デル・テクノロジーズは、旧Dellと旧EMCの「完全な統合」を象徴するような新機能をリリースした。データ保護ソリューション「Dell EMC PowerProtect」の管理ソフトウェアの新機能で、データ量の急増にともなって顕在化したバックアップ課題を根本的に解決するものだ。開発体制を刷新し、顧客のニーズを素早く製品にフィードバックする体制を構築した結果生まれた、「将来のデファクト」を先取りする2つの新機能を紹介しよう。

将来のデファクトが見込まれる2つの新機能を「Dell EMC PowerProtect」に搭載

デル・テクノロジーズ株式会社 DPS事業本部 事業推進担当部長 西頼 大樹 氏の顔写真

デル・テクノロジーズ株式会社 DPS事業本部 事業推進担当部長 西頼 大樹 氏

デル・テクノロジーズのデータ保護の取り組みが、新たなフェーズに入りつつある。デル・テクノロジーズは2016年の旧Dellと旧EMCの統合を受け、2020年8月に日本法人デルとEMCジャパンの統合により誕生した。この間、旧Dellと旧EMCが持つさまざまな技術、ノウハウ、知財(IP)の統合が進められ、日本市場にも投入されてきた。そしてここにきて、両社の「完全なる統合」を象徴する新たな機能が市場に本格投入されたのだ。

デル・テクノロジーズは、データ保護ソリューション「Dell EMC PowerProtect 」ファミリーの主軸ソフトウェア「PowerProtect Data Manager 」の最新版v19.9を発表し、2つの新機能を正式リリースした。データ保護ソリューションを展開するDPS事業本部 事業推進担当部長の西頼大樹氏は、こう説明する。

「v19.9では、重要データ(ワークロード)を保護する2つの新機能が追加されました。1つ目は『Transparent Snapshots (トランスペアレントスナップショット)』です。従来のVADP方式では困難だった、大規模かつ重要な仮想マシンのデータ保護を実現可能にします。2つ目は『Dynamic NAS Protection (ダイナミックNASプロテクション)』です。従来のNDMP方式では困難だった、NASストレージに格納された数100TBクラスのデータ保護を実現可能にします。いずれの機能も、従来から一般的に用いられてきた方式の制約をなくし、データ量が増大し続ける今日の企業環境に合った新たなデータ保護環境を提供するものです」(西頼氏)

この2つの新機能の中核を成すものは、旧Dellと旧EMCがそれぞれ保有してきたIPの組み合わせによって実現されており、将来のデファクトとなる技術の1つだ。「世の中のデファクトな仕組みを根本から見直し、遠い将来を見据えて新しい価値を提供するというデル・グループのDNAを示したもの」であると西頼氏は語る。

  • PowerProtect Data Manager 最新版v19.9 Transparent Snapshot・Dynamic NAS Protectionの特徴

大規模VM保護の課題を根本から解決する「Transparent Snapshots」

では2つの新機能はどのように画期的であり、どのように従来のデータ保護のプロトコルや価値観を変えようとしているのか。

Transparent Snapshotsは「あらゆる仮想マシンの可用性を確実に本番環境での影響なく担保すること」を目指して、VMware社と共同で約2年かけて開発した機能だ。仮想環境のデファクトとして採用されているVMware環境では、仮想マシンのイメージバックアップを取得する仕組みとして、長年VADPが標準的に用いられている。VADPは、VMware vSphere(ESXi)に備わるバックアップのためのストレージAPI(vStorage APIs for Data Protection: VADP)であり、バックアップ装置側でVADPを利用することで、効率良く高速に仮想マシンイメージをコピーすることができる。

ただVADPは、ESXi上にデプロイされた仮想プロキシを介して、ESXi内部で生成されるデータコピー用の複製を外部に転送する仕組みである。そのため大容量の仮想マシンをコピーした場合、仮想プロキシやデータ生成を行うESXi自体の処理負荷が異常に高くなる制約があった。いわゆるスタン現象(stun: 瞬停)が発生してしまうのだ。

「企業が取り扱うデータ量が急増したことで、スタン現象が本番環境でも頻発するようになり、担当者の悩みの種になっていました。Transparent Snapshotsは、ESXi内部で行われていたデータ複製の仕組みの見直しや、仮想プロキシの仕組みをESXi本体に埋め込むことで、仲介役を最小限にし、本番への影響を極小化させることに成功しました」(西頼氏)

デルの検証では、従来方式と比べバックアップ性能は最大5倍、遅延時間は最大5分の1に削減できた。プレビュー段階で試用を重ねてきた先行ユーザーからも「従来の仮想マシンの常識を刷新するもの」として高い評価を獲得しているという。

  • Transparent Snapshotの仕組みと特徴
  • Transparent Snapshotの効果

コンテナ技術を活用したデータ保護「Dynamic NAS Protection」

Dynamic NAS Protectionは、コンテナ技術を活用することで大容量な非構造化データの保護を可能にする新機能だ。バックアップアプライアンス「Dell EMC PowerProtect DD」と連携して動作する。従来NASに格納されたデータのバックアップでは、通信プロトコルとしてNDMP(Network Data Management Protocol)を採用し、データをコピーする方式が標準だった。NDMPは、ストレージとバックアップサーバーを仲介する役割を担うが、データ量の増大とともにNDMPの性能の限界がボトルネックになるケースが増えてきた。

「デルが行なったユーザー調査では、企業が保有するデータ量は平均で9.85PBに達していました。恐らく、最低でも本番データとして数百TBのデータを保有し、その大半は非構造化データかと思います。NDMPは専用ハードウェアを用いた処理の高速化や並列動作が可能ですが、ここまでデータが増えると限界を迎えやすくなります。実際にバックアップが所定時間に終わらず、データ保護自体をあきらめるといったケースすら出てきています」(西頼氏)

Dynamic NAS Protectionは、NDMPのこうした「パンク状態」を緩和する技術だ。キーとなるのは、新開発したNDMPに代わる仲介役となるNASプロキシと、組み込まれている動的なスライシング技術による自動負荷分散だ。

「まず、NAS上にツリー構造で保存されているデータを把握し、フォルダ構造やファイル配置などを分析したのち、動的に保護する塊に分割して管理します。次に、分割された塊ごとに変更状況を見て、実際に変更のあったデータがある塊だけをコピーしにいきます。コピーとデータ転送自体はNASプロキシに内蔵されたNASコンテナというコンテナ単位で実施されます。必要に応じてNASプロキシ内のコンテナが自動起動、自動停止することで拡張性とNDMPを超える並列処理を可能とし、常に最適な性能を効率的なリソース利用のもと発揮する仕様になっています。その後、NASコンテナが収集したデータに対し、重複排除をNASプロキシ内で実施し、データを極限まで小さくした状態でコピーデータの外部保管先ストレージへの転送を実施します。」(西頼氏)

デルの検証では従来方式と比べ、バックアップ性能は最大3倍に、リストア性能は最大2倍に高速化できた。スライシングと重複排除がうまく組み合わさることで、数100PBのデータを数TBにまで削減してバックアップすることが可能になるという。

  • Dynamic NAS Protectionの特徴と効果

「将来のデファクト」を先取りする取り組みをさらに加速

新機能の注目すべきポイントの1つは、旧Dellと旧EMCのIPを統合するかたちで製品が構成されていることだ。例えば、Transparent Snapshotsで、従来方式における仮想プロキシの代わりにESXi内部に組み込まれることになった「Storage Data Mover」には、「DD Boost」と呼ばれるデル・テクノロジーズのIPが組み込まれている。つまりVMware製品のなかにデル・テクノロジーズのIPが密接に統合された状態ということだ。

また、Dynamic NAS ProtectionのNASプロキシにも、DD Boostを組み込むことで、効率的な重複排除と負荷分散を行なうかたちで提供する。NFS/CIFSに対応した他社製品を含む多種多様なNASストレージと連携するが、「Dell EMC PowerStore」「Dell EMC PowerScale」「Dell EMC Unity」 といったDell EMC製品とは、ストレージ側が持つAPIと密接に連携することで、動的スライシング効果が更に向上できる仕様を盛り込んでいる。将来的には、Dell EMCのNASストレージのなかにNASプロキシ自体を組み込むことも検討している。

「グループ各社が保有するIPを組み合わせながら、これまでの常識を刷新し、自動化や最適化といったこれまでにない価値を提供します。統合が進むことでベンダーロックインを懸念するお客様もいらっしゃるかもしれませんが、決して従来方式のサポートをやめるわけではなく、ユーザー側にも『従来方式を選択する』という選択肢は当然残ります。今回の新機能はあくまで従来通り、オープンアーキテクチャを推進する一方で、ユーザーに新たな選択肢を提供することに力を入れた成果のひとつに過ぎません」(西頼氏)

新たなデル・テクノロジーズを示すもう1つのポイントは、開発体制の刷新だ。今回の新機能の開発もそうだが、データ保護ソリューション機能開発は基本的にアジャイルベースに切り替えられている。100%の完成版が完成した時点でリリースするのではなく、テクノロジープレビューを提供し、顧客のフィードバックを得ながら4ヵ月から半年ごとに機能をアップデートしていく体制だ。例えば、現在はPowerProtect DDを多次元拡張する「PowerProtect DD Smart Scale」機能がテクノロジープレビュー中である。

開発体制を刷新し、顧客の声を聞きながら革新的な機能の開発に取り組むデル・テクノロジーズ。新たなフェーズで実践される将来のデファクトを先取りした取り組みは今後さらに注目を集めそうだ。

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