デジタルテクノロジー(DX)の推進により、企業に蓄積されるデータ量は爆発的な増加を続けている。これらの情報資産を有効活用する仕組みを構築することは、あらゆる業種・規模の企業にとって喫緊の課題となる。そこで注目したいのが、目的の情報をすばやく見つけ出すために使われるサーチ(検索)技術の活用だ。本稿では、独自の高性能サーチエンジンを軸に、高精度情報検索による業務効率化からWebサイトやアプリケーションのユーザー体験向上、さらにセキュリティ強化、AIの活用までを実現するElasticのソリューションについて、同社のテクニカルプロダクトマーケティングマネージャー/エバンジェリストである鈴⽊章太郎氏に話を伺った。
ビジネス課題を解決するためのデータ利活用促進、その実現を阻む課題とは
現代のビジネスで競争力を維持するためには、データ利活用の促進が不可欠といえる。モバイルやクラウドといったテクノロジーが業務や生活に浸透し、あらゆるシーンでデータが生成されるようになったことで「セキュアなデータ管理」と「ビジネスを加速させるデータ利活用」の実現が求められるようになった。高速・高精度な分散型RESTful検索/分析エンジン「Elasticsearch 」をコアテクノロジーとし、効果的なデータ利活用やデータセキュリティを支援するソリューションを展開するElastic社の鈴木氏は、日本におけるデータ利活用の現状についてこう分析する。
「ここ数年でリモートワークを導入する企業が増加し、企業ネットワークの外側で生み出されるデータも増えてきました。ところが、クラウドアプリケーションやWebサイトのデータ、社外利用のデバイスで作成した業務データやIoTのセンサーデータなど、さまざまな場所に蓄積されるデータを一元的に管理できている企業は多いとはいえない状況です。DXに取り組み、データ利活用を促進していくためにはデータのマネジメントから考えていく必要があります」(鈴木氏)
昨今、IT関連のトレンドとなっているAI活用も、整ったデータを用意しなければ十分なメリットは得られない。AIを使って効果的な分析を行うには精度の高いデータを活用できる環境を構築する必要があり、ここでもデータのマネジメントが重要な意味を持ってくる。また、在宅勤務をはじめとしたリモートワークが浸透したことで、ネットワークやWebアプリケーションの脆弱性を突いたサイバー攻撃も急増。デジタル庁 省庁業務グループのソリューションアーキテクトでもある鈴木氏は、企業や地方自治体などあらゆる組織で、散在しているシステム・データを保護するためのセキュリティ対策が急務になっていると警鐘を鳴らす。
「官公庁や自治体においてもリモートワークが普及し、従来の境界型防御ではセキュリティを担保できなくなってきました。外部ネットワークとの接続を制限することで安全性を確保してきた金融機関も、クラウドの活用などを推進しなければビジネスの競争力を維持できなくなっています。このため、データマネジメントを考えるうえでは、散在するデータの連携はもちろん、ネットワークやアプリケーションの健全性を監視する仕組みの構築や、従業員の教育を含めたガイドラインの策定など、セキュリティ対策を見据えた取り組みが重要になります」(鈴木氏)
さらに国や地方自治体に限らず、現業的な業務が残っている組織も少なくないと鈴木氏。データのマネジメント以前に、データのインプット部分から見直しが必要となるケースも多いと話す。このように、データ主導のビジネスを展開するために必要なタスクは多岐にわたり、どこから手を付ければよいのか悩んでいる企業・組織も多い。そこで注目したいのが、高速・高精度なサーチエンジンを用いて、データ利活用の推進を阻む課題を解決するElasticsearchソリューションとなる。
検索エンジンの技術を応用して、Webサイトのユーザー体験を向上させる
検索エンジンと聞くと、Web検索に使うものというイメージを持つユーザーがほとんどだが、Elasticのプラットフォームは、こうした「検索」の概念を覆す使い方を可能とする先進的なソリューションを提供する。
「Elasticのソリューションは、サーチ(検索)の可能性を広げます。高速な検索エンジンを活用してデータの連携、横断的な情報検索、データの自動集計・分析、Webサイトやアプリケーションの状況監視・異常検知など、データ利活用に必要な仕組みを構築することができます」と鈴木氏は語る。
ElasticsearchはApache Luceneをベースに作られた、高速でスケーラブルなOSSの検索エンジンで、クラウド・オンプレミスの多様なシステムとのデータ入出力を担う「Integrations」と、可視化を行うグラフィカルなユーザーインタフェースで管理・開発ツールでもある「Kibana」を組み合わせてプラットフォームを構築。このプラットフォーム上に「Enterprise Search」「Observability」「Security」という3つのソリューションが用意されている。
Enterprise Search は、Site Search、App Search、Workplace Searchで構成されており、Webサイトやアプリケーションの利用者・管理者双方の利便性、ユーザー体験を高めたり、業務で利用している業務システム、クラウドストレージ、コラボレーションツールのデータを横断的に検索して生産性を向上したりと、検索機能を軸に効果的なデータ利活用を実現する。
Observabilityでは、Elasticsearchのプラットフォームに取り込まれたログやイベントデータを利用し、Webサイト・インフラ・アプリケーションを監視することが可能。マイクロサービスアーキテクチャを採用したサービスで、発生した障害の要因も容易に特定できるなど、高速・高精度検索を活用したシステム状況の可視化を実現している。
Securityでは、検索技術をさらに応用し、エンドポイントセキュリティとSIEMを統合した機能を提供。AIによる予兆検知も可能で、複雑化したシステム全体のセキュリティを担保できる。
鈴木氏は、Elasticの活用例の1つとして、App SearchとObservabilityによってECサイトのカスタマーエクスペリエンスの向上を実現した事例について解説する。
「フルスクラッチで実装しようとすると大変なUI/UXのカスタマイズも柔軟に行うことができ、オートコンプリートやフィルター、検索結果もノンコーディングで設定が可能です。検索結果もチューニングでき、同音異義語の登録や関連性の調整も容易に行えるため、利用者は目的の商品をすばやく見つけ出せるようになります。検索されたワードは自動集計され、管理者はリアルタイムでモニタリングできます。特定の操作でレスポンスが遅いといった障害が発生した場合も、Observabilityを使って容易に原因となっている箇所を特定できます。これにより、リリースや運用に関するコストの最適化も実現しています」(鈴木氏)
「検索」のパラダイムシフトにより、データ利活用のステージを上げる
高速・高精度な検索技術をベースに、ビジネス課題の解決に直結する実践的なデータ利活用を促進するElasticソリューションは、すでに多くの企業・組織で導入されている。その目的と得られた成果は多岐にわたり、オンライン決済サービスの状況を可視化してセキュリティ強化を実現した事例から、社内全システムで発生する1日2TBにも及ぶデータを集約・監視した事例、さらに1,000万人の顧客データを集約・分析して顧客管理に活用した事例や、画像処理技術と連携して製造現場の異常行動をリアルタイムで検知するシステムを構築した事例まで、さまざまなシーンで課題解決を支援している。
リリースされたばかりの最新バージョンとなるElastic 8.0では、検索エンジンとしての機能が大幅に強化されたことに加え、主要クラウドプロバイダ(GCP/AWS/Azure)との連携機能も充実。さらにNLP(自然言語処理)モデルも統合され、AI活用においても大きな貢献が期待できるようになった。鈴木氏は「Elastic 8.0は“検索”のパラダイムシフトとなる革新的な機能を備えており、AI/機械学習導入のハードルを下げるソリューションへと進化しています」と語り、データ利活用のステージを上げるポテンシャルを持つと力を込める。
データ利活用を促進し、データの持つ価値を最大化するElasticを提供するElastic社は「In a world where endless data creates endless possibility, search helps people and organizations thrive(無限のデータが無限の可能性を生み出す世界において、サーチは人と組織の成功を支援する)」というビジョンを掲げている。このビジョンに基づき、Elasticsearchは今後も進化を続けていくと鈴木氏は語る。
「私たちは無限のデータが無限の可能性を生む時代に生きています。この世界で、サーチというテクノロジーを使って組織自体の成長と生産性向上を実現し、さらにセキュリティ強化によりミッションクリティカルなシステム・アプリケーションの円滑な稼働を支援していくことが、Elasticのミッションだと考えています」(鈴木氏)
データドリブンな組織への変革に取り組む企業にとって、Elasticが見据える「ビジネスを加速させるためのデータ利活用」のビジョンには今後も注視していく必要があるだろう。
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