自社で業務アプリケーションを開発する場合、一般的には外部の開発会社に開発を依頼することになる。しかし、それでは現場の事情を汲み取ることが難しく、出来上がったものが期待したものと異なる可能性もある。逆に自社で開発する場合、コスト面だけでなく業務の質やスピードにもプラスの影響があるが、立ちはだかるのはコーディングの壁だ。専門的にプログラミングが可能なエンジニアがいないと自社開発は容易ではない。
そういった課題を一挙に解決し得るのが「ローコード開発」である。
7月12日に開催された「TECH+セミナー ローコード/ノーコード開発Day Jul.システム開発をビジネス戦略のコアに」に、ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を提供するClaris International Inc.から法人営業本部 セールスエンジニア 古谷 豪 氏が登壇。Claris FileMakerの紹介と、実際の開発デモ、導入企業における事例を紹介した。
今ローコード開発が注目される理由
ローコード開発とは、プログラミング言語を用いたコーディングをほとんどすることなく、業務アプリケーション(以下、アプリと表記)を開発する手法だ。専門のエンジニアでなくても開発が可能なことから、世界中で注目されている開発手法である。
ローコード開発は、ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で開発を進められる。そのため、アプリを高速かつ効率的に開発でき、コーディングができない非エンジニアでも開発できるメリットがある。これを古谷氏は「開発の民主化」という言葉で表現する。
「ローコード開発を導入することで、現場の課題やニーズを理解している人がアプリを開発できます」(古谷氏)
また、開発ツール側であらかじめ用意されている要素を組み合わせてつくるため、バグが発生しにくいというメリットも見逃せない。
ローコード開発の真価は、内製化と組み合わせた際に発揮される。アプリ開発を内製化することで、業務プロセスの変化や市場の変化に対応しやすくなり、社内の課題をデジタルで解決していく文化が醸成され、ひいてはDXの推進につながるからだ。
これまで、コーディングの難易度が高かったためにアプリ開発を内製化できなかったケースでも、ローコード開発なら現場の人間による内製化も可能になる。エンジニアを採用して自社内に開発組織を構築することなく、内製化のメリットを享受できるというわけだ。
ローコード開発のリーダー「Claris FileMaker」
ローコード開発を行うためのツールは多数あるが、なかでも業界のリーダーともいえるのがClaris FileMakerである。ローコード開発という言葉すらなかった1985年に最初の製品がリリースされ、以後40年近くにわたってローコード開発を代表するツールとして知られている。
「ユーザーは全世界で100万ユーザー以上、日本国内でも20万ユーザー以上います。また、Claris International Inc.はApple社の100%子会社であり、iOSやiPadOSとの親和性が高いという特徴があります。もちろん、Windowsにも対応しています」(古谷氏)
Claris FileMakerを活用してアプリ開発を内製化している企業は航空会社や大学、製薬会社からアパレル企業など幅広い。古谷氏によると、フォーチュン500に選ばれた企業のうち、実に95%がClaris FileMakerを活用してアプリ開発の内製化に取り組んでいるという。
なぜ、Claris FileMakerはローコード開発のリーダーたり得るのか。
その理由は、長い歴史のなかで積み重ねられてきた機能面にある。 Claris FileMakerの特徴について、古谷氏は「開発」「共有」「統合」の3つの面から解説する。
まず、開発においては、簡単かつ自由度の高い開発機能が売りだ。ウェビナーでは実際に古谷氏によるClaris FileMakerデモが披露され、どれだけ簡単にアプリが開発できるのかが示された。
開発から運用までカバーする統合プラットフォーム
デモで古谷氏が行ったのは、Excelに登録された会員情報データを効率的に管理するアプリ開発である。開発の手順は非常にシンプル。アプリのレイアウトを決めたら、画面に入れたい要素をドラッグ&ドロップで配置していくだけだ。画面内のどこに、どれくらいの大きさで配置するのかも、マウス操作だけで簡単に調整できる。タブで表示情報を切り替えられる画面をつくったり、手書き署名機能をつけたり、iPadのカメラで写真を撮り保存する機能をつけたりするのも一瞬だ。
コーディングのようにプログラミング言語を使ってソースコードを作成するのではなく、非常に直感的な操作で、実際のアプリの画面をデザインするように構築できる。またカメラで写真を撮る機能などは、あらかじめ用意された日本語のスクリプトから選択して実装することができる。
Claris FileMakerの特徴はこれだけではない。
Claris FileMakerは開発したアプリをサーバ上に展開して共有する機能も持っている。そのため、複数の利用者が同時にアプリにアクセスして利用できるのだ。サーバ環境はクラウド版の「Claris FileMaker Cloud」とオンプレミス版の「Claris FileMaker Server」があり、オンプレミス環境はWindows、macOS、Linuxに対応している。
また一度開発してしまえば、利用に関してはWindowsやMac、スマートフォンやWebブラウザなど、利用者の環境を問わない点も導入しやすい一因となっている。加えて、オフラインであっても利用できる。
Appleの子会社ということもあり、セキュリティに関しても万全だ。サーバ上のデータ暗号化やデータへのアクセス制限に加えて、Claris FileMaker Cloudは専門チームによる運用管理体制が敷かれており、インフラレベルでの不正アクセス対策が施されている。
また、Claris FileMakerでは、アプリ開発後に社内の別のシステムとの連携ニーズが出てくるところまで想定。データのインポートやエクスポートはもちろん、ODBCによるデータ連携やAPIを利用したWebサービス連携のインターフェースも有している。
まさに、Claris FileMakerは開発から運用までカバーする統合プラットフォームなのだ。
トレーニングプログラムやユーザーコミュニティなどサポートも充実
古谷氏が開発デモで実演したように、シンプルなアプリであればClaris FileMakerはすぐに開発できる。加えて、機能を使いこなせば、複雑なアプリでも開発が可能だという。
Claris FileMakerでは、そのための学習コンテンツも充実している。公式テキストやトレーニング動画、eラーニング、さらにディベロッパーによるウェビナーなども提供している。有償トレーニングで体系的に学習することもできる。
また、ディベロッパー間で交流できるユーザーコミュニティもある。他のディベロッパーに質問できたり、アイデアを投稿したりと、Claris FileMakerに関する情報交換を通じて、効率的にスキルを身につけられる。
それでも、いきなり内製化は難しいという場合は、Claris FileMakerのパートナー企業を頼ると良いだろう。世界で1400社以上、日本国内でも約170社のパートナーネットワークがあり、ユーザー主体の開発をプロがサポートしてくれる他、開発そのものを委託することも可能だ。
自社の都合に合わせて、様々な開発体制をとれる柔軟性もClaris FileMakerの魅力なのだ。
Claris FileMakerで業務改善を実現した事例
ウェビナーでは、実際にClaris FileMakerを活用してアプリ開発を内製化したユースケースについても紹介された。
まず、Osaka Metro (大阪市高速電気軌道) では、iPadで稼働するアプリを現場主導にてローコード開発を行った。運転士や車掌など、全乗務員へiPadを配布し、開発したアプリを活用して様々な業務をシステム化したという。たとえば、始業点呼や運行情報の通知、アルコールチェックなど、これまで口頭で行ってきたさまざまな業務がデジタル化され、業務効率化につながっている。
また、真空ポンプの開発・製造で世界トップシェアを誇る樫山工業では、これまで紙に手書きしていたデータ入力や計算をアプリ開発によりデジタル化。年間で1100時間、330万円のコスト削減につながったという。開発担当者が現場の意見を聞いてアプリを開発した結果、現場の意見がしっかり届いているという理解につながり、現場の当事者意識が高まる効果も表れたとのことだ。
なるべく、現場の意見を反映したアプリを開発したい。しかし、エンジニアがおらず内製化は難しい。開発コストや期間もなるべく抑えたい――。
ローコード開発は、そういった企業のニーズに応えられる開発手法であり、だからこそ今世界中で注目を集めているわけだ。
ローコード開発に取り組むのであれば、長い歴史に裏付けられた機能性と強力なサポートを備えたClaris FileMakerを検討してみてはいかがだろうか。
[PR]提供:Claris International Inc.