インターネット黎明期の1995年からルーターを中心としたネットワーク製品を展開し、ユーザー目線に立った製品作りで多くのファンを生み出してきたヤマハ株式会社。同社では、2021年にネットワークエンジニアのスキルアップを目的とした、初の公式認定制度「ヤマハネットワーク技術者認定試験(YCNE)」を開始した。さらに試験に対応した同社監修書籍「ネットワーク入門・構築の教科書」が2022年1月25日に発売される。本稿では、試験や書籍の監修を手掛けた同社の瀬尾 達也 氏と藤木 大輔 氏にお話を伺った。
「顧客の声を聞く」製品作りを26年間、多くのファンを抱えるヤマハネットワーク製品
IDC Japanの調査によると、ヤマハネットワーク製品は17年連続でSOHOルーター国内シェアNo.1、日経コンピューター顧客満足度調査ではネットワーク機器部門において6年連続で第1位を獲得。同社製品の開発・品質保証・製造の現場では、お客様相談センターに集まる顧客の声をはじめ、ユーザーメーリングリストや展示会、ユーザーコミュニティ「ヤマハネットワークエンジニア会(YNE)」などで交わされたフィードバックが丁寧に最適なかたちで落とし込まれている。26年にわたって顧客の声に寄り添ってきた実績は、近年の主力製品・サービスである中堅中規模向けのギガアクセスVPNルーター「RTXシリーズ」、スイッチ「SWXシリーズ」、無線LANアクセスポイント「WLXシリーズ」、UTM「UTXシリーズ」とクラウド管理型サービス「YNO」などにも強く反映されている。
最重要インフラとなったネットワークと深刻化するIT人材不足
昨今ではクラウドの進展やコロナ禍によって、企業におけるネットワークのあり方が激変している。ヤマハのマーケティング&セールス部 部長 瀬尾 達也氏はネットワークを取り巻く環境の変化について、次のように語る。
「これまでは会社という拠点単位でネットワークがまとまっていましたが、コロナ禍をきっかけに働き方が多様化し、ネットワークが分散することになりました。それにより多くのネットワーク機器の管理が必要になり、ネットワークエンジニアの負荷は高まっている状況です。また、デジタル化が加速するなかでIT人材の不足も目立ちます。インテグレーターのお客様からは、IoTや5G、クラウドなどのニーズが増すなかで、顧客の要望に対して新しい提案を進めたいものの、若手人材を確保できずに後継者不足に陥っているという声もお聞きしています」(瀬尾氏)
さらにクラウドを中心にネットワーク技術自体も大きく変化しているという。同社でCC開発部部長を務める藤木 大輔氏はこう話す。
「ルーター、スイッチ、無線LAN、セキュリティなど製品群だけ見てもネットワークの適用領域は非常に幅広くなっています。また、リモートワークの普及により、ネットワークは企業にとって最重要インフラとなり、ネットワークエンジニアには多くのスキルや知識が求められるようになりました。そのような重役を担うネットワークエンジニアをメーカーとして、支援していかねばなりません」(藤木氏)
学生や新人エンジニアなどのネットワーク初学者に向けた、新たな認定試験「YCNE Basic★」
こうしたネットワークの変革期に入るなかで、ヤマハはヤマハネットワークエンジニア会(YNE)を通じて、お悩み相談室といった会員同士および会員とヤマハが交流できる場や、テクニカルノーツ、ライブラリなどで技術情報を提供してきた。さらに、2021年から新たな取り組みとしてスタートさせたのがヤマハネットワーク技術者認定試験「YCNE」だ。初年度は「YCNE Basic★」を開始、4択式の問題50問を60分間で回答する試験となっている。来年度からは、実務で求められるネットワークの標準的な知識を問う「YCNE Standard★★」や、さらに発展的な知識を問う「YCNE Advanced★★★」を順次展開していく予定だ。
YCNE Basic★の大きな特徴は、ヤマハネットワーク製品の知識を問う試験ではなく、ITリテラシーの底上げを意識した内容となっている。具体的な試験内容について、藤木氏は次のように説明する。
「TCP/IP 4階層モデルや、暗号化、VPNなどネットワークやセキュリティの基礎知識にはじまり、ルーターに関する基本設定や、IPアドレス変換、フィルター、VPNの設定、スイッチとVLAN設定などを網羅的に扱っています。より顧客接点の多い当社の製品開発メンバーが試験問題の監修に参加し、対策学習が実務力に直結するように問題一つひとつを精査しています。こうした特徴からYCNE Basic★はネットワークの入門編として汎用性が高いものになっています」(藤木氏)
実際、受験者には高専生や専門学校生が多く、学校法人などで団体受験するケースも増えているという。また、クラウド管理に携わるIT部門の新任担当者が基本知識の習得のために受験したり、ベテランエンジニアが網羅的な知識を習得できているかを確認するために受験したりなど、受験者のレベルと目的はさまざまだ。
YCNE Basic★が、ヤマハネットワーク製品に限定した知識を問うものではなく、ネットワークの基礎を問う試験となっている背景について、瀬尾氏は次のように語る。
「先述したとおりネットワークは変革期にあり、ネットワークエンジニアにはこれまで以上のスキルが求められます。YCNE Basic★を通してヤマハが知識・技能を公式認定することで、ネットワークエンジニアの活躍の場をさらに広げていくと同時に、新たなエンジニアとしてIT業界に参入できるスキルを持つ人材を多く輩出することを目指しています。当社が中期経営計画(2019〜2022年)で基本戦略として掲げている『顧客ともっと繋がる』『事業を通じて社会に貢献する』にもつながる取り組みです」(瀬尾氏)
ネットワークエンジニアの登竜門「ネットワーク入門・構築の教科書」が発売開始
このようにネットワークエンジニアの育成を目指すヤマハ。さらに育成を支援するために、同社の監修で「ネットワーク入門・構築の教科書」が2022年1月25日にマイナビ出版から発売される。YCNE Basic★の試験出題範囲を網羅しているのはもちろん、試験と同様にヤマハ製品に特化した内容ではなく、ネットワーク全体を学べる教本という位置づけだ。さらに教育機関のカリキュラムや企業内教育におけるテキストとしても採用できる内容にもなっている。「メーカーとしてエンジニアのキャリア形成に貢献したい」というヤマハの思いのもとに監修された同書籍は、まさにネットワーク初学者におすすめの一冊だ。
ネットワーク入門・構築の教科書
1章 ネットワークの基礎 |
ネットワーク初学者に向けた勉強法について、藤木氏と瀬尾氏は次のように話す。
「ヤマハネットワーク製品は誰でも入手しやすい価格で提供しています。たとえば勉強を進めていくなかで実際にネットワークを構成し、はじめてPingが通ったときの感動を自分で味わうのもいいのではないでしょうか。YCNE Basic★をきっかけに、ネットワークの楽しさを体験してもらえたら嬉しいですね」(藤木氏)
「ヤマハネットワークエンジニア会(YNE)ではエンジニア間の情報交換ができるのはもちろん、YCNE Basic★の模擬問題も定期的に配信しています。エンジニアとしての1歩を踏み出そう考えている方は、ぜひ YNEを活用してみてほしいです」(瀬尾氏)
変化し続けるネットワークを支える、ヤマハの展望
IT人材不足が深刻化し、ネットワークの変革期を迎え、エンジニアの育成方法に頭を悩ませる企業は少なくないだろう。今回の「ネットワーク入門・構築の教科書」発売をきっかけに、YCNE Basic★やヤマハネットワーク製品を通じた同社のエンジニア支援には、大きな期待が集まりそうだ。また、ヤマハネットワーク技術者認定試験は今後も時代に即した内容にアップデートしていくという。
「今後もネットワークの常識は変わっていくことでしょう。当社はエンジニアやお客様の声に常に耳を傾けることでトレンドをキャッチしながら、業界全体のITリテラシーの底上げとエンジニアの活躍の場を広げていくことで、社会に貢献していきたいと考えています」と瀬尾氏は今後の展望を語り、インタビューを締めくくった。
■「ネットワーク入門・構築の教科書」
著作者名:のびきよ
監修者名:ヤマハ株式会社
■「YCNE Basic★」
受験申込随時受け付け中!
主な対象者:
・ネットワークエンジニアを目指す学生
・授業や講座として取り入れる教員の方
・ネットワークの基礎知識を確認したい方
・ヤマハネットワーク製品を扱う営業担当者とネットワークエンジニア
問題数:50問
試験時間:60分
出題形式:選択式(四肢択一)
試験方法:コンピューター上で実施するCBT(Computer Based Testing)形式
■ヤマハネットワークエンジニア会「YNE」
ネットワーク製品を取り扱うエンジニアが会員として集い、様々な情報交換が行えるソーシャル・ネットワーキング・サービス
[PR]提供:ヤマハ