DX推進の重要性が叫ばれるなか、現場部門が抱える課題を自分たちで解決できるようにするための手段として「ノーコード開発」による内製化が注目を集めている。なかでも、ITの専門知識を持たずとも手軽にアプリを開発できるサイボウズの「kintone」の活用事例が増えてきている。

kintoneでは基本的にノーコードで開発できるものの、複雑な機能を実装するにはプログラム開発が必要となる。そこで、アールスリーインスティテュート(アールスリー) 取締役 Chief Innovation Officer 金春利幸氏は、kintoneのカスタマイズをノーコードで実現できるサービス「gusuku Customine(カスタマイン)」の活用を推奨する。カスタマインを使うとノーコードで機能拡張まで行えるようになり、DXにおける内製化がより身近なものになるという。

10月26日に開催されたTECH+セミナー「ローコード/ノーコード開発Day 2021 Oct. 自社開発でビジネスを加速させる」において、金春氏はカスタマインの機能を紹介したうえで、内製化のためのポイントについて事例を交えながら解説した。

  • アールスリーインスティテュート 取締役 Chief Innovation Officer 金春利幸氏

kintone流のシステム開発とは

アールスリーは、サイボウズのオフィシャルパートナーとして5つのkintone関連サービスを提供している。今回のセミナーで金春氏は、kintoneのカスタマイズをサポートするカスタマインを中心に紹介した。

kintoneは、ドラッグアンドドロップの操作だけで業務アプリを開発できるクラウド型のアプリ開発プラットフォーム。シンプルで親しみやすいUIが特徴であり、案件・進捗管理、日報管理などのアプリをノーコードで作成することが可能となっている。

  • kintoneのアプリ画面例

kintoneのメリットの1つに、そのカスタマイズ性の高さが挙げられる。kintoneは、JavaScriptによる画面カスタマイズやデータ操作、プラグインによる機能拡張が可能となっており、必要に応じてカスタマイズすることができる。また、kintoneのカスタマイズやプラグイン開発、連携サービス、教育、アドバイザリーなどを手掛けるパートナー企業も数多くあり、kintoneを取り巻くエコシステムは非常に充実したものとなっている。

金春氏は「これらのkintoneの特徴を利用して、シンプルなkintoneに必要なものを“トッピング”していくことがkintone流のシステム開発」と説明する。

カスタマインを使えば、kintoneをノーコードでカスタマイズできる

カスタマインは、画面カスタマイズ、帳票出力、バッチ処理といった、通常はコードを書いて開発することが必要となるようなkintoneのカスタマイズまでもノーコードでできるようにするための連携サービスだ。

たとえば、アプリAをアプリBと連携させてアプリAへの入力でアプリBも更新する、入力した生年月日から年齢を自動計算する、入力内容をもとに見積書を発行するといった機能は、kintoneの標準機能では実現できないが、カスタマインを利用すれば、こうした機能も手軽にノーコードで実装することができる。

金春氏は「kintoneのカスタマイズでよくある相談のうち、8割程度はカスタマインを使えば可能になる。カスタマインでできることは300種類以上。kintoneに関する悩みごとはカスタマインに答えがある可能性が高い」と説明する。

カスタマインの操作は、ブラウザ画面の左側で「やること」、ブラウザ画面の右側でそのアクションをいつやるかという「条件」をクリックで入力して設定していくだけ。アプリの画面が縦に長くなってしまったときにタブで分けて見やすくしたり、一覧画面で選択した項目を一括承認できるようにしたり、プルダウンを連動させたり、といったことも、カスタマインを使えば簡単にできる。

  • カスタマインの設定イメージ

金春氏によると、これらはカスタマインでできることのごく一部だという。アールスリーでは、カスタマインでできることがわかりやすくまとめられた「できることカタログ」も用意しているので、ぜひこちらも合わせてご覧いただきたい。また、利用料金についてはアールスリーの公式YouTubeチャンネルで詳細に解説されている。

内製化のポイントは、ITベンダーとの新しい関係づくり

kintoneを用いたDXの核心は「内製化」にあるとする金春氏。「デジタル技術を活用してビジネスのスピードを加速することに、DXの価値がある。ビジネスの変化に合わせてシステムも変化させていく必要があるので、ブラックボックスの仕組みを使うわけにはいかない。kintoneで開発する場合にも、ブラックボックスを避けるためには内製化が必要」と説明する。そして、kintoneでのアプリ開発の内製化を実現した企業の具体的な事例を紹介した。

1社目の事例は、星野リゾート。別の仕組みで構築された277種類のワークフローを102種類に整理して、約3カ月間の開発でkintoneへの移行を完了した。これは、申請・承認業務を電子化するサービス「コラボフロー」と組み合わせることで実現したものだ。

「決済が必要な文書をkintoneで取得したり、kintoneのデータをもとにコラボフローでワークフローをスタートするなど、カスタマインのコラボフロー連携機能を利用して、コラボフローをワークフローエンジンとして活用し、複雑なフローを実現した。現場のユーザーはkintoneだけを確認していればよく、さらに入力補助機能などにより迷わず使える優しいシステムにもなっている」(金春氏)

  • 星野リゾートの事例

2社目は、日清食品ホールディングス。ノーコードツールの活用とITベンダーとの新しい関係により、デジタル化から漏れていた業務を内製開発で改革した例だ。この事例では、kintoneによるシステム開発・業務改善に対して相談・開発サポートを行うアールスリーのサブスクリプション型SIサービス「gusuku Boostone(ブーストーン)」が活用されている。

ブーストーンでは、kintoneのスレッドやWeb会議を通して、kintoneのシステム開発におけるアドバイスやサポートを受けることができる。同サービスについて金春氏は、「kintone認定資格者であるアールスリーのエンジニアの集合知によるサポートを、必要なレベルで必要な期間提供する“伴走サービス”」と紹介する。

現場でシステムやアプリを開発できる体制を整えようとすると、システム部門には、現場がシステムを開発しやすいようサポートしたり、ルールを策定したりする役割が求められるようになる。しかし、システム部門がいきなりこうした役割へと変わっていくことは難しい。そこでブーストーンでは、システム部門に対して、ツールだけでなく知見までも提供することで、内製化に向けた体制づくりも含めてサポートしているという。

  • ノーコード時代の開発体制

日清食品ホールディングスはブーストーンを活用し、自社内でkintoneのアプリを開発できるような体制を整えている。同社CIOの成田敏博氏はブーストーンに対して「毎回の打ち合わせが自走していくための血肉になっている実感がある」とコメントしている。

  • ブーストーンの利用料金

上記の事例を踏まえて金春氏は講演の最後に「ツールを入れるだけでは、DXや内製化は実現できない。仕組みをつくっていくためには、ITベンダーとの新しい関係が肝となる。アールスリーであれば、一緒により良いチームをつくっていけるので、ぜひ相談してほしい。そして、継続的な業務改善を皆さまに実現していただきたい」と呼びかけた。

[PR]提供:アールスリーインスティテュート