“企業とユーザーが共に幸福になる広告”──
Web上の行動データと実際の購買データを繋ぎ合わせることによって、そんな次世代のデジタルマーケティングが可能になりつつある。
2022年10月7日に開催されたクラウドエース主催の大型イベント「OPEN DX 2022 Autumn」では、博報堂の土井 京佑氏、クラウドエースの松本 健治氏・杉山 裕亮氏による「1st-Partyデータ(自社で収集するデータ)を活用したマーケティングのDX」をテーマとしたトークセッションが行われた。本稿ではその模様をお届けする。
マーケターがとらわれている「呪縛」
博報堂 土井氏:
早速ですが、本テーマにまつわる「30%」「20%」という2つの数字を挙げてみましょう。これは何の数字だと思いますか?
クラウドエース 松本氏:
うーん、いきなり難しいですね。売上げや利益への影響でしょうか。
博報堂 土井氏:
はい。まさしくこの数字は、データ活用が財務指標に与える影響を示しています。1st-Partyデータ、つまり自社データのマーケティング活用は「30%のコスト減」「20%の売上額改善」に繋がると言われています。
Cookieに依存したマーケティングは終わりを迎え、これからは1st-Partyデータの活用が競争力の強化に欠かせなくなるでしょう。集客からリード獲得・顧客化・高LTV(顧客生涯価値)の獲得に至るまでのユーザージャーニーを把握し、マーケティング実行策に活かすことこそが、理想のマーケティングです。ところが、頭ではそれを理解できていても、なかなか実行が進んでいないのが現状です。
クラウドエース 松本氏:
実行に進まない理由の1つには、データが分かれてしまっていることがあるように思います。
博報堂 土井氏:
おっしゃる通りで、集客・リード獲得のデータと顧客データは、多くの企業で分断されています。これまでのデジタルマーケティングは前者の話が中心で、包括的には語られてきませんでした。技術的に難しかったという背景もあると思います。
しかし、今はWebの行動データと1st-Partyデータを統合できる基盤・ツールがあります。次世代マーケティングのための基盤構築から、戦略策定・実行までをワンストップでご提供するのが、我々のチーム"DATA GEAR"です。集客からLTV獲得までを一気通貫できるような、「マーケティングKPIの再定義」をご提案しています。
クラウドエース 杉山氏:
DATA GEARの提唱する「KPIの再定義」とは、具体的にどういったものなのでしょうか。
博報堂 土井氏:
従来のデジタルマーケティングの常識では、「CPAをいかに抑えて、コンバージョン件数を増やすか」というKPIのもとに動いていたと思います。私も、1円でもCPAを安くすることに専念していたときがありました。
しかし、これは近視眼的な、「マーケターの呪縛」だったのではないでしょうか? 本来はもっと先のビジネス成果まで見渡すべきなのです。
クラウドエース 杉山氏:
私も長いことマーケティングをやっているので、そう言われるとドキッとしますね。広告運用はまずCPAを最適化することが常識になっていると思います。今日はぜひその呪縛を解いてほしいと思います(笑)。
機械学習モデルがビジネスの成果を予測する!
博報堂 土井氏:
さて、デジタルマーケティングでは、お問い合わせや資料請求に対するCPAが安い媒体が良いと判断されることが多いでしょう。しかし、その先のビジネス成果を考えたときに、広告費に対してどれだけの売上を得たかというビジネス成果まで見る必要があると思いませんか? ひょっとしたら、CPAが一番高くても、ビジネス成果が高い媒体があるかもしれません。
マーケティングの真の目的は「ビジネス成果を上げること」であり、CPAだけを目標するのは、もう過去のものなのです。
クラウドエース 杉山氏:
ビジネス成果を新たなKPIに設定するということは「CPAを抑える」ことと逆行するような状況がありえると思います。それはとても勇気がいることだと思いますが、どこまで変えるべきものなのでしょうか。
博報堂 土井氏:
明日からまったく別のことをやりましょうという話ではなく、「ビジネス成果の高い"優良顧客"を集客していこう」と、段階的に考えていくべきだと思います。優良顧客を集客できるようになれば、必然的にWebコンバージョンも改善していくことでしょう。
クラウドエース 松本氏:
ビジネス成果までをKPIに含めるとなると、どうしても把握に時間がかかってしまいます。Webでコンバージョンが発生してから初回購入まで、何カ月もかかるケースもあるでしょう。その点はどのように考えればいいのでしょうか。
博報堂 土井氏:
今は過去のデータを元に、結果を予測することが可能になってきています。たとえば、資料請求がおこなわれた時点で成約確率を予測するなど、予測値を実行策に連携していくことができます。そのためにもデータ基盤を構築することが重要なのです。
クラウドエース 松本氏:
データ基盤というとなんでも貯めればいいと思われがちですが、実際はどこでデータを取得したのか整理していかなければなりませんよね。
博報堂 土井氏:
なんでもAI任せにできるわけではなく、人間がまず手を入れてあげなければならないことはたしかです。そこで我々はGoogleアナリティクスによるWebサイトの行動データと、基幹システムによるCRMデータを使った機械学習モデルを構築しました。人間はどうしても数に弱いため、多量のデータを見極めることは難しいのですが、Google Cloud のBigQueryの機械学習を活用した「ビジネス成果予測モデル」ならば、膨大なデータの中から特徴を見つけ出してくれます。
博報堂 土井氏:
たとえば、ある人材会社の場合では、夜(18-22時)の時間帯にサイトを訪れていることと、「職種選びのコツ」「自分に合った職業探し」のページを閲覧していることが、ビジネス成果である"就業開始"につながりやすいと分析できました。このことから、仕事が終わったあとにサイトを閲覧している人にとって、潜在層に向けたコンテンツは就業意欲を醸成することがわかります。
また、複合ECの場合は「4回以上の来訪」や「2商品以上の閲覧」といったサイト内の検討プロセスが"クロスセル"に影響を与え、自動車メーカーでは「ローンシミュレーションの利用」や「自動車保険コンテンツの閲覧」などの購入に必要な情報を収集している人が”成約”につながりやすいと推測できています。
ただし、実際のユーザー行動は複雑ですから、これらの推測をもとにそれぞれの意図を我々人間が紐解いていく必要があります。
クラウドエース 杉山氏:
実に興味深い結果です。ここで得られたインサイトはUI/UXの改善にも活かせそうですね。
LTVが高そうな相手に絞って広告を届け、ユーザーにも優しい広告を実現
クラウドエース 杉山氏:
こうした機械学習を予測だけでなく、実行策としての広告配信にも応用できると伺っているのですが、詳しくお聞かせいただけますか。
博報堂 土井氏:
まず、資料請求やお問い合わせのコンバージョンを計測する際に、それぞれの属性や動向から、Aさんは10万円、Bさんは1,000円といった具合でAIが将来のLTVを予測し、前者のLTVが高そうな人を相手に集客をするのです。
たとえば「インプレッションシェア70%を取る」という場合でも、よりビジネス成果が高いであろう層に絞って配信できるようになります。
クラウドエース 杉山氏:
全体からランダムに70%取るのではなく、質の高い人を狙い撃ちできるわけですね。劇的な差が生まれるポイントだと思います。
クラウドエース 松本氏:
これは広告を見るユーザー側にとっても、恩恵を受けやすくなりますね。思わずクリックしてしまったものに単純に追いかけられるとイヤですが、関心が高い広告が表示されれば嬉しくなります。
クラウドエース 杉山氏:
ユーザーがデータの活用を許可することでWeb上の体験が良くなるわけですから、顧客のことを考えて配信しているかどうか、施策そのものが広告主のブランドイメージに影響を与えていきそうですね。
より良いコミュニケーションで、人とデータを繋いでいく
博報堂 土井氏:
しかし、こうした学習モデルをゼロから構築するには多大なコストがかかりますし、データの整理にも時間を費やさねばなりません。これらの課題に対するソリューションとして我々が開発したのが「DATA GEAR for pLTV」です。
GoogleアナリティクスのデータとCRMデータさえあれば、データの分析統合から予測モデルの生成・運用型広告の最適化に至る、「ビジネス成果を上げるマーケティング」をワンストップで提供します。
クラウドエース 松本氏:
「データ基盤の構築」は大きな話になってしまいがちですから、データの整理をスピーディーに対応してもらえるDATA GEAR for pLTVは、非常に有用なソリューションだと思います。
クラウドエース 杉山氏:
従来型のGoogleアナリティクスは2023年夏に終了し、webサイトとスマホアプリ両方のユーザー行動を把握できる「Googleアナリティクス4(GA4)」に切り替わろうとしていますが、こちらはどのように対応していくのでしょうか?
博報堂 土井氏:
GA4導入のサポートもしております。まずはGA4の癖に慣れるためにも、今のうちから並走しておくことをおすすめします。
クラウドエース 杉山氏:
今回のセッションでは、マーケティングをビジネス成果に直結させるためにKPIを再定義することが重要だとわかりましたが、組織の構造も絡んでくる問題だと思います。そのためのサポートなどもされているのでしょうか?
博報堂 土井氏:
我々は"交通整理役"として、宣伝部やデジタルマーケティング部だけでなく、情シス部門やDX推進部など多くの部門と接します。最近ではプロジェクトを通じて、社内連携が進むケースも多いですね
クラウドエース 松本氏:
データだけでなく、組織も繋いでおられるのですね。
博報堂 土井氏:
博報堂はコミュニケーションの会社ですから。
クラウドエース 杉山氏:
まさに「コミュニケーションの会社」というのが全てを物語っているように思います。それでは最後にメッセージをお願いします。
博報堂 土井氏:
我々は多くの企業において「次世代のデジタルマーケティング」を実現していきたいと考えています。デジタルマーケティングのKPIをすぐに変えることは難しいと思いますが、まずはデータの把握から、勇気を持って始めていきましょう。
[PR]提供:クラウドエース