ビッグローブは、2021年7月に提供を開始したモバイルデータ通信サービスの新ブランド「donedone」の運用システムを新しく構築した。SIMや端末といった機器の在庫管理、発送管理、サポート情報管理のシステムに「Salesforce Service Cloud」を採用し、約5ヶ月という短期間で新たな業務環境を整えた。ビッグローブはこの実績をもとに、サービス運用に関わるレガシーシステムのクラウド移行を加速し、ユーザーニーズに合ったサービスの迅速な提供と、効率的な運用体制の拡大を目指していく。
人々の生活や仕事にとって、必要不可欠なインフラのひとつであるインターネット。「BIGLOBE(ビッグローブ)」は、日本の商用インターネットの黎明期である1990年代後半から提供されてきた「インターネット接続サービス」「ポータルサービス」の老舗ブランドだ。 そのビッグローブが、2021年7月1日に新たなモバイルサービス「donedone(ドネドネ)」の提供を開始した。
※参考リンク:モバイルで社会貢献、異色のMVNOブランド「donedone」が生まれた背景
donedoneは、同社がMVNO(仮想移動体通信事業者)として提供するモバイルデータ通信サービス、いわゆる「格安SIM」の新サービスだ。donedoneでは、月額2,480円(税込2,728円)で50Gバイトのデータ通信を利用できる。特長的なのは、「教育」「健康」「海洋」「環境」「医療」という5つの領域の中から、支援したい領域を選択すると、毎月の利用料から50円を寄付できる「ドネーションプログラム」だ。
donedoneについて、ビッグローブ ワイヤレスインターネットサービス部 サービスデザイングループの藤井俊介氏は「ビッグローブが属するKDDIグループだけを見ても、MVNOが提供しているさまざまなモバイルサービスがあります。その中でdonedoneは、ビッグローブの強みを活かし、インターネットネイティブのいわゆる“Z世代”の消費者にアピールするサービスとして誕生しました。大容量通信を安く、高速で利用でき、さらに社会貢献もできるという特色があります」と話す。
新ブランドの立ち上げに合わせサービス運用のインフラをクラウド化
donedoneの提供開始にあたり、ビッグローブでは契約から解約に至るまでのプロセス管理、ユーザー情報管理、SIMや端末のような機器の在庫管理、発送管理のためのシステムをクラウドベースで新たに構築している。これまでのオンプレミス型ではなく、新たにクラウドベースで開発した背景には、事業環境やユーザーニーズの変化へ迅速に対応でき、運用保守のコストも削減できるシステムの構築手法を開拓したいというねらいがあった。
藤井氏は「変化の早いモバイルサービス事業に対応していくためにも、バックエンドのシステムは、その変化に追従できる柔軟なクラウド基盤がベストだと感じていました。変化が著しいモバイルサービス市場は、仕様変更の頻度が高く、システム修正や運用保守に年間数億円という膨大なコストがかかっていました」と話す。
「世界的にも、MVNOのサービスはWeb上でユーザーが簡単に新規契約やプラン変更、解約ができるようなものが主流となってきており、提供側も次々と特色のあるサービスをリリースしています。従来のオンプレミスで築いたシステムでは、スピード感を持ったサービス展開が難しく、危機感がありました。ビッグローブとしては、新しいモバイルサービス提供の形を指向するとともに、そのためのシステムとプロセスを整えていきたい。donedoneは、その先がけとしての役割も担っているのです」(藤井氏)
SaaSの標準機能とコールセンター運用の知見を活かし約5ヶ月でリリース
ビッグローブがdonedone提供に向けて構築した新システムは、中心となる構成要素の多くにクラウドサービスを採用している。サービス提供を行うためのシステムには、グローバル市場で導入が進むMVNO事業者向けSaaSパッケージを活用。ユーザー情報とひも付く機器の在庫管理や発送管理、サポート情報の管理には「Salesforce Service Cloud」を採用した。これらのシステムと、ビッグローブ全体の契約者情報を管理している既存の基幹システムとのデータ連携基盤には「DataSpider Cloud」が採用された。
KDDIグループでは、数年前から顧客管理基盤にSalesforceを積極的に採用していく方針を打ち出している。Salesforce活用に向けて開発パートナーの情報を集める中で、藤井氏は「テラスカイと一緒に仕事をしたいと思っていました」と話す。
「Salesforceの事例やイベントなどで、テラスカイの名前はよく見聞きしていました。われわれが実現したいと考えている要件や規模に対応できる実績があり、ベンチマークしている企業の事例なども手がけていました。今回のプロジェクトでは、われわれの目指す納期に対応する、と手を挙げてくれたのが唯一、テラスカイでした」(藤井氏)
新システム構築のキックオフは2020年11月。donedoneが実際にサービスを開始したのは2021年7月だが、システムは2021年3月にカットオーバーしている。約5ヶ月の短期間でリリースに至った理由としては、SaaSパッケージの積極的な活用と、パッケージの機能にできるだけ準拠し、独自開発を行わないための業務プロセスの標準化、加えて、綿密に行った基本設計がある。
藤井氏と共に今回のプロジェクトを指揮した三枝晋氏は「今回、特にシステムの基本的なアーキテクチャを作る部分に時間をかけました」と話す。
「藤井も私も、コールセンターの運用と設計については多くの経験とノウハウがありました。私はBIGLOBEモバイルのサービス運営に関わってきた期間が長く、モバイルデータ通信サービスの運用プロセスについては熟知していました。それらをベースに、どのようなプロセスをとれば、業務をより効率的に進めることができるか、そのためのシステムには何が必要かを、時間をかけて検討していきました。システム構築に入る段階で、基本設計と要件は明確になっていたので、開発作業自体はスムーズに進めることができました」(三枝氏)
「DataSpider Cloud」は、テラスカイが開発に関わったプロダクトであり、Salesforceとの連携実績が豊富であることから、今回のプロジェクトへの採用は自然な流れだったという。
「今回のシステムでは、各構成要素ができるだけ疎結合になるようなアーキテクチャが望ましく、DataSpider Cloudはぴったりのソリューションでした。今回については、スピードとコストの両面でメリットが大きいと判断し、DataSpider Cloudでバッチ処理による連携とデータ変換をしています。今後、より大規模なサービスをこの基盤の上に乗せていく際には時間をかけて、トリガー連携での開発もしていくつもりです」(三枝氏)
Salesforceをフルに活用して、業界トップクラスのコールセンターを目指す
donedoneがスタートして以来、新たなサービス基盤は大きな不具合もなく、順調に稼働を続け、「われわれの要望に十分応える形で運用できている」と評価する。
今回構築された新たなシステム基盤は、今後、donedoneに続き、ビッグローブがユーザーニーズを捉えた新たなサービスを迅速に市場へ送り込むための基盤として発展させていくという。
「われわれとしては、Salesforceをフルに活用することで、サービス提供にまつわるコールセンター運用の効率とサポート品質を、業界のトップクラスにまで高めていきたいという思いがあります。ビッグローブはモバイルサービス全体で100万近いユーザーを抱えており、この会員基盤の維持と拡大は、ビジネスにとって非常に重要なものです。これだけ大規模なユーザーをサポートするために、約2,000のSalesforceライセンスを自社で直接契約して、運用しています。Salesforceの利点を最大限に引き出し、業界トップクラスのコールセンターを実現するために、テラスカイのような実績と知見を豊富に持ったパートナーと二人三脚で作り上げたいと考えています」(藤井氏)
今回のプロジェクトにより、Salesforceを含むSaaSを活用することで、サービス展開を図るためのシステムを迅速に構築できることを社内に実証したという。
「今回のプロジェクトは、われわれにとって、ビジネスモデルとシステム構築モデルの両面において新しい試みであり、今後に活かせる手ごたえを得られました。弊社に限らず、レガシーシステムがコストや開発生産性の面で足かせとなって、スピーディーなサービスの企画、展開を難しくしているケースはあると思います。われわれビッグローブは今回のプロジェクトを礎とし、展開の早い事業に迅速に対応できるシステム基盤づくりを前進させていきたいと考えています」(藤井氏)
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