左:株式会社システム計画研究所/ISP 事業本部 第2セグメント IVA事業ユニット 事業マネージャー 井上忠治氏
右:菱洋エレクトロ株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション第4ビジネスユニット 営業第1グループ 森秀平氏
人の目を介して行われてきた製造現場における外観検査は、品質を保つうえで非常に重要な役割だ。一方で人手不足や後継者育成が難しいといった課題を抱え、検査の自動化が急がれている。そうした課題を解消すべく、1枚のサンプル画像から不良検出が可能な外観検査装置「gLupe Inspector」がシステム計画研究所/ISP(以下、ISP)によって開発された。今回は、gLupe開発のISPとハードウェアを提供している菱洋エレクトロ株式会社の両社の担当者にAI外観検査ソフトウェア「gLupe」と、それを支える日本HPのワークステーション『Z4 G4 Workstation』が製造現場にもたらす価値について話を聞いてみた。
製造現場でのAI活用に立ちはだかる壁
製品の異常を目視により評価する外観検査は、電気・電子機器や半導体、自動車部品、食品、衣料品など、あらゆるジャンルの製造業において非常に重要な工程だ。しかし昨今、検査技術を有するスタッフは慢性的な人手不足にあり、すべての製造業において共通の課題となっている。また、人間が行っている以上はどうしても結果にブレが生じることもある。
そうしたなかで昨今におけるDX機運の高まりもあり、多くの製造業がこの検査業務にAIを用いて、自動化および検査精度の向上を実現しようとしている。そのためのソフトウェアも数多く存在するが、実運用に至っていない企業が多いのが現状だ。
その要因は、現地導入までのPoC(実証実験)で多くのリソースを要してしまうことにある。AI外観検査の導入におけるPoCでは、数百枚から数千枚以上もの不良品のサンプル画像を学習させる必要がある。製造現場との温度差が原因でなかなかサンプルが集まらなかったり、サンプルが集まっても数が膨大なため、学習には少なくとも数時間はかかり、場合によっては一晩以上を要してしまうこともあるという。このため、外観検査でのAI活用自体を諦めてしまうケースも多い。
実はPoCは重要ではない…!? ディープラーニングの常識を覆す、AI検査システム
このような検査業務へのAI活用に立ちはだかる課題を一挙に解決することができるのが、ISPが提供する製造業向けAI外観検査ソフトウェア「gLupe(ジールーペ)」である。同社は、今年で創業45年を迎えるソフトウェア会社であり、2014年からと国内でもいち早くAI・ディープラーニングを取り扱っている。これまでに製造業や建設業、医療など、さまざまな分野でAI活用を支援してきた実績を有する。gLupeの開発を手掛けたISPの井上忠治氏はこう話す。
「当社がAI・ディープラーニングに注目し始めたときにまず感じたのが、非常に将来性のあるテクノロジーである一方、大量のサンプルデータが必要となるため、実用化までの道のりが長いということでした。AI・ディープラーニングの弱点を克服すべく、学習データ量を少なくできるよう技術開発に取り組み続けてきたのです」(井上氏)
こうして開発されたgLupeはISP独自の高性能エンジンにより、たった1枚の不良品の画像を学習させるだけで、不良検出が可能になる。また、AIやディープラーニングに関する知識がなくても簡単に操作ができるのも大きな特長といえる。
「gLupeは1枚~数枚の不良品サンプルデータから正常な状態も学ぶことができるため、大量のサンプル画像の収集が不要となり、学習に必要な時間も数秒程度と大幅に削減できます。こうして製造ラインへの導入コストを最小限に抑えることで、スピーディーな評価と検査精度の向上が実現できるのです。また、カメラで撮影できる範囲であれば、あらゆるジャンルの製造ラインで利用できます」(井上氏)
gLupeならではの特長は、製造業の多くの現場から高く評価されており、これまでに40社170ライセンス以上の導入実績を誇る。しかもその適用分野は、溶接箇所の検査や重包装製品の検査、焼き菓子の検査、半導体ウェハーの検査、自動車部品の検査、衣料品の検査など、多岐にわたる。また、gLupeは他の検査装置とシームレスな連携が可能なため、既存の画像処理は残しつつ、さらなる品質向上を目指してgLupeを追加導入するケースもあるという。
さらに井上氏は実運用後のサポートについても言及する。
「当社ではそもそも、PoCを推奨していません。PoCはあくまでも机上検証なので、実際に運用してわかることのほうが多く、現地導入後のモニタリング運用を重点的にサポートしています。それをふまえると、リソースをかけずにPoCを実施することに越したことはないのです」(井上氏)
検査装置として手軽に導入できる「gLupe Inspector」
製造業の生産スピードで検査画像を処理していくには、それなりのパワーを持ったハードウェアを用意する必要がある。さらにソフトウェアのセットアップや運用にハードルを感じられてしまうこともあり、こうした手間もAI外観検査がなかなか導入に至らない要因のひとつだという。システムを搭載した“検査装置”というかたちのほうが製造現場にとっては馴染み深いだろう。
こうしたニーズに応えるため、ISPは菱洋エレクトロと協業して日本HP製のワークステーション(Z4 G4 Workstation)にgLupeを搭載した検査装置「gLupe Inspector」を展開している。日本HP製品の販売を手掛ける菱洋エレクトロの森秀平氏はワークステーションの特長について、次のように説明する。
「gLupeを内蔵する日本HPのワークステーションには、AI/ディープラーニングにおいて世界中で豊富な実績を持つNVIDIA製の最新GPUが組み込まれています。当社はNVIDIAの国内正規代理店でもあり、2022年6月24日には同社のBest Distributor of the Year(ベストディストリビューターオブ・ザ・イヤー)の表彰もいただいております。 また、14年連続で国内のワークステーションのトップシェアを誇る、日本HPさんのサポート体制は非常に充実していますし、世界的な半導体不足が続くなかでも調達速度を維持しているという安定感が魅力です。このように日本HPの高い信頼性とNVIDIA製の高性能GPUという、双方のメリットを享受できる『HP Zシリーズ Workstation』 は製造現場に最適なワークステーションといえます」(森氏)
また井上氏も、菱洋エレクトロとのパートナーシップについて次のように語る。「菱洋エレクトロさんにハードにまつわるノウハウを提供してもらうことで、gLupeの検査装置としての展開を実現できました」(井上氏)
ISPと菱洋エレクトロとの強力なパートナーシップにより、今後gLupeはあらゆる製造業のニーズに応えつつ、さらなる進化を続けていくに違いない。
人手不足や後継者育成の課題が顕在化し、業務改革が急務となった製造現場だが「ただでさえ忙しいのに、業務改革まで手がまわらない……」と頭を抱える企業も多いだろう。導入までの時間や手間を最小限に抑えられるgLupeを活用して、まずは外観検査を自動化してみてはいかがだろうか。業務効率化を実現し、検査精度を向上させるだけでなく、これまで外観検査に割いていた多くのリソースを他の業務に充填することで品質向上にもつながるだろう。
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