DXにはさまざまなアプローチがあり、最近では間接業務のDXから先行して進める企業が増えている。非競争領域である間接業務のDXは、効果・スピード・コストの面で大きな価値を生み出すためだ。特にほぼすべての社員にとって身近な間接業務ともいえる経費精算の領域において効率化に向けたクラウドサービスを提供するのがコンカーだ。

2月24日〜25日に開催されたオンラインセミナー「ビジネス・フォーラム事務局 × TECH+ EXPO 2022 for LEADERS DX Frontline ——変革の第一歩を」で、コンカーの代表取締役社長 三村真宗氏は、間接業務DXの例として経費精算業務効率化の進め方のポイントを紹介した。

  • コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏

付加価値のない業務をいかに自動化するか?

従業員個人の生産性向上には、付加価値を生まない作業を削減していくことが必要だ。そして経費精算は、あらゆるビジネスパーソンにとって最も付加価値のない仕事の1つであるといえる。コンカーの社会的使命は、経費精算のない世界を実現することだという。

経費精算業務の流れは、従業員による電車やタクシー代などの「経費の支払い」、従業員が支払った経費を会社に報告する「経費精算」、それが正しいかどうかを上長や経理部門が確認する「承認」、従業員への「払い戻し」という4つの段階に分けられる。三村氏は、このうち「経費精算」、「承認」をデジタル活用によっていかに自動化するかが重要であると指摘する。

「従来のように現金や個人のクレジットカードで経費を支払うと、手入力でシステムに支払い履歴を打ち込む必要がある。さらにその後、領収書を申請書に糊付けし、上長に報告することで、経理部門へ回され手続きが進む。しかしここで、管理職の承認の形骸化、経理部門によるその尻拭いが発生しているほか、月末月初の労働集約的作業に追われ業務過多になるという課題も生まれている。デジタルを活用し、ここをいかに自動化するかという視点が求められている」(三村氏)

4つの「レス」で経費精算のない世界を実現

三村氏によると、「1. キャッシュレス」、「2. 入力レス」、「3. ペーパーレス」、「4. 承認レス」という4つの「レス」に取り組めば、経費精算のない世界が実現できるという。コンカーの機能を例に、順に見ていこう。

まずは「キャッシュレス」と「入力レス」。コンカーは、5大法人カードブランドと提携しており、法人カードを導入して経費をカード払いにすれば、コンカーに自動的に経費支払いのデータが集約されるようになっている。個人の与信の問題で法人カードを発行できない従業員がいる場合や、法人カードが使えない店舗の場合、コンカーは現在PayPayと連携しているため、QRコード決済での対応も可能だ。

さらに、SuicaやPASMOをはじめとする交通系ICカードとの連携にも対応。据え置き型リーダーをオフィスに設置し、各従業員がICカードを読み取ることで、利用データをコンカーへ登録することができる。また、「Concur Tap to Expense」というスマートフォンアプリを利用すれば、スマートフォンが読み取り機の代わりになるため、スマートフォンにSuica・PASMOをかざすという形の交通費精算が可能となる。

今後コンカーからは、Suicaデータの直接連携機能もリリースされる予定だ。JR東日本運営のデータサーバとの連携により、Suicaを使っているだけで、全国の地下鉄・私鉄バス・タクシー・駐車場代など、あらゆる近隣交通費のデータが自動でコンカーに集まるようになる。

また、コンカーは、JapanTaxi、Go、S.RIDEなどタクシー配車アプリとも連携しているため、不正の温床となるタクシーチケットを廃止することも可能だ。配車アプリで車両を呼び出し接待先に利用してもらえば、経費は自動でコンカーに登録される。

続いて「ペーパーレス」。電子帳簿保存法の改正により、デジタルカメラやスマートフォンでの撮影による領収書の電子データ化が2016年に認められ、2020年には、キャッシュレス決済によるデジタル明細が領収書の代替として利用できるようになった。そして、2022年1月には運用要件が大幅に緩和され、電子帳簿保存法の導入、およびペーパーレスの推進がより容易になってきている。

そして「承認レス」。承認が求められる理由として、紙の領収書の改ざんという不正の可能性があげられる。かつては管理職や経理部門の目視チェックで対応していたが、キャッシュレス決済にすることで、そもそも紙の領収書を改ざんする余地はなくなる。また、個別の経費に対するデータだけでなく、コンカーでは、蓄積したデータの異常も検知できるため、たとえば、接待において経費の上限規定がある状況で、上限未満の接待を過剰に繰り返すといった行為も見逃すことがない。さらに、領収書の画像を従業員同士で使い回して経費精算するという不正も考えられるが、キャッシュレス払いであれば、画像の使い回しはそもそも不可能だ。システム上で、同日・同金額の経費を自動検知して警告するということもできる。

このように、キャッシュレス払いを前提にしている限りは、承認レスにつながるケースが多い。逆に言えば、現金の利用は不正の温床になりやすい。そのため、蓄積されたデータから現金を多用する社員を軽微な違反として自動検知するということもできる。

「悪意のある従業員はごく一部。そうした一部の従業員の不正を牽制するために、面倒な事前承認や大量の項目の入力、承認の多階層化といった運用の厳格化が起きている。デジタル技術で不正を予防できれば、不正を働く出来心をくじくことができるだけでなく、多くの善良な従業員の生産性向上につなげられる」(三村氏)

各種サービスとの連携で、経費の手入力を最小限に

ここからは、実際の利用方法について見ていきたい。コンカーは、Webブラウザからアクセスする仕組みとスマートフォンからアクセスする仕組みの2通りの利用方法があるが、いずれにしても経費を使う際に工夫することで、経費の手入力を最小限にできる。

法人カードを使う場合は、自動でデータがコンカーに連携されるため、従業員による入力は必要ない。また、一番数が多く面倒な電車代の登録は、コンカーのスマートフォンアプリを使ってSuica・PASMOを連携させておくことで自動化できる。

またPayPayを利用した際には、履歴からビジネスに使った記録だけ選んでコンカーに登録することが可能だ。店舗名や日付を入力する必要もない。

  • (左)交通系ICカードとの連携画面、(右)PayPayとの連携。PayPayアプリ内から経費登録が可能

ただし、現金で払う機会はどうしても残るため、公式アプリにはOCR機能が搭載されている。スマートフォンで領収書の画像を撮影すれば、内容が読み取られ、データがコンカーのシステムへ登録される。

タクシー配車アプリとの連携は、アプリ内から操作することでコンカーとの連携が可能となっているため、スムーズな登録ができる。

  • (左)領収書の画面を撮影すると自動で内容が入力される、(右)タクシー配車アプリ内からコンカーとの連携が可能

コンカーのログイン画面には、データ連携した件数が表示されており、一覧から経費に該当するものを選んで経費申請を作成できる。また、会社の規定違反や情報漏れの場合にはアラートが表示されるため、従業員自身で確認可能となっている。

  • 経費の一覧画面

上長による承認は、スマートフォンアプリでも可能だ。運用を改善することで、この承認を無くすこともできるという。

経費精算DXの進め方のポイント

コンカーが経費精算DXをサポートする場合、同社が用意している「成熟度マップ」をベースに、まずは企業とともにDXビジョンを策定するところからスタートするという。

DXは、上のステージに進むほど業務が楽になるが、大きな業務改革が必要になるため、会社の状況や目的に合わせてビジョンを決めていく必要がある。コンカーでは、どのステージを目指せばどれくらいの効果が得られるかという試算も実施している。

その後、業務改革とシステム導入を並行して行い、コンカーの利用を促進しながらより高いビジョンを設定するという流れでDXを進めていく。

「クラウドサービスは、導入したシステム自体が動かないということはほぼない。プロジェクトが失敗するほとんどの理由は、業務改革の頓挫にある。経営層がオーナーとなって業務改革をやり抜くことがポイント。まずは、間接業務からDXして業務効率化を実現し、直接業務のDXにもつなげていってほしい」(三村氏)

[PR]提供:コンカー