日本国内では働き方改革が進み始めていたところ、新型コロナウイルス感染症が発生し、リモートワークへの移行が一気に進展した。さらにクラウドサービスの利用も年々増加しており、ビジネスにおいても自宅・外出先・モバイル環境からネットワークに接続するケースが格段に増している。そうなると、セキュリティを担保したうえで社外からの接続を実現したいというニーズも当然ながら高まってくる。
企業のニーズに対応した、多様なビジネス向けネットワークサービスを提供しているNTT東日本(東日本電信電話)では、IP-VPN(閉域VPN)サービスとして提供している「フレッツ・VPN プライオ」「フレッツ・VPN ワイド」および「Managed SD-WAN」に、IIJのモバイルサービスを採用している。この取り組みによって「IIJ Partner of the Year 2021」の最高の位置づけとなるPartner of the Yearを受賞した。IIJのモバイルサービスとの連携でどのような強みが生まれたのか、同社にその取り組みについて迫った。
“弱み”だったモバイル接続にIIJのソリューションを採用
同社の法人向けネットワークサービスは主に三つあり、一つ目は帯域を保証した広域イーサネットサービス、二つ目はベストエフォート型で閉域ネットワークを構築するIP-VPNサービス、三つ目はインターネットを介して拠点間通信を行えるサービスだ。「フレッツ・VPN プライオ」「フレッツ・VPN ワイド」「Managed SD-WAN」は、このうち二つ目のベストエフォート型閉域VPNサービスに該当する。事業者の閉域ネットワークを利用するIP-VPNは、オープンなインターネット回線を利用するVPNよりもサイバー攻撃や通信速度低下のリスクが低く、セキュアで通信品質の高いネットワーク環境を安価に構築できるのが大きなメリットだ。
NTT東日本では、これまでフレッツ光に代表される固定回線でのネットワークサービスを提供してきており、モバイル環境から接続するソリューションは、これまで自社サービスとしては提供できていなかった。今回、IIJと協業し、「フレッツ・VPN プライオ」「フレッツ・VPN ワイド」「Managed SD-WAN」のモバイル接続サービス(オプション)としてIIJのソリューションを採用したことで、モバイル回線から同社閉域ネットワークへのセキュアな接続を実現したという。
法人向けネットワークサービスの開発を担当するビジネス開発本部 第一部門で、閉域VPNサービスを所管する担当課長の濱田恭行氏は、この取り組みに至った背景について次のように解説する。
「お客さまが抱えている課題として認識しているのは、在宅勤務などのリモートワーク環境から安全に接続したいということです。実は、IIJとの協業によるモバイル接続サービスをリリースした当初と現在では、当社が捉えるお客さまの課題感に違いが生じています。2020年1月のサービス開始当初は、固定の光回線接続が何らかの事情で切れてしまった際のバックアップとして、モバイル接続を導入するニーズが多いと考えていました。ところが、リリース直後に新型コロナウイルス感染症が拡大し、リモートワークの必要性が叫ばれる中、情報セキュリティを重視して社外から安全にアクセスしたいというニーズが急速に高まり、そのニーズを取り込んでサービスが順調に発展してきました」
協業で実現したマルチキャリアへの対応
IIJとの協業でモバイル接続を実現した同社のサービスには、どのような強みがあるのだろうか。モバイル接続サービスの企画・展開を牽引する同部門の青沼廣海氏が語る。
「高度なセキュリティを担保できる閉域ネットワークを、マルチキャリアで利用できるところが大きな強みです。自治体、金融をはじめ、セキュリティを重視するお客さまに閉域ネットワークという特徴をご評価いただき、重要な回線として採用されるケースが多いのですが、導入時の構成として一般的な回線の冗長化だけでなく、異なるキャリアで冗長化できる点が高く評価されています」
IIJモバイルサービスを選定する際、強く重視したのがまさにこのマルチキャリア対応の点であったという。
「お客さまのニーズに応えるため、キャリア分散によって可用性を高めたいと考えており、マルチキャリアには当社もこだわりを持っていました。加えて、国際ローミングが利用できる点、そして閉域ネットワークに接続できる点も重視したポイントでした。この3つの要素をしっかりと満たし、かつ接続実績が豊富であることから、IIJとの協業を決定したのです」と濱田氏が説明する。
セキュアな閉域VPNへのアクセス性の向上で、高い評価を獲得
モバイル接続サービスの実際のユースケースとしては、社内サーバーの情報資産に、自宅や外出先から安全にリモートアクセスすることを目的として導入した事例が最も多いとのこと。また、路線バスや移動図書館、移動介護車といった車両にモバイルルーターを搭載し、移動中でも本社との通信を行い、業務効率化につなげている事例もあるという。
そのほかに、コロナ禍以前に想定していた固定回線のバックアップとして活用するケースや、固定回線を敷設できない雑居ビルなどにモバイルルーターを設置しガス料金メーターの通信に利用するようなIoT用途でも使われているとのことだ。
「これまで当社が提供してきたサービスは固定回線だけだったため、たとえば西日本への出張時や海外からは利用できず、他社サービスを併用するお客さまも多々ありました。今回、モバイル接続が可能になったことで、出張時もセキュリティ対策をしっかり講じたうえで、安全に閉域ネットワークにアクセスできるとご好評いただいています」(濱田氏)
リモートワークへの導入事例としては、自治体のように大規模に採用しているケースから、小規模で導入する中小の民間企業までさまざまだという。スモールスタートで徐々に拡張していくケースもあるようだ。
大規模に導入したある自治体からは、セキュリティの高さと通信品質の良さ、さらには短期間で導入できた点も含め、高い評価を得ているという。「すでに1年以上ご利用され、もっと広げていきたいとの相談もいただいています」と濱田氏。
もともと顧客満足度の高かった閉域VPNサービスに、IIJとの連携によるモバイル接続という新たな武器を付け加えたことで、より強力な手応えを実感しているようだ。
協業を進めるうえで苦労した点については、濱田氏は「当社は歴史的に固定回線を手掛けてきたこともあり、モバイル回線と当社サービスを接続すること自体が今回初めてでしたので、その部分の技術的検討や具体的な運用方法では苦労しました。そうした点についてはIIJに協力していただき、知見を蓄積して対応していきました。当社の苦労というより、むしろIIJに迷惑をかけてしまったのではないでしょうか」と振り返る。
青沼氏も「サービス構築時だけでなく運用面でも柔軟に対応していただいており、ありがたく感じています」と、IIJのサポートを高く評価している。
そうした取り組みを経てのPartner of the Year受賞となったわけだが、部門を統括する立場の萩野哲雄部長は「今回、IIJと手を携え一緒に取り組むことができ、非常に良い経験をさせていただいています。そのうえ、アワードでも高い評価を受けたことを光栄に思っています」と語る。
最後に、今回の取り組みを萩野氏はこう総括する。
「当社がこれまでなかなか踏み出せていなかったモバイル領域へのチャレンジという部分もありましたが、IIJとしっかり手を組むことでお客さまのニーズに応えるサービスを生み出し、販売を伸ばすことができています。今後に向けては現在のサービスをさらに発展させ、東日本地域のお客さま、また地域社会が抱える課題の解決に取り組んでいきたいと考えています」
同社では、エッジコンピューティングポイント、ネットワーク・通信、クラウドなどさまざまなICTアセットを駆使してデータ駆動型社会を実現し、地域の未来を創造する「REIWAプロジェクト」に取り組んでいる。NTT東日本が描くこうした未来図においても、IIJとの協業がさらに大きな力を発揮していくことだろう。
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