働き方改革の推進にコロナ禍におけるステイホームの動きが加わり、2020年にテレワークが一気に定着した。ただし、このままあらゆるビジネスがテレワークに移行するわけではない。なぜなら物理的にテレワークが向かない職種があるのはもちろん、テレワークがマッチする業務においてもリアルなコミュニケーションは多くの意義があるからだ。そこで企業がいま志向し始めたのが、テレワークのメリットとリアルオフィスでの働き方を掛け合わせた「ハイブリッドワーク」。そうしたなかで、NTTデータは顧客企業の働き方改革をICTの観点から推進している。
2022年2月24日・25日に開催される「DX Frontline ─変革の第一歩を」では、同社で多彩な業界の働き方改革を手掛けてきた遠藤 由則氏が登壇し、ニューノーマルに対応するデジタルワークスペースの在り方ついて講演する予定だ。本記事では、ハイブリッドワークを軸とする新たな働き方や講演の見どころについて、遠藤氏に事前インタビューを行ったのでその模様をお届けしよう。
リモートとオフィス出社を併用する新しい働き方
ハイブリッドワークはニューノーマル時代にフィットした、いわば働き方の進化形と捉えることができる。遠藤氏は、企業がハイブリッドワークに注目する背景を次のように解説する。 「コロナ以前にも大企業を中心にテレワークの導入は進められていましたが、やはり大きな契機はコロナ禍における外出自粛です。2年近くが経過した現在、オフィス以外の場所で従来とは異なる生活リズムで仕事を続けたことで、初めて体感する課題が顕在化してきました」(遠藤氏)
遠藤氏いわく、その課題は次の3つだ。
- 分散して遠隔で仕事をすることにより生まれるコミュニケーションの課題
- 働く場所やツールが変化したことに起因するセキュリティの課題
- リアルなオフィスで働くことを前提に作られた制度やルールの課題
これらの課題、とりわけ1点目のコミュニケーション課題を改善する手段として、オフィスへの出社を併用し、遠隔で不十分だったコミュニケーションを補うハイブリッドワークが脚光を浴びているわけだ。では、ハイブリッドワークを実現するには何が必要なのか。もちろん業務内容や環境によって最適なスタイルは変わってくるものの、一般的に必要とされる要素を遠藤氏が説明する。
「まずテレワーク環境については、仮想デスクトップやゼロトラストネットワーク等のテクノロジーをうまく掛け合わせることによりセキュアで利便性の高いデジタルワークスペースを構築することが必要です。そこへさらにリアルを掛け合わせることで顕在化した課題に対処し、昇華させることが、ハイブリッドワーク実現の近道になると考えています。講演ではもっと技術的に掘り下げてお話しする予定です」(遠藤氏)
ハイブリッドワークをサポートする技術的な要素とは
いうまでもなく仮想デスクトップはすでに日本の多くの企業で浸透している技術だ。リソースはデータセンター側にあり、社員が使用する端末に画面を転送する仮想デスクトップは、端末内にデータを残さないため、PCの紛失・盗難におけるリスクも軽減できる。また、どのデバイスからでも同じデスクトップ環境にアクセスすることが可能だ。このセキュリティの高さと利便性が評価され、活用が進んでいる。
もう一方のゼロトラストネットワークとは、従来のように企業ネットワーク内外の境界で脅威を防御するのではなく、内も外も関係なくあらゆるネットワークやデバイス、ユーザー等を都度確認することでセキュアな環境を実現するという近年注目の概念だ。サイバー攻撃が高度化する一方で、企業における多彩なクラウドサービスの活用が進む現状が、ゼロトラストネットワークが求められるようになった背景にある。テレワークの浸透とともに利用が進んだSaaSのオフィスアプリ、Web会議ツール、オンラインストレージなどはいうまでもなく企業ネットワークの外にあるため、サイバー攻撃が高度化する近年において境界防御のセキュリティは通用しないというわけだ。
「仮想デスクトップはネットワーク回線越しに画面転送技術とシンクライアント端末を使うため、Web会議などの映像や音声のやり取りはどちらかといえば不得手です。そこでゼロトラストネットワークを組み合わせることで、FAT PCを用い、快適かつセキュアなテレワークを実現できます」(遠藤氏)
このように、デジタルワークスペースの構築を検討する際は、仮想デスクトップのみ、ゼロトラストネットワークのみの導入、もしくは仮想デスクトップとゼロトラストネットワークを適材適所に組み合わせて導入するといったアプローチ方法が挙げられる。もちろん方法はこの3つに限らず、重要なのは企業のニーズや業務の実態に応じて最適な形を選択することだという。
「ゼロトラストネットワークに親和性が高いのは、やはりクラウドサービスを積極的に利用する企業やリモートワークの比率が高い企業でしょう。一方、オンプレミス環境が中心でクラウドの利用が少ないなら、従来の境界防御型を生かしつつ、仮想デスクトップなどを活用することで社内インフラを構築するケースも少なくないです。特に大企業において、クラウドサービスもオンプレミスのどちらもそれなりの規模で活用している場合は、仮想デスクトップなど境界防御型とゼロトラストネットワーク型をハイブリッドで活用するケースも増えてきています」(遠藤氏)
ポイントとして、ゼロトラストネットワークはあくまでセキュリティ対策の考え方の1つであり、何か特定のツールやプロダクトを指す言葉ではなく、利用するユーザー、デバイス、ネットワークなど都度確認して必要最小限のアクセスを許容する仕組みということを抑えておきたい。遠藤氏はゼロトラストネットワークの導入方法について次のように説明する。
「基本的に機能自体はゼロトラストネットワークのコンセプトに沿って、従来からある複数のセキュリティ対策を先進的なクラウドセキュリティサービスを組み合わせて構成していきます。つまり、従来のセキュリティ対策から大きく変わるわけではなく、実はそこまでハードルが高いものではないのです。堅実なゼロトラストネットワークを構築するには、短期間で一斉に切り替えようとはせずに、各課題の優先度や現行システムの更新時期などをふまえたうえで計画を立て、段階的に進めていくことが重要です」(遠藤氏)
デジタルワークスペース構築のトータルソリューション
NTTデータは、ハイブリッドワークの実現やデジタルワークスペース構築をサポートするサービスとして「BizXaaS Office🄬(BXO)を展開している。BXOは、仮想デスクトップ基盤、ゼロトラストネットワークそれぞれのラインナップに加え、各企業の課題や状況に応じて最適なデジタル技術を提案するコンサルティングも統合したオファリングだ。
遠藤氏は「テレワークやオフィスの悩みや、上流のコンサルティングから具体的なプロダクト導入などのデリバリ、サービス開始後のマネージドまで一貫して対応できます」と複数ソリューションの集合体であるオファリングの強みを紹介した。
現時点でコロナ禍の終息はまだ見えないが、アフターコロナを見据えた働き方の模索はすでに始まっている。ハイブリッドワークを軸に今後実現すると考えられる新たな働き方について、遠藤氏は将来展望を教えてくれた。
「デジタル×リアルの融合がより進展するでしょう。働く場所については、オフィス、自宅、サテライトオフィスや出張先のホテル・カフェといった環境に加え、サイバー空間、いわゆるメタバースの世界観があります。何年かすると、バーチャル空間とリアル空間が入り混じってコミュニケーションをとる形が当たり前のものとなるでしょう。そして、この多様な”場”を分け隔てなく、同じ感覚で仕事ができる環境を作り上げていくことこそが、デジタル×リアルの答えであり、NTTデータの役割だと考えています」(遠藤氏)
働く場の選択という観点以外でも、遠藤氏は多様な可能性を示している。たとえば、リアルなオフィスでセンサー技術を活用し、バイタルデータなどを自動測定して心身双方のヘルスケアやウェルビーイングに役立てることや、偶発的出会いから生まれるコミュニケーションを促進するため従業員のプレゼンス管理を高度化し「今日はAさんが出社しているので会ってみたらどうでしょう」とパーソナルAIアシスタントが提案する……といった未来も想定できるという。
遠藤氏が考える”DX”── 講演のキーワードは「デジタル×リアル」
今回開催される「DX Frontline ‐変革の第一歩を」のテーマは、その名にも付いているとおりの“DX”だ。遠藤氏が考えるDXについて次のように説明する。
「DXとは先進的なデジタル技術を臆せず活用することを前提に、メリットを享受する側の目線でビジネスプロセスの合理性を高め、これまでにない価値を生み出す変革だと考えています。更に言えば、生活する全ての人を中心に据え、価値創造をしていくことも重要なポイントですね」(遠藤氏)
今回の講演では、仮想デスクトップやゼロトラストネットワークをどのようなプロセスを経て導入していくのか、具体的な事例を交えて解説されるので、自社に置き換えて視聴してみるのもいいだろう。さらに遠藤氏は講演のキーワードを「デジタル×リアル」とし、失われたビフォーコロナのメリットをふまえて、デジタルワークスペースの考え方と将来構想を語っていく。本記事で遠藤氏が示したデジタル×リアルの未来に関心を抱いたなら、ぜひとも講演に注目していただきたい。
日時:2022年2月24日(木) 13:50-14:20
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