1年に1回の実施が法令で義務付けられている定期健康診断。ここでいう健康診断は、大きくは右図(クリックで拡大)にある「実施」と「事後措置」の2つに分かれているが、多忙を理由に後者が十分に行えていない企業は多い。実は、健康経営の文脈ではこの事後措置の方が重要なフェーズであり、法令遵守の面でも、実施部分よりも重点的な義務が企業に課されている。
iCAREが公表する「事後措置ガイドブック」は、多くの業務を抱える人事総務担当者が事後措置を推進していくうえで、大いに参考となるものだ。ガイドブックではまず、事後措置のなかでも特に担当者にとって業務負荷の高いものについて解説。その後、煩雑な業務を効率化するための方法論について説明している。詳細はリンクからダウンロードいただきたいが、ここでは、事後措置で担当者を悩ませる業務には何があるのかをみていきたい。
iCARE 提供資料
[人事総務向け] 定期健康診断の、事後措置ガイドブック
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事後措置のなかで特に負荷の大きい4つの業務
iCAREはガイドブックのなかで、上図の事後措置にかかる6つの業務のなかから「2.個人票の作成と保存」「3.有所見者への保健指導」「4.産業医による就業判定」「6.労基署報告書の提出」、以上4つを "とりわけ負荷の高い業務" として取り上げている。本稿ではこのうちの[2]と[3]について簡単に説明しよう。
個人票の作成と保存
概要:
健康診断の結果を、実施したその年の分だけではなく過去の履歴も含めて管理・保存するための個人票の作成および保存。該当する法令:
事業者は、(中略)健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第5 号)を作成して、これを5 年間保存しなければならない。
――労働安全衛生規則 第51 条
業務負荷が大きい理由と推奨事項:
紙ベースでの個人票を作成、保存する企業が多くを占めているが、こうした業務では、工数・管理性の観点で多くの課題を抱えてしまう。実は、これまで個人票の作成において、就業判定を行った医師(産業医)の押印(または電子署名)が必要だったのが、2020 年8 月の法改正によりこれが不要となっている。企業には、これを契機にして健康診断結果のペーパーレス化を進めることが推奨される。
有所見者への保健指導
概要:
検査項目において所見が認められた従業員(有所見者)に対する、医師・保健師による保健指導の実施。該当する法令:
事業者は、(中略)健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。
――労働安全衛生規則 第66 条の七
業務負荷が大きい理由と推奨事項:
上にある "努力" とは「してもしなくてもよい」という意味ではなく、「特別な理由がない限りするべき」というものとなる。従って企業は、少なくとも健康診断の検査項目において改善すべき点がある従業員には、何らかの対応をする体制を整備しておかなくてはならない。ただ、健康診断結果の基準値は、健康診断の実施した医療機関によって異なる。全国に支社や店舗がある企業や、テレワークへの移行により近所のクリニックで健康診断を受けている企業の場合、各医療機関から提出された結果を適切に振り分ける方法論を確立することが推奨される。
健診結果のペーパーレス化で、負荷を最小に事後措置を実施
ガイドブックでは残りの2つの業務についても詳細に解説。そのうえで、業務負荷を抑えて事後措置を実施するための "健康結果のペーパーレス化" について、以下のとおり体系立てて説明している。
- ペーパーレス化のメリット
- ペーパーレス化が進まない2つの理由
- ペーパーレス化する4つの方法
- 外部委託業者選定の注意点
「診断結果が医療機関から紙で送付される」「個人票に産業医の押印が必要」などの理由で過去ペーパーレス化を断念した方がいるかもしれないが、安心してほしい。ガイドブックでは、今述べたものを含む様々な課題をクリアにしてペーパーレス化する方法について解説している。健康経営をいっそう前に進めるために、人事総務に携わる方はガイドブックを手にとってみてほしい。
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