アヴネット株式会社とJIG-SAW株式会社は2022年7月より、両社共同でJIG-SAW NEQTOコラボキャンペーンをスタートした。これはアヴネットからSTM32L4+ ディスカバリーキットのJIG-SAW NEQTOコラボモデルをWeb購入すると、NEQTOのプロフェッショナル版ライセンス+開発者サポートの90日間無料提供が付属するというものだ。そこでNEQTOのサービス概要や特徴、両社がコラボする目的について、両社のキーパーソンであるアヴネット株式会社の森山 寛嗣氏と仲見 倫氏、JIG-SAW株式会社 常務執行役員の尾﨑 博人氏にお話を伺った。
NEQTOとは
尾﨑 博人氏(以下、尾崎氏):NEQTOは、次世代IoTプロダクトのための組み込みサービスで、自社製品のIoT化を目指す企業の開発時の課題を解決するソリューションです。開発をスタートして5年、サービスを開始してから4年になります。元々、弊社への問い合わせは、Raspberry PiやArduinoを使ってPoCがしたいというお話が多く、ドライバやデータベースの開発をしたり、APIを作ったりといった個別の開発でそれが求められていました。こういった問い合わせが想像以上に多かったので、個別開発をするより全部統合したプラットフォームを作ってしまい、新規開発はビジネスロジック、つまりアラートを上げたいとか信号処理したいとか、そのような部分だけをお客様が触れるようにした方が良いのではないかと考えました。そうして生まれたのがNEQTOです。
森山 寛嗣氏(以下、森山氏):NEQTOのお話は以前から聞いておりました。弊社は基本的にボードやチップなどを販売しているのですが、市場ニーズを見ていると、「こういうモジュールを作りたい」とか「最終的にはインフラデータを取りたい」といった要望が最近非常に増えております。ただ、その基板を構築できる方とクラウドとの接続ができる方では、必要とされる技術が全く異なるのですね。たとえば我々は基板の中身のお話はできるのですが、そういうことはクラウドの開発をされているお客様は全くご存じないこともあります。しかし、JIG-SAW様のNEQTOを使うと、JavaScriptで組み込み開発ができるようになるので、クラウドの開発をされているお客様にも普段から使用している言語でエッジの開発をしていただけるようになります。逆に言えば基板の開発をされている方にも「JIG-SAW様のソリューションがあれば、基板のもっと外の世界に行けますよ」という話ができることになります。
仲見 倫氏(以下、仲見氏):つまり、エッジ側のハードウェアを一切触らずにエッジのプログラミングが出来るというところまで作り込んでいないと、現在のお客様の多様多種なニーズには応えられないのだと思います。さもないと、お客様毎にカスタムボードを作って、いちから作り込むという従来の世界に戻ってしまいます。
尾﨑氏:お客様が従来の組み込みの技術者の方なら基板側のお話はできると思うのですが、それに加えて、その先でクラウドとどう繋がるかというところに関しても任せて頂ければ、そのお客様のIT部門の方や生産技術の方ともお話ができます。いわば双方向通信が可能なのですが、そこの話をしていくのが我々の役目だと考えています。
JIG-SAWとアヴネットがコラボに至った理由
森山氏:JIG-SAW様と弊社がお取引させて頂くようになったきっかけは、Digilent社のPmodで、RS-422/485などの所謂産業用I/Fを何とか用意できないかとJIG-SAW様からご相談いただいたことですね。
尾﨑氏:たとえばNEQTOを業務用の冷蔵庫に組み込む場合にはRS-485を使いますので、RS-485をUART経由で繋ぐ形になります。この変換ボードがPmodで出ているので、これを入手するのが非常に重要でして、日本でDigilent社とコンタクトできるところを探していて見つけたのがアヴネット様でした。
森山氏:弊社といたしましては、その時にDigilent社とお話しまして、そこからJIG-SAW様との協業がスタートしました。その時から、ぜひ協業関係で何かやりたいとは思っておりました。かつ、今年の7月から弊社はSTマイクロエレクトロニクス様の代理店となる*のですが、実はSTマイクロエレクトロニクス様からも、良いパートナー企業がいるということでJIG-SAW様の名前を伺っていまして。これは丁度良い機会なので何かできないかと思い、今度は弊社からJIG-SAW様にアプローチをさせていただきました。
* グローバルではすでに取り扱っていますが、日本では、昨年7月からSTマイクロエレクトロニクスの代理店になりました。
仲見氏:この時点でJIG-SAW様の製品がマーケットニーズに非常に適しているという話は伺っていたので、我々としても単にSTマイクロエレクトロニクス様のMCUを売るだけでなく、お客様のやりたいことまで踏み込んでお話ができるのではないかと思いました。そういった経緯から、共同で新しいマーケットの開拓などでお話ができないかと思い、今回のキャンペーンが実現しました。
尾﨑氏:もちろん我々が対応するのはSTマイクロエレクトロニクス様だけではないのですが、現在はSTマイクロエレクトロニクス様が主力になっています。理由としては周辺回路を含むラインナップの豊富さもあるのですが、サポートが最も大きいです。弊社は元々、クラウド開発とワイヤレス関係のチップセットや通信モデムのソフトウェア開発をキャリア向けに行っておりまして、そこからIoT向けにシフトしてきたのですが、その際にSTマイクロエレクトロニクス様には技術サポートの面ですごく助けて頂きました。加えてSmall Startの数量でも対応頂けたこともあり、STマイクロエレクトロニクス様がメインになりました。
NEQTOの特徴
尾﨑氏:話を戻しますが、NEQTOとはお客様のビジネスロジックをJavaScriptで記述してエッジで動かすためのプラットフォームです。ターゲットは、既存の装置をDX化したいというケース、それと全く新しいIoT機器を作りたいというケースの両方がほぼ半々です。たとえば三次元測定機や業務用食洗器など、これから作る幅広い機械類に対してIoTの機能を入れたいというニーズがあっても、そもそもそれをどうやって作るのかわからない、技術者がいないといったお話があります。特に昨今のIoTですと、単に組み込みだけではなく、通信とかクラウドのこともわからないといけません。これを実装しようとすると、初期投資に膨大な金額がかかる可能性があるうえに、それに対してちゃんと見合う成果があるということを経営陣に伝える必要があります。こうした課題が日本企業にはありまして、これをもっと初期投資を抑えつつ、すぐにPoCができるようなところまで持っていくという、Small Startでも対応できるのがNEQTOの特徴です。たとえ大手メーカーだとしても、必ずしもこうした話に投資や人材を充てられるとは限りません。そこでSmall StartからEnterpriseまで幅広くサポートする、というのがNEQTOとなります。
森山氏:もちろんNEQTOがなくても全て自分で開発できる方もいるかもしれませんが、そうしたことができる方はすごく少ないのが実情です。かつ、仕組みを組み込むところはともかく、運用に入って24時間365日のメンテナンスに対応できるかというと組み込み業界ではそこまでカバーしない企業の方が多いです。NEQTOを使うと、その部分をJIG-SAW様が担保してくれるのが特に大きい点だと思います。
仲見氏:以前のIoTと言えば、何かあった時だけログを送るといったイメージでしたが、最近はずっとセンシングしてデータを蓄えたり、各拠点のデータを全部集めてそこからデータを俯瞰して処理したりしたいといったようにニーズも高度化してきています。こうなると何らかのクラウドベース分析プラットフォームが必要になるうえに、セキュリティも担保しなければなりません。こうなると、ゼロからシステムを構築するには、もう組み込みのエンジニアだけではまわらなくなってしまいます。そこで、こういった部分をカバーするべく、業界のエキスパートであるJIG-SAW様と組むことになりました。
尾﨑氏:中身の話をしますと、今回のキャンペーンではNEQTOのエンジンとしてSTマイクロエレクトロニクス様のSTM32L4+ Discovery Boardを利用しています。このSTM32L4+の上にRTOSとJavaScriptのインタプリタ、さらにドライバとかネットワークスタック、セキュリティライブラリなどが全て載っています。ただしこれはユーザーからは見えない形になっていて、プログラマーはクラウド側でJavaScriptを使ってビジネスロジックを記述し、それをエッジ側(今回であればSTM32L4+)にダウンロードして動かす形になります。この際、I2CとかUARTなどのハードウェアも全てNEQTOでフルマネージします。
そのため、ユーザーはMCUのドライバやファームウェア開発をする必要はありません。JavaScriptでプログラミングができる、クラウド向けのエンジニアの方にそのまま使って頂けます。新しいセンサーなどを繋ぐ必要があっても、それがI2CやUART、GPIO経由で接続できるものであればユーザーがNEQTOの中からそれを追加できます。またそれで対応できないようなものであれば、Arduinoにそうした新規センサーを外付けして、そのArduinoをUART経由で繋ぐという対応が可能で、検証も色々行っております。
NEQTOは基本的にはWeb画面のみで操作可能です。JavaScript用のIDEやライブラリも提供されます。また基本的にはクラウドからしかMCUは触れませんし、SDカードなどもないので物理的にデータを抜かれる心配もありません。その意味でセキュリティが高いソリューションと言えます。
もちろん稼働中はオフラインでも構いません。実際、乾電池で駆動するというケースもあります。NEQTOはスリープモードがあり、オフラインでデータを蓄積して、1週間に1回まとめて送信するといったことも可能ですし、データ蓄積用にSTM32L4+の内蔵フラッシュも利用できます。またWi-Fi以外にLTEでの接続もサポートしており、LTE Cat.1とCat.Mの利用が可能です。
仲見氏:ちなみに開発はディスカバリーキットを使って頂きますが、実際に納品するシステムとしては、北陸電気工業様のSoMを利用するか、あるいはSTM32L4+を利用してのカスタムボードを製造することになります。北陸電気工業様は弊社のお客様ですので、SoM製品を弊社から販売するということはできないのですが、STM32L4+チップ単体は弊社からご提供可能です。
アヴネットからSTM32L4+ ディスカバリーキット(JIG-SAW NEQTOコラボ)を販売
森山氏:今回のキャンペーンなのですが、弊社のWeb窓口でSTM32L4+ ディスカバリーキット(JIG-SAW NEQTOコラボ)をお買い求め頂いた企業様の先着5社様に、機能制限なしのNEQTOのプロフェッショナルライセンス、及び90日間の開発者サポートを無償提供する、というものになります。期間は本年度中ということで、お早めにご応募いただければと思います。といっても弊社から直接NEQTOを販売するのではなく、お買い求めいただいたお客様の情報をJIG-SAW様と共有することで、JIG-SAW様の方からライセンスあるいはサポートが提供される形になります。
尾﨑氏:弊社としましても、顧客接点をこのキャンペーンを通して広げていきたいと考えております。その意味でも今回のアヴネット様との協業は大変に有難いと思っております。
仲見氏:STM32L4+ ディスカバリーキットは元々非常にIoTに特化した製品ですが、NEQTOとの組み合わせでより広範なユーザーに使って頂ければと思います。
[PR]提供:アヴネット