IDCの調査「Data Age 2025」によると年間データの生成量は年々増加しており、2022年5月時点の報告では、2025年には180ZBを超えるデータが生成されると予測されている。こうしたなか、企業はどのようにデータの保存、管理および活用方法を改善していけばよいだろうか。
日本シーゲイト 営業本部 第3営業部 部長代理 竹永光宏氏、同 営業技術部 主幹技師 岩田太郎氏は、7月21日に開催されたTECH+セミナー クラウド移行Day 2022 Jul.「クラウド移行でDX推進の基盤を支える」に登壇。複数のクラウド環境を利用する「マルチクラウド」の可能性を最大限に引き出し、コスト・セキュリティ・データモビリティの利点を得るための方法について、事例を交えながら紹介した。
マルチクラウドが引き起こすデータストレージの課題
データ生成される場所が、エンドポイントからエッジ、コアおよびクラウドへ移行しつつある。こうしてデータが分散することによって、データの保管・管理・活用は年々複雑になってきている。今後はより多くのデータがパブリッククラウドへ移行するとの予想もあり、事態はさらに複雑化していくとみられる。
こうしたなかマルチクラウドというテーマが注目され、至るところで議論・導入されているものの、竹永氏は、「単に複数のクラウドがあるだけというのが実態。データの出し入れに制約があるため、それらが有機的につながっているかというと、そうではない」と指摘。マルチクラウドが引き起こすデータストレージの課題について、次のように説明する。
「データの出力に掛かる費用が高く、また長期契約を結ぶためにデータがベンダーにロックされ、クラウド間の簡単なデータ移動が妨げられてしまう。データはクラウド環境間で分割されるため、サイロ化してしまうという課題もある。データが指数関数的に増えるなかでは、コスト増加も不安定で予測しづらい。復元力とセキュリティも大きな課題となる」(竹永氏)
インフラ管理者からは、自社データなのにもかかわらずデータ制御力を失ってしまっているという声もあがっている。データの出力/入力に関するコストに加え、API呼び出しの数に関連して予期しないコストが発生しているためだ。そのため、タイミングと予算の予測を正確に行うことが難しくなる。データ保持コストを理由に、残していれば価値があったはずのデータを削除してしまっているケースもみられる。竹永氏は「クラウド移行によってコストが下がることを期待しているのに、現時点ではそうした状況になっているとは言いがたい。新しいストレージのパラダイムが必要になってきている」と話す。
マルチクラウドの自由化を実現する「Lyve Cloud」
こうした状況を受けてSeagateは、ストレージメーカーというユニークな立場から、コスト・セキュリティ・データモビリティといった課題を克服しマルチクラウドの自由化を実現する「Lyve Cloud」というサービスを2年前より提供している。
Seagateは、HDDの製造からスタートした企業であり、40年超に渡ってHDDの技術革新によりデータストレージ分野を牽引してきた。デバイスだけでなくシステム製品も扱っており、そのすべてが自社設計の垂直統合システムとなっている。電力効率と競争力のある価格に強みを持ち、40年以上にわたってOEMにソリューションを供給してきた。近年は自社ブランド展開も進めているところだ。竹永氏によると、Lyve CloudはこうしたSeagateの実績と経験をもとにした「新しいストレージの原型となるもの」だという。
マルチクラウドの自由化に重要なポイントは、ベンダーロック、データのサイロ化といった課題の解決にある。Lyve Cloudでは、マルチクラウドユーザー向けにストレージが構築されており、データ入出力、API利用のコストは一切掛からない。データを必要な回数だけ無料で任意の環境へ簡単に移動することができる。結果として、既存のパブリッククラウドと比較すると、70%のTCO削減効果が期待できるという。ISO27001およびSOC2の認証も受けており、データセキュリティやプライバシーの観点からも安心して利用することが可能だ。
パブリッククラウドの利用シーンにはいくつかパターンがあるが、Seagateは特にバックアップに着目し、バックアップに関するソフトウェアベンダーとの協業や認証獲得に力を入れている。また、データアナリティクスや映像系アーカイブの領域でもパートナーを拡大しているところだという。
米国にて提供開始された同サービスだが、2022年はシンガポールでもスタート。利用可能リージョンは今後さらに拡大される計画となっており、日本は2023年に開始予定となっている(※記事作成時)。
さまざまなシーンで幅広く利用される
岩田氏がLyve Cloudの導入事例としてまず紹介したのは、オンライン会議ツールを提供するZoom。ツール内の会議録画機能においては、データを格納する場所が選べるようになっているが、ユーザーはここで、SeagateのS3 storage-as-a-service(STaaS)プラットフォームを選択することができる。データ容量や保存・転送に掛かるコストを気にせず、シンプルな形でストレージにデータを貯められる点が好評だという。
アルファロメオF1チーム・オーレンは、プロトタイプ開発や流体力学に関するデータを使った分析等にLyve Cloudを活用している。同チームではもともとオンプレミスのストレージ装置を使っていたが、データが増大していくなかクラウドの利用を検討。Lyve Cloudはデータの引き出しやAPIに追加料金が発生しないため、他社クラウドと比較して70%のコストを削減できる点が評価され、採用に至ったという。
歴史遺産のデジタル3Dモデルを制作するCYARKでは、Lyve Cloudを通して自社データを世界中の研究者や教育者に公開している。従来は、エッジにあるデータをクラウドへ移行する際、ネットワーク帯域の問題があり作業に数週間掛かっていたが、エッジからクラウドへセキュアに大量データを転送できる「Lyve Mobile」を併用することで、作業時間を1日にまで短縮することに成功したという。
また、とある半導体関連企業では、バックアップソリューション「Rubrik」を利用して、Lyve Cloudへ400TB超のデータを移行し、5年間で35%のTCO削減を実現している。扱うデータの秘匿性が高いため、導入時にはLyve Cloudの堅牢なセキュリティも評価されたという。
以上のような事例をはじめ、Lyve Cloudは、エッジtoクラウド、プライベートクラウドtoパブリッククラウド、マルチクラウドなど、さまざまなパターンにおいて幅広く利用されている。岩田氏は「興味があればその他の事例についてもご紹介するので、ぜひお問い合わせいただきたい」と呼びかけた。
データコストを最小化し、データイノベーションを最大化するために
「データコストを最小化し、データイノベーションを最大化することが企業の勝敗を決める」と竹永氏。「Seagateでは、今回紹介したクラウドサービスのほか、ストレージメーカーという立場からオンプレミスやプライベートクラウドでも使えるストレージシステムも提供している。こうしたサービスも選択肢としてぜひ検討していただければ」と聴講者にメッセージを送り、講演を締めくくった。
なおSeagateでは、「マルチクラウド成熟度レポート」や、Lyve Cloudに関するYouTube動画を公開している。興味のある方は、ぜひこちらもあわせてご覧いただきたい。
[PR]提供:日本シーゲイト