小売業におけるデータ活用は今や珍しいことではない。多くの企業がPOSデータや会員情報データ、在庫データなど様々なデータを活用することで、DX実現を目指している。

その一方で、データ活用に取り組んではみたものの、「自社だけでは必要なデータがそろわない」、「データの質が良くない」といった課題に直面する企業も少なくない。

小売企業はそのような課題をいかにして乗り越え、DXを実現すべきなのか。

8月18日に開催された「流通ニュース×TECH+セミナー リテールDX デジタルシフトで顧客との接点を強化する」に、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ デジタルビジネスソリューション事業部 地図情報ビジネス担当 部長 高木 弘和 氏が登壇。同社が提供する「BizXaaS MaP人流分析サービス」を用いたリテールDXについて語った。

データドリブン経営を成功させた企業が勝ち残る時代

世の中のデジタル化はすさまじい勢いで進んでおり、様々な業界でDXへの試みがなされている。そんなDXの鍵となるのが「データ」の存在だ。たとえば、QRコード決済を例に挙げよう。ユーザーはQRコード決済により、現金を持たなくても支払いができるという利便性を享受できる。一方で、企業側からすれば、ユーザーがQRコード決済を行うことで、ユーザーの様々な行動データが取得でき、そのデータを用いてサービスをさらに改善したり新たなビジネスを創出できたりする。

「これからの企業活動は、これらの大量データを活用したデータドリブン経営を成功させた企業が勝ち残る時代になっていると言っても過言ではありません」(高木氏)

総務省によると、近年はIoT技術の導入が進んだこともあり、企業におけるデータ活用はここ5年で5倍以上にまで拡大しているとのことだ。

他方で、課題も見えてきた。

データ活用にあたって「データの質を向上させたい」という声が企業から多く寄せられたというのだ。データの質とは、たとえばデータの種類の多様性や、粒度、頻度などである。他社との差別化のためにも、今までにない新たなデータの入手や、よりきめ細やかなデータ整備が必要と考える企業が増えているのである。

データの質と量を高める取り組み

では、データの量と質はどのように高めていけばいいのか。

高木氏は、データが不足している理由について、「組織・グループ間での連携不足」「アナログ情報をデータ化できていない」「そもそも自社で取得できるデータだけでは足りない」の3点を挙げる。

このうち、前者2つについては、自社やグループ企業内の改善活動により解決が可能だ。問題は「そもそも自社で取得できるデータだけでは足りない」という点である。たとえば、小売企業が需要予測と在庫管理を行う場合を考えよう。曜日やシーズンごとの売上データ、あるいは在庫データの動きについては自社で取得が可能だ。しかし、具体的に店舗周辺にどれくらいの潜在顧客がいるのかという点については、自社でデータ取得することは難しい。データ化できない部分は、どうしても経験や勘などに頼ることになってしまうのだ。

そこで、活用したいのがオープンデータや他社データなどの外部データである。

「たとえば、小売業の場合、外部データを利用すると店舗の営業時間内に店舗周辺にいた人の人数がわかるようになります。そのデータを活用して、エリア全体の売上ポテンシャルを予測することも可能になります」(高木氏)

こうした自社以外のデータを有効に活用することこそが、「データドリブン経営を成功させる鍵となる」と高木氏は述べる。

外部データにも様々な種類があるが、なかでもあらゆる業界において活用できるのが「人流データ」である。

人流データとは、その名の通り「人の流れ」を可視化したもの。主に携帯電話や車両に搭載されているGPSデータから取得した位置情報を活用し、道路や建物の周辺にどれくらいの人がいて、どのように流れているのかを把握できるのだ。

さらに、携帯電話のデータからは、性別や年代、居住地・勤務地なども特定できる。人流データとあわせて分析すれば、たとえば、「日曜日の午前中、店舗周辺には20〜30代の女性が多く集まり、駅からショッピングビルに向かって移動する人が多い」といった情報が読み取れるのである。

「人流データは、リテールにおける出店戦略、発注在庫管理、店舗運営、販促戦略に寄与します。人流データの活用により、リテール全体のDX実現につながるのです」(高木氏)

人流データを活用した店舗DXの事例

ここからは、NTTデータが人流データを活用し、他社とともに取り組んだ店舗DXの事例が紹介された。

まず、大手小売チェーンにおける出店戦略事例だ。店舗の出店場所を最適化するため、人流データが活用されているのだ。

具体的には、GPSデータやモバイル空間統計データを活用して候補地の人流データを抽出。さらに、小売チェーン自身が持つ拠点情報や売上実績情報とあわせて分析を行い、最適な出店候補地を絞り込んでいく。

これまでは、新規出店の際、候補地の選定や現地調査にかなりのリソースを割いていたというが、人流データの活用により客観的かつスピーディーな意思決定ができるようになったという。

次に、大手小売チェーンにおける発注・在庫管理、および店舗運営事例だ。多くの小売業では、商品の発注数などを決定する際に過去の実績をもとにしている。しかし、それでは過去にはなかったイレギュラーな出来事に対応することが難しい。たとえば、大きな商業施設がオープンしたり、周辺で大規模イベントがあったりすると、商品の売れ行きは大きく左右されるからだ。

そこで、NTTデータは顧客の売上実績データに過去の人流データを加えて、販売数予測モデルを作成。AI技術を用いて未来の人流予測を行い、数時間先・数日先の需要予測を実現したという。

「イベントなど突発的な環境変化も含めた最適な発注数を算出でき、販売機会ロスの削減やフードロスの削減を図っています。多くの企業様にご活用いただくことで、SDGsの観点でも社会課題解決につながるものと考えています」(高木氏)

最後に、販促戦略に関する事例だ。

NTTデータは豊洲スマートシティ協議会と共同で、豊洲エリアの活性化や街づくりの最適化といったスマートシティ施策に取り組んでいる。

GPSデータだけでなく、商業施設内の店舗における満空情報や、屋内のIoTセンサ情報などをもとに豊洲エリア全体の人流データを作成。豊洲エリアに来訪しているターゲット層に向けて最適な広告配信を行うことで、エリア内の消費行動や回遊性の活発化につなげているという。

「従来の広告配信よりも緻密なデータ分析をもとにしたターゲット抽出が行えるため、広告効果の最大化が図れます」(高木氏)

ピンポイント人流を実人数で提供する「BizXaaS MaP人流分析サービス」

以上の事例からもわかるように、人流データは多くの業務領域で活用でき、大きな効果を上げられるデータとなっている。

NTTデータでは、この人流データをすぐに活用できるサービスとして「BizXaaS MaP人流分析サービス」を提供している。

BizXaaS MaPとは、様々な地図や地理空間コンテンツを組み合わせた地図配信サービスだ。サービス構成はデータ層、エンジン層、サービス層の3段階で構成されている。

データ層では、地理空間コンテンツを提供する他、ユーザーが保有する独自データを連携し、コンテンツ化することもできる。エンジン層は地理空間コンテンツをハンドリングするための機能群であり、様々な分析や未来予測の技術をAPIで提供している。そして、サービス層はユーザーがすぐに使えるSaaSとして、分析や予測サービスを提供している。

BizXaaS MaPは、これら様々な機能をあわせ持つビジネス戦略プラットフォームサービスなのである。

BizXaaS MaP人流分析サービスの特徴は大きく3つある。

まず、建物や道路単位といったピンポイントにおける人流を、実人数として計測し提供できる機能だ。これは他社サービスにはないBizXaaS MaP人流分析サービスだけの特徴である。なぜピンポイント人流が測定できるのかというと、ドコモの基地局データをもとにしたモバイル空間統計や、スマホアプリユーザーをピンポイントで行動追跡するGPSプロープといった多くのインプットデータを活用しているからだ。実際の人数と人流データを比較したところ、その精度は90%以上にも到達したという。

次に、AI予測に使える豊富な人流特徴量ラインナップだ。人流データを提供するだけでなく、円商圏や到達圏、店前道路など、利用目的にあった人流データを特徴量化して、すぐ使える形で提供できるのもユーザーには嬉しいメリットだろう。

最後に、NTTデータのAIスペシャリストが伴走してコンサルティングやデータ分析を行ってくれるオーダーメイドプランだ。人流データだけもらっても、どう活用すればいいかわからないという企業は少なくない。そんな企業にとって、データ活用のプロフェッショナルがサポートしてくれるのは非常に心強いといえる。

もちろん、これらの機能をすべて必要としている企業ばかりではない。「いきなり活用というわけではなく、とりあえず人流データを見てみたい」とか、「データがあれば分析は自社でできる」とか、企業によって事情は様々だろう。BizXaaS MaP人流分析サービスでは、そうした企業のニーズに応じてエントリープラン、スタンダードプラン、プレミアムプランという3段階のプランを用意している。自社の状況に合わせて柔軟にプランを選択できるのも嬉しいところだ。

BizXaaS MaP人流分析サービスが目指すのは「デジタルツイン」の実現

これらの人流データで同社が目指すのは「デジタルツインを実現するプラットフォーム」だという。

デジタルツインとは、サイバー空間上で現実世界のヒトやモノの状況を再現し、様々なシミュレーションをAIで行うというもの。現実世界では不可能なことでもサイバー空間上では可能になる。その結果、様々な社会課題の解決につながることが期待されている技術である。

「データ収集と蓄積、データの分析と可視化、そこから将来を予測し、意思決定とアクションを実施すること。それこそが、リテール業界におけるDX成功の鍵だと考えています」(高木氏)

コロナ禍による影響はもちろん、価値観の多様化や消費者行動の変化などもあり、小売業は大きな転換点を迎えている。これから先、小売企業が生き残っていくためにはデータの活用によるDXが不可欠だ。

しかし、DXを実現できるだけのデータを自社だけで保有している企業はそう多くはない。特に小売業のビジネスにおいて最重要ともいえる人流データについては、自社で用意するのは簡単ではないだろう。

そんなDXを推進する小売業にとって、BizXaaS MaP人流分析サービスはまさに待ち望んだサービスといえそうだ。

■BizXaaS MaP人流分析 ソリューション紹介サイト
https://madore.glbs.jp/contents/jinryu.html

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