コロナ禍でますます需要が高まる「プロジェクトマネジメント人材」
コロナ禍などによって人々の働き方や市場環境が大きく変わるなか、そうした変化に柔軟かつ迅速に対応できるようなビジネス展開が強く求められている。そこで多くの企業では、それを実現するためのデジタル・トランスフォーメーション(DX)に注力している。
このような背景を受けて、ますますニーズが高まっているのが、プロジェクトマネジメント人材だ。プロジェクトの専門家やチェンジメーカーのための世界有数の協会であるProject Management Institute(PMI)が2021年3月から6月にかけて実施した「プロジェクトマネジメント給与調査」によると、プロジェクトマネジメント分野における継続的な教育とスキルアップが、潜在的な収入増加につながることが明らかとなった。
そこで、プロジェクトマネジメント給与調査の結果を紐解きつつ、そこから得られる企業を取り巻く現状について洞察するとともに、新型コロナウイルスによる感染拡大の影響が続くビジネス環境下において、PMIが国内外で刷新してきた資格やプロジェクトマネジメントスキルの動向について解説していきたい。
コロナ禍でも増加が続くプロジェクトマネジメント人材の給与
3万人以上の回答者(79%がPMP資格を保有)の見解が反映された「プロジェクトマネジメント給与調査」では、依然として新型コロナウイルスの大流行が世界経済に影響を与えている中にありながらも、回答者の実に半数が、調査期間前の12ヶ月間における総報酬(給与、ボーナス、その他のインセンティブを含む)の増加を報告している。また、4分の1近くが、その期間中に報酬総額が5%以上増加したと回答しているのである。
本調査は隔年で実施されているものだが、そこからはプロジェクトマネジメントのスキル、経験、資格の給与面における価値を把握することが可能だ。そして、ダイナミックな雇用市場の中で、プロジェクトマネジメント実務者が得られる可能性のある収入について認識を深めることができるのである。また、これらのデータは、雇用主や人事部、エグゼクティブ・リクルーターにとって、プロジェクトマネジメントの組織内の役割について、市場価値に見合った公平な給与範囲を決定するのにも大いに役立つことになる。
ちなみに、給与の中央値が最も高い国は、スイス(140,983米ドル)であり、米国(115,000米ドル)、オーストラリア(113,664米ドル)がこれに続いている。日本の給与の中央値は73,448米ドルであり、これはPMP(Project Management Professional)資格を持っていない人と比べると2%高くなっている。
また、日本においては、平均給与の中央値が、プロジェクトマネジャーIで64,267米ドル、プロジェクトマネジャーIIで71,718米ドル、プロジェクトマネジャーIIIで81,711米ドルとなっている。ポートフォリオマネージャーは、PMP保有者の役職を比較すると、平均給与が91,811米ドルと最も高くなっている。一方、プロジェクトマネジメントの経験年数を比較すると、20年以上の従事者が82,629米ドルと最も高く、次いで15~20年が77,121米ドル、10~15年が73,448米ドルとなっている。
2022年も続く、PM指向人材の需要の高まり
PMI アジア太平洋地域のマネージングディレクター兼建設部門のグローバル責任者 べン・ブリーンは、今回の調査結果を踏まえて次のような見解を示す。
「今後10年間のプロジェクトマネジメント指向人材の雇用の傾向とその世界的影響を予測した『PMI人材ギャップ・レポート』によると、2030年までに2,500万人の新たなプロジェクト専門家が世界規模で必要になると予測されています。この差し迫った需要と、将来性のある人材を活用したいという企業の要望とが相まって、さまざまな分野や地域で競争力のある報酬機会が生まれていると言えるでしょう。プロジェクトマネジメント給与調査は、このような新しいプロジェクトマネジメントの職務に応募するプロフェッショナルや、その職務に就こうとする企業にとって、貴重なリソースとなるものです」
ベン氏が指摘するようなプロジェクトマネジメント指向人材の需要と供給のギャップは、世界各地に影響をもたらすこととなり、2030年までに世界のGDPにおいて最大3,455億米ドルの損失を生む可能性があるとされている。このことは、組織にとって深刻な危機となり得るが、その一方で変化を促すことに秀でたプロジェクトマネジャーやチェンジメーカーにとっては、自身が現在どのような役割を担っていようと、またとない好機をもたらすはずだ。
国内で新たに提供開始された2つの“ディシプリンド・アジャイル”コースへの期待
PMIでは、世界的なニーズの高まりと変化に対応しラインアップを強化するため、新しい認定資格の発表や既存認定資格の更新を行っている。
例えば、2021年7月には、プロジェクトマネジメント知識体系ガイドPMBOK ガイド第7版が発売された。このガイドは、組織が新しいレンズを通してプロジェクトを捉え、成果を上げて価値を提供するために、個々の能力向上の機会を見つけることを奨励している。日本語版も同年10月に、PMI日本支部より販売されている。
また、日本国内では、DA スクラムマスター(DASM)とDA シニアスクラムマスター(DASSM)の2つのディシプリンド・アジャイル(DA)コースの日本版が2021年11月より展開されている。これらのコースを習得することによって、目的にあったアプローチをより強固にし、チームの働き方の最適化や改善を図ることができるという。
このうちDAスクラムマスター(DASM)は、アジャイルチームをリードするための資格であり、アジャイルが急速に普及している業界でのキャリア形成に役立つ内容となっている。ディシプリンド・アジャイル ツールキットには、スクラム、カンバン、SAFe、さらには予測的なアプローチを含む何百もの実証済みのプラクティスが含まれており、文脈に沿って解説されている。このコースを受講し、DASM認定を受けることで、組織や業界で直面している状況に応じて、自分の仕事の進め方を最適にカスタマイズする方法を理解することが可能となる。
もう1つのDAシニアスクラムマスター(DASSM)は、経験豊富なアジャイル実務者を対象に、ディシプリンド・アジャイル ツールキットを使用して、チームの作業方法の最適化や組織内の協力、そしてさまざまな高度な問題に対する解決方法について習得する。このコースでは、DASSM試験を受験し、リーダーシップを発揮しながらすぐにディシプリンド・アジャイルを実践するための準備を行うことができる。
最後にべン氏は、日本市場をはじめとしたPMIの今後の展開について、次のように力強く語った。
「PMIでは、今後のさらなる進化のため、皆様からのフィードバックや要望に常に耳を傾けていきます。特に日本は重要な市場であり、プロジェクトマネジメントの考え方をさらに浸透させるため、日本の産業団体と今後のプロジェクトマネジメントのあり方や協力体制について意見を交わしているところです。PMIでは今後も革新的な製品を開発し、個人や組織を様々な形で支援していきます」
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