世界の全てのモノをデジタルな空間にレプリケーションすることで社会をより良いものに変えようとする試み「デジタルツイン」への関心が高まっている。デジタルツインのコアとなるテクノロジーはCAE解析/HPCを基盤とするシミュレーションとモデリング、そして即時性の高いデータを接続することによるリアルな表現の実装と言えるだろう。デジタルツインによってこれまで理解することが難しかった複雑な実世界の現象が徐々に解明されており、デル・テクノロジーズは2020年5月に設立されたDigital Twin Consortiumの創設メンバーとしてこの領域でも積極的な活動を続けている。
CAE 解析/HPCを活用するメリットとは?
デジタルツインを実現するためには、CAE解析/HPCのようなテクノロジーをいかに活用できるかが重要になる。デル・テクノロジーズが国内CAEユーザー96名を対象に昨年実施したCAE解析/HPCを活用するメリットについてのリサーチでは、「開発期間の短縮」、「コスト削減」、「品質の向上」がトップ3を占めた。市場環境がダイナミックに変化し、製品のライフサイクルが短くなる中での製品開発において、CAE解析/HPC活用の巧拙が、製造業の競争力に直結するといっても過言ではないだろう。
確かなベンチマークで商用利用をけん引
デジタルツインを実装するためのプラットフォームとも言えるCAE解析やHPCには多くの組み合わせが存在する。高速なCPUとメモリーだけではなく実行されるソフトウェア、プロセッサを繋ぐネットワーク、ストレージ、そしてそれをどのように並列していくのか、多くのノウハウが必要だ。大学などの教育研究機関では先端的な理論や数式を実装するためにカスタムメイドのアプリケーションが開発され、多くのベンチマークが行われている。これによって世界中の研究者は次に選択すべきアルゴリズム、ソフトウェア、ライブラリーそしてハードウェアを決定することが可能になるのだ。しかしながら製造業や製薬などの民間企業においては商用パッケージにおけるベンチマークがより重要な指針となる。この領域でデル・テクノロジーズは多くの投資を行ってきた。代表的なものの一つが2015年にテキサス州オースティンにて稼働を始めた「HPC &AI Innovation Lab」だ。このラボは13,000立方フィートの設備に1,300台以上のサーバーを用意し、HPCとAIに特化したデータセンターである。
ここではインテル製のCPUに加えてAMD製のCPU、NVIDIAのGPU、Mellanoxの高速なInfiniBandネットワークカード、PowerScale(Isilon)ストレージなどによって用途に合わせた複数のクラスター構成が配備されている。
またデル・テクノロジーズのパートナーでもあるテキサス大学が擁するTACC(Texas Advanced Computing Center)では、HPCのベンチマークとして世界的に評価されているTOP500のリスティングにおいて2021年6月時点で10位にFronteraというシステムがランクインしている。また9位にはデル・テクノロジーズのPowerEdgeサーバーを利用したHPC5というイタリアのスーパーコンピューターシステムがランクインしており、ここでもデル・テクノロジーズの製品が活用されていることがわかる。
しかしハードウェアとソフトウェアだけがデータセンターに配備されていてもそれを有効に使いこなすことができなければ意味がない。有効活用するためには経験によって蓄積されたデータとノウハウが必要となる。ここからはデル・テクノロジーズが国内で行った前述のリサーチ結果を元にCAEユーザーが何を求めているのかを紹介しよう。
CAE解析と人工知能のワークロードの類似性
製造業などの民間企業で最も利用されているエンジニアリング向けソフトウェアのジャンルでは、構造解析(陰解法)のためにNastran、Marc、Abaqusなどが多く挙げられている。その次に流体解析(陽解法)としてAnsys Fluent、SCRYU/Tetra、STAR-CCM+などを利用しているユーザーが多い。電磁場解析/電磁波解析の用途にはHFSS、Maxwell、Poyntingなどが多く使用されている。デル・テクノロジーズのCAE/HPCの専門チームにはこれらのソフトウェアに関する多くのベンチマークデータおよび最適な構成などが用意されている。リサーチの中ではCAEに関する課題として人工知能や深層学習などの最新のテクノロジーの活用から情報漏洩などセキュリティに関するものまで幅広く、ユーザーのニーズが拡がっていることを示している。
人工知能の活用に関してデル・テクノロジーズのエンジニアでHPC &AI Innovation Labに所属しているJohn Lockman氏は、2019年にNVIDIAが開催したGTC(GPU Technology Conference)で所属するHPC &AI Innovation Labについて講演を行っている。その中で「人工知能のワークロードはHPCのコンピューティング環境において最適な組み合わせである」と述べており、HPCのシステムがそのまま人工知能のシステムとしても応用可能であることを示している。
さらに講演では、エンジニアによって設計されていたモデルを用いて予測を行うのがCAE領域のシミュレーションとモデリングであることに対してデータを用いてトレーニングを行い、コンピュータが生成したモデルを使って推論を行うのが人工知能の領域であると解説し、ワークロードの類似性を指摘している。またリサーチではCAE解析においてもデータの増大に対応するインフラストラクチャーの構築が急務であるとして、この面でも人工知能のワークロードとの共通性があることが明らかになっている。
ここからは2021年3月に行われたSiemensのSTAR-CCM+における2つの世代のAMD製CPUに関する最新のベンチマークを紹介しよう。
ここではAMDのコードネーム、RomeのCPU(EPYC 7532,7543)と、より新しい世代のCPUであるコードネームMilanに属するEPYC 7713を比較している。デル・テクノロジーズの専門スタッフはHPCで利用されるアプリケーションがどのようなコンピュータ資源を必要とするのかについて深い経験を持っている。次の図では解析の分野ごとに、スケーラビリティの必要性、CPUコア性能に対する要求度、必要とするコア数、メモリーの必要性、データI/Oの多さ、ほかのプロセッサとの通信量の多さなどについての概略を示している。
サーバーのハードウェアやOS、利用するパッケージソフトウェアを適時更新することは、システム管理者にとって重要ではあるものの非常に手間がかかると言える。デル・テクノロジーズのPowerEdgeサーバーにはiDRAC(integrated Dell Remote Access Controller: アイドラック)と呼ばれるリモート監視のためのツールが用意されている。これはエージェントレスのサーバー管理ツールで、サーバー管理者が必要とする多くの作業を効率化することが可能でテレワーク全盛時代に重宝されるツールだ。iDRACはグラフィカルなインターフェースを備えた管理ツールとしてHPCシステムにおいてもその効果を発揮する。
幅広いニーズに応えるPowerEdgeサーバーのポートフォリオ
最後にデル・テクノロジーズが提供する最新のサーバー製品「PowerEdge」のポートフォリオを紹介する。第3世代のインテルXeon® スケーラブル・プロセッサーと第3世代AMD EPYC™ プロセッサーで構成されるサーバーは、汎用ラックサーバーからGPUを装備した人工知能ワークロードに適したサーバー、エッジでの利用に適したサーバーまで、あらゆるニーズに対応するポートフォリオとなっている。
またサーバーが抱える熱処理問題にも多面的に対応を行っており、特許を取得したアルゴリズムを使った冷却ファンの自動制御、内部レイアウトの改良、最適なエアフロー設計などが施されている。
デル・テクノロジーズは製品のサプライチェーンにおいても信頼性を重要視している。出荷製品における保管追跡機能、改ざん防止を可能にする梱包、デジタル署名入り証明書をサーバー個々に埋め込むなど、さまざまな機能を用意している。これによって製品が工場から配送ルートを通ってお客様に届くまでの全ての段階で安心できるサプライチェーンを実現している。またサポートにおいても、CAE解析/HPC用途のサーバーからワークステーションに至るまで、宮崎に設置しているカスタマーセンターと首都圏に設置しているグローバルコマンドセンターを起点に、国内の専門のサポートスタッフが受付からトラブル解決まで一貫して対応できる。これにより、障害発生時にも、ワンストップで迅速に問題を解決できるのがデル・テクノロジーズ製品の魅力だ。実際、同社のPowerEdgeサーバーは多くのお客様に支持され、2021年第2四半期(4-6月)の国内市場における売上額および出荷台数においてシェア1位※となっている。
※出典: IDC Quarterly Server Tracker, 2021Q2. Share by Company. Product Category=x86
デル・テクノロジーズのCAE解析/HPCのベンチマークに関する最新情報は、http://HPCatDell.comの「デジタル製造」セクションを参照して欲しい。
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