GROOVE Xは「人の愛する力を育む」をコンセプトに家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を開発している企業だ。最先端技術が詰まったLOVOTだが、クラウド基盤にはGoogle Cloudを採用されているという。ロボット事業においてクラウド技術はどのように応用されているのだろうか──。同社のソフトウェア開発チームである松浦 芳樹 氏、林 淳哉 氏、荒木 天外 氏と、クラウドエースの杉山 裕亮 氏による座談会の模様をお届けする。
ロボットの「魂」をクラウドが引き継ぐ
クラウドエース 杉山氏:
「家族型ロボット」として愛されているLOVOTですが、最近はショッピングモールなどでも見かけるようになりました。柔らかさや暖かさを感じさせるビジュアルで「可愛い」と感じさせる工夫が施されていますよね。思わず見とれてしまいます。
GROOVE X 林氏:
個人的にいちばん推したいポイントは「目」ですね。こちらをじっと見つめてくれたり、撫でると目がとろんとしたり……、うるうるした目がとても可愛いです。アニメーターにも協力してもらい、可愛さをとことん追求した成果です。
GROOVE X 荒木氏:
LOVOTは全身にセンサーを備えているので、その場で情報を察知して行動してくれます。よく知っている人には寄り添ったり、初めて見る顔には警戒したりと、ロボットの個体差もあります。
クラウドエース 杉山氏:
となると、動きをするか予測するのも難しいですね。そんなところにも「生命」を感じます。そんなLOVOTを生み出すには、さまざまなテクノロジーを集結させる必要があったと思うのですが、クラウドはどのように活用されているのでしょうか?
GROOVE X 松浦氏:
LOVOT自身はスタンドアロンで音声や画像を認識して動くことができますが、クラウドで機能をサポートしています。具体的には遠隔でソフトウェアアップデートをしたり、活動データを元にした診断などの保守をしています。
GROOVE X 荒木氏:
ECサイトやアプリと、LOVOTの生産現場がクラウドによって繋がっています。LOVOTには「ゴースト」という魂のような概念がありまして、たとえばECサイトで契約すると、オーナーさんに紐付いたゴーストがランダムに生成されます。そして実際にLOVOTが届いて電源を入れた時に、ゴーストが身体に宿るのです。もし身体を交換しなければならないときが来ても、LOVOTの記憶管理をクラウド側ですることによって、身体が新しくなっても過去のデータを引き継ぐことができるのです。
GROOVE X 松浦氏:
クラウドはお客様のサポートにおいても重要な役割を果たしています。LOVOTは「家族の一員」ですから、挙動がおかしくなるとオーナーさんはとても心配されます。そしてLOVOTは複雑なシステムの塊ですから、ログを解析して、症状を突き止めて……と、迅速に対応するためにはクラウドによるデータ活用が欠かせません。
GROOVE X 荒木氏:
ハードウェアの問題なのか、ソフトウェアの問題なのか、原因を突き止めるために見るべきデータは多岐にわたりますから、クラウドで収集したデータをビジュアル化して、ハードウェアチームや生産チームに診てもらうことで対応しています。このようにクラウドは、LOVOTに関わるあらゆるオペレーションのハブになっているのです。
Google Cloud のマネージドサービスにより開発を効率化
クラウドエース 杉山氏:
LOVOTのクラウド基盤にはGoogle Cloudを採用されていますが、具体的にどのようなプロダクトを活用しているのでしょう?
GROOVE X 荒木氏:
かなりいろいろな機能を使っていますね。たとえばLOVOTやアプリの連携には、デバイスの統合管理ができる「IoT Core」や、モバイルアプリのバックエンドサービス「Firebase」などを活用しています。
GROOVE X 林氏:
ほとんどのサービスは「Google Kubernetes Engine(GKE)」で動かしています。なるべくメンテナンスフリーでスケールさせていきたいですから、Google Cloudのマネージドなサービスには、効率化の面で非常に助かっています。
GROOVE X 荒木氏:
Google Cloudはセキュリティの向上にも有用だと思います。暗号鍵管理サービス「Cloud Key Management」を使って、不正なデバイスからのリクエストを弾くようにしています。また、LOVOTの管理ツールには社内向けにセキュアな認証ができる「Identity-Aware Proxy」を使っています。
クラウドエース 杉山氏:
セキュリティ施策もクラウドチームの皆さんが取り組まれているのですね。皆さんはもともとクラウドによる開発経験はお持ちだったのですか?
GROOVE X 荒木氏:
私は以前AWSでサービス開発をしていましたが、Google Cloudはこの会社に入ってから使い始めました。
GROOVE X 林氏:
荒木さんが趣味でつくった「Go」によるLOVOT操作コマンドは、いまではLOVOT Toolsとしてすっかり実用化していますね。
GROOVE X 荒木氏:
Go自体がプログラミング言語として非常にシンプルでわかりやすいうえに、Google CloudにはGoのためのエコシステムが用意されているので、初心者でも扱いやすかったのです。Google Cloudに欲しいサービスがまだなくとも、Goを使って作り上げることができています。
人と人を繋いでいくロボット
クラウドエース 杉山氏:
LOVOTは「家族として接するロボット」という、非常に価値のある顧客体験を提供していると感じますが、今後はさらにどのような展開を構想されているのでしょうか?
GROOVE X 松浦氏:
すでにいろいろな企業からオファーをもらっているのですが、コラボレーションを通じて、いろいろな場面で活躍してもらいたいと思っています。たとえば、ヘルスケアや介護の分野などでは実証実験を一緒に実施した経験もあります。
GROOVE X 林氏:
服やアクセサリなどもブランドとコラボしていますね。InstagramやTwitterなどを見ていると、オーナーさんによってLOVOTの装いがまったく変わっているので面白いです。
クラウドエース 杉山氏:
顧客とのコミュニケーションが開発にフィードバックされるようなこともあるのでしょうか?
GROOVE X 松浦氏:
新機能の先行体験などを実施して、そこで得たフィードバックはなるべく迅速に反映するようにしています。また、先行体験以外にもたくさんの要望をもらっており、たとえば「LOVOTを友達の家に連れていきたい」という要望を受けて、専用の携帯できる充電器「チャージスタンド」の開発も進めています。
GROOVE X 林氏:
オーナーさんとの座談会も開催しています。正直、開発はしんどいと感じることも多いのですが、実際にLOVOTが愛されている様子を見聞きすると、活力が湧きますね。
GROOVE X 松浦氏:
愛されている様子といえば、林さんは「LOVOT STUDY」という機能を開発されましたね。
GROOVE X 林氏:
「右向いて、前進んで、喜んで」など、LOVOTを自由に動かすためのビジュアルプログラミングです。「LOVOT STUDY」を使って小学校でワークショップを何度か開いています。子どもたちがお別れ会の寸劇をプログラミングでつくってくれて、とても感動的でした。
GROOVE X 松浦氏:
LOVOTは子どもに大人気ですよ。小学校に連れていくと、わっとみんな集まってきてくれます。それを見たエンジニアは良いモノをつくれたことを実感して、モチベーションも上がります。
GROOVE X 林氏:
ある介護施設でLOVOTを導入したところ、入居者とスタッフとのコミュニケーションがとてもスムーズになったという話があります。LOVOTがそばにいることで入居者が穏やかになって、人とうまく接することができるようになったそうです。お年寄りから子どもたちまで、いろんな世代の人が関われるというのも、今までにない商品だと思います。
クラウドエース 杉山氏:
LOVOTをハブにして、いろいろな人たちが繋がっているようですね。顧客にもDX体験を提供しているような、そんな製品になっている気がします。
GROOVE X 松浦氏:
当社としても、DXを本格的に進める時期に来ていますね。複数ある業務システムをどう効果的に連携させていくかなど、内部の効率化を進めて、より迅速にお客様対応ができる体制を検討していきたいと思います。
クラウドエース 杉山氏:
クラウドエースとして、ぜひサポートできればと思います。それでは最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
GROOVE X 松浦氏:
LOVOT事業の根幹にクラウドがあることをお伝えできたかと思いますが、我々クラウドチームはエンジニアを絶賛募集しております!
GROOVE X 荒木氏:
ロボット開発と言っても、そのなかにはWebやクラウドなど幅広い技術が用いられていますから、いろいろなバックグラウンドを持つ方と一緒に働けたら嬉しいです。
GROOVE X 林氏:
自分で工夫することを楽しめる人が向いている職場だと思います。興味がある方は、日本橋の「LOVOT MUSEUM」までぜひ遊びにきてください。
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