リテール業界を含め各社がDX推進に取り組むなか、Oracle Cloudを軸として企業のデータ活用に向けた支援を積極的に行うオラクル。8月18日に開催された流通ニュース×TECH+主催のリテールDXセミナー「デジタルシフトで顧客との接点を強化する」では、日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長 佐藤裕之氏が、基幹システムのモダナイゼーションによる業務効率化を図る「守りのDX」、データ活用によるビジネス変革を目指す「攻めのDX」という2つの観点から、クラウド活用の取り組みについて説明。また、NECネクサソリューションズ 流通・サービスソリューション事業部 第一営業部 エキスパート 鹿島智明氏、クレアンスメアード 第一営業グループ グループ責任者 水嶋徹氏も登壇し、Oracle Cloudの導入事例を紹介した。

  • 左から、日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長 佐藤裕之氏、NECネクサソリューションズ 流通・サービスソリューション事業部 第一営業部 エキスパート 鹿島智明氏、クレアンスメアード 第一営業グループ グループ責任者 水嶋徹氏

「モダナイズドアーキテクチャ」から「Data Driven DX アーキテクチャ」へ

Oracle Cloudは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)と呼ばれるIaaS/PaaS型のサービス群と、Oracle Cloud ApplicationsというSaaS型のサービス群から構成される。8月18日時点で全世界39リージョンのデータセンターを展開しており、日本国内では、東京および大阪データセンターから利用可能となっている。

オラクルでは、DXプラットフォームの理想解として、ミッションクリティカルなシステムをクラウド化する「モダナイズドアーキテクチャ」から、クラウドを活用してデータ活用を深めていく「Data Driven DX アーキテクチャ」への段階的なクラウド移行を推奨している。佐藤氏は、「まずはクラウド化してモダナイズドアーキテクチャを構成し、クラウド化したシステムのデータを活用してDXを進めていくことを多くのお客様にご提案している」と説明する。

  • オラクルが提唱するDXプラットフォームの理想解

佐藤氏は、モダナイズドアーキテクチャへの移行事例として、24時間365日稼働する大規模基幹システムをOCI上に全面移行したエディオンの事例を紹介した。同社では、既存データセンター閉鎖、各種ソフトウェアの保守切れなどを機にクラウド移行を検討。OCIの東京・大阪リージョンの2拠点で災害対策構成を実装することで、より高いレベルの可用性とデータ保護を実現した。

「他のクラウドベンダーも選択肢としてあったが、移行のパターンを検討した結果、従来の基幹システムはOCIで動かすのがベターという結論に。ミッションクリティカルなシステムをきちんと動かすためにOCIを使っている事例」(佐藤氏)

  • エディオンのモダナイズドアーキテクチャへの移行事例

一方、Data Driven DX アーキテクチャは、Oracle Databaseを中心に構成される。Oracle Databaseは、すべてのデータモデル、ワークロードを1つのデータベースで動かすという「コンバージドデータベース」のコンセプトに基づいて拡充されてきており、なかでも自律型データベースであるOracle Autonomous Databaseでは、パフォーマンスや可用性の管理が自動的に行われるため、クラウドのメリットを享受できる。佐藤氏によると、北海道地域共通ポイントカード「EZOCA」のデータ活用基盤のコアコンポーネントは、Oracle Autonomous Databaseだという。

また佐藤氏は、Data Driven DX アーキテクチャの事例として、トヨタマップマスターの取り組みを紹介した。同社では、地図制作業務におけるデジタル変革を支える基盤としてOCIを採用した。従来のシステムでは、業務工程ごとにリポジトリを設け、それらを連結してデータ処理していたが、OCIへの移行タイミングでコンバージド機能を活用し、論理データベースのなかにあらゆるデータを入れることで、地図制作業務の効率化・迅速化を実現した。

  • トヨタマップマスターのData Driven DXアーキテクチャの事例

40社・3000店舗で利用されるサービスの基盤をオンプレからクラウドへ移行

続いて登壇した鹿島氏は、NECネクサソリューションズによるモダナイズドアーキテクチャへの移行事例について紹介した。

同社は、2008年からASPサービスとして提供してきた小売業・専門店向けの店舗本部システム「storeGATE2」の基盤をOCI上へ移行した。storeGATE2は、駅売店やドラックストア、100円均一など、全国40社・3000店舗で利用されている。

  • storeGATE2のアーキテクチャ

従来は、自社データセンターのオンプレミス環境で運用してきたが、サービスの拡大によりサーバ機器の調達コストやサービスの運用コストが増加し、自前設備でのサービス継続に限界を感じていたという。そこで、外部クラウド基盤の活用を検討することとなった。

基盤の選定にあたっては、storeGATE2のSLAを守ることを大前提として、次の4点が重視された。まずは、運用コストが低減できること。2つめは、ユーザーの個別アプリケーション資産を安全・安定的に移行できること。3つめは、今後新しい機能やサービスも提供可能となる将来性。そして、storeGATE2では、Oracleライセンスを利用していたため、Oracle資産が継承できる点もポイントとなった。

結果として、OCIの採用が決定した。移行から約1年が経過したが、鹿島氏は「休みなく営業することが重要というお客さまの特性に適した形で、トラブルなくサービスの安定稼働を実現。夜間の集計処理の性能が毎秒17件から毎秒100件にまで向上した」と、その効果について紹介する。現在は、storeGATE2シリーズとして、OCI上で新しいサービスを計画中だという。

自社だけでなく顧客企業のDXも後押し

水嶋氏は、クレアンスメアードのポイント管理システムについて紹介した。

同社では、ポイント管理システムを起点として、顧客管理システムやPOS連携、CRM分析システムなどをSaaSで提供している。このうち、CRM分析システムにOCIのデータ活用基盤が採用されている。CRM分析では、アプリ、POS、EC、WebなどからCRMクラウドにデータが蓄積され、ユーザーはBI付きDWHクラウドで分析が可能となる。経営層向けの定型レポートの自動化や、販促企画向けの顧客セグメントなどに利用されるケースが多いという。

  • クレアンスメアードのCRM分析システムの概要

もともとCRM分析システムでは、ユーザーは分析ツールを利用して150種類の定型分析が可能だった。しかし、ビジネスの成長に伴い顧客企業からの分析ニーズは多様化。「各種のデータを統合して分析したい」「より自由な視点から分析したい」といった要望に対応することができなくなっていったという。

そこで、同社はOCIで提供されているデータ活用基盤を導入。データ量の制限がなく、高負荷処理性能とコストバランスの良さが評価された形だ。さらに、CRM以外の外部データの反映も可能となったため、「CRM Analyticsプラス」としてセルフサービスBI機能のオプション販売が開始できるようになった。自社はもちろん、顧客企業のDXも後押ししている事例といえる。

  • 「CRM Analyticsプラス」の概要。セルフサービスBI機能が利用できる


「人々が新たな方法でデータを理解し、本質を見極め、無限の可能性を解き放てるよう支援していくこと」をミッションに掲げているオラクル。リテール業界だけでなく、多種多様な業界で実績を持っており、「攻めのDX」「守りのDX」のいずれのケースにも対応可能だ。佐藤氏は「テクノロジーを利用して、皆さまのビジネスに貢献できると考えている」と呼びかけた。

[PR]提供:日本オラクル