ヤマハミュージックジャパンは、顧客との新しいコミュニケーションチャネルとして「LINE公式アカウント」の本格的な運用を開始した。双方向でのコミュニケーションを実現するための運用ツールには、既に顧客情報基盤として導入している「Salesforce Service Cloud」と、LINE公式アカウントをシームレスに連携できる、テラスカイの「OMLINE-I」を採用した。導入以来「LINE公式アカウント」を経由した問い合わせは確実に増加しており、その効果から対象とする製品を拡大していく計画だ。「OMLINE-I」と「LINE公式アカウント」を通じたコミュニケーションがヤマハとお客様のつながりにもたらす効果と期待について担当者に伺った。
顧客ニーズの変化に合わせてコミュニケーションチャネルを拡充
ヤマハミュージックジャパンは、ヤマハ株式会社の国内における楽器・音響機器卸販売および教室事業を行う会社として、国内子会社3社が統合し、2013年に発足した。
趣味で音楽を楽しむ一般消費者からプロフェッショナルまで、ヤマハの顧客は幅広い。ヤマハミュージックジャパンでは、ヤマハが国内で展開する商品の販売、サービスの提供およびサポートの大部分を担当している。消費者による商品購入前の相談、購入後の問い合わせ、修理の申し込みといったコミュニケーションの窓口も、同社が統括して運用を行っている。
同社のカスタマーサポート部で、お客様コミュニケーションセンター センター長を務める平井大生氏は「顧客のコミュニケーション手法や購買の意思決定が変化、多様化する中で、私たちサポート部門もそれに合わせて変革し続けて、お客様と“ヤマハ”とのつながりを、今まで以上に強いものにしていきたいと考えています」と話す。
同社では、会社統合のタイミングと同時期に、顧客情報管理のプラットフォームとして「Salesforce Sales Cloud」を導入。商品カテゴリやチャネルの違いによらない、顧客を中心としたコミュニケーション情報の統合管理を目指して運用を行っている。また、顧客の年齢層やコミュニケーションのトレンドを見ながら、コンタクトポイントのマルチチャネル化にも取り組んできた。旧来からの「電話」や「電子メール」に加え、2020年以降は「Webチャット」や「LINE公式アカウント」による窓口を開設し、ユーザーの状況を見ながら積極的に拡充を進めている。
「世の中で言われているように、お客様が企業にコンタクトするときのツールとしての“電話”の比率は、少しずつですが減る傾向にあると感じています。お客様とのコミュニケーションを広げ、つながりを強くしていくうえで、特に若い世代に受け入れられている、チャットやSNSといったツールを活用していくことは必須の検討項目でした」(平井氏)
SalesforceとLINEを緊密に連携できる「OMLINE-I」を導入
同社では「LINE公式アカウント」の有人運用にあたり、テラスカイの提供する「OMLINE-I」を採用した。「OMLINE-I」は、Salesforce Service Cloudと、LINE公式アカウントとを連携し、電話やメール、Webなどからの問い合わせと、LINEによるチャット履歴とを一元的に管理できるサービスだ。Salesforce Service Cloud 内の画面内に顧客とのやりとりができるLINEチャットのUIが統合されており、LINEの人気機能である「スタンプ」の送信や、対応終了後のアンケート自動送信など、オペレーターにとっても操作しやすい画面でカスタマーコミュニケーションに求められる多様な機能を備える。
「当初は、ヤマハへの問い合わせや、修理の申し込みといったサービスメニューをLINEに試験的に出してみて、お客様のフィードバックを得るところからはじめました。その結果、チャットボットだけでなく、有人対応のチャットや、リアルタイムなコミュニケーションに対するニーズがかなり高いことが分かり、お客様と一対一の双方向コミュニケーションが取れるLINE公式アカウントを開設して運用しようという判断をしました」(倉見氏)
そう話すのは、カスタマーサポート部 CS・品質企画課の課長を務める倉見学氏だ。CS・品質企画課では、ヤマハミュージックジャパンのカスタマーサポートについて、ビジネスプロセスの企画や展開を行っている。
同じくCS・品質企画課で、今回の「OMLINE-I」の導入に携わった本田悠介氏は、選定の理由として、顧客情報管理の基盤として利用している「Salesforce Service Cloud」との密接な連携を挙げた。
「ヤマハでは、お客様の個人情報とコミュニケーションの記録は、すべてSalesforce上に統合するという方針があります。特に氏名や電話番号、メールアドレスのような個人情報については、Salesforce以外の場所には残さないというルールを設けています。LINEとの連携で、それが徹底できるサービスであるという点が、導入を決めるうえで重要な条件のひとつでした。以前から導入しているチャットツールでは、Salesforceとの連携が難しく、手動で入力をし直さなければならない。いくつかのサービスを比較検討しましたが、この条件に最も合っていたのが“OMLINE-I”でした」(本田氏)
また同社では、サービス比較の際にSalesforceのさらなる活用も検討したとのことで、本田氏は次のように語る。
「将来的に、Salesforceの更なる活用やLINE公式アカウント導入範囲の拡大を視野に入れた場合、Salesforceの知見が豊富にあるテラスカイが開発を手掛けるソリューションを導入するのが、今後のサポートのために合理的だと判断しました」(本田氏)
「OMLINE-I」の導入は、まず、スピーカーやイヤホン、サウンドバーなどを取り扱っているAV関連機器の窓口からスタートしている。実際の導入にあたっては、カスタマーサポート部の運用プロセスをできるだけ変えずに使えるよう、若干のカスタマイズをテラスカイに依頼したという。具体的には、OMLINE-Iのフォームに、情報入力用のフィールドをいくつか追加するというものだったが、テラスカイ側の情報提供や対応はスムーズに行われたという。
「テラスカイには、運用開始にあたってカスタマイズできる範囲がどれくらいあるかを教えてほしいと依頼しました。OMLINE-IはSaaSなので、基本的にカスタマイズなしで使うべきものですが、テラスカイからは、われわれのニーズに合わせて変更が可能な部分と、そうでない部分が明示され、それを見ながら落とし所を決めることができました。テラスカイにはSalesforceの知見が多いので、安心して導入が進められました」(本田氏)
OMLINE-IによってSalesforceの情報を充足させ、顧客体験の向上を目指す
OMLINE-Iによるヤマハミュージックジャパンの「LINE公式アカウント」の運用は、2020年4月にスタートしている。運用開始後の消費者の反応は、期待を裏切らないものだったという。
お客様コミュニケーションセンターの村木慎太郎氏は「スタートからの3カ月間で、LINE公式アカウントでの問い合わせ件数は、先がけて運用を始めていたWebチャットの約2倍まで伸びています。特に学生を含む若年層のお客様からの反応が多いのが、他のチャネルと比べての特長です」と話す。村木氏によれば、以前から利用しているWebチャットツールやチャットボットと、OMLINE-Iによる有人対応のLINE公式アカウントは併用していく方針だという。「お客様の年齢層や好みに合わせて、一番使いやすいツールを使ってコンタクトしてもらう」環境を実現するためだ。
平井氏も「カスタマーコミュニケーションのためのチャットツールとしては、以前からLINEが本命だと考えていましたが、この数字は、それを裏付けるものだと思います」と評価する。
同社では、OMLINE-IによってSalesforceと密接に連携が可能となったLINE公式アカウントの運用範囲を段階的に拡張していく計画だ。
「手始めとして、AV機器のカテゴリからLINE公式アカウントをスタートしましたが、運用が滞ることもなく、またお客様の満足度が高いことも確認できつつあります。今後は楽器をはじめとする他のカテゴリにも横展開をしていこうと考えています。実は、アカウントの開設後に他のカテゴリの製品に関する問い合わせがLINEに寄せられ、他の窓口をご案内するといったケースもありました。こうした状況を、できるだけ早く解消していきます」(本田氏)
「オペレーターのリソースが限られている中で、カスタマーコミュニケーションの窓口をどのように整備するべきかについては、戦略的に考えていく必要があります。各カテゴリでのニーズを捉えながら、コンタクトしやすいツールを窓口として用意し、システム面では、ご相談の内容に応じて、スムーズに担当部署へ案件をエスカレーションできるような仕組みも必要になってきます。システムの拡充に加えて、組織としてのビジネスプロセスを見直すことが求められる部分もありますので、今後はそういった点にも取り組んで行きたいと考えています」(倉見氏)
同社では、OMLINE-Iの導入によって、LINEを通じた顧客とのコミュニケーション履歴もシームレスにSalesforceへ蓄積できる環境を整えた。今後、カテゴリの横展開が進めば、Salesforce上のデータは、顧客とヤマハとのつながりをさらに強固なものにする情報基盤として充実していくはずだ。同社ではこの基盤を、ヤマハグループのより広い事業領域で共有していくことも視野に入れている。
「お客様とのつながりを強めていくために、現在ヤマハでは、コミュニケーションチャネルを拡充するのと並行して、直営の店舗である“ヤマハのブランドショップ”の展開にも力を入れています。現状、店舗で管理している顧客情報と、カスタマーサポート部で管理している情報は別なのですが、将来的にはこれらを共有、もしくは連携できるようにすることで、より良い接客の実現が可能になるのではないかと考えています。近年、楽器やAV機器はオンラインショップで購入されるお客様も増えていますが、購入を決めるための情報収集に加え、オンラインで購入した商品の使い方やメンテナンスについて相談したくなった時などに、実店舗でのコミュニケーションはとても重要な役割を果たします。お客様に安心してヤマハ製品を購入し、使い続けていただくために、現在Salesforce上に構築している顧客情報基盤を、実店舗に足を運ぶお客様にとってもメリットがあるものにしていきたいですね。Salesforceでの実績や知見が豊富なテラスカイには、今後そうした視点での提案や支援にも期待をしています」(平井氏)
ヤマハ楽器音響製品お客様サポート LINE公式アカウント
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