会員制フィットネスクラブを運営する株式会社ザ・スポーツコネクション(東京都世田谷区)。今から40年前、まだフィットネスという言葉が日本で知られていない時代から、健康の価値を世の中に発信し続けている老舗企業だ。1997年には、都内では珍しい天然温泉の掘削に成功。フィットネスクラブに温泉を取り入れることで、フィットネスからウェルネスへと健康をより広い視野から捉え、運動、休養、食事という健康な生活を支える三要素を包括的にカバーしたクラブへと進化。近年は新しい機器やテクノロジーの導入にも積極的で、会員の満足度も高い。同社では数年前から運営アプリをClaris FileMaker で開発している。同社のデジタル施策は、Claris社の認定パートナーである株式会社未来Switchとの二人三脚で進められている。両社の取り組みについて、ザ・スポーツコネクション代表の除野健男氏、未来Switch代表の片岡達博氏に話をうかがった。

  • 株式会社ザ・スポーツコネクションが運営する、「Aqua sports & spa」の施設写真

    株式会社ザ・スポーツコネクションが運営する、「Aqua sports & spa」

“10年先”の長期目線で顧客の健康な身体づくりをサポート

1982年創業のザ・スポーツコネクションは、民間クラブでは日本で初めてエアロビクスを本格導入するなど先進的なフィットネスクラブとして歴史を重ねてきた。ジム、プール、スタジオに加えて天然温泉も導入。東日本大震災を機に施設を建て替えリニューアルし、2016年「Aqua sports & spa」をオープンして新たなブランディングのもとで事業を展開している。

  • 「Aqua sports & spa」の内観

    長期的な視点で身体のコンディションを整え続けることが大切とのコンセプトを基に施設をリニューアル

昨今では短期で効果的に痩せることを目指すフィットネスクラブなどが注目されているが、同社は「Well-being for the next 10 years. 〜10年先も快適な身体をつくる〜」というコンセプト打ち出し、長期目線で健康になることをより重視している。実際、会員は10〜20年以上も在籍し続ける人が多く、長い人になると創業時から40年通う常連もいるのだという。

フィットネスクラブ業界は近年、健康志向の高まりに加えて、総合クラブからパーソナルトレーニング、ヨガスタジオまで営業形態が多様化し、市場規模も拡大していた。しかし新型コロナウイルスのパンデミック下では度重なる休業要請を受け、その間の売上はゼロになるという厳しい状況が繰り返された。当時の状況を除野氏は次のように振り返る。

「当社のような総合型クラブは大きな装置を数多く抱えているため、休業中にかかる維持費を負担するだけでも大変です。ただ幸いなことに、当社は他のクラブと比べると会員減少が少なく、現在はコロナ以前に近い状況まで回復しています」(除野氏)

積極的なIT導入の一方で、システムのサイロ化が課題に

このコロナ禍を挟んで、同社はIT活用を積極的に進めてきたという。顧客向けシステム、業務システム、さらにはマネジメント系のビジネスシステムまで、IT化に旺盛に取り組んでいる。なぜIT活用を推進するのか尋ねると、除野氏は次のように回答した。

「当社は小さな会社ですが、小さいからこそIT活用が大事だと思っています。クラウドが普及し、以前なら大きな会社でなければ使えないようなシステムが手軽に低料金で使えるようになったので、使わない手はありません。経営面はもちろん、業務効率化やお客様への価値提供の面でも、IT活用で実現できることは数多くあると考えています」(除野氏)

実は除野氏はもともとApple製品を長年にわたり利用しており、前職はコンサルティング会社でITによる経営の効率化に取り組んでいたという。「要は、好きなんですね」と笑顔で話す除野氏。こうしてさまざまなクラウドサービスを次々導入し、業務に適用していく中で、あることに気づいたという。

「どのサービスも便利なのですが、基本的にはパッケージなので店舗特有の業務のかゆいところには手が届かず、一つのサービスですべてをカバーできるものはありませんでした。すでに導入したサービスだけでは、まだこの機能はカバーできていないからあのサービスも使ってみよう、ということを繰り返しているうちに、だんだんとクラウドの沼にはまっていきました(笑)」(除野氏)

  • 株式会社ザ・スポーツコネクション 代表取締役 除野 健男氏

    株式会社ザ・スポーツコネクション 代表取締役 除野 健男氏

連携のとれない複数のクラウドサービスを次々に導入することで、システムのサイロ化(システムや業務プロセスなどが他のアプリケーションや他事業部や部門との連携を持たずに自己完結し、それぞれ孤立してしまう状態)に陥ってしまったのだ。そのため、一方のシステムでは会員情報がアップデートされているが別のシステムでは更新されていないといった悩ましい事態が、逐一発生することになった。それを解消するため、システム間で会員のマスター情報はスプレッドシートによる手入力で同期・管理することになり、結局これでは業務効率が上がらない。

そこで新たな解決方法を模索していたところ、FileMakerに出会ったという。きっかけは、2019年11月に開催された「FileMaker カンファレンス 2019」だった。以前からカード型データベースとして FileMaker のことを知ってはいたが、その頃のバージョンと比較して格段に進化している今の Claris FileMaker の姿に除野氏は惹きつけられたという。FileMakerが社内で利用しているMacやiPadなどApple製品と親和性があること、UI設計の自由度が高く業務に合わせて簡単にカスタマイズできること、API連携機能で他システムとつなげられること、なによりこれら豊富なメリットに対して導入費用がリーズナブルであることが決め手となり、導入を即断する。

Clarisパートナーと二人三脚で始めたシステム開発

「FileMaker カンファレンス 2019」でブースを出展し、除野氏にFileMakerのメリットを伝えたのが、未来Switchの片岡氏だった。システムに加えて業務アプリまで内製したいという除野氏に片岡氏は二人三脚での開発を提案する。それを受けた除野氏はカンファレンスの翌月にはFileMaker 18 Master Trainingの初級コース、年が明けた1月に中級コースを受講し、片岡氏から出される毎週の課題をこなすうちに開発技術に習熟。開発テンプレートを基にアプリを試作した。その出来具合について片岡氏からアドバイスを受けて改善していくという、まさに二人三脚での開発を繰り返していった。

株式会社 未来Switch 代表取締役 片岡 達博氏

株式会社 未来Switch 代表取締役 片岡 達博氏

「FileMakerは一般ユーザーでも高度なアプリを作れるのがメリットです。その良さを実感してもらうため、まずユーザー自身にある程度まで作ってもらいます。必要なところで当社も協力するスタイルでのシステム開発を数年前から場合により採用するようになったのです」(片岡氏)

そうした数カ月を経て、除野氏と片岡氏のあいだでFileMakerが共通言語として成立してきたころ、2020年初頭からパンデミックが拡大。二人三脚の開発もそこからしばらくは止まってしまうが、この機会を逆に利用してIT化を一気に進めようとITの助成金を活用し、かねてからの懸念だったトレーニング管理システムの構築をあらためて未来Switchに依頼した。トレーニングを始める前に会員の身体状態を診断し、一人ひとりに合わせたメニューを作成し、実施したトレーニングの記録をとっていくというシステムだ。

「実は以前、パッケージ製品でこのトレーニング管理システムを導入していたのですが、他システムと連携しづらかったため、今回の開発に踏み切りました」(除野氏)

“沼化”したクラウドの連携にチャレンジ

未来Switchに依頼したトレーニング管理システムは2020年10月に完成。以降はこのシステムを土台として、再び二人三脚のスタイルに戻り、さまざまな業務システムと連携させていくプロジェクトがスタートした。

「ベースとなるトレーニング管理システムをプロフェッショナルである片岡さんに作ってもらい、そこに連携させる形で自分たちがほしい機能をどんどんと追加していく方式で開発を進めました。その確固たる基盤を作ってもらえたことで、その後の開発もスムーズに進められたと思います」(除野氏)

この外部連携においては、FileMakerのAPI機能に加え、多様なアプリケーションを統合してワークフローを自動化できるClaris Connectも状況に応じて利用している。“沼化”したさまざまなクラウドを有効活用するため、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら次々と連携にチャレンジしているところだという。

体組成計のデータとの連携はすでにAPI機能により実現しており、トレーニングによって体組成がどう変わったのかを見える化することで、会員のモチベーションアップを目指している。また、入退館管理システムとFileMakerを連携することで、会員がジムに訪れた記録を取り込んで顧客の解像度を高め、さらなるサービス向上へとつなげる狙いだ。そのほかレジツールなどの業務システムや、人事情報管理システム、スタッフ向け申請システムといったマネジメントサイドの連携にも、FileMakerのAPI機能とClaris Connectを活用しているという。

早くも見えてきた効果。より良いサービスを目指し、IT化を加速させる

緊急事態宣言などの影響もあり、これら開発したシステムの稼働を本格的に開始してからまだ半年程度だが、トレーニング管理システムや体組成計、入退館システムの連携により顧客解像度が高まり、すでに導入効果を感じているという。今後さらに連携を進めることで、データが一元化され、会員にとってより良いプログラムの開発・提案に発展すると除野氏は期待している。

一方、フィットネスクラブの現場では、トレーニング中にiPadから会員の多様なデータを閲覧できるようになり、利便性が向上したという声がすでに出ている。他のシステムとの連携により、業務効率化とヒューマンエラー防止効果にも表れているようだ。さらに改善や新機能追加を希望する声も現場から数多くあがり、内製化のスピードをさらに速めていかなければ追いつかないくらいだという。

  • トレーニングの様子

    フィットネスクラブの現場でも iPad を使って会員の詳細な情報を活用できる

「データの一元化とその活用、そして業務の生産性改善にはまだまだ余地があります。将来の健康への投資としてフィットネスクラブを活用していただけるように、今後もIT化を加速させ、人生100年時代の健康づくりへの貢献を深めていきたいですね」と最後に除野氏は将来への展望を語ってくれた。FileMakerとClaris Connectは、その展望を実現していくなかで大きな力を果たしていくことだろう。

  • 会員情報一覧画面(iPad)

    データの一元化を足がかりに、今後も他のシステムとの連携を強化するなど業務の改善・効率化を進めていく

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