新型コロナウイルス感染症拡大によりサプライチェーンの混乱が続き、流通小売業にも大きな影響が出ている。こうした不確実性が高まる時代において、多くの企業は熾烈な競争に勝ち抜くため、DXの推進を急いでいる。ただし、日本においては、高いスキルやデータリテラシーを備えた従業員の確保がDXの最大の障壁となっている。こうしたなか、企業はどのように競争力を高めていけばよいだろうか。
エンドツーエンドのリアルタイムのデータ統合・アナリティクスソリューションを提供する米Qlik Technologies(Qlik)の日本法人 クリックテック・ジャパン 営業本部 インダストリー営業部 テリトリーアカウントマネージャー 鈴木優介氏は、2月10日に開催されたリテールガイド×TECH+共催セミナー「リテールDXソリューションカンファレンス2022」で、競争力確保に向けたデータ活用のソリューションを2022年のBI/データトレンドを踏まえて紹介した。
2022年に起きる3つのデータ/BIトレンド
鈴木氏によると、今後はデータとBIを活用して「強固な融合」が起きるようになるという。そして、鈴木氏は2022年のデータ/BIのトレンドとして、「コラボレーションマイニングの出現」、「ダッシュボードの終結と発展」、「データ系統を説明できるBIの提供」の3つを挙げる。以下で、順に見ていきたい。
まずは、「コラボレーションマイニング」によって、競争力を維持するための強固な融合が出現する。昨今のビジネス環境では、競合他社がパートナーに、パートナーが顧客に、顧客が競合他社になるなど、境界が曖昧になりつつある。こうした状況では、お互いに利益をもたらし信頼できるエコシステムを構築することが求められる。製薬企業が学術機関と提携して新型コロナウイルスのワクチン開発を加速した例はその代表的なものだろう。鈴木氏は「データやインサイトを共有し、単独では難しいイノベーションを実現し、同じ領域の企業に対して競争優位性をつくっていくことが不可欠」と語る。幸いにも、APIの普及によってエコシステムの構築は従来より容易になっており、データ、インテリジェンス、プロセス、人材を調和・融合しやすくなってきているといえる。
次に「ダッシュボードの終結と発展」。ダッシュボードを導入していても、うまく活用できていないという企業も多い。ダッシュボードでのデータの可視化を行ったところで、単にKPIを監視しているだけではインサイトは得られず、データを活用しきれているとはいえない。鈴木氏は、今後について「データの変化を即座に把握するため、高度なアラートを使った状況確認をしたり、AIによってデータと状況を関連付け、どの瞬間にどこに注意を向けるか判断させたりなど、単なるダッシュボードの監視からの脱却が求められる」とする。
3つめは「データ系統を説明できるBIの提供」。データが企業内だけでなく外部にも分散して断片化されていること、データが1秒ごとに更新され絶えず変化していくことで、データの質が悪化している。鈴木氏によると、分散したデータを統合し、リアルタイムにデータを更新してその質を下げないようにすることが、DXを進めていくうえでのポイントになるという。
トレンドに対するQlikの最新アプローチ
コラボレーションには、新しいアーキテクチャの構築や相互運用性の確保だけでなく、APIを用いたオープンプラットフォームが融合するバリューチェーンの構築に向けたパートナーシップを築くことで、これまでにない機会をつくっていく必要がある。こうしたアプローチを取るためには、明確なルールや共通の目的、長期的な視点、マインドセットの策定が重要となる。
Qlikのツールは、オープン性、異種環境、相互運用性、組み込み可用性、拡張性を考慮してゼロから設計されており、パートナーを含めすべてのユーザーがデータソースからデータを統合し、直感的かつ自由に操作できるので、ほかでは得られないようなデータの関連性を発見することができる。特に、データの統合やデータの分析、データリテラシーの領域に強みを持つ。
「リアルタイムの現場データ取得・更新の仕組み、データ更新に合わせた分析の仕組み、ビジネスの言語に置き換える仕組み、AI主導型のアラート機能でビジネスの文脈に置き換え、複数部門にパーソナライズして情報を届ける仕組みなどにより、データの価値を向上させることができる」(鈴木氏)
Qlikでは、リアルタイムでデータを解放し、アナリティクスでデータを発見、インサイトを理解し、実際にアクションに落とし込むという、データを活用して価値に変えるまでのプロセスを「アナリティクスデータパイプライン」と呼んでいる。Qlikのソリューションでは、データソースから、インサイト、アクションに至るまで、ライフサイクル全体でデータを管理することで、システム上のアナリティクスパイプラインの概念を強化し、戦略に落とし込んでいくことができる。
流通小売における課題と、そこに対するQlikの貢献
流通小売業界においては、インターネットやSNSの普及により、消費者の情報収集能力が飛躍的に高まり、購入するチャネルやデバイスも多様化するなか、商品の注文から納入までの迅速な対応、柔軟な返品対応、配送・返品コストの低減、在庫の厳密な管理といった課題が出てきている。さらに、店舗そのものをサプライチェーンのハブとして活用する傾向も見られる状況下において、Qlikの製品はどのように役立つのだろうか。
多くの流通小売企業は、マーケティングから商品の配送、販売まで、多くのシステムを利用しているが、BIツールであるQlik Senseでは、異なるシステムのデータを1つのプラットフォーム上でまとめて活用することができる。鈴木氏は「複数システムのデータ、倉庫や店舗でのフルフィルメント、ロジスティクスやベンダー契約の情報を取り込み、全体を把握することで、サプライチェーンの効率を向上させることができる」と、そのメリットを説明する。
また、Qlik Senseでは、迅速かつタイムリーな返品対応ができる組織づくりにも役立てられるという。
「インサイトに基づいてサプライヤーに返品されるタイミングを判断し、再販目的で商品を再生・再パッケージし、在庫に戻す方法を特定することができる。また、どの商品が最も返品されているかを評価し、再販できない商品については、損金処理率を正確に判断することも可能」(鈴木氏)
このほか、売上在庫実績の分析によってサプライヤーの実績を評価し、必要なときに確実に在庫を確保できるようにしたり、必要なブランドの商品を適切な価格で入手し、その商品をできる限り迅速に販売することなども可能になる。
大手小売でのQlik活用事例
最後に、小売企業におけるQlikの活用事例を紹介したい。
韓国の電子機器メーカーSamsung Electronicsの英国支社では、従来のExcelによる店舗レポートの制度を廃止し、Qlik Senseを導入。エリアマネージャーは、リアルタイムに各店舗の業績を追跡することができ、さらにアラート通知によって訪問する店舗の優先度を決定できるようになった。鈴木氏は「結果として、週に約2時間ほど時間を節約でき、現場視察の効率性が20%も向上した」と、その具体的な効果を紹介する。
米国の大手ファッションブランドであるUrban Outfittersは、Qlik Senseの導入により、650を超える店舗のレポート作成の標準化に成功。店舗のマネージャーが2分ごとに更新されるダッシュボードやレポートに自らアクセスし、リアルタイムのデータを確認できる環境を構築した。
「各店舗のKPIに関するデータを分刻みで把握できるようになった。米国だけでなく、世界中の店舗も同様にデータを活用できている」(鈴木氏)
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