デジタル変革のためには、足枷となりかねないレガシーシステムのモダナイズが求められる。そのためにまずはレガシーシステムをクラウド化し、柔軟性や拡張性を得られるようにするのは、多くの企業が取り組むアプローチだ。企業や公共機関のクラウド選択やクラウドを活用するシステムの設計、構築、コンサルティングを数多く手がけているアイレット。同社はアマゾン ウェブ サービス(AWS)を始めとするメジャークラウドを熟知し、クラウドを活用する深い知見と幅広いノウハウを有している。アイレットの特長は、中立的な立場で顧客に最適なクラウド活用の提案ができること。そのアイレットの執行役員 後藤和貴氏に、昨今におけるクラウドの現状を聞いた。

マーケティング用語ではなく顧客ニーズの結果としてのマルチクラウド

アイレットは、Webアプリケーション開発などのビジネスで2003年に創業した。一方後藤氏は、新卒で日本オラクルに入社、その後は米国本社に転籍し開発業務に携わる。2000年にオラクルを退社し、その後はWebデザイン会社の技術チーム立ち上げやプロジェクトマネジメント、フリーランスでテクニカルディレクターなどを経験し、2010年にアイレットに入社した。

アイレット 執行役員/エバンジェリスト 後藤和貴氏

アイレット 執行役員/エバンジェリスト
後藤和貴氏

後藤氏が入社した当時は、アイレットがクラウド事業を立ち上げた時期、日本にはまだクラウド市場が全くなかった黎明期だ。AWSの日本法人第一号社員らと共に、日本のクラウド市場立ち上げを進める。その後、日本のクラウド市場拡大に合わせ、アイレットのクラウド事業も拡大。後藤氏はマーケティングやエバンジェリスト活動など、同社のクラウドに関わるさまざまな業務に携わる。2020年6月からは日本政府のクラウド導入推進支援にも関わり、2021年9月からはデジタル庁のプロジェクトマネージャーとして、政府内のシステム開発系プロジェクトにも携わっている。

アイレットは、AWSでクラウドのビジネスを始め、2011年には日本で最初となるAWSソリューションプロバイダー4社のうちの1社に認定された。2012年にはAPNアドバンスドコンサルティングパートナー、2013年にはAPNプレミアコンサルティングパートナーに認定され、AWSのビジネスが拡大。その後アイレットでは、AWSだけでなくGoogle Cloudも扱い、2019年にはプレミアサービスパートナーの認定を取得する。また顧客ニーズに応じ、Oracle Cloudなど幅広いクラウドサービスを適材適所に活用する案件も数多く手がけている。

現在アイレットでは、クラウド環境を活用するためのインフラ設計、構築、運用監視などを行うクラウドインテグレーション事業「cloudpack」を展開している。さらにシステム開発やアプリケーション開発などを実施する開発事業、UI/UXデザインやフロントエンド部分を開発するデザイン事業、またKDDIグループの一員としてグループ各社との連携事業も行っている。

  • アイレットの事業領域

    アイレットの事業領域

「アイレットはAWSに強いイメージがあるかと思いますが、マーケティング用語としてのマルチクラウドではなく、顧客ニーズから入ってGoogle CloudやOracle Cloudなどを適材適所で活用し、結果としてマルチクラウドになっています」と後藤氏は言う。

サービスが豊富なAWS、エンジニアから支持されるGoogle Cloud、ミッションクリティカルシステムの稼働を前提としたOCI

AWSは「最もサービスが豊富に揃っており、どのようなニーズでも受け止められるクラウドになっている」と後藤氏。徹底して顧客の声を聞きサービスを用意するところには驚くものがあるとも言う。またAWSは、何らかの障害が発生してもビジネスに影響がないようにする、Design for failure(障害を前提とする設計)やパブリッククラウドでも閉域網で利用するといった新しい手法やクラウドサービスにおけるSLAの考え方などを広め、市場を牽引してきた点でも大きな貢献をしていると言う。

Google Cloudは「エンジニアが素晴らしいと感じるサービスを多数出している印象がある」と後藤氏は語る。以前はデータ分析やデータレイク、あるいはAIや機械学習などに偏っていたところもあるが、今はIaaSもしっかり用意し、Anthosでマルチクラウド環境でもマネージできるコンテナ基盤にも力を入れている。「ここ数年は、企業で使えるクラウドサービスとして本気を出してきたなと感じています」と後藤氏は言う。

Oracle Cloudは「第一世代のOCI(Oracle Cloud Infrastructure)の頃は、あまり触手は伸びませんでした」と後藤氏。その後、後藤氏が第二世代(Gen2)のOCIを開発している際に、米国シアトルの開発部門を訪問し、エンジニアと話す機会があった。開発チームには他のクラウドベンダーで開発経験のあるエンジニアが大勢いて、彼らがこれまでの知見を生かしミッションクリティカルシステムのニーズに応える次世代クラウドインフラを、ゼロベースで構築するのを目の当たりにする。「機能的なことはもちろん、価格も含め競争力の高いものを作ろうとしており、その姿勢には驚かされました」と言う。Oracle Cloudには他と遜色のないIaaSがあり、さらにPaaS、SaaSも揃っている。また政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)にいち早く対応し、日本独自の要求に応えようとしている姿にも驚いたと言う。

ミッションクリティカルシステムの高度な非機能要件を実現するOCI

その後しばらくして、アイレットでは株式会社エディオンのクラウド化プロジェクトで、OCIの案件に携わる。エディオンではトップからクラウド移行の方針が打ち出されており、小規模システムを中心にAWSへの移行を進めてきた。一方でOracle Exadataで動いていた基幹系の大規模システムは、性能の確保やアプリケーション改修などの手間に対する懸念があった。

OCIであれば改修の手間なく移行でき、Exadataの高い性能が得られる。そのため、止められないExadataの基幹系システムはOCIへの移行を決める。本来なら手間のかかる基幹系システムの移行でありながら11ヶ月ほどで移行は完了、東京と大阪のデータセンターを利用した災害対策構成も実現し、大きなメリットを発揮している。

移行プロジェクトに携わったエンジニアからは、OCIにはIOPSやネットワーク帯域など、基幹系システムで重要な性能面の高さを評価する声があった。さらに、ネットワークレベルでの分離や標準で暗号化がオンになっているなど、セキュリティ面の安心感も高いと言う。

「性能や可用性、セキュリティなどの非機能要件全てをそのままクラウドに持って行くのは難しいものがあります」と後藤氏。特にOracle Exadataで実現しているような高度な非機能要件を、OCI以外のクラウドで実現するのはかなり難しい。OCIならそれも容易に実現でき、エディオンの例のようにオンプレミスではコスト的にも難しかった災害対策構成も安価かつ容易に実現できる。Oracle Databaseを活用しているミッションクリティカルな基幹系システムの移行では、OCIは有力な候補になるだろうと後藤氏は言う。

重要なデータのあるところにデータ活用基盤を構築する

ビジネスで本格利用するデータ活用環境を考えれば、クラウド上で生まれる膨大なデータだけでなく、基幹系システムで生まれるデータをいかに連携させられるかが重要となる。そうなれば基幹系システムのクラウド化がしやすいOCIは、クラウド上のデータ活用基盤として有力な選択肢になる。

「通信や金融の企業では、基幹系システムに価値ある膨大なデータを持っています。重要なデータがあるところにデータ活用基盤を構築するのは得策です」と後藤氏。オラクルはデータベースベンダーとして確固たる地位を築いており、クラウド上でも当然、データ活用のための豊富なサービス、機能を提供している。基幹系システムのクラウド化と合わせ、エンタープライズ企業のデータ活用基盤としても、OCIには大きく期待できる。

一方でOCIには、新しいことにチャレンジするイメージが行き届いていないのはマイナスポイントだと後藤氏は指摘する。さらにはクラウド以前の時代にあったコストが高いとの間違ったイメージもあり「それらを打ち返すためにも、エディオンのようなOCIを活用した事例が出てくることが必要でしょう」と言う。アイレットもパートナーとして、OCIでの成功事例の情報を今後いっそう発信していくつもりだ。

今後も多くの企業が、基幹系システムのクラウド化に取り組む。要件により単純なリホストでクラウドにリフトする場合もあれば、SaaSに乗り換えるべきとの判断もあるだろう。あるいはそれらを組み合わせ段階的に進めるかもしれない。どういうアプローチで基幹系システムのクラウド化を進めれば良いかに悩む場合は、アイレットに是非相談して欲しいと後藤氏は言う。

アイレットでは各クラウドサービスを深く知っているだけでなく、顧客企業の業界知識を持つことも重視している。「各クラウドのカタログ的な知識だけでなく、それぞれのクラウドの設計思想まで理解し、その上で顧客企業のことを知りビジネスを支えるアプリケーション開発もできるようにしています」と後藤氏。アイレットには11年にわたりクラウドに携わってきた豊富なノウハウと知見があり、検証から構築、移行後の運用までトータルでサポートできる。「クラウド化でチャレンジしたいときには、是非アイレットを思い出してもらえれば」と後藤氏は自信を見せている。

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