2022年4月20日、オンラインセミナー「AMD EPYC搭載サーバー導入事例に学ぶ パフォーマンスやTCO改善に向けたサーバーの強化方法とは?」が開催された。セミナーでは、株式会社レニアス 経営企画本部 総務企画部 業務推進課 Expert 佐藤吉朗氏が登壇し、AMD EPYC搭載サーバーを採用した経緯と実際の導入効果を解説。日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 ソリューション・アーキテクト 中村正澄氏と、デル・テクノロジーズ株式会社 データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏は、AMD EPYC搭載サーバーのパフォーマンス面やコスト面でのメリットを解説した。

EPYCサーバーで全台VDIとCAD-VDIを構築、リモートワークにスムーズに対応したレニアス

レニアスは、広島県三原市を本拠に、建設機械向けルーフ、窓、ライトカバーなどのPC樹脂加工製品やサッシュ、ドア、キャビンなどのアルミ加工品を展開する1976年に創業のメーカーだ。「小さな一流企業を目指す」を経営理念に掲げ、建機向けウィンドウは国内シェア90%以上を誇る。グローバルニッチ企業などとしての受賞経験も複数あり、現在、米国子会社を中心に米国、欧州、中国など海外市場でのシェア拡大を積極的に進めている。

そんなレニアスが取り組んだのが、AMD EPYC搭載サーバー(以下、EPYCサーバー)への移行だ。佐藤氏は「2025年の売上高100億円を目標に据え、社内システムのグレードアップを進めてきました。2019年8月には、営業などの外出者が社内システムに快適にアクセスできるよう30台のVDI環境を構築。その後、グローバル展開を見据え、すべての端末を仮想化しVDIとして運用する計画を立てました」と振り返る。

  • 株式会社レニアス 経営企画本部 総務企画部 業務推進課 Expert 佐藤吉朗氏

    株式会社レニアス
    経営企画本部 総務企画部 業務推進課 Expert 佐藤 吉朗 氏

2019年10月に、具体的な全社規模でのVDI移行とCAD VDIの構築計画を策定。サーバーを年1台ずつ増強し、4年かけて約120台のクライアント端末をすべてVDIに移行する計画とした。また、VDI本格導入にあわせ、CAD用端末のVDI化も上申した。

「CAD用物理端末を買い替えたばかりで予算確保は難しいと思っていたのですが、実際に提案してみると、予想外に安くシステムを構築できることがわかりました。当時は、クライアント向け市場でAMD Ryzenが盛り上がっていた時期です。当時ほぼ唯一取り扱っていたデル・テクノロジーズに、EPYCサーバーの見積もりを依頼すると、従前の環境と同コア数でありながら、コストとパフォーマンスが大幅に違うことがわかり、とにかく驚きました」(佐藤氏)

2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症が拡大すると、先行して導入していたVDIへのニーズは急拡大する。

「『明日からテレワークしたいけど何人までいけるか』という要望に即座に対応しました。テレワークした社員がVDIの利便性に気づき、セキュリティの高さも理解されたことで、全台VDIの導入案とCAD-VDIを含めたすべての予算案が承認されました。2020年4月までに、全社VDI環境構築が前倒しで実現したのです」(佐藤氏)

CPU使用率は常時30%、CPUのソフトウェア互換性の問題もなくきわめて安定した動作に

EPYCサーバーとして採用したのはDell PowerEdgeサーバーだ。佐藤氏は、新しいCPUを備えたハードウェアを選定するにあたって考慮したポイントをこう説明する。

「EPYCサーバーは同コア数での価格をかなり安く抑えられること、CPUが原因でシステムダウンすることが少ないこと、万一壊れてもデータは保護できること、VDIでCPUに求められるのはコア数であることなどを考慮し、採用を決めました。快適なVDIにはストレージが重要で、また、将来的に増設したり、CPUパワーが足りなくなったりするときに備え、柔軟性や拡張性が高いハードウェアであることも重視しました」(佐藤氏)

VDIの導入によって、キッティング時間の短縮や、問い合わせ対応、トラブルシューティングなどの工数を大幅に削減できた。さらに、セキュリティも向上し、アプリケーション展開も容易になったという。また、CAD-VDIについては、費用対効果が得られにくいという声も聞いていたなかで、あえてGPU搭載のEPYCサーバーへの移行を決めたという。

「デル・テクノロジーズのGPU搭載のEPYCサーバー1台は、GPU搭載ワークステーションを11台買うのとさほど変わらない価格でした。価格が同じでVDIのメリットが得られるため、導入すべきと判断しました。」(佐藤氏)

採用したモデルは、VDI用としてAMD EPYC 7542を搭載したDell EMC PowerEdge R6525(32コア64スレッド)が3台、CAD-VDI用としてAMD EPYC 7302PとNVIDIA Tesla T4(16GB)を搭載したDell PowerEdge R7515(16コア32スレッド)が1台、管理用としてDell PowerEdge R340が1台という構成だ。

  • サーバーCPUスペック・サイジング

「上記構成でVDI約110台、サーバー約10台でCPU使用率は常時30%です。インテルCPUとのソフトウェア互換性の懸念はまったくなく、きわめて安定して高いパフォーマンスを発揮してくれています。近年はMicrosoft TeamsなどCPUやメモリを利用するアプリケーションの利用が増えています。構成の際は、余裕をもった構成でリソースを少なめに始め、後から拡張できる製品がおすすめです。そうしたニーズに応えられるのがEPYCを搭載したPowerEdgeサーバーです」(佐藤氏)

同コア数でのパフォーマンスは競合比較で28%増、仮想環境のユーザーサポート数は52%増

レニアスのようにEPYCサーバーのメリットを享受している企業・団体は多い。AMD EPYCはどのように高いパフォーマンスを実現し、企業のTCO削減に貢献できるのか。日本AMDのセッションでは、中村氏がAMDの強みである半導体の微細加工技術を中心に、EPYCサーバーの特徴とメリットを解説した。

  • 日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 ソリューション・アーキテクト 中村正澄氏

    日本AMD株式会社
    コマーシャル営業本部 ソリューション・アーキテクト 中村 正澄 氏

AMDは2017年に14nmの最初のEPYCプロセッサーを発表し、2019年に7nmの第2世代EPYCを、2021年に第3世代EPYCをそれぞれ市場に投入。2022年には5nmの第4世代EPYCを投入する予定で、中村氏は「将来的に安心して利用できる製品である」ことを強調しながら、こう解説した。

「EPYCは業界に先駆けてマルチ・チップ・モジュールという新しい考え方で開発したCPUです。これにより、より多くコア数を提供できることが特徴の1つです。また、最新の第3世代EPYCでは、複数種類のチップの組み合わせや、3D V-Cacheなどによりメモリ容量が向上しています。3D V-Cacheは、プロセッサーの3次元実装を業界に先駆けて実現したもので、2ソケットサーバーのレベル3キャッシュを1.5GBにまで拡大します」(中村氏)

EPYCは、8コアから64コアのコア数、TDP(熱設計電力)、周波数によって異なるラインナップを揃える。この組み合わせで「高性能重視」「コア密度重視」「性能&コスト最適化重視」といったシンプルなアプローチで製品を選定できる。中村氏は、同じコア数でのパフォーマンスの高さを比較したベンチマーク(SPECrate 2017)や、仮想環境でのベンチマーク(VMmark 3.1)を挙げながら、こう説明する。

「第3世代EPYCの75F3と第2世代EPYCの7532と比較した場合は34%のパフォーマンス増、75F3と第3世代競合CPUと比較した場合28%のパフォーマンス増です。また、仮想環境での比較でも、64コアの第3世代EPYC 7763は、40コアの競合CPUに比べて52%多くユーザーをサポートできます」(中村氏)

  • 75F3と第3世代競合CPUとの比較
  • 仮想環境における、64コアの第3世代EPYC 7763と40コアの競合CPU比較

第3世代EPYCはこのほかにも、オフィスユーザーの快適さをはかるベンチマークや構造解析や流体解析などのシミュレーションソフトでのベンチマークなどでこれまでにない結果を残している。中村氏は、VDIやCAD-VDIはもちろん、さまざまな業務で高い効果が見込めるCPUだと強調した。

サーバー集約率向上と各種ライセンス費用の観点から、コスト効率の向上に貢献

AMD EPYCが持つ能力を最大限に引き出すためには、サーバー ハードウェア側の対応がポイントになる。デル・テクノロジーズのセッションでは「IT投資効率の最大化」をテーマに、EPYCの活用方法やPowerEdgeサーバーの特徴、デル・テクノロジーズのSDGsに向けた取り組みを紹介した。

  • デル・テクノロジーズ株式会社 データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏

    デル・テクノロジーズ株式会社
    データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部シニアプロダクトマネージャー 岡野 家和 氏

PowerEdgeは、日経コンピュータの「顧客満足度調査(PCサーバ部門)」と「パートナー満足度調査(サーバ部門)」の2022年調査でそれぞれ1位を獲得するなど、高い評価を獲得している。こうした評価の1つにEPYC搭載PowerEgdeサーバーへの高い信頼がある。

「お客様の多くからEPYCの高い価格性能比をご評価いただいています。多くの方がやはりコア数に言及され、また仮想化分野では32コアCPUや64コアがスイートスポットと見なされていると感じます。EPYC搭載PowerEgdeサーバーは、ハイパーバイザーライセンス費用に加え、サーバー集約率向上によるOSライセンス費用の観点でも、コスト効率の向上に貢献します」(岡野氏)

  • AMD EPYC搭載Dell PowerEdgeサーバーの解説

実際、PowerEgde R7515を用いて、同じコア数で構築したVDI環境を比較すると、第2世代EPYCと第3世代EPYCでは、サーバーあたりのVDIユーザー数は20%向上するという。また、価格性能比が向上するため、1VDIユーザーあたり11%の低コスト化が期待できるという。また、岡野氏は、SDGsの推進やIT投資効率の最大化についてこう解説した。

「デル・テクノロジーズではサーバーメーカーとして、SDGsへ向けた取り組みにも力を入れています。シャーシやベゼルの標準化や、工具、材料などの共通化を進めるほか、PowerEdge内部の黒プラスチックの30%でのリサイクルプラスチックの利用など多くの無駄を削減しています。また、PowerEgdeの設計においても、熱設計の見直しや冷却部品の改善、冷却強度を自動調整する『マルチベクタークーリング』などで電力効率・冷却効率の最大化に取り組んでいます」(岡野氏)

こうした取り組みは、日本の環境省のSBT(Science Based Targets:パリ協定が求める水準と整合した、企業の温室効果ガス排出削減目標)の説明資料で海外企業事例としてIT業界で唯一デル・テクノロジーズが紹介されるなど高く評価されている。

岡野氏は「PowerEdgeサーバーは、ハードウェア基盤として国内で高い実績と評価があります。EPYC搭載PowerEdgeサーバーでお客様のビジネスを支援していきます」と述べ、講演を締めくくった。

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関連リンク

■株式会社レニアス様AMD EPYC導入事例冊子
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■新"AMD EPYC™ with 3D V-Cache™ "(Milan-X)搭載PowerEdgeサーバーご紹介ビデオ(英語)
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■AMD EPYC搭載PowerEdgeサーバーご紹介冊子(One Pager)
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■顧客満足度No.1のPowerEdgeサーバー
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