激しく変化するビジネス環境に適応し、成長し続けていくために、多くの企業がDXへの取り組みを加速させている。だが、いつの間にかテクノロジーの導入自体が目的になってしまい、期待する成果が得られていない企業も少なくないだろう。 9月7日に開催されたTECH+フォーラム「製造業DX Day 2021 Sept.事例で学ぶDX推進~課題と成功の勘所~」では、NTTデータ グローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)ビジネスイノベーション推進部 ソリューションデザイン室 室長 八木将樹氏が登壇。「DX時代の基幹系システム・構想策定のあり方」と題し、“成功するDX”に向けた適切なアプローチ手法について解説を繰り広げた。

  • 株式会社NTTデータ グローバルソリューションズ ビジネスイノベーション推進部 ソリューションデザイン室 室長 八木 将樹 氏

    株式会社NTTデータ グローバルソリューションズ ビジネスイノベーション推進部 ソリューションデザイン室 室長 八木 将樹 氏

いかに基幹系システムと周辺システムを連携させるか

NTTデータGSLは、基幹系システムのグローバルERPパッケージであるSAP製品を中心に、コンサルティングから導入に至るまでを一貫して支援する企業だ。昨今では、「SAP ERP Central Component(ECC)」から「SAP S/4HANA」への移行による付加価値の創出や、メインフレームの保守期限切れへの対応などを機にDX化を検討するお客様へSAP製品にこだわらず、その周辺の仕組みをいかにSAPに融合していくかという点にも注力しているという。

そんな同社が誕生したのは、2012年10月のこと。現在は、製造業や化学業界を中心に日本企業の国内・海外拠点に向け、SAP製品を活用したシステムの構想策定から導入、展開、運用保守・改善サービスまでをワンストップで提供する。

基幹系システムを担うSAP Core製品には、会計や物流、営業・販売、生産系などにまつわる機能が含まれるが、DXが進む今、不足する機能を補うため、SAP製品以外にもさまざまな拡張モジュールも登場している。NTTデータGSLでは、基幹系システムはデファクトスタンダードであることを前提に、その繋がりを意識している周辺の仕組みについては幅広く提供しているという。

「(基幹系システムの)周りの仕組みをいかに基幹系システムと結合させていくのかに力を入れています。例えば、生産系のPLMとBOMの連携がしっかりしていないと基幹系システムはうまく動きません。我々は、他社事例に基づき、基幹系と一般的に連携するものは全て検討範囲内と考えて連携を進めています」(八木氏)

基幹系システムはいわば“ベストプラクティスの実装”であり、堅牢かつ完成された仕組みだ。反面、企業全体のプロセスから見ると、その業務に特化した仕組み、もしくは柔軟性がある仕組みを導入したほうが効果的な部分もある。

特にワークフローシステムやMES/PLM、EDI/EAIなど、基幹系システムとの結合度が高い部分については、それぞれの企業にマッチした柔軟な仕組みを考えることが重要だ。この点に関して八木氏は「現在はSAP製品に限らず、さまざまなベンダーからSaaSソリューションが提供されており、 SAP製品とのインターフェスも用意されており、データ連携もしやすくなっている」と説明する。

「(周辺に)各企業に最も適したソリューションを配置し、基幹系システムときちんと結合していくことによって、BtoBの基幹系デジタル戦略が成功するというのが我々の考えです。周辺の仕組みも含めて、原料を仕入れてからモノを作って売るところまで、全てを一元化されたデータでつないでいくことが重要だと思っています」(八木氏)

“DX化のジレンマ”を引き起こす3つの要因

DXの目的には、大別して「組織横断・全体の業務プロセスのデジタル化」と「顧客起点の価値創出」の2種類が考えられる。八木氏は、「後者を目指す企業が多いが、業務プロセスのデジタル化が基盤としてきちんと確立されていないと、顧客起点の価値創出を実現するDXも難しいのではないか」と疑問を投げかける。

いずれにせよ重要なのは、まず企業としてDXを意識した青写真を描き、そのためにどのようなステップで変革を進めていくのかを考え、最後にその実現手段としてどんなデジタルソリューションをどのように使うのかを考える、というアプローチで進めていくことだ。だが、八木氏は「実際には、デジタルソリューションの活用から入ってしまっているケースが多いと感じる」と警鐘を鳴らす。

こうした状況を八木氏は「基幹系システム・DX化のジレンマ」と称し、その原因を3つ挙げた。まず1つは、「小規模なDX化の範囲に留まり、サイロを打破できないこと」、もう1つは、「経営層の掲げる“Fit to Standard”が独り歩きしてしまうこと」、そして3つ目が、「参考にすべき物差しのない構想の策定」である。

「DXは、テクノロジーの適用が目的ではありません。そして、IT製品ベンダーは自社製品のテクノロジーを知っているだけです。対象となる範囲が広範であるだけに、製品軸でなく、業務を熟知しているトータル・ソリューションベンダーと何から進めるのか、しっかりと決める必要があります」(八木氏)

DXを成功に導くアプローチとは

では、DXを成功に導くには、具体的にどのようなアプローチで進めればよいのだろうか。 先に語られたように、DXは対象となる範囲が広範であり、いきなり全ての領域に着手することは難しい。そのため、まずは対象領域を明確にすることが必要だ。八木氏は差別化への貢献度や、標準化できるかかどうかといった軸で各領域を整理して見せ、「基幹系システムの領域は、差別化につながる要素こそ少ないものの、DX基盤の土台になる部分であり、新規ビジネス創出を支える基盤でもある」と説明する。

この基幹系システムの領域でDXを推進していく上で、実行すべきなのが、事業部ごとのサイロの撤廃と、複雑化・ブラックボックス化したシステムからの脱却である。

「その意味でも、いかに基幹系システムと生産実行系などの周辺システムのデータをつないでいくかが重要になってきます。ただし、中心にある基幹系システムのプロセスを確立させないことには、周辺システムに何を求めているのかもわかりません。“ハーモニー(調和)”がある仕組みを構築していく必要があります」(八木氏)

NTTデータGSLでは、体系化したDXのノウハウに基づくDX構想の策定を支援している。

八木氏は、「実際に自社のシステムがどれぐらい複雑化しているかは自分たちだけではわからないもの」だと指摘する。「基幹領域は業務・ソリューションの観点からベストプラクティスが活用できるエリアであり、そのための“物差し”を我々は提供できる。周辺の仕組みを含めて基幹領域のDXはどうあるべきかを洗い出し、何からアプローチするかを決めていくのが重要であることを、まずは理解していただきたい」と強調し、セッションを締めくくった。

本講演の動画をこちらからご覧になれます
https://www.nttdata-gsl.co.jp/related/movie/?code=webinar_dx_sd_20210907

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