナー様を通じて提供されるシスコ製品を、課題解決に役立てていただければうれしい限りですね。

大須賀氏:繰り返しになりますが、シスコはワールドワイドで圧倒的なシェアを占めており、その既存インフラと相性の良い統合されたセキュリティをワンストップで実現できます。NOPとしても安心して提案できますし、また、買収で加えた新しいソリューションを自社製品にスピーディーに反映してくれるので、エンドユーザーはシスコがもたらす安心・安定に加えて、先進的な機能を即座に利用できるメリットも感じるでしょう。今後のセキュリティの世界でシスコのプレゼンスがさらに高まることで、エンドユーザーにとってより有益なソリューションを提案できると期待を持っています。

吉田氏:ネットワークベンダーとしてのブランドが先行してしまっているがゆえに、セキュリティベンダーの選択肢から見えなくなっている点は、シスコにとって大きな課題。パートナーであるNOPがシスコのメッセージを的確に読み取り、多くのSIerや販売店様に伝えてくれるので、NOPとの協業で“セキュリティのシスコ”を日本の企業により強くアピールし、共に新たな風を吹き込めることを期待しています。

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