ヒビノメディアテクニカル株式会社は、イベント向け「映像音響機材レンタル・オペレーション」「イベントプロデュース」「人材派遣・人材紹介」を主な事業とし、多くのイベント開催を支えている。同社は1965年に有限会社アート写真として創業し、当時は医療系の学会で使われていたスライド映写機(OHP)のスライド制作や機材レンタルをメイン事業としていた。現在では医療業界との長年の付き合いから蓄積されたノウハウを生かして、医療系の学会のほか、国際会議、株主総会などのイベント運営支援を得意としている。また、運営業務を効率化させ、顧客に喜んでもらいたいという想いから、ローコード開発プラットフォームClaris FileMaker で開発されたイベント運営システムの提供を2013年より開始し、現在では収益に貢献しているという。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、イベント業界は大きな影響を受け、開催形式は大きな変化を遂げているが、同社はこの事態にどのような対応をしているのだろうか。またその中で、FileMakerプラットフォームはどのような役割を果たしているのだろうか。ヒビノメディアテクニカルEC事業部 システム開発課の田中 洋氏にお話をうかがった。
イベント業界で求められるスピード感と柔軟性をインハウス開発で実現!
ヒビノメディアテクニカルにFileMakerが導入されたのは20年以上も前のことで、FileMaker Pro 3.0で構築されたシステムで社員のシフトを管理していたという。2006年に入社した田中氏はそれを引き継ぎ、パソコンなどのIT機材のレンタル・運用業務を担当。それと並行してFileMakerを使い、イベント運営システムや社内システムをインハウス開発している。田中氏はFileMakerの強みやインハウス開発のメリットを次のように語る。
「入社当初はFileMakerの開発経験がなかったのですが、学習コストはあまりかからず、書籍やユーザーが集まるイベントなどを活用して学習しました。また、日本語でスクリプトを組めるといったFileMakerの特性がスムーズなスキル習得につながりました。インハウス開発のメリットは、クライアントや社内からの要望にすぐに応えられるレスポンスの速さにあると思います。たとえばイベント当日に事務局から仕様変更の要望に対応したこともありました。こうしたスピード感はイベント業界に欠かせないもので、インハウス開発だからこそ実現できると考えています」(田中氏)
効率と利便性のためにFileMakerで作られたイベント運営システム。実は「非接触」の価値があった
ヒビノメディアテクニカルでは年間200本以上の医療系学会や国際会議などのイベント運営を支援している。このような大規模イベントにおける受付業務を効率化する「来場者受付システム」はコロナ禍の前、2013年にFileMakerで開発された。
当時は会場内で身につける名札を事前に郵送したり、郵送しない場合でも受付の際に参加者の氏名を聞いて数多くの名札の中から探したりといった膨大な作業が発生していた。また名札を事前に郵送しても、肝心の名札を持参していない参加者の例外対応が多く、運営の負担が大きかったという。
来場者受付システムを使えば、こうした「名札問題」を一挙に解決できる。受付用のQRコードがPDF形式で参加者に事前にメールで送信され、スマートフォンの画面で表示させる、もしくは印刷するなどして当日にQRコードを持参。総合受付に設置されたスキャナにかざせば、受付が完了するとともに会場内で身に付ける名札がプリントされる。またQRコードの持参を忘れた参加者は、受付デバイスの画面をタップして氏名などの登録情報を入力すれば名札をプリントできる。
「受付システムからプリントする名札は、イベントごとに内容やレイアウトが違います。こうした帳票の作りやすさ、レイアウトの柔軟性は、FileMakerの大きな利点ですね。また、クライアントから参加者データをもらって受付システムのマスターにするのですが、FileMakerのデータをもらうこともあればExcelなどの場合もあります。いずれにしてもすぐに取り込めるのも便利なところです」(田中氏)
来場時の総合受付のほか、会期中に開催される定員制のセミナーの申込システムもClaris FileMakerプラットフォーム上で構築されている。参加者は画面をタップして希望するセミナーを選びQRコードをかざすだけで申し込みが完了し、事務局は申込人数をリアルタイムで把握できる。さらに、会場内の大型ディスプレイに各セミナーの空き状況を表示すれば、大規模なイベントにおいてセミナー会場が広範囲に分散している際の参加者の移動の負担を減らせるだけでなく、人流抑制による感染症対策にもなる。
総合受付も個別のセミナーの申込も、名札や整理券を手渡しすることなく、言葉も交わさずに運用できる。これが2020年以降に期せずして「非接触」という価値を新たに持つことになる。
受付管理システムが収益に寄与し、コロナ禍では「非接触」がキーワードに
イベント用機材のレンタルと運用がヒビノメディアテクニカルの主な事業だが、受付管理システムが営業フックになることも多く売上の増加に貢献している。コロナ前の同社では年間200本以上の学会案件に携わり、映像機材のレンタルと一緒に受付システムを利用してもらうことが多かったが、受付システムのみの案件も増加傾向であった。システムを構築してイベント運営業務を効率化し、クライアントに喜んでもらいたいという田中氏の想いが新事業を立ち上げたのだ。
しかしコロナ禍で状況は一変した。2020年3〜4月ごろはイベントが軒並み中止になり、同社は収益源の大半を失った。ところが5月ごろからオンラインイベントへの転換が始まり、プロジェクタやスクリーンなどの大型機材は使われなくなったものの、配信用機材のレンタルが急激に伸びた。そして2020年9月ごろからはリアルとオンラインに対応したハイブリッドイベントが開催され、会場と配信の両方の機材が求められるようになっている。このように短期間でイベントは形を変え続け、現在もニューノーマルに対応したイベントの在り方は模索されている。
「来場者数がコロナ前より少ないこともあり、受付システムの出番は減っています。しかし ハイブリッド型のイベントが増えてきていることもあり『非接触』を切り口に提案を始めたところ、お客様からいい反応をいただけています。また、大規模な国際会議や学会は3〜4年かけて準備をするのですが、業務効率化と非接触といった二面性を持った受付システムは、感染症が収束するかしないか先を見通せない数年先のイベントにも有用だと考えています」と田中氏は来場者受付システムの新たな価値について語る。
リアルとオンラインが併存する中でFileMakerが果たす役割
受付システム以外にもFileMakerの開発を通して時代に即したイベントの在り方を追求していきたいと田中氏は言う。たとえばカメラで室内の様子をとらえAIで人数をカウントしてカスタム Appに取り込むシステムや、受付と参加費のカード決済を連携させるシステムなどだ。
「FileMakerはJavaScriptやJSONなどにも対応したプラットフォームなので、オンラインイベントの運営に活かす方法も今後は考えていきたいですね」(田中氏)
また、今後のイベントの在り方について田中氏は「リアルのイベントの意義は大きく、なくなることはないでしょう。参加者同士が実際に会うことは重要で、根強いニーズがあります。会って情報共有できるのは、ほかには代え難いものです。その一方で、オンラインイベントの利点もあります。たとえば東京に住む人が1日のうちに、札幌のイベントと福岡のイベントに参加できますし、移動に制限がある人にとっても有効です。こうしたことから、ハイブリッドのイベントは今後も継続されていくと思います」と予測する。
先を見通せない状況下で価値を増す非接触受付システム、そしてリアルとオンラインのそれぞれで今後導入が期待されるシステム。FileMakerはヒビノメディアテクニカルと変化するイベント業界の今後を支えていくだろう。
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